人民裁判とは、法律によらず人民の感情や感覚によって行なわれる裁判である。裁判というが実質的にはリンチであり、法治国家の裁判所で人民裁判が開かれることはない。
概要
人民裁判とは、法律によらず市民がその市民感覚によって人を裁く裁判である。通常の法治国家においては行なわれないが、法律上は過失を問いにくい政治家の失政(イタリアのムッソリーニ・ルーマニアのチャウチェスクなど)を追及する手段として行なわれる事があるほか、戦乱など法秩序が失われた状況で秩序を維持する目的で、もしくは、多数派が少数派の弾圧を目的として行なわれる事がある。
人民裁判はその性質上、十分な証拠も十分な審議もなく行なわれることが多いために冤罪を生みやすく、また、死刑など過剰な刑罰が乱発される傾向があるため、まっとうな法治国家においては行なわれないし、それが非常時のやむをえない措置として行なわれる場合であったとしても、総じて忌み嫌われる方向にある。
なお、ソ連や中国など東側諸国で市民(人民)から陪審員を選んで行なう裁判もこのように呼称するが、この場合は当該国の法律に基づいて行なわれているため、前者のような意味合いを含むのではない。同様に日本でも行なわれている裁判員制度も市民が裁判に参加はするものの、あくまで法律によって裁かれるものであるため、それを前者の意味での人民裁判と呼ぶ事はない。
似たような文脈で使われる言葉として、魔女裁判や学級会、吊し上げがある。
しばしば待ったなしで一足飛びに結審まで進む様子から、英語では人民裁判をカンガルー・コート(カンガルー法廷)と呼ぶ。
関連項目
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