ヴィクラマーディティヤとは ここでは2.について扱う |
概要その前に
実はインドは空母の保有経験がある。その始まりは第二次世界大戦末期に建造中止されていたイギリス海軍のマジェスティック級航空母艦ハーキュリーズ、これを購入し改修したヴィクラントである。
ハーキュリーズを購入した理由は定かではないが、もともとインドは広大なインド洋に面しており、そのインド洋は交通の要所であると同時にあまり仲のよろしくない国であるパキスタンがそのインド洋を通して面している。どうもこの辺が理由らしい。実際本級も、現在インドで建造中の2代目ヴィクラントも本来対パキスタン用である。
さてそんな中、バングラデシュ独立をめぐり、インドとパキスタンで第三次印パ戦争が勃発する。ここでインド海軍はシーホークなどを積んだヴィクラントを中心とした空母機動部隊を派遣。そしてパキスタン軍の艦艇を撃破したり、パキスタンの空軍基地を攻撃し航空優勢を手に入れるなど戦果を上げた。
この経験からインド海軍は空母機動部隊の有用性を認識し、今に至るのである。
ヴィクラマーディティヤ取得にいたるまで
さて、ところ変わってロシアではキエフ級4番艦、バクーは艦載機予定のYak-141は没り、Yak-38は退役して固定翼機運用能力が失われていた。さらにVTOL推しだった国防総省と海軍元帥が死去しており、正直ロシア海軍はVTOL機しか運用できないキエフ級には興味が無く、興味の対象はアドミラル・クズネツォフに移っていた。
あわやバクーも予備役のちスクラップかと思われたが、ロシア政府の誰かが思いついた。
「インドに売ればいいんじゃね?」と。
その頃インドでは新しい空母を欲しがっていた。
当時インドでは前述のヴィクラント、そしてフォークランド戦争で活躍した経歴を持つ元イギリス海軍ハーミーズのヴィラートの2隻を保有していた。しかしこの2隻、いくらアングルドデッキにしたりスキージャンプにしたり艦齢延長したりしても、もともと第2次世界大戦末期に建造開始された艦であり、正直オンボロもいいところの老朽艦だったのである。
さらに言えば艦載機であるシーハリアーは整備も運用も面倒、しかも全保有機をかき集めてもヴィラートの最大搭載機数である30機を満たせない状態だった。
インドではこれに対応するため国産空母建造計画を始めようとしたが、予算が無くこれも没になった。そんなわけで価格を抑えて新型空母を手に入れる術を模索していたのだった。そこにロシアがバクー売却を持ちかけたのである。
交渉は難航し1994年から4年も掛かった1998年にようやく「艦自体は無償譲渡する代わりに、修理・近代化改装費用はインド側負担とする」という方針に決まった。これは改装費用のないロシアと改装技術のないインドの事情による。しかし改装費用についてはまだまだまとまらなかった。
結局、2004年に
という契約に落ち着いた。
しかし、ロシアが改装を提示価格は安いが大型艦建造経験の無いセヴェロドヴィンスク市に依頼したために予定の遅延と価格が超過したり、その超過価格を巡ってまたロシアとインドの交渉が難航したり、ボイラーの耐火煉瓦が不良品で建造中に崩落したりしたがどうにか完成。
2013年11月にインド海軍に引き渡され、2014年1月にインドに到着した。
概要
元となったキエフ級は駆逐艦の左側にアングルドデッキを取り付けた特徴的なデザインだったが、ヴィクラマーディティヤでは対艦ミサイルや速射砲を全部取っ払い、そのスペースを飛行甲板にしている。
さらに飛行甲板最前部にはスキージャンプを設置、アングルドデッキにはアレスティングワイヤーを設置することにより固定翼機の発着艦を可能としている。
これにより、もともと艦橋が類似した形状であることもありロシア空母、アドミラル・クズネツォフにかなり近い外見となったが、ヴィクラマーディティヤは元がキエフ級であるため艦橋が飛行甲板側にずれているという特徴がある。またアドミラル・クズネツォフと違いスペースに制限があるためか、着艦用滑走路と発艦レーンが交差してしまっている。
また、元のキエフ級は重油専用のボイラーだったのだが、インド海軍では軽油を使用しているため軽油対応ボイラーに変更されている。
艦載兵装については前述の通り対艦ミサイルや速射砲などは全て撤去されている。本当は個艦防空用ミサイルを積む予定だったのだが、インド国産ミサイルの開発が失敗したことと予算不足があり、ヴィクラマーディティヤの兵装は30mmCIWS6門のみとなっている。
メインの艦載機はMig-29Kであり、21機の搭載が可能の他ヘリコプター13機の搭載が可能と言われている。ちなみにMig-29Kはヴィクラマーディティヤに先駆け2013年5月に引き渡し、実戦配備が行われている。
現在はようやくインドに到着したばかりであり、本格的な運用はまだと思われる。
しかし初代ヴィクラントは退役、ヴィラートは更なる艦齢延長でどうにか運用、2代目ヴィクラントはまだまだ完成に時間が掛かるという状況であるため、2代目ヴィクラント級が2隻揃うまでインド海軍に置ける主力空母となるのは間違いないだろう。
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関連項目
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