任天堂法務部とは、任天堂株式会社に実在した部署名及び、そこから派生したミームである。
概要
日本を代表する企業の一つである任天堂はこれまでにも多くの訴訟や裁判に関わってきたが、勝訴となった訴訟のいくつかが有名となったことから「任天堂が関わった訴訟や裁判などでは任天堂側がことごとく勝訴している」というイメージが定着し、ゲームファンの間では「任天堂法務部は最強」という伝説が広まっている。
その結果、任天堂に関する「何か」が起こるたびに「任天堂法務部が〜」等のフレーズと共に言うネットユーザーが一定数出るようになっている。
そもそも一般企業における法務部とは、企業に関する法律事務を請け負う部署であり、主にコンプライアンスや訴訟対応、会社の商標や特許の管理などを担当する。
任天堂にも2001年頃には法務部という名称(外部リンク参照)の部門は存在していた。
ただし、任天堂は会社の構造を公開していないので詳細は確認はできないが、2005年頃に法務部は知的財産部と改称している。任天堂法務部の強さとして語られている訴訟や裁判の対応は知的財産部が担当していると思われ、強さは依然として変わっていない。むしろ権利関係一本に絞られて強くなってるんじゃないかな?
しかし全戦全勝というわけではなく、敗訴・若しくは限りなく敗訴に近い和解に至った事例もある。
著名な訴訟歴
「ドンキーコングはキングコングのパクリ」裁判
「ドンキーコングはキングコングのパクリ」とアメリカのユニバーサル社から訴えられた事件。
法務部の調査によりユニバーサル社がキングコングの映画のリメイク権を取得していなかった事が発覚し、任天堂はユニバーサル社を名誉棄損罪で逆提訴。ユニバーサル社は敗訴し、任天堂に160万ドルの賠償金を支払った。
なお、その際の弁護士の一人にカービィがいた。もちろん某ピンクの悪魔のことではなく、「ジョン・カービィ」という名前の人間である。凄腕の弁護士であったらしく、出番が来た最初の一言で相手にキングコングの著作権が存在しないことを証明、しかも逆にユニバーサルがライセンスしていた「キング・コング」のゲームはドンキーコングのパクリであるという事を裁判所に認めさせた。
詳細な経緯はこちらを参照→ジョン・カービィ
ユリ・ゲラー裁判
超能力者として一世を風靡していたユリ・ゲラーが、ポケットモンスターのキャラクター「ユンゲラー」は自分の権利を侵害しているキャラクターだと訴訟を起こした事例。
「ユリ・ゲラーにユンゲラーのようにスプーンを曲げるよう迫った」説が広まっているが都市伝説の類である。ユンゲラーの名称・商品名が日本国内でしか使われておらず、アメリカ国内での訴訟が無効とみなされ敗訴している。
なお、ダイヤモンド・パール以降のポケモン本編において、ユンゲラーはかわらずの石を持たせて通信交換しても強制的に進化するという特殊な仕様になっており、デフォルト名のままの「ユンゲラー」という名前のポケモンを海外版ソフトに送る事は不可能となっている。また、ポケモンカードにおいてはカードeシリーズ(2002年)での収録からスカーレット&バイオレット(2023年)での収録まで、実に21年もの間ユンゲラーのカードが実装されていなかった。
ティアリングサーガ裁判
エンターブレインから発売されたゲーム「ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記」が任天堂のゲーム「ファイアーエムブレム」シリーズと酷似したゲームであると著作権法及び不正競争防止法違反だとして、エンターブレイン及び開発元のティルナローグを相手に訴えを起こした事例。任天堂はインテリジェントシステムズと共に提訴した。詳細は「ティアリングサーガ」の単語記事を参照のこと。
結果としては任天堂の訴えは認められなかったものの、裁判ではエンターブレイン側に対して弁護士費用などを含めた売上金額の一部支払いが命じられ、エンターブレイン側もそれに応じた事で事実上の和解が成立した。
ニンテンドーDS用マジコン裁判
ゲームソフトのデータをコピーするマジコンにまつわる裁判。厳密には任天堂のみの関わりではないが記載する。マジコン製造業者へ訴訟を起こしたゲームソフトメーカーは数多く、任天堂はその筆頭といえる。
任天堂は2008年にもマジコン業者へ訴えを起こしており、その際にマジコンの違法化が国内で初めて認められた。(この時国内でのマジコン製造が禁止される)近年ではDS用ソフトを開発したメーカー33社と共にマジコン業者へ輸入販売差し止めを請求する裁判を起こし、2013年7月に東京地裁による判決としてマジコンの輸入販売差し止めと賠償金約9000万の支払いを命じた。
その後2014年6月の二審でも知的財産高等裁判所は一審判決を支持、そしてこれに対する上告を最高裁判所が2016年1月に棄却。マジコン業者側が敗北し、マジコン輸入販売行為の差止及び総額9562万5千円の損害賠償金が確定した。
3DS裸眼立体視特許裁判
元ソニー社員であるトミタ・テクノロジーズの富田誠次郎氏が「ニンテンドー3DSに搭載されている裸眼立体視の仕組みは私が取得した特許を侵害している」と訴えを起こした事例。
同氏は2003年に任天堂本社を訪れ裸眼立体視の仕組みをプレゼンした所、何の連絡もなしにニンテンドー3DSにその仕組みが使われたとして賠償金を請求。 ニューヨークで行われた第1審では2014年1月に裁判所が任天堂側に対して賠償金29億円支払いを命じた。任天堂側は控訴し、2014年12月米連邦巡回控訴裁判所は一審判決を破棄し差し戻し審を命じた。
