三國志VIIIとは、コーエー(現コーエーテクモ)の『三國志』シリーズの8作目にあたるゲームである。Windows PC版のほか、PS2版、PSP版が出ている。
概要
前作三國志VIIに引き続き「全武将プレイ」を採用しており、君主だけではなく勢力に属するいち武将や、どこにも属していない在野武将などでも遊べる仕様となっている。在野武将として各地を転々とすることも可能なほか、複数の仲間と「放浪軍」を結成して、拠って立つ地を求めて流浪することもできる。
この作品の何よりの特徴は、三國志シリーズでも最多のシナリオ数の誇るところである。
無印の時点で184年黄巾の乱から始まり、234年五丈原の戦いまでの1年おき、実に51本ものシナリオが用意されている。PK版ではさらにシリーズでもあまり収録がなかった孔明死後のいわゆる末期シナリオである241年(呉蜀同時侵攻(予定))、249年(司馬氏クーデター)、263年(蜀滅亡)のシナリオ3本も追加され、公式サイトからはIFシナリオ2本が、CS版では「英雄集結」シナリオまで追加された。まさに大盤振る舞いである。
このため、区星の乱や諸葛誕の乱などのすぐ消える小勢力が出るシナリオもあったり、劉備の勢力があちこちを転々とする様を見ることもできる。司馬炎がシナリオ開始時から選べるのも非常に珍しい。みんな大好き荊州四英傑が出るシナリオも当然ある。
それでいながら、有力君主の選択時にはちゃんと専用のOPもある。
全武将プレイの先駆けである前作三國志VIIと、君主プレイ作品として人気のある三國志IXの間の作品であり、それらと比べられて評価の高くない扱いを受ける作品でもある。確かに問題もあるけど、この作品にもいいところはたくさんあるんだけどなあ…
このゲームは後述の色んなシステム要因もあって、本来活躍しそうにないへっぽこ武将なんかでも活躍のチャンスがあったり、ともすれば一国一城の主になれたりするなど、やけに凡将に優しい仕様になっている。このゲームの醍醐味は、そういった凡将での一般プレイにあったりするのかもしれない(※個人の感想です)
特徴的なシステム
悪名
この作品特有のシステムに、マスクデータの「悪名」がある。名前の通り悪い意味での名声であり、たとえば権力の頂点に立った頃の董卓や曹操は非常に悪名が高くなっているし、賊の首謀者である張角や張燕、小悪党の楊松なども最初から高めに設定されている。
悪名は評判の悪い行いをすると上昇する。たとえば他勢力の都市に略奪を仕掛けたり、民の陳情を無視したりすると悪名が上がっていく。戦争で捕らえた武将を斬首することでも悪名が高まるので、COM君主は悪名を嫌って捕虜を解放することが多い。このため、この作品の君主は雑魚武将にも優しい。反乱でも悪名が高まるが、このゲームでは呂布ですらそうそう反乱を起こさなかったりする。呂布の癖に悪名を気にするとは。
悪名は当然悪いステータスであり、これが高すぎると登用・仕官のときに悪影響を受けたりする。また、上述のとおり捕虜を斬ると悪名がつくのだが、悪名の高い武将を斬ると逆に名声が高まるので、悪名持ちは戦争で斬首されやすくなるというデメリットが大きい。この作品の君主は雑魚武将には優しいが、悪党には厳しい。
また、悪名が高い君主がいると、周囲の勢力と連合を組んで対抗することができる。反董卓連合のシナリオでは一度解散した連合がまた再結成されることがよくある。荊州四英傑が出るシナリオだと、勢力は弱小なのに悪名だけは高い韓玄を相手に反韓玄連合が組まれたりする(孫権が盟主になってることが多い)。
悪名を雪ぐには乞食に施しを与えるなどする必要があるが、これがまた金がかかる。金100とか平気で要求してくる乞食もいる上に、断るとまた悪名が上がるからタチが悪い。
人間関係
各月の自由行動時間に、ゲーム中に登場する武将や旅人と会話することができ、それによって次第に仲が深まっていく。一般武将でプレイする分には、自勢力の君主や都市の太守、軍師らと仲良くしておかないと意見が通りにくいので、結構重要な要素である。どこの世界でもコミュニケーション能力は大事である。
