「『じゃんぼ』は醤油味のたれをからめたやわらかい餅である。ひと口大の餅に、割り箸を二つ折りにしたような箸が二本差してあるので、二本棒つまり『リャン棒』がなまったものだと、解説好きの父が食べながら教えてくれた。」
「海に面した貸席のようなところに上り、父はビールを飲み、母と子供たちは大皿いっぱいの『じゃんぼ』を食べる。このあと、父は昼寝をし、母と子供たちは桜島を眺めたり砂遊びをしたりして半日を過すのである」
概要
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もち米や上新粉で作った楕円状のお餅・団子に竹串を二本指して、上からとろみのある甘い砂糖醤油のたれをかけて食べる、鹿児島県伝統の和菓子。
少し素焼きにしてあるため焦げを感じる餅の風味と、甘じょっぱいタレのマリアージュがたまらない。
県内では一年を通して食べられており、県外からのお客さんへのお持て成しにもピッタリなため見かける機会は多い。
両棒と書いて「ぢゃんぼ」、または「じゃんぼ」と読むが、別に対して大きくはない。中国語の二(りゃん)が訛ったものだとされ、両棒は二本の竹串を刺した様子が上級武士が刀を二本差しにしているようだから名付けられたと言われている。
今は鹿児島市に吸収合併された谷山市辺りが発祥だとされる。南北朝時代、後醍醐天皇の子である懐良親王が谷山城に滞在した際、谷山城主谷山隆信自らが餅を作り、そこに串を二本刺し、味噌と黒砂糖を煮つめたたれをかけて出したところ、料理の名を尋ねられ、とっさに「両棒(じゃんぼ)」と言ったのが始まりだという逸話がある。江戸時代に入ると、谷山から薩摩藩主島津氏に献上されるようになり、じゃんぼ餅の存在が鹿児島全域に広まっていったというもの。
天保六年(1853年)に江戸から鹿児島を訪れた講釈師の伊東陵舎が書き記した『鹿児島風流』には両棒餅に形がよく似た「五文餅」なるものが紹介されており、これが原型だという説もある。
記事冒頭の文章は直木賞作家である向田邦子が著書『父の侘び状』内に収録されている「細長い海」に記したもの。両棒餅は、親が頻繁に転勤を繰り返すため明確な故郷を持たない向田が「故郷もどき」と表現する鹿児島の思い出の味だったのであろう。
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