両津勘吉(りょうつ かんきち)は、秋本治の漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の主人公。通称両さん。
名前関係では公務員の副業禁止対策に「浅草一郎」という別戸籍名を取得した他、多数の芸名や異名を持つ。シドニーオリンピックの缶けりでは両津勘吉と書いて「トウキョウトッキョキョカキョク」と読ませていた。
概要
警視庁新葛飾署(140-8以前は葛飾署)地域課所属で、亀有公園前派出所に勤務する原始人警察官(話によってノサップ岬派出所、銀座派出所、さいはて署などに異動となる事も。主に不祥事で)。階級は巡査長。
一人称は基本的に「わし」で時々「俺」、連載初期は「本官」とも言っていた。大原部長や屯田五目須署長など上司らには「わたし」あるいは「わたくし」を使い、ピンチの時には「僕」とか「僕ちゃん」と言ってごまかす。気の弱そうな人間(本田など)には「俺様」や「両津様」。
誕生年は連載初期こそ設定されリアルタイムに加齢していたが、想定外の長期連載により破たんし、今では死に設定と化した。誕生日は3月3日。「桃の節句=女の子の祭り」というイメージギャップもあるが、本人は毎年嫌な出来事が起こる謎現象のほうを強く嫌っている(アニメでは雛人形の呪いという設定)。
超長期連載にもかかわらず、主役として全キャラで唯一全話出演を継続中(2016年現在)。両津以外でただ一人連載開始から登場していた中川ですら出番のない回はある。
外見
角刈りで無精ひげを生やし、極太のつながり眉毛がトレードマーク。連載初期は作風が劇画調で眉も今ほど太くなかったが、長期連載による作画変化で、ギャグマンガらしい現在のデフォルメ顔に落ち着いた。
制服や装備一式は未だに旧型(現実の警察が1994年に制服デザインを変更した際に漫画側も同調したが、両津自身がダメにした)。制帽は滅多にかぶらず袖は腕まくり。足は靴も靴下もはかず常に便所サンダル。
体格は胴長短足の日本人体型。身長の設定は一時期作者の身長を設定していたり矛盾を解消するために一気に縮んだりなどコロコロ変わる。最終的には現実の警察の男性身長制限である160センチ前後に落ち着いた。
能力・性格
人並みはずれた怪力とゴキブリ並みの生命力を兼ね備えており、大爆発など痛い目にあっても無傷で(中川は人間ターミネーターと評した)、万が一ケガをしても次回で必ず回復している。連載30周年記念の超こち亀では、ドラゴンボールとのクロスオーバー漫画でフリーザにエネルギー弾を撃たれるも、ギャグ漫画補正により一瞬で完治した。あまり知られていないが、実は男性に珍しいナイチンゲールである(999巻参照)。
短気で破天荒かつ型破り。いつも大原に怒鳴られている(場合により殺されかける)署一番の問題児。一般教養に欠け、物覚えが悪い、自分で読めないほど字が汚い、不潔など、警察官なのに知性に欠ける。
独自の商品アイデアや宣伝手法など商才に優れるが、反面お金への執着が非常に強く、小銭や紙幣、あげくの果てには署員旅行の積立金等に手を出す事もある。お金が絡むと欠点すら克服する事もあるが、大原にその性格を利用され捕まえられたりはめられる事も少なくない。また各方面に借金があり、損害賠償などを含めた借金総額は1663兆2928億5903万885円と個人のレベルをはるかに超えて一国の財政レベルである。プラモ屋店主を始めとする商店街の人々とのボーナス争奪戦は夏と冬の風物詩。
とはいえ、ただの問題児というわけではなく、犯人検挙率の高さを買われて刑事課に転属されたり(程なく元の派出所勤務に戻ったが)、子供やお年寄りを始めとする困った人を助ける面倒見の良さなど(知性や倫理的な問題を除けば)警察官としての実践能力はむしろ優秀な方である。実際、近年のエピソードで、愉快犯による爆破予告事件をデジタルカメラの写真から居場所まで完璧に突き止めるという、探偵ドラマ顔負けの名推理であっという間に解決に導いたことがあり、大原や屯田も驚いていた。
体内にはリョーツGPXという最強の抗体を持っており、あらゆる病原体を駆逐してしまう。ただし、強力過ぎて一般人には投与出来ない。
趣味
非常に多趣味で、ギャンブル全般(特に競馬)や飲酒、サバイバルゲームやテレビゲーム、模型製作など多岐にわたる。一般教養や記憶力はないのに趣味知識に限っては異様に豊富で幅広く、職業を勘違いされることも多い。今はギャンブルをせず、超神田寿司に缶詰状態。
連載初期はヘビースモーカーだったが、現在は禁煙し全く吸わない(成金の演出に使うことはある)。
