『ワンダと巨像』は、2005年10月27日に ソニー・コンピュータエンタテインメントより発売された 上田文人監督のプレイステーション2用ソフト。ジャンル:「アクションアドベンチャー」、CERO「B」。
2018年にPS4用ソフトとしてリメイクされている。(開発はSIEJAおよびBluepoint Games)
概要
ワンダという一人の青年が、魂を亡くした少女を蘇らせるために「古えの地(いにしえのち)」にやってきた。この地に住まうと言われている、16体の「巨像」を倒すことができれば、少女は魂を取り戻すという。ワンダは剣と弓、唯一の友達である愛馬アグロと共に、山のような大きさの巨像たちに戦いを挑む・・・。
「ICO」を制作したチームによる、非常にコンセプティブなアクションゲーム。普通の人間にすぎないワンダを操作し、ワンダより何十倍も大きな「巨像」によじ登って弱点を攻撃し倒すゲームである。
印象的なバックストーリー、PS2のスペックを余すことなく注ぎ込んだグラフィック、迫力と静寂が同居するBGMなど、見どころに事欠かない作品で、多くのプレイヤーに衝撃を与えた。その功績は、文化庁メディア芸術祭をはじめ日本初のBest Game of The Year受賞など、各賞を受賞していることからも伺える。
発売から5年以上が経過した今も、「ICO」と共にたくさんの人に支持され続けている作品である。
2011年9月22日にPS3用ソフトとしてHDリマスター版が発売された。
巨像との戦い
- プレイヤーは主人公であるワンダを操作し、巨像と戦う。
- 巨像には弱点があるが、山のように大きいため、何とかして弱点までよじ登る必要がある。このよじ登るルートを探すゲーム、と言ってしまってもいいかもしれない。
- 弱点までのルートは、剣、弓、愛馬アグロ、更には巨像の周りにある地形や巨像の習性までをも利用して見つけ出していく。一体の巨像に複数の攻略ルートが存在する場合もある。
- 巨像をよじ登る間、ワンダの握力はどんどん消耗していく。握力がなくなると落ちてしまうので、時には巨像の背中で休憩する必要もある。巨像もじっとはしていないため、振り落とされないよう細心の注意を払う必要がある。
- 弱点に到達したら、剣を数回刺すことで巨像を倒すことができる。ただし、弱点は複数設定されていることがあり、基本的に全ての弱点を攻撃する必要がある。
古えの地
- ゲームの舞台である「古えの地」は大きな箱庭のようになっており、シームレスに繋がった一つの世界である(エリア移動によるロード画面が存在しない)。ワンダは愛馬アグロに乗って古えの地を駆け巡る。
- この広い世界で戦うべき巨像を見つけるのは至難の業である。しかし心配はご無用。ワンダの持つ剣は聖なる力を帯びており、太陽の光にかざすことで、次に戦うべき巨像の方向を光で指し示す効果がある。また、この光は巨像の弱点を知る手がかりにもなる。
キャラクター
ワンダ(声:野島健児)
本作品の主人公の青年。彼の願いはただ一つ、魂を失った少女モノを生き返らせること。その秘術を得るために古えの地にやって来た。死者を蘇らせる秘術は”禁忌”とされているが・・・。大きな代償をも覚悟の上で、少女の魂を取り戻すために、ひたすら巨像と戦う。体つきは普通だが、強靭な肉体と精神力それに巨像にも怯まない勇気をもつ。美青年。(原作では線が細めのイケメンだったのだが、PS4リメイク版では海外製のためか少しごつくてバタ臭い顔になってしまっている・・・。)
モノ(声:生天目仁美)
ワンダの最愛の存在で、ある儀式のために魂を失ってしまった少女。ヒロインだが、ワンダとの関係は一切不明で、ゲーム中では名前すら明かされない。長く伸びた黒髪が印象的な美少女。ゲーム中は陽の当たる祭壇にワンダによって身体を安置され、眠り続けている。
アグロ
ワンダの愛馬で、非常に賢く、ワンダが呼べばどこへでも駆けつけてくれる。雌馬。ゲーム界の馬ではゼルダの伝説シリーズのエポナと人気を二分するとも言われ、モノが眠り続けているのもあってか一部ではヒロインだと言う人もいるほど。
ドルミン(声:中多和宏・氷上恭子)