仲がいい奴は鍛錬に付き合ってくれたりするし、戦法を教えてくれたりもする。そして最高に仲良くなると、義兄弟の契りを結び、血縁よりも深い仲になることもできる。義兄弟の契りは3人まで結べるので、やろうと思えば劉備三兄弟の新たな弟として加わることだってできる。
中には嫁(女性武将の時は旦那)を紹介してくれる奴もいる。配偶者は内助の功で色々と特技を授けてくれるだけでなく、自身の子を授かるイベントがある。この子供を育てていくと、15歳になった折にひとりの武将として乱世に立つようになる。このときプレイ対象を子供に移すことも可能で、これによって世代交代し続けるプレイもできる。嫁さんにプレゼントすることも可能で、これによって得られる特殊アイテムもあったりする。
一方で、親族や義兄弟を殺された武将は、殺した相手を恨む「仇敵」関係となる。まともに対話することもできなくなってしまうので、できれば避けたい間柄である。COM君主が斬首を嫌うのもこれが一因と思われ、プレイヤーが君主プレイする時も非常にネックになる要素でもある。
武将の成長
前作同様、各武将には能力成長の伸びしろがある。自由時間での鍛錬のほか、戦場や仕事での成果で経験点が得られ、それを溜めることで能力が上昇していく。前作では伸びしろに考慮して低めのパラメータが設定されていた武将が多いが、今作では最初から高めに設定されている。例えば諸葛亮は初期から知力100である(前作では92)。
武将ごとに伸びしろの上限値が決まっており、武力一辺倒タイプが知勇兼備になるのは難しい。しかし、成長の上限を増やす特技も存在し、これによってある程度は上限突破が可能。これらの特技は呂蒙などがイベントで習得するほか、都市で見聞を深めることで得られたりもする。さらに特技「全能」を持つと、全能力の上限値が100まで伸びる。この特技を初期状態で持っているのは劉禅だけ。そう、陛下はやればできる子なのです!
一方で成長率は前作より抑えられており、普通にやっているとCOM武将は能力上限に至ることなくゲームを終えることが多い。成長の限界に近付くと経験点も溜まりにくくなってくるので、プレイヤー操作でも上限値まで至るのは根気が要る。我こそはという人は、劉禅様を全能力100まで鍛え上げてみよう!
…劉禅は三國志IXからネタパラメータにされてしまったのだが、VIIIでのこの扱いの時点ですでにネタ化の片鱗を見せていたのかもしれない。
戦闘
戦争パートは三國志VIIIのあまり評判のよくない部分のひとつである。なにせ時間がかかる。一応、アニメーションはボタン長押しでスキップは可能だが、今度は何やってるのかわからなくなる罠。
戦争の決着は、相手の正規軍全部隊を撃破すれば勝利となる。攻撃側なら敵の城を落として勝利することも可能で、逆に守備側は30ターン守り切れば勝ちとなる。
三國志VIIに引き続き統率のパラメータがなく、相変わらず戦場は武力の支配するところである。しかし知力が低いと混乱しやすく、またこのゲームの混乱は結構直りにくいので、武力90台の武力バカよりも、武力知力70台の器用貧乏系のほうが活躍しやすかったりする。
戦場と軍議
戦場は横長のマップで構成されており、攻撃側の拠点から守備側の城までは結構な距離がある。一番速い兵科・一番速度の増す戦術を採用しても5ターン以上は平気でかかるため、敵が城防御に専念してると接敵までがひたすら長い。おまけに守備側はその長い道のりに罠を仕掛けることができるので、これにひっかかると立て直しに時間がかかってしまう。無理をすれば強行軍で移動距離を延ばせるが、ついてこれない兵士が脱落するので滅多には使えない。
戦場の中央には守備側の砦がある。攻撃側はここを越えると補給が届かなくなり、士気が下がってしまう。この砦を破壊することで補給線が伸びるが、ここに守備部隊を置かれるとそれをまず排除しなければなくなる。砦では負傷兵が回復するのでなかなか落としにくく、ここで時間を消耗させられることも多い。補給も砦も無視していくのもひとつの手だが、よほどの奇策がないと厳しい。
