下町ロケットとは、池井戸潤作の小説及びそれを原作とするテレビドラマ・ラジオドラマのタイトルである。
概要
研究者の道を諦め中小企業の社長となった男が社員たちと共に夢に向かって挑戦し続ける姿を描いた小説である。
小学館発行の「週刊ポスト」にて2008年4月から連載され、2011年11月に単行本化がされた。第145回直木三十五賞受賞作品、及び第24回山本周五郎賞候補作品となっている。また2015年10月から朝日新聞にて続編が連載され、こちらも「下町ロケット2 ガウディ計画」のタイトルで単行本化された。その後は2018年7月に「下町ロケット ゴースト」が2018年9月に「下町ロケット ヤタガラス」がそれぞれ単行本として刊行されていることから、シリーズの息の長さを窺うことができる。
2011年にはWOWOWにて連続ドラマ化され、2012年にはTBSラジオにてラジオドラマにもなった。そして2015年10月にTBSの日曜劇場にて再度のドラマ化が行われた。同作者原作の人気ドラマ「半沢直樹」を手掛けたスタッフらが本作も担当している。
TBS版は2部構成となっており、第5話までが第1部「ロケット編」、第6話以降が第2部「ガウディ編」となっている。TBS版はWOWOW版以上に人気を得たらしく、2018年にはスタッフを再度結集してシーズン2が制作。こちらは第1部を「ゴースト編」、第2部を「ヤタガラス編」として放送する予定である。
あらすじ
かつて新型ロケット「セイレーン」のエンジン開発者だった佃航平は打ち上げ失敗の責任を取り、宇宙科学開発機構を退職、父が遺した精密機械製造業の中小企業「佃製作所」を継ぐ。
佃は研究開発に力を尽くすが、それによって取得した特許の中には実用性に乏しい「死蔵特許」もあり、銀行からはガラクタ同然と馬鹿にされる。社内でも利益に繋がらないものばかり生み出し続ける佃の方針に疑問の声を挙げる者もいた。
ある日、主要取引先の「京浜マシナリー」からの取引終了を一方的に通知され、資金繰りに困るようになる。さらに追い打ちをかけるようにライバル会社「ナカシマ工業」から特許侵害で訴えられ、その影響でメインバンクの白水銀行からは融資を断られ倒産の危機に追いやられる。
そんな時、純国産ロケットの開発を推し進める「帝国重工」の宇宙航空部長・財前道生が佃製作所の持つ特許を20億で買い取りたいと持ち掛けてきた。帝国重工は新型の水素エンジンの開発に成功したが、その要とも言えるバルブシステムの特許が佃製作所によって先を越されていたのだった。
倒産寸前の佃製作所にとっては喉から手が出るほど欲しい金額だったが、その技術に自身の夢を馳せる佃は思い悩む――――――。
主な登場人物
キャストは 地上波テレビドラマ版/WOWOW版/ラジオドラマ版 の順に記載。
佃製作所
佃 航平(演:阿部寛/三上博史/風間杜夫)
佃製作所社長。元宇宙科学開発機構の研究員。研究所を退職後、父の死に伴って佃製作所を継ぐ。
研究開発で業績を伸ばすも、ロケットエンジン開発の夢を捨てきれず、会社でバルブシステムの開発を行っている。しかし、その費用がかさみ経営を圧迫していることから営業チームからはあまりよく思われておらず、経理部長の殿村からも開発をやめることを打診される。
殿村 直弘(演:立川談春/小市慢太郎/鶴田忍)
経理部長。白水銀行から出向している。
真面目だけが取り柄だが、不器用な性格で社内からはあまり信用されていない。
山﨑 光彦(演:安田顕/松尾諭/勝村幸太)
技術開発部部長。
3度の飯より実験が好きという根っからの研究者。自身が関わる研究には熱弁を奮うことも多い。
津野 薫(演:中本賢/光石研/根本泰彦)
営業第一部長。
佃を信頼し、その方針に従って営業第一部を引っ張るベテラン社員。
唐木田 篤(演:谷田歩/―/新木啓介)