古えの地に住む「姿なき天の声」。生と死を超越せし者で、死者の魂をも操る術を持つ。古えの祠へとやって来たワンダに、祠に並ぶ偶像と対になる巨像を全て倒せば少女は目覚めると語る謎の存在。巨像との戦いに手こずっていると助言も与えてくれる。
エモン(声:坂東尚樹)
ワンダやモノのいた部族の呪術者。禁忌を侵したワンダを止めるために、精鋭を率いて古えの地へやって来る。
巨像
古えの地に住まう16体の神々しい巨像。人型や動物型など、その姿は多種多様。大きさもサバンナの動物程度のものから怪獣クラスのものまで様々なものが存在する。圧倒的な力と巨体を持つが、体のどこかにある弱点に剣を突き刺せば倒すことができる。
Tips
- グラフィックはPS2ソフトの中でもトップクラスの美しさを誇る。ボリュームシェード、モーションブラー、スカイグローといった通常のPS2ソフトでは滅多に見られない映像技術がこれでもかというほど盛り込まれている。巨像の「毛」の表現は、CGヲタクは是非参考にしたいシロモノ。
- タレントの松本人志もワンダと巨像の大ファンであり、自身のラジオ番組放送室や2011年8月2日放送のテレビ番組リンカーン内にて名作だと絶賛していた。
- 戦闘BGMに名曲が多く人気。BGMを担当している大谷幸(おおたにこう)氏。「逮捕しちゃうぞ」「新機動戦記ガンダムW」「灼眼のシャナ」など、数多くのアニメBGMを担当しているので、ご存知の方も多いかもしれない。ガメラ・ゴジラなどの怪獣映画にもよく携わっているが、今作のBGMはそれを髣髴とさせる、重量感のある曲が多くなっている。
- 開発当初は「NICO」のプロジェクトコードを与えられていた。もちろん前作の「ICO」の2作目であることを意識したものであり、ニコニコ動画とは微塵も関係がない。
- 前作「ICO」との繋がりを感じさせる要素がいくつかあるため、ファンの間では二つ世界の繋がりも考察されている。
- クリア後のやりこみ要素や隠しアイテムなども存在する。特に、クリア後にプレイできる「タイムアタック」はニコニコ動画上でも人気がある(後述)。
作者によって明かされたゲームの真相秘話とクリア後のイラスト(ネタバレ注意)
ワンダと巨像はゲーム内では物語の背景などの情報が極力そぎ落とされ語られていないため謎が多く、プレイヤーの様々な憶測を呼んでいたが、PS3版発売の際にファミ通から発行された公式ガイドブックに掲載された作者の上田文人氏のインタビューにて、ゲーム中では明かされていなかったいくつかの重要な真実が語られていた。
さらに、PS3版ICO/ワンダと巨像Limited Boxの特典ブックレットにて、作者の上田氏によるワンダと巨像のクリア後の数年後の世界でのキャラクター達の様子を描いたイラストが公開されている。
- 巨像を倒したあとに聞こえる声は少女のもので、内容はワンダを引き止めるようなことを言っている。最初は息遣いだけだが、少女が意識を持ち始めるとともにワンダに対して語りかけてきている。
- 実はエンディングはもっとハッピーな展開も考えていた。しかし蘇生術を扱ううえでハッピーエンドは無いだろうと、ICOのセーブデータがあるとエンディングが少し変わるということも考えていたが止めた。
- もうひとつのアイデアとして、少女が蘇るほうが先という展開もあった。エモンたちが来てワンダをいたぶっている最中に、蘇生術を使ったために人間とはかけ離れ体が発光した状態で少女が蘇って、それを護衛の一人が剣で殺そうとするが弾かれて、エモンたちは慌てて逃げて再びこの地を封印してしまい、残されたワンダと少女は二人で生きていくというもの。
- もともとワンダは巨像を倒すたびに姿が大きく変わっていくという設定で、最後は美女と野獣の様にしようと思っていた。目覚めた少女は目がまだ見えない状態で手探りでワンダを捜すがワンダは姿が変わっていて、さあどうなるというところでスタッフロールに入っていくが、最後は仲よく二人でアグロに騎乗して走り去る、あるいは祠の出口から最初はアグロが出てきて次は誰が出てくるのかと思ったら支え合いながら二人が出てくる、というもの。ワンダの代償は姿が変わり、それが戻らないことだった。制作初期のパイロットムービーでワンダの頭に角が生えていたのはその名残。今だからこそ言えるがエンディングに関してはこうしたほうがいいと思う部分もある。ICOがなければまた違ったエンディングになったかもしれないが、最終的にチーム内でも今のエンディングがいいという意見が多かった。
