予祝とは、以下の意味を持つ。
- 豊作や子だくさんを願ってそうなるように予め祝う神事、祭り、呪術。
- 元プロ野球選手・矢野燿大の蔑称。阪神タイガースそのものを指すことも。
- プロ野球選手・辰己涼介の蔑称。
- 名古屋鉄道が2025年に行ったエイプリルフール企画の蔑称。
1の概要
古来から、日本にはあらかじめ期待する結果を模擬的に演じると、実際にその結果が得られるという考えがあった。そのことから、豊作や大漁・子だくさんなどを予め祝うことによって、豊作などを祈願するという行事・神事が日本には存在し、それらのことを予祝と呼んでいる。いわば験担ぎのようなものである。
例えば、福岡県豊前市の国玉神社で行われているお田植祭りは、まだ田植え前の3月に行われる祭りであるが、その内容は種まきや田を耕すなどの一連の農業の作業を演じるものである。これは、未来の農作業を演じることによって豊作を祈願するという予祝行事なのである。
その他、粟や稗の衰退によって現在では行われなくなったが、かつては東日本では粟や稗が豊作になって垂れている様子を木の枝で再現したり、小正月に神棚や屋外、神社に飾ってあらかじめ粟や稗の豊作を祝う「粟穂稗穂」があった。東北地方でも、庭先で田植えや収穫を演じ豊作を祈る「庭田植え」という行事があり、現在も行われている。
・・・このように、予祝は神社などでも行われるれっきとした神事・祭り・伝統行事であって、スピリチュアルや新興宗教のものではないのだが、一部のスピリチュアルなどの信奉者などによって語られることもある。なので、そのような分野のこととして語られたり、引き寄せの法則などと結びつけられて「〇〇を〇〇すると願いが叶う」などと予祝に似たおまじないのようなことを行うよう言う場合もある。(よくあるのは、紙に願い事をもう叶った体で書くなど)
2の概要
この言葉を良くも悪くも有名にしたのが、2019年より阪神タイガース監督に就任した矢野燿大であろう。
2021年まで
矢野は二軍監督時代から予祝に傾倒していたが、試合前に選手の活躍予想を書いたりシーズン前から優勝を前祝いする、シーズン中に優勝旅行について語るなど、本来の意味からややかけ離れた思想を持っていた。これらの思想は個人的な親交がある予祝メンタルトレーナーに影響を受けたとされる。とはいえこの時点では在阪マスコミの空騒ぎに通じるところもあり、矢野の指導を受けた選手が好成績を残したことや監督としても3年連続Aクラスを達成、「矢野ガッツ」とも呼ばれる積極的に選手を鼓舞する姿勢が好意的に受け止められ、「マスコミ受けも上手いポジティブ思考のおっちゃん」との見方が一般的だった。
2022年
前年の歴史的V逸でたがが外れてしまったのか、矢野は春キャンプ前日に退任を表明。一軍監督就任から3年経つと選手にも浸透しており、サプライズでキャンプ中に胴上げが企画・実行される(後述)。矢野もこれに応えて外部から講師を招いて数時間の予祝セミナーを連日開催、勝利を願って試合前の「予祝ハイタッチ」も取り入れられるなど、明らかにおかしな方向へ向かっていく。これらの予祝も虚しく阪神は開幕から記録的なペースで黒星を積み重ね、徐々に批判の声が集まり始めていた。
4月15日、NPBワースト新記録の勝率6.3%(1勝15敗)・6連敗に沈む阪神は読売ジャイアンツを本拠地・阪神甲子園球場で破り、漸く長いトンネルから抜けた。鮮やかな逆転勝利に全国の虎党が湧いた…のだが、試合後のインタビューで矢野が取った行動に注目が集まる。
「ちょっと時間大丈夫ですか?あの~今日僕の友達の文字職人の○○(当記事では伏せている)さんに今日来ていただいて、365枚ある札の中から、漢字を一文字引き当てるんですけど、僕がチームにイメージしながら引いたのが、「波」という字でした(後略)」