戦前の軍議で戦術を選ぶと、それに応じた効果が部隊に得られる。攻撃側・守備側で選べる戦術が異なり、また総大将と参軍(軍師)の特技によって選べる戦術が増える。以下は一例。
- 速攻 - 攻撃側。士気と機動力が増すが、10ターン経過すると大きく士気が下がる。
- 罠探 - 攻撃側。罠の回避率が上がるが、移動速度が落ちる。
- 索敵 - 攻撃側。視界が広がり、視界外の敵にぶつかっても先制されるのを防ぐ。特技「偵察」が必要。
- 遠射 - 守備側。部隊を砦周辺に配置。弩兵・連弩の射程距離が伸びる。特技「弩兵」が必要。
- 籠城 - 守備側。部隊を城の中に配置。士気が大きく下がる。城防御度で守りきれるなら有利。
戦場の地形は様々で、北方や巴蜀では山岳地帯が多く、揚州や荊州では水域が大きいマップもある。赤壁では長大な水域が広がっていたり、陳倉では険しい山に挟まれた砦が待ち構えるなど、個性的な戦場も多い。地形は兵科によって移動力が異なり、歩兵系はどこでもそれなりの進軍速度、騎兵系は平地では速いがそれ以外では遅くなる傾向にある。弩兵は歩兵と同じくらいの速度だが、上位兵科の連弩は移動速度が極端に遅く、主戦場に到達する前に趨勢が決まっていることもよくある。
大きな勢力に属する一般武将でプレイすると、得意でもないのに連弩を任されて、主軍から置いてけぼりにされて悲しい思いをすることがよくある。
戦法と計略
戦場では時間経過で戦法ポイントが溜まっていき、それを消費して戦法を発動できる。戦法は各武将が最初から習得しているもののほか、他の武将に教えてもらったり、戦場で喰らうことでも習得できる(どちらも確率は低い)。戦法には眼前の敵に放つもののほかに、「烈火」や「妖術」などの広範囲に放つ計戦というカテゴリもある。
戦法は成功すれば大ダメージを与えたり混乱させたりと強いのだが、熟練度が低いと成功率も低い。戦法は自由時間に訓練するか、戦場の実戦で鍛えることで成長する。訓練では熟練度4までしか上がらないので、最大の6まで極めるには戦場で使い続けるしかない。
ちなみに、このゲームの難易度は「初級」「上級」があるが、その違いはCOMの戦法成功率くらいなものである。初級でもプレイヤー使用時より少し高く、上級だと低熟練度でもほぼ失敗しないインチキ仕様になる。COMの思考ルーチンがアホだから、その補正を取るために成功率が高くなっている…のか?
また戦法以外にも、一部の特技を持つ武将は「混乱」「大喝」などの計略を戦法ポイントに関係なく使える。事前に調略を仕込んでおくと、戦場で「埋伏」「寝返」などの追加計略を使うこともできる。計略の成功率・効果範囲は知力が関わるものが多く、武力はからっきしだけど知力はあるという軍師の活躍どころでもある。
自身が総大将か参軍のときには、軍議において戦場で使う策略を選ぶことができる。策略には味方への「鼓舞」や、敵城への攻撃力が上がる「崩壁」など様々。中には雷を落として大ダメージを与える「落雷」や、住民に反乱をそそのかして城を落とさせる「扇動」など、発動条件が難しいが大成果を期待できる大技も仕込み次第で可能である。
一騎討ち
このゲームでの一騎討ちは負けると即部隊壊滅なので、成功すれば戦局を一変させる可能性を秘めた大技である。一騎討ちを申し込んで断ると兵士が逃げ出したり、相手の士気が上がったりするので、積極的にぶつかりたくない時に敵に嫌がらせするのにも向いている(もちろん一騎討ちで勝てること前提だけど)。マスクデータの「勇猛」が高いと勝手に応じてしまうことがあり、軍師のくせに勇猛最大の徐庶がたまにやらかしてくれる。
一騎討ちは小技(高命中率)か大技(高威力)、気力消費(威力上昇)か温存か、防御か反撃かの3つを選んで相手とぶつかり合う。1ターン消費して気力の回復、挑発や威圧などの特殊行動も取れる。挑発や威圧の効果はかなり高いので、狙えそうな相手であれば狙ってみたい。精神攻撃は基本である。