その後2016年4月25日、富田氏独自の特許ではない等の理由で上記の特許侵害は無かったと判決が下り、任天堂側が逆転勝訴している。
「マリカー」裁判
公道カートの「マリカー」を運営する株式会社マリカー(現在の商号は株式会社MARIモビリティ開発)に対して、任天堂が知的財産権の侵害行為の差し止めと損害賠償を求めて提訴した事例。
公道カートとは要するにナンバープレートをつけたゴーカートなわけだが(詳しくは当該記事を参照)、マリカー社はその公道カートと任天堂のキャラクターコスチュームをセットで外国人旅行者向けに貸し出し、渋谷や秋葉原などに営業所を置いて一大勢力を築いていた。
堂々と屋号にマリオカートの略称である「マリカー」を掲げているうえに、店舗にはマリオ像を設置するなど死ににいってるとしか思えない任天堂アピールで外国人のハートをガッチリ掴み、SNS割引を設けて外国人旅行者に抜群の知名度を持っていたサービスだった。さらに2016年6月には、自動車やその貸与、車体広告などの業種における「マリカー」の文字商標を取得してしまった。
当然こんなことをしていて任天堂法務部が黙っているはずがなく、2016年9月には特許庁にマリカー社が登録した「マリカー」の商標取り消しを求める異議申し立てを起こした。しかし、2017年1月に特許庁は任天堂側の主張を認めず、異議申し立てを棄却した。
これを受けて任天堂は、2017年2月に不正競争防止法違反および著作権法違反を主張して訴訟を起こした。その結果、2018年9月に不正競争防止法のマリカー社敗訴の東京地裁判決が下り、マリカー社は不正競争行為の禁止(マリオ等のキャラクターのコスチュームを貸与することの禁止)と1000万円の損害賠償の支払いを命じられた。一方、著作権法違反については判決文において「差止めの必要性を認めるに足りる立証はされていない」とされた。
なおこの係争中、2018年3月22日にマリカー社は株式会社MARIモビリティ開発(以下、MARI社)に改称し、地裁判決が出た後も営業を継続。またMARI社はこの地裁判決を受け、2018年9月28日に知財高裁に控訴。任天堂側も判決の一部(外国語サイトでのmaricarドメインの使用容認など)を不服として控訴した。[1]
2019年5月、知財高裁は「MARI社の行為は任天堂の営業上の利益を侵害する」という中間判決を下し、一審で認められなかった部分も含めて任天堂が全面勝訴する形に。引き続き損害賠償の金額を決めるための審理が続き、2020年1月、MARI社に対して損害賠償5000万円の支払いを命じる終局判決が言い渡された。MARI社はこれを不服として上告を試みたが、最高裁判所が2020年12月に上告を棄却したため、任天堂の勝訴が確定した。[2]
上述の勝訴確定に先立ち、MARI社が保有していた2件の商標登録「マリカー」に対して任天堂が登録の無効を求め、特許庁に請求していた無効審判は、2020年10月19日にMARI社による商標登録をいずれも無効とする審決が確定した。(参照:任天堂のニュースリリース)
コロプラ裁判
スマートフォンアプリゲームメーカーであるコロプラが、任天堂が取得していた5件の特許侵害として約44億円(+遅延損害金)の賠償金請求及びアプリ「白猫プロジェクト」の差し止めを要求したと2018年1月10日に公表した事例。コロプラの公式発表によると2016年9月に任天堂より特許権の侵害の指摘を受け、約1年以上にわたり任天堂へ特許権の侵害はない旨を説明してきたとのこと。またコロプラは「今回の件でアプリ配信停止等はあり得ない」とユーザー向けに声明を発表している(ゲーム公式サイトのニュース)。
2018年2月18日に両者の第一回口頭弁論が行われ、任天堂が侵害されたと主張する5件の特許の詳細が公開された。公開された特許は下記の通り。
- タッチパネルでジョイスティックを操作する技術の特許
- タッチパネルを長押しした後、指を離すと敵キャラを攻撃する操作の特許
- スリープから復帰する時に確認画面を表示し、スリープ直前の画面から再開する技術の特許
- ユーザー間で相互フォローし、通信や協力プレイを行う仕組みの特許
- 障害物でプレイキャラクターが隠されてもシルエットで表示する仕組みの特許
2018年4月23日の弁論準備手続の際には新たに侵害されたとされる6件目の特許が追加(相手が自分のゲーム機をフォローしていてもなくても、一方的に相手のゲーム機をフォローすることができる仕組みの特許)された事に加えて、コロプラ側に対して「適当に答えて時間稼ぎするな(要約)」という類の回答も公開された。2018年6月15日に第二回口頭弁論が行われ、以降も口頭弁論は続き、後述する和解まで約3年半もの期間を要した。
この間、白猫プロジェクトは上述の特許に抵触するとみられるゲーム仕様の変更を実施した(2020年2月の変更告知)
コロプラは2021年2月12日、原告の任天堂が提訴後の時間経過を理由に、前年12月21日付で賠償金を49億5千万円(+遅延損害金)に増額したことを報告した(コロプラの開示情報)。同時に白猫プロジェクトのユーザーに対して「特許侵害の事実は一切ないものと確信」しつつも「訴訟がたとえどのような結果になっても仕様変更等を通じて、サービスを継続」する、という2018年1月のコメントを繰り返した(ゲーム公式サイトのニュース)。
コロプラは2021年4月21日、原告の任天堂が提訴後