中距離多目的誘導弾(Middle range Multi-Purpose Missile、MMPM、通称 中多)とは、陸上自衛隊が運用する対舟艇・対戦車ミサイルである。陸自の開発コードとしてはXATM-6という名称もある。
概要
87式対戦車誘導弾及び79式対舟艇対戦車誘導弾の後継として普通科部隊に配備される。目標捜索はミリ波と赤外線を用いる。熱源を持つ目標に対しては赤外線画像誘導弾を、熱源を持たない目標にはレーザーセミアクティブ誘導弾を使用する。同時多目標交戦、夜間交戦能力もうたわれている。[1]
移動用の車体には毎度お馴染み高機動車を採用し、その荷台に発射器とレーダーなどの誘導システムがのっている。そのためこの一台だけで十分攻撃が可能である。
誘導弾の装弾数は6発。誘導方式は01式軽対戦車誘導弾の物を応用した赤外線画像誘導と、セミアクティブ・レーザー・ホーミングを併用した第三世代方式である。これにより中MATや重MATでは不可能であった、ミサイルを撃ったあと発射器からの誘導が必要ない撃ちっぱなし能力を得た。
二種類の誘導方式を併用しているため、戦車のような熱を発する目標には赤外線画像誘導で、建築物やエンジンをかけていない車両といった熱を発しない目標に対してはレーザーホーミングと目標を選ばず攻撃が可能である。レーザーホーミングは命中まで目標にレーザーを照射する必要があるが何も自分自身がレーザーを照射する必要は無く、別の中多や航空機、あるいは照射装置を持った自衛隊員による誘導でもよい。また未確認だが発射後ロックオンも可能であるといわれている。なお多目標の同時対処能力にも優れている。実際に総合火力演習にて1秒の間を空けて誘導弾を3発連射し、全弾目標に命中させるという芸当を披露している。
まさに多目的の名前の通り何でもできるミサイルと言っていいだろう。
なおそのお値段だが初期は1ユニット約4.5億円に達した。高性能なミサイルゆえにどうしても高くつくが、MPMSの1ユニット約20億円と比べれば遥かに安い。また名前が示す通り正式採用ではなく部隊承認の形で配備されているため、安くて優秀な民間の部品を使った改良が容易なためこれから値段が下がる可能性もある。今のところ年間10台ちょっとずつ配備され、2013年現在57ユニットが配備されている。
また2014年度からは調達数が18ユニットとかなりの増大を見せ、総調達費71億円。つまり単価4億円以下と相応のコストダウンにも成功している。重装備の北海道、九州への集中配備方針。そして高機動車1台で完結しうるコンパクトさなどもあり、今後の戦闘職種部隊の精密支援火力として期待されている。因みに誘導弾の操作に関してだが、朝霞駐屯地に展示してある試作車では、操縦席に民生ノートPCを原型とした端末が備えられ、これを用いる模様である。
開発経緯
陸上自衛隊ではいままで87式対戦車誘導弾(中MAT)を普通科の対戦車連隊の主力兵器としていた。この中MATは第2.5世代型の対戦車ミサイルであり発射器から多少離れていても可能ではあるが、命中までレーザーを照射し続けている必要があった。そのため中距離多目的誘導弾は旧式化した中MATを置き換えるべく2004年から開発が開始した。しかしこれとは別にある問題が発生していた。
それは79式対舟艇対戦車誘導弾(以下、重MAT)を置き換えるはずだったMPMSがさっぱり配備が進まなかったのである。確かに非常に高性能なMPMSではあったが、そのユニットの低い自己完結性、20~25億円という高いユニットの価格から配備は遅々として進まず全国の旧式な重MATは依然として主力という有り様だった。
そこでついでならばといった感じで中MATと重MATをまとめて置き換えるために中多は開発を続けられた。
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関連項目
脚注
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