卑怯にも一騎討ちから逃げることも可能だが、体力が高いほうが逃げやすいので、逃げるつもりなら不利になる前に逃亡連打してるほうがいい。一騎討ちから逃げてもデメリットはないので、断って兵力が減るくらいなら受けるだけ受けたほうがいいかもしれない。
気力を消費して攻撃したとき、時折必殺技が発動することがある。これを当てると大きく体力が削れ、また相手が負傷して武力が落ちる。決まればほぼ勝ったも同然である。相手は1ターン目に必殺技を撃ってくることが多いが、気力消費の反撃にしておけば必殺技も防ぐことができるので、1ターン目は必ず気力を使おう。
頑張れば武力差10くらいまで跳ね返すことも可能なので、ヘボ武将でも番狂わせの大活躍ができちゃったりする。ただし、呂布とはやりあってはいけない。呂布は一騎討ちと戦法にマスクデータ補正がかかっているので、たとえ表面上武力が並んでも絶対に勝てない。呂布とは絶対にやりあってはならない。
三國志VIIIあれこれ
- 劉豹や兀突骨などの異民族武将は出るが、異民族勢力そのものは孟獲勢力以外には登場しない。ただしイベントでは時折登場し、象兵などの特殊兵科を提供してくれる。遠い倭国からも使者がきたりもする。
- 「戦術キャンペーン」という歴史上の決戦を舞台にした、戦闘に特化したモードも存在する。通常のプレイ中とは違って戦場で様々なイベントが発生するのも特徴的である。
- 毎度おなじみの「英雄集結」シナリオも、三國志VIIIで初めて登場している。もちろん全武将でプレイできるが、寿命の概念がないせいか結婚などはできない。
- 于吉や華陀から教わったり、彼らの医術書を手に入れると「医術」の特技を獲得できるが、これを持っていると戦場で「治癒」の計略が使用できる。これが確実に成功するので、後方でひたすら治癒しているだけで知力経験値がモリモリ溜まっていく。
- COMの戦法成功率がおかしいという点こそあるものの、思考ルーチンはいつものコーエーなので、普通に君主プレイしている分には難易度の低いゲームである。弱小勢力でも、放浪を視野に入れれば結構やれる。
- ゲーム中に登場するアイテムを全て手に入れると特典があるのだが、このアイテムコンプリートを阻む壁として知られるのが「銅雀」である。なにせ難しくとも入手手順が決まっている他のアイテムと違い、農地で発生する低確率イベント(発掘品の献上)でしか手に入らない。運と根気がないとなかなか出てこない。
- 新武将エディットにおいて、特定の名前を入れると隠し武将「いにしえ武将」が登場する。岳飛など三国時代より未来の武将もいるけど気にしない。PS2・PSP版だと文字がどこにあるのかわかりにくい武将も多い。
- いずれかの勢力が統一すればエンディングとなるので、在野でもエンディングが存在する。エンディングの分岐条件は身分のほか、名声や悪名、統一勢力君主との人間関係、所持アイテムなどで多岐にわたる。
- 劉姓の君主であれば、後漢王朝を継ぐことも可能。いかにも劉備向けのイベントだが、劉表や劉焉、劉虞などでも可能。匈奴の劉豹や、賊将の劉辟でも継ぐことができるが……それいいのか、漢王朝?
- 所持金が多いと、時折左慈がやってきて寄付を求めてくる。これに応じると特技を伝授してくれるので、特技を集めたい時にとても重宝する。一般ではなかなか難しいが、国庫から金を引き出せる君主でやると左慈に貢ぎたい放題である。
- この記事初版作成以前、「三國志Ⅷ」と機種依存文字を含む表記で書くと、なぜか未作成なはずのこの記事へのリンクが発生する現象が起きていた。詳しくは㌄㍖現象を参照。
関連動画
三國志VIIIを使った動画の代表格と言うと、やはり曹操がプロデュース業を始めたようですのシリーズが一番有名ではなかろうか。このゲームの雰囲気を見るのにうってつけである(曹操から目を逸らしつつ)。
それ以外のプレイ動画。
その他の関連動画。
関連商品
関連コミュニティ
関連項目
- 2
- 0pt