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人工呼吸とは、呼吸が停止したり不十分な人に対して人工的に空気を入れたり呼吸の補助をする行為である。キスをするための口実ではない。
概要
一般的によく知られているのは、傷病者の口に直接口をつけて息を吹き込む行為(口対口人工呼吸)であるが、この他にも気管内チューブやラリンジアルマスクなどの医療器具や人工呼吸器のような医療機械による人工呼吸もある。よって、漢字も人「口」呼吸ではない。
とはいえ、ニコニコ動画において見られるのはやはり口対口によるものがほとんどである。というか、人工呼吸とは名ばかりの動画が多い。どんな動画なのかは関連動画を見てお察し下さい(これでも大人しいものを選んでます)。
なお、アニメやドラマなどで人工呼吸を行う時に「医療行為だから仕方ない」みたいな事を言う人がいるが、口対口人工呼吸の場合は病気や怪我を治すための行為ではないので、厳密に言うと医療行為ではない。ちなみに、機械や器具を用いて行う人工呼吸は医療行為に当たるので救急救命士であっても医者の指示なしに行うことはできない。
方法
医療器具や医療機械を用いて行う人工呼吸については専門的な話になるのでここでは口対口人工呼吸について説明する。
ただし、あとで詳しく述べるがJRC(日本蘇生協議会)ガイドライン2010では訓練を受けていない市民救助者が呼吸を停止した人の応急手当を行う場合には人工呼吸を省略し胸骨圧迫(いわゆる心臓マッサージ)のみを行うとされている。日本版救急蘇生ガイドラインにおいても人工呼吸は省略可能であるとされている。よって、くれぐれもこの説明を読んだだけで実践するようなことはしないでほしい。また、人工呼吸はBLS(一次救命処置)におけるCPR(心肺蘇生法)の一部であり、呼吸はないが脈拍があるような場合を除けば人工呼吸のみを行うことにはあまり意味が無いことにも注意する。
- 1.気道確保
- 頭部後屈あご先挙上法により気道確保を行う。頭部後屈あご先挙上法とは、片手を額に当て、もう一方の手の人差指と中指をあご先に当てて、頭を後ろにのけぞらせ、あご先を上げる方法である。
- 2.呼吸の確認
- 顔を傷病者の胸に向けながら頬を傷病者の口や鼻に近づけ呼吸を確認する。確認は胸や腹の上下を見て、息の音を聞いて、頬で息を感じて判断する(いわゆる「見て、聞いて、感じて」)。呼吸が停止しているかしゃくりあげるような不規則な呼吸の場合には正常な呼吸なしと判断する。10秒以上確認してもよくわからない場合も同様である。なお、正常な呼吸が確認できた場合には気道確保したまま救急隊を待つ。
- 3.人工呼吸
- 額に当てた手の親指と人差指で傷病者の鼻をつまみ、口を大きく開けて傷病者の口を覆い、空気が漏れないようにして約1秒間息を吹き込む。この時、胸が上がるのが確認できたならばもう一回行い、胸が上がっていなかった場合にはもう一度気道確保をやり直してから行う。どちらにしろ、息を吹き込むのは2回までとし胸骨圧迫に移る。
注:人工呼吸においては、可能であれば感染防護具を使用する。特に患者に危険な感染症の疑いがある場合や血液などによる汚染がある場合には感染防護具を使用すべきである。ただし、一般的には院外における感染の可能性は低い。
人工呼吸が省略される理由
既に述べた通り、JRCガイドライン2010では訓練を受けていない市民救助者のBLS(一次救命処置)では人工呼吸を省略することになっており、日本版救急蘇生ガイドラインにおいても省略可能とされている。医師に対するアンケート調査においても一般市民は「胸骨圧迫のみ」を行うべきであるという回答が62%を占め、「人工呼吸も行う」という回答の26%を大きく上回った。
これは、「病気に対する恐れ、不安やパニック状態、人工呼吸を含む CPR に対する知識不足など」により市民救助者が人工呼吸を躊躇する傾向があるからである。このため、CPR(心肺蘇生法)そのものを躊躇したり開始が遅れたりしてしまう。これを避けるために抵抗感が少なく訓練を受けていない市民救助者でも行える胸骨圧迫のみを行うことになっている。
また、「心原性の心停止後の最初の数分間は血液中には多くの酸素が含まれていて、心拍出量の減少に伴って、心筋や脳の酸素消費は減少している」ため、「心原性心停止に対する初期の蘇生では、人工呼吸は胸骨圧迫ほど重要ではない」と考えられている。
訓練を受けた者については胸骨圧迫に加えて人工呼吸も行うが、その場合に胸骨圧迫と人工呼吸のどちらを先に行うべきかについては議論がある。
関連動画
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関連項目
外部リンク
- 【日本赤十字社】寄付・献血・ボランティア|心肺蘇生法
- JRCガイドライン2010
- 日本版救急蘇生ガイドライン策定小委員会-わが国の新しい救急蘇生ガイドライン(骨子)-
- 日本医師会 - 救急蘇生法サイト
- 一般市民の心肺蘇生、胸骨圧迫のみが62%|医療維新 - m3.comの医療コラム(一般公開部分は一部のみ)
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