ワイン(Wine)とは、ブドウを原料にしたアルコール飲料である。葡萄酒とも呼ばれる。
蜂蜜酒、ビールと並び、数千年以上の歴史を持つ最古の酒の一つである。
概要
アルコール度数はおよそ10~15%。
ブドウの果皮に付着している酵母(サッカロマイセス・セレビシエ)が果汁中の糖分と触れることで発酵が始まり、主に糖分を消費してアルコールが生成される。
糖 (酵母) エチルアルコール 炭酸ガス + (熱)
C6H12O6 → 2C2H5OH + 2CO2
その一方で、果汁中に含まれるリンゴ酸が、空気中に漂う乳酸菌と触れることで、MLF(マロラクティック発酵)と呼ばれる現象を引き起こし、よりまろやかな酸味の乳酸に変化する。
リンゴ酸 (乳酸菌) 乳酸 炭酸ガス
COOH - CH2 - CHOH - CHOH → CH3 - CHOH - COOH + CO2
これらの発酵過程を人為的に開始させ、適切に管理し様々な加工を施したものが、ワインとして世界中で活発に生産・流通・消費されている。
ビールや日本酒など他の一般的な酒と大きく異なる点は、果汁を利用している=仕込み水を使わないことである。
水の善し悪しが出来を左右する他の酒類に比べ、より原料の性質がダイレクトに反映されるのがワインの特質であり、ここまで複雑で膨大な発展を遂げた所以でもある。
ワインの歴史
熟れて地に落ちたブドウが自然に発酵したことがワインの発見につながった、と考えられている。
シュメール文明(メソポタミア文明の初期)にはすでに人工的にワインの醸造が行われており、考古学的な証拠として、シリアのダマスカス遺跡にてブドウを圧搾するための石臼が発掘されている。
ギルガメッシュ叙事詩において船大工に振舞った酒としてワインが登場することを始め、エジプトの壁画に醸造法が残されていたり、ハムラビ法典にその取り扱いについて定められるなど、ワインの記述は古代より散見されている。
古代オリエントを舞台に発展したワイン醸造技術は、フェニキア人の交易によりギリシア世界にも伝播する。
これが地中海沿岸を経て古代ローマにまで到達し、ローマ帝国の席巻とともにガリアなど内陸部にまでワイン文化が根付く。ガリア(=現フランス)においてワイン造りは活発に行われ、今日のワイン大国の礎を築くことになる。
中世ヨーロッパにおいては、ワインを儀式上の飲物として位置づけていたキリスト教の僧院によってブドウ栽培やワイン醸造の進歩が促進される。以後、フランス、イタリア、スペイン、ドイツを中心に、各国の時代背景に応じ発展を遂げる。ルネサンス期以降の飲酒の習慣の普及、18世紀頃の一大ワインブーム、ガラス瓶とコルク栓の発明、産業革命による経済の発展等を経て、ヨーロッパにおけるワイン文化は食文化と切り離せない物にまで成長を遂げた。
しかし、19世紀中頃から末にかけて、三度の病禍に襲われる世界的なワイン暗黒期が訪れる。
ウドンコ病(Powdery mildew)、ベト病(Downy mildew)、害虫フィロキセラ(ブドウネアブラムシ)による被害である。
特に、フィロキセラによる被害は対策に難航したため、解決までに数十年を要した。
この暗黒期を脱した後、今度は第一次世界大戦や世界的不況など、ワイン需要が大幅に落ち込み、ブドウ畑の規模も最盛期のおよそ二分の一にまで縮小を余儀なくされる。これに加え、低質なワインの過剰生産、虚偽記載の横行など、ワイン市場そのものも不安定化する。
この停滞状況を打破するために、1935年、フランス政府は「A.O.C.法」を積極的に運用する機関「INAO(=フランス国立原産地名称管理協会)」を設立し、フランスワインの品質と流通の安定化を図る。(このA.O.C.法とは厳正な品質評価の元、一定の基準を満たしたものにのみ指定の名称を名乗ることを許すというもので、1920年代頃から試験的な運用がなされていた)
これにより、フランスはいち早く自国のワインに関する品質と信頼を回復し、名実ともにワインの名産地としての地位を確保した。フランス以外のヨーロッパ各国も遅ればせながらこれに追随し、今では多くの国で同種の統制法が制定されている。EUでもこれらを参考に、連合全体で運用する統制法の整備を進めている。
ワインの分類
ワインはその製法によって、スティル・ワイン、スパークリング・ワイン、フォーティファイド・ワイン、フレーバード・ワインの四種類に分類できる。
スティル・ワイン
通常、ワインと聞いて思い浮かべるものがこれ。「静かな(スティル)=泡立っていないワイン」の意。
世界中のワインの大半がこのカテゴリに属している。その色により、さらに三種類に分類できる。
白ワイン
白ブドウの果汁を発酵させたワイン。絞った果汁のみを使い、種や皮、果肉などは取り除く。
味に深みを与えるため、取り除く前にしばらく浸しておく製法も存在する。
色は無色透明から、淡い黄金色までさまざま。黄ワインと称されるほどに色づきのあるものもある。
酸味・甘味に優れており、魚介類やあっさりした鶏肉料理などに良く合う。
赤ワイン
黒ブドウや赤ブドウを原料とし、果実を砕いて得た果汁を、果実ごと(種や皮も含めて)浸し、発酵させる。
種の渋みや皮の色が染み出すことで、赤ワイン独特の味わいや色合いが出来上がる。
色はルビーのような透過赤色から、赤褐色あるいは赤紫まで。
渋み・芳醇な香りに優れており、こってり醤油味の料理や獣肉料理に良く合う。
ロゼワイン
薔薇(rose)ワインの名の通り、鮮やかなピンク色が特徴のワイン。
製法は多岐に渡るが、おおまかには「黒ブドウの果皮の色素を果汁に染み出させ、ピンク色になった液体を発酵させる」というのが主流。
発泡性ワイン(スパークリング・ワイン)
スティル・ワインにさらに糖と酵母を加えて二次発酵させ、その際に生成される炭酸ガスを閉じ込めて(瓶に詰める、加圧化のタンク内に密閉する等)発泡性を持たせたワイン。
フランス・シャンパーニュ地方の特産である「シャンパン」が特に有名。
酒精強化ワイン(フォーティファイド・ワイン)
アルコール発酵を起こす酵母は糖分を分解してアルコールを生成するが、一定以上のアルコール濃度になると酵母が不活性化することを利用して、ブランデーなどを添加して意図的に発酵を停止させたワイン。
中途で発酵が止まっているため、糖分を多く残している。シェリー酒、ポートワインなどの類。
香り付けワイン(フレーバード・ワイン)
普通のワインに果汁を混ぜたり、果物や薬草などを漬け込んだもの。漬け込む内容によって違った香りが楽しめる。
イタリア、フランスなどで飲まれているベルモットが有名。
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関連項目
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