営業第二部長。第一部長の津野をライバル視している。
合理主義者であり、佃の研究開発型の経営方針に反発している。
江原 春樹(演:和田聰宏/池内博之/金成均)
経理部の若手社員。
資金圧迫の原因となっている佃の研究開発を快く思っていない。
若手社員のリーダー的存在。
迫田 滋(演:今野浩喜/―/梶野稔)
営業第二部の若手社員。
江原と共に若手社員のリーダー的存在であり、社長の経営方針に意見することも多い。
埜村 耕助(演:阿部進之助/―/―)
技術開発部の若手社員。
ロケットエンジンのバルブシステムの開発の中心となっている。若手技術者たちのリーダーであり、その技術と冷静な判断力は社内でも高く評価されている。
真野 賢作(演:山崎育三郎/綾野剛/今井朋彦)
技術開発部の若手社員。
会社の収益が研究開発費ばかりに回され、自分たちの待遇改善に繋がってないことを不満に思っており、後にある出来事をきっかけに佃製作所を退社する。
ガウディ編では北陸医科大学の研究員として登場。佃製作所の技術力を見込んで佃をガウディ計画に誘う。
立花 洋介(演:竹内涼真/―/―)
技術開発部の若手社員。ガウディ編からの中心人物となる。
冗談も言えないほど生真面目な性格だが、それ故に開発でも手抜きがない信頼性があり、その点を買われて若くしてガウディ開発チームのリーダーに抜擢される。
軽部 真樹男(演:徳重聡/-/-)
技術開発部のエンジニア。ゴースト編から新たに登場。
技術者としての腕は確かだが、愛想がなくマイペースな振る舞いをするため立花とは衝突が絶えない。
帝国重工
財前 道生(演:吉川晃司/渡部篤郎/橋爪功)
帝国重工の宇宙航空部開発担当部長。
佃製作所の特許技術の存在を知り、特許買い取りを持ち掛ける。
父親は町工場のワンマン社長であり、その反発心から大企業である帝国重工に入社した。
父と同様に開発中心の経営をする佃をあまり快く思っていなかったが、佃製作所の技術力の高さに感嘆し、佃を支援するようになる。
富山 敬治(演:新井浩文/眞島秀和/益岡徹)
宇宙航空部宇宙開発グループ主任。新型水素エンジンの開発責任者。
大企業の自分たちよりも先にバルブシステムの特許を取得した佃製作所に強い対抗意識を持つ。
また出世欲も強く、「ポスト財前」の座を狙っている。
浅木(演:中村倫也/忍成修吾/中原果南)
帝国重工の若手技術者。
誠実な性格で佃製作所の技術力の高さを素直に認めている。
原作ではフルネームが存在せず、地上波版では「浅木捷平」、WOWOW版では「浅木誠一」となっており、ラジオドラマ版では「浅木奈津美」という女性になっている。
石坂 宗典(演:石井一孝/―/―)
ガウディ編から登場。宇宙航空部調達グループ部長。
財前をライバル視しており、椎名と手を組んでサヤマ製作所とのロケットエンジンの共同開発を進め、佃製作所の排除と財前の失脚を狙う。
水原 重治(演:木下ほうか/升毅/服部演之)
宇宙航空部本部長。
藤間社長の「キーデバイスの内製化」の方針を重視し、佃の特許の買い取りを財前に命じる。
藤間 秀樹(演:杉良太郎/田村亮/―)
帝国重工社長。
自社生産のロケットを打ち上げる「スターダスト計画」を推し進めている。
経団連次期会長の座を視野に入れている。
的場 俊一(演:神田正輝)
帝国重工取締役で次期社長候補。ゴースト編から新たに登場。
ロケット開発計画に懐疑的で、藤間や財前を追い落とそうとする。
伊丹の退社の原因を作った人物でもある。
ガウディ編からの主要人物
椎名 直之(演:小泉孝太郎/―/―)
サヤマ製作所社長。NASA出身であり、父親が遺したサヤマ製作所を継いだ。
徹底した実力主義者で佃製作所をライバル視し、ロケットエンジンバルブや人工心臓「コアハート」の開発取引を横取りしようとする。