人間関係
派出所
中川圭一
後輩・部下の巡査で、彼が1話(アニメは2話)で派出所に配属されて以来の付き合い。両津を「先輩」と呼び敬語で話す(が、最近は両津にキレると稀に「角刈り」呼ばわりする)。
両津と並ぶ超問題児だった初期の性格は連載を重ねるにつれ鳴りを潜め、今では(特に大原から)問題児の両津・優等生の中川といった比較をされやすい。だが前述の蔑称からもわかる通り、最近は初期の性格に回帰するような描写が時々見られ、両津に対し金持ちを鼻にかけた発言や冷たい態度が増えている。
秋本・カトリーヌ・麗子
同じく後輩・部下の巡査だが、敬語は使わず「両ちゃん」と呼ぶなど常時ため口。女性警察官の評判が最悪な両津に理解を示す数少ない異性で、中川同様関係は比較的良好。稀に恋愛を意識する描写もあり、麗子が誘拐された時には麗子の父の依頼で結婚話にまで発展したが、資産目当てな両津の発言に麗子が怒り破談した。
中川と麗子は両津の友人ともいえる関係だが、両津に人間キャッシュカード扱いされて大金を貸している。
大原大次郎
派出所で唯一階級が上の巡査部長。両津が卒配で葛飾署に来て以来の永遠の天敵腐れ縁上司。毎日のように叱られているが険悪な関係ではなく、お互いの事をよく理解した信頼関係にある。几帳面でチェックが完璧な大原を両津が認めているエピソードも少なくない。とはいえ、両者負けず嫌いな性格で、時に子供じみた喧嘩に発展する。
付き合いが長いわりに、両津は大原の一人娘ひろみの存在を知らなかった。
また、両津に金の扱いや趣味に対して注意する描写が多い一方で、逆に自身の趣味に対するこだわりが行き過ぎて両津や中川を困惑させることも。
麻里愛(通称:マリア)
偶然出会った両津にベタ惚れして警察官になり、交通課巡査として派出所に来る。呼び名の「マリア」は両津の当て読み。両津を「両さま」と呼び、両津も最初本気で結婚を考えたが、男と判明してからは断り続けている。が、後にマリアは双子の妹「稟(りん。通称マリリン)」の体を魔法でコピーしてもらい、本物の女の体を得てしまう。
アニメでは出会いや経歴が異なり、自らマリアを名乗る、両津がキックボクサー時代のマリア(麻里竜二)のファン、など設定が大幅に変更。性別も最後までニューハーフで、男を演出するのに褌姿が多用された。
丸井ヤング館(旧名:寺井洋一)
同僚の巡査で、両津を「両さん」と呼びため口で話す。だが気弱な性格故、常に両津が強気に出る。改名の話も、両津が強引に進め成立してしまった。最初期からの古参なのに、彼の補欠員で登場した麗子に出番を奪われた挙句、改名されて以降は出番自体が消滅した不幸な人。一方、アニメではなぜかやたら出番がある。
親族
両津家
銀次
父。浅草で佃煮屋を営む江戸っ子気質で、勘吉の人格の基礎は銀次から受け継いでいる。
よね
金次郎
弟。兄とは真逆で、弁護士になるくらい頭はいいが運動は苦手。中川家の遠い親戚と結婚している。
擬宝珠家
纏
勘吉のまたいとこで交通課勤務。男っぽい口調や性格だが、一時期勘吉と結婚しそうになった(二人が親戚と判明するなど色々あり、結局婚姻には至らず)。
檸檬
纏の年の離れた妹で、勘吉を「カンキチ」と呼び慕うツインテール幼女。幼稚園児なのに語尾に「~じゃのう」など老人口調を用い、時代劇や歌舞伎を好む。味覚は業界随一、将棋はハンデありで勘吉を圧倒する。
蜜柑
纏と檸檬の妹で末っ子の三女。まだ言葉はほとんど話せず、兄妹で唯一髪が黒くない。
憂鬱
夏春都(ゲパルト)
纏たちの祖母にして超神田寿司の実質的な経営者。旧姓は両津で銀次の叔母に当たるが、両津家(の男)を嫌い勘吉のことも「バカ吉」と呼んでいた。現在は店の売り上げを激増させた勘吉をある程度認めている。
キャスト
テレビアニメ(2016年版含む)の声はラサール石井。初期の少年時代のみ田中真弓だったが、後にラサールへ統一された。1985年のイベント用アニメとゲーム「ファミコンジャンプII 最強の7人」のCMは内海賢二。
実写版は、1977年の実写映画をせんだみつお、舞台をラサール、テレビドラマと2011年の映画を香取慎吾がそれぞれ演じている。2016年秋の舞台はラサールが脚本も兼ねる。
原作者の秋本はドラマ版の両津にもラサールを推薦していたが、様々な事情から結果的に香取になり、ラサールは父・銀次役として出演した。ちなみに、香取の両津はなぜか眉毛がつながっていない。
関連動画
関連項目
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