享年とは、人物が逝去した際の年齢である。
現在マスメディア等では、満80歳で逝去した人物に対し「享年80」または「享年80歳」と表記されることが主流となっているが、こうした用法に対しては論争がある。(下記で詳述。)
論点その1 -「享年○○歳」という表現は正しいのか
古くからの仏教の用法として、「享年」とは「天から授けられた寿命を全うした」との意味で、「年」が年齢を指すため、「”享年80歳”と表記するのは厳密には誤りで、”享年80”と表記すべきである」との主張が根強くある。
論点その2 -「享年○○」の数字の部分で満年齢を使うのは正しいのか
上記と同じく、古くからの仏教的な用法から「数え年を用いるのがルールであり、満80歳で没した人物の場合、数え年が81であるならば”享年81”と表記すべきである」との主張も根強い。
数え年が年齢表記の主流であった江戸時代以前の人物に対して満年齢での享年表記を行うことは誤りである、とする見解については、異論が少ない。
言葉の用法の変遷
Wikipediaなどでは、こうした主張を強硬に行う者が一部に存在し、戦後以降の現代の人物に対しても、「享年80歳。」と書かれている項目を「享年81。」と書き換えることがしばしばある。しかし、当然ながらマスメディア等で使用されている用例と異なるため、「享年81(満80歳で没)。」という折衷的表記が主流となりつつあるようだ。
確かに厳密な歴史的経緯を考慮すればこうした表記が正しいのかもしれないが、現代日本語用法の権威とも言える広辞苑でも「享年○○歳」の満年齢表記を容認しており、数え年がほとんど使われない現代においても古い用法に固執して上記のような回りくどい表現をあえて使うのはいかがなものか、との指摘もあるところである。
いずれにせよ、言葉の用法の変遷と本来の正しさのどちらを重要視すべきかという、現代日本語の難しさを象徴する一つのケースであるとも言える。
関連項目
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