概要
ソフトボールは小学校3年生の頃に友人に誘われて始めたという。間もなく頭角を現し、小学校では県大会制覇、中学校では全国大会制覇を経験。争奪戦の末に地元の九州女子高等学校に進学し、2年生のとき最年少で代表入りした世界ジュニア選手権で優勝。ジュニアとしては別格の球速で「オリエンタルエクスプレス」と称された。一方で3年生のときには体育の走り高跳びでマットを飛び越して地面に落ちてしまい腰椎を骨折、代表候補とされていたシドニー五輪や夏の高校総体出場を断念するという挫折も味わった。
高校卒業と同時に日立高崎に所属。1年目から2試合連続完全試合という離れ業を見せるなど大活躍し、13試合で10勝3敗、防御率0.51という成績で新人賞を受賞。その後2013年まで13年連続防御率0点台を記録するなど、日本女子ソフトボールリーグを代表するスーパーエースとして活躍。2021年現在324試合で236勝50敗、2267奪三振、通算防御率0.64という異次元の成績を残している。試合数や勝利数、奪三振数はぶっちぎりのリーグ最多記録。また勝利数、奪三振数、勝率のシーズン最多記録も保持している。
前述の通りシドニー五輪出場こそならなかったが、プロ入りして以降は一貫して女子ソフトボール日本代表のエースとしても活躍。2002年からアジア選手権5連覇を記録する一方、2002年と2006年の世界選手権は銀、2004年のアテネ五輪は銅と世界一にはあと一歩届かなかった。特にアテネ五輪では決勝進出のかかった3位決定戦で登板機会がないまま敗戦し、絶対的な信頼を勝ち得られなかったことに悔しさを感じたという。
2008年の北京五輪は、この大会を最後にソフトボールが五輪競技から外れるという大一番。上野は予選リーグでは3試合を投げ全試合勝利の成績で、日本は2位で決勝トーナメントに駒を進める。しかし準決勝では上野が延長9回147球を投げ抜くが、最終回に4点を失い敗戦。敗者復活を賭けた同日夜の3位決定戦でも上野が先発し、延長12回タイブレーク、実に171球を一人で投げきり勝利を挙げ翌日の決勝に進む。
決勝では連投の疲労を考慮した監督から球速を出し過ぎないよう指示を受けたが、変化球を巧みに使って4大会連続金メダルを狙ったアメリカ代表を封じ、7回95球で完投勝利。日本ソフトボール史上初の金メダルを勝ち取った。決勝トーナメントでは3試合28イニング、実に413球を一人で投げきっており、プロ野球の大投手稲尾和久の日本シリーズ4連投4連勝になぞらえ「神様、仏様、上野様」と称賛され、「上野の413球」はこの年の流行語大賞で審査員特別賞も受賞した。
北京五輪から13年を経た2021年、東京五輪でソフトボールが競技として復活。39歳になった上野も代表に選出された。予選リーグでは2試合を投げ、両試合とも勝利。日本は2位で予選を通過し決勝に進む(今大会では敗者復活はなく、予選上位2チームが自動的に決勝進出)。アメリカ代表と激突した決勝戦では、奇しくも13年前の北京五輪と同じく日本が上野、アメリカがオスターマンを先発に起用。上野は初回こそピンチを背負ったが無失点で切り抜け、2回以降無安打ピッチング。6回、先頭打者に安打を許し、予選からリリーフとして活躍する後藤希友に交代するが、最終7回には再び上野がマウンドへ(ソフトボールではスタメン選手は交代後一度だけ再出場できる)。上野は最終回を3人で仕留め、13年越しの五輪連覇を達成した。
通算成績
年度 | 登板 | 勝利 | 敗戦 | 勝率 | 投球回 | 奪三振 | 奪三振率 | 防御率 |
2001 | 13 | 10 | 3 | .769 | 79.1 | 87 | 7.68 | 0.79 |
2002 | 17 | 12 | 2 | .857 | 110.1 | 147 | 9.33 | 0.51 |
2003 | 21 | 17 | 3 | .850 | 138.1 | 156 | 7.90 | 0.25 |
2004 | 21 | 15 | 4 | .789 | 132.0 | 157 | 8.33 | 0.37 |
2005 | 20 | 16 | 3 | .842 | 139.1 | 186 | 9.35 | 0.40 |
2006 | 19 | 13 | 4 | .765 | 117.1 | 159 | 9.49 | 0.36 |
2007 | 19 | 13 | 3 | .813 | 114.2 | 141 | 8.61 | 0.43 |
2008 | 22 | 18 | 2 | .900 | 141.1 | 153 | 7.58 | 0.54 |
2009 | 19 | 14 | 4 | .778 | 118.0 | 133 | 7.89 | 0.77 |
2010 | 17 | 12 | 2 | .857 | 96.1 | 116 | 8.46 | 0.51 |
2011 | 13 | 11 | 1 | .917 | 81.0 | 81 | 7.00 | 0.60 |
2012 | 19 | 13 | 3 | .813 | 110.2 | 126 | 7.97 | 0.38 |
2013 | 18 | 15 | 2 | .822 | 99.1 | 126 | 8.88 | 0.42 |
2014 | 13 | 8 | 4 | .667 | 72.1 | 81 | 7.84 | 1.55 |
2015 | 18 | 10 | 3 | .769 | 97.0 | 99 | 7.14 | 1.08 |
2016 | 11 | 8 | 2 | .800 | 561. | 60 | 7.46 | 1.49 |
2017 | 17 | 13 | 0 | 1.000 | 100.0 | 100 | 7.00 | 0.56 |
2018 | 13 | 10 | 2 | .833 | 68.1 | 85 | 8.71 | 0.82 |
2019 | 7 | 5 | 1 | .833 | 35.2 | 37 | 7.26 | 1.37 |
2020 | 7 | 3 | 2 | .600 | 34.0 | 37 | 7.62 | 2.26 |
通算 | 324 | 236 | 50 | .825 | 1939.1 | 2267 | 8.18 | 0.64 |
MVP:8回
最優秀投手賞:6回
最多勝利投手賞:8回
ベストナイン:6回
「この数字で防御率トップじゃないのか」と思われるかもしれないが、女子ソフトボールでは毎年のようにシーズン防御率0点台が出ており、過去にはシーズン防御率0.00という選手もいたほどである。したがって通算でも防御率0点台という投手は非常に多く、2020年現在上野の通算防御率はリーグ公式サイトで17位という位置づけである。だが、上野より上位にいる投手はほとんどが通算100試合にも満たない選手ばかりなので、21年間現役であり続けながら通算0点台という上野の成績はやはり飛び抜けたものである。
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関連項目
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