と徐に「文字職人」の書いた色紙を取り出し、感謝を述べると共に作品に込められた内容や予祝の大切さについて説明し始めたのである(この文字職人や前述のメンタルトレーナーは事実上の新興宗教団体に所属している)。選手への労いやファンへの感謝よりも先に予祝関連の話を持ち出したことで一気に胡散臭さが増した他、試合前の円陣で選手にも色紙を披露していたこと・翌日には自作の色紙をこれまた選手に披露していたことが判明。チーム全体がスピリチュアル方面へ向かいつつあることはプロ野球ファンを震撼させた。
予祝コピペ
キャンプ中の胴上げについて。コピペとして使われることが多いが実話である[1]。
西勇「僕は予祝を持ってきました。ルーキー、桐敷、意味分かるか?」
桐敷「…」
西勇「未来の姿を先に喜び、祝ってしまうことで現実を引き寄せることを予祝と言います。みんな予祝で、ただ一つできてないことがある。分かる?テル、馬場」
西勇「糸井さん、分かりますか?」
糸井「一つしかないやないか!優勝に向けて練習してるわけでしょ。でもこれは練習してないと思うねん(Tシャツに書かれた『胴上げ』の文字を見せ)今から監督を胴上げしようかなと思います。いいですか?これは予祝です!」
とりわけ「ルーキー、桐敷、意味わかるか?」がコピペとして使われることが多く、桐敷拓馬が毎回困惑させられている。この影響で桐敷がブレイクした翌23年以降も「ルーキー桐敷」と呼ばれることがある。
なお企画者の西は31歳・糸井は40歳のベテラン。糸井はこの年限りで引退した。
その後
阪神は4月下旬にやっと安定して勝てるようになると、交流戦で勢いに乗り最下位を脱出。8月初旬までは勝ち続け一時は2位に浮上したが、その後は失速し3位に終わる。クライマックスシリーズでもファイナルステージで敗退。矢野はやや不本意な形で宣言通りチームを去ることになった。なお、騒動以降色紙が公の場に姿を現すことはなかった。
同年はソーシャルゲーム「ブルーアーカイブ」が大ブレイクしたが、公式がYouTubeショートで投稿していた「先生、ちょっとお時間いただけますか?」シリーズの語感が矢野の「ちょっと時間大丈夫ですか?」に酷似していたため蒸し返され、2019年にNHK大阪放送局「かんさい熱視線」で矢野が特集された際の1シーン「試合結果 あらかじめ書く」が何故か2025年になって大流行、また蒸し返される事態となった。更に文字職人に感謝を述べた会見での1フレーズ「誠司さんありがとうございます」は、他球団で誠司と名の付く選手が活躍した際にやはり蒸し返され、遂にはパ・リーグTVでも取り上げられる事態となった。矢野先生のマインドは虎党の心に何時までも残り続けるのである。
補足
矢野は毀誉褒貶の激しい指導者で上述のカルト染みた言動や行動は勿論のこと、采配に於いてもドラマ性を優先したり[2]柔軟性を欠いた試合が散見され、特に2021年の歴史的V逸の原因として語られることが多い。またスーパーサブのみならず主力選手までも複数のポジションを守らせた結果[3]、選択肢は増えたものの在任中に拙守が改善されることはなかった。どちらかと言えばモチベーターとして優れており、高齢化が進み着任前年は最下位と暗黒期一歩手前だった阪神を1度もBクラスに落とすことなく完走したため、「チームを立て直す実力があり火が付くと止められないが、逆に少しでも綻びが出るとズルズルと後退してしまう」再建期には打ってつけだが勝負師とは言い難い指導者だったと言える。
他方、前任者と同様にプロスペクトを見抜く能力には非常に優れ、湯浅京己・中野拓夢・村上頌樹・石井大智・桐敷など後の日本一メンバーを下位指名から次々掘り当てている。
本人が語る
あの試合から丁度4年後となる2026年4月15日、当事者である文字職人の杉浦誠司氏が自身のYouTubeチャンネルで当時の実態を明かした。
文字職人 杉浦誠司の 『夢ありがとうチャンネル』【実話】言葉の力を信じた人に巻き起こる、嘘のような奇跡の数々!!