中里 淳(演:高橋光臣/―/―)
サヤマ製作所開発部の技術者。
元は佃製作所の技術者として働いていたが、自分の努力がなかなか報われない会社に不満を持って退社し、サヤマ製作所にヘッドハンティングされる。
サヤマ製作所ではコアハートのバルブ開発を任されるも、その過程でサヤマの抱える問題に直面する。
一村 隼人(演:今田耕司/―/―)
北陸医科大学教授で心臓外科医。高い技術力を持つ一流の外科医で「ゴッドハンド」と呼ばれる。
元は貴船の弟子だったが、人工心臓「コアハート」のアイディアを貴船に横取りされた過去がある。
その後真野と共に人工心臓弁「ガウディ」の開発を取り組み、佃製作所に協力を申し出る。
桜田 章(演:石倉三郎/―/―)
株式会社サクラダ社長。真野・一村と共にガウディ開発に携わり、人工心臓に取り付ける特殊繊維の開発を担当する。
心臓弁膜症で娘を亡くした過去があり、その無念からガウディ開発に心血を注ぐ。
貴船 恒広(演:世良公則/―/―)
アジア医科大学の心臓血管外科部長。日本の心臓外科医ではトップクラスの実力者とされる。
自分の出世のためには手段を択ばない汚い性格で、一村が考案した人工心臓「コアハート」のアイディアを横取りし自分の手柄とした。さらにはガウディ計画をも乗っ取ろうと画策する。
ゴースト編からの主要人物
伊丹 大(演:尾上菊之助/-/-)
ベンチャー企業「ギアゴースト」の社長。
元は帝国重工社員で機械事業部に所属し事業企画を担当していたが、「帝国重工の墓場」と言われる総務部へと異動させられ、そこで出会った島津と共に帝国重工を退社し「ギアゴースト」を設立する。
島津 裕(演:イモトアヤコ/-/-)
「ギアゴースト」の副社長。
元は帝国重工の機械製造部に所属し、天才エンジニアとして活躍していたが、伊丹と同じく総務部に異動させられ、後に退社。伊丹と共に「ギアゴースト」を設立する。
重田登志行(演:古舘伊知郎/-/-)
小型エンジンメーカー「ダイダロス」の社長。
品質よりも安さを重視することで新規の顧客を取り込み急速に業績を伸ばしている。
「エンジンは動きさえすればいい」と、佃製作所とは正反対の方針を打ち立てている。
その他の人物
佃 利菜(演:土屋太鳳/美山加恋/若山詩音)
佃の娘。原作では中学生だが、地上波ドラマ版のみ高校生になっている。
研究開発に熱中して周りを振り回す父に反発している。
和泉 沙耶(演:真矢ミキ/水野真紀/平淑恵)
佃の元妻で宇宙科学開発機構の研究者。佃とは大学のテニスサークルの頃からの付き合い。研究者の道を諦めてしまった夫と反りが合わなくなってしまい離婚した。ナカシマ工業の訴訟に苦しむ佃に神谷弁護士を紹介する。
三田 公康(演:橋本さとし/佐藤二朗/―)
ナカシマ工業事業企画部法務マネージャー。
佃製作所を特許侵害で訴えるが、その狙いは佃製作所を買収してその技術力を手中に収める事。
中川 京一(演:池畑慎之介/小木茂光/-)
田村・大川法律事務所所属の弁護士で、ナカシマ工業の顧問弁護士を務める。WOWOW版では名前が「大川京一」に変更されている。神谷の元上司。
技術系の企業法務の分野では名の知れた弁護士で、卓越した法定戦略で多くの中小企業を破滅に近い形で追い込む。陰湿極まりないやり口から、佃からは「ヘビ野郎」と呼ばれている。
神谷 修一(演:恵俊彰/ー/渡辺徹)
ナカシマ工業顧問の田村・大川法律事務所から独立して事務所を構えている弁護士。
沙耶の紹介で佃製作所の弁護を担当する。知財関連のエキスパート。
WOWOW版では「神谷涼子」という女性に変更された。(演:寺島しのぶ)
佃 和枝(演:倍賞美津子/長内美那子/―)
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