- スタッフロールで巨像の骸がひとつずつ映るが、本当はあそこに回想シーンを入れたかった。少女がアグロにタッチするとアグロの今までの記憶が少女に流れて、そういうことだったのかと少女が分かるようにしたかった。
- エンディングはオープニングに続いている。鳥が空を飛んで天気が雷になったあとは月が出て最初の映像に戻っている。古えの地はワンダが来たことで封印が解かれ、止まっていた時間が動き出した。
- ドルミンは人知を超えた力を持っていて、過去に何らかの禁忌を犯して封印された脅威的な存在。古えの地も忌むべき場所だが、人々にとっては必要。最初から橋を落として完全に封印しておけば今回のようなことは起きなかったが、あそこに橋があるという事にはそういう理由がある。
- 最初に言っていたのは巨像は偶像で、偶像崇拝の対象である。いけにえや偶像崇拝は不条理なもので、昔からのしきたりだからというだけでずっと引き継がれてていて、正当な理由はないと思う。
- 巨像を倒したときにワンダに黒い帯が刺さるのは、開放されたドルミンの力がワンダの体内に入ってるという象徴。祠でワンダを囲んでいる黒い形はドルミンの一部。体を形成する骨や筋肉が巨像で、あの影はそこに流れる血液みたいな概念。だから全部合体するとドルミンになる。巨像を倒したあと影がワンダを囲んで見下ろしているのは、ドルミンが早く全部倒してくれないかなあと思っている。
- 体がドルミンになったあとも半分ワンダで、意識が残っているから操作できる。操作のレスポンスが悪いのは半分だから。
- その後で泉に引き込まれて浄化されなかった要素として残ったのが角。赤ちゃんになってもあれはワンダ。
- クリア後の様子の描かれたイラストには、ゲームのラストで赤ん坊になったワンダが成長したと思われる角の生えた2~3歳位の男の子が元気に走って鳩を追いかける様子と、それを微笑みながら見守るモノとアグロの幸せそうな様子が描かれていた。
ニコニコ動画における「ワンダと巨像」
人気のある動画は主に「タイムアタック」と「トカゲスナイプ」である。BGMを聞くものや、BGMを差し替えたものなども存在する。
タイムアタック
クリア後に挑戦できるオマケ要素。このタイムアタックで規定の時間以内に巨像を倒すことができると、ある特典がもらえる。ニコニコ動画上では世界レベルの超絶技巧ムービーが人気。一度プレイした人が見ると、目を疑うようなワンダ、通称「スピーディーワンダ」に出会うことができる。
トカゲスナイプ
古えの地のいたるところにはトカゲがいる。このトカゲのうち、シッポが白く光るものがいるのだが、このトカゲを剣や矢で倒すことで、トカゲの尻尾を手に入れることができる。効果は「握力の上限値アップ」。
・・・なのだが、このトカゲを倒すのがまた難しい。的が小さい上、チョロチョロ動き回るためである。下手をすると1匹倒すのに何十分もかかる作業であるが、ニコ厨は更に上をいっていた。わざわざ高い所にのぼり、100m以上離れたトカゲを射抜くことに情熱を捧ぐ動画が存在するのである。このワンダが何を考えているのかは誰にも分からない・・・。
ニコニコにおける「ワンダと巨像」関連の有名人
しらぽん氏
世界レベルでの記録を多数保持するワンダプレーヤー。ニコニコでのうp主でもあるため、彼自身のお手製動画を見ることができる。プレイの参考になる、というかもはや参考にならない、したくないレベルの阿鼻叫喚プレイが目白押しなので、ワンダをプレイしたことのある人には是非一度見てもらいたい。
実況動画
関連動画
関連項目
外部リンク
- ワンダと巨像公式サイト
- ICO・ワンダと巨像・人喰いの大鷲トリコ | プレイステーション
- 3Dゲームファンのための「ワンダと巨像」グラフィックス講座
- 『ICO』と『ワンダと巨像』:上田文人氏にインタビュー | WIRED VISION
(ネタバレ注意・リンク切れの為アーカイブへリンク)
- 上田文人氏に聞く,今なお「ワンダと巨像」が世界中で支持されている理由。そして音楽への思い
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