それによると杉浦氏は球団の要請(恐らく矢野)で甲子園に呼ばれ、二軍の選手や通訳なども含めた約75人分の色紙を書いたという。それだけ当時の阪神が切羽詰まっていたことが窺えるが、球団幹部からは
我々が呼んでおいてこんなことを言うのは大変申し訳ないんですけど...今、連敗が続いておりまして、試合前にこういうことをやっているということが表に出ますとメディアは好きに書かれますし、マスコミも変に報道されたりとか、ファンの皆さんも「こんな時間があるなら練習しろ」と色んな声が飛び交って、却って杉浦さんにご迷惑をおかけする恐れがありますから、申し訳ないんですけれども今日ここに来て御未来字(おみくじ)を書かれたということはオフレコでお願いできませんか?
と伝えられ、表に出さないことを条件として提示された。ところが試合後に矢野が勝手に開示し、世間の知るところとなる。矢野は色紙片手に円陣を組み、「起こすぞ!ビッグウェーブ!!」と檄を飛ばしたという。皮肉にもこれがきっかけで阪神は苦境を脱し、杉浦氏の地元であり観光大使まで務めていた多治見市を勢力圏とする中日ドラゴンズを蹴落としてCSまで進出。一方、立浪和義政権1年目の中日は更なる暗黒期に突入し、杉浦氏は裏切り者呼ばわりされるようになってしまった。
3の概要
2024年の辰己涼介は初の全試合出場を果たし、最多安打・ベストナイン・ゴールデングラブ賞を受賞。バランスの取れた外野手として評価され、オフに行われるプレミア12にも選出された。11月24日、日本は危なっかしい場面があったものの下馬評通り大会を勝ち上がり、チャイニーズ・タイペイ(台湾)との決勝戦に臨む。そこで試合前の声出しを託された辰己だったが...
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https://twitter.com/samuraijapan_pr/status/1860633128353841172
どうも未来から来ました。未来といったら、きょうの夜の12時くらいから来たんですけど、もう答え言っていいですか?優勝しています。なので、先制されようが、逆転されようが、気にしなくて大丈夫です。焦ることなく、自分が出せる力を皆さんが出し切ってください。優勝おめでとう。それではいきます。さあ行こう!!
...どう見ても矢野そっくりである。ところが試合は乱打戦となった前回の対決とは打って変わって投手戦となり、強力打線が沈黙。その間に先発・戸郷翔征が4点を失うと、井端弘和の不可解な采配も相まって最後まで攻めあぐね0-4で惨敗した。
大会を通して辰己は活躍した方だったが、この発言が敗北のフラグになったとして批判され、やがてネタ化されるようになった。
4の概要
2025年のプロ野球が開幕して数日、4月1日は中日ドラゴンズのホーム開幕戦。オフィシャルパートナーを務める名古屋鉄道は号外を模した広告を大曽根駅で配布した。
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https://twitter.com/YS758/status/1907089083303956491
2025年から再びオフィシャルパートナーとなった名鉄の粋な計らい...と言いたいところだが、エイプリルフールはあくまでもジョーク、つまり実現しないということになってしまう。更に中日は前年まで3年連続最下位・11年連続ポストシーズン逸と暗黒期の真っ只中であり、上記の通り野球ファンにとって大変縁起が悪い予祝を連想させるこの企画に悪い予感を覚えた人も多かった。もっと言えば似たようなことをして最下位に終わった1998年の阪神という前例もあったため、悪い方向で話題になってしまったのである。
さて蓋を開けてみると、その日の読売ジャイアンツ戦には見事勝利したものの、監督一年目の井上一樹の珍采配・主力のケガ・不振が響き、地力の差が表れた5月以降は定位置の5位で推移。9月5日に優勝の可能性が消滅(7日に阪神がリーグ優勝を決める)し、19日にCS逸も確定した。エイプリルフールはやはりエイプリルフールだった。
関連リンク
関連項目
脚注
- *阪神・矢野監督 感謝の“予祝”超異例「うれしいサプライズ」発案の西&糸井は絶妙“漫才” 2022.02.24(Thu) https://www.daily.co.jp/tigers/2022/02/24/0015087193.shtml

- *代表的なのが2022年のレギュラーシーズン最終戦。9回までに選手全員を使い切ったため、延長戦で1人でも欠けると没収試合になる恐れがあった。
- *特に大山悠輔は捕手・遊撃手以外の全ポジションを経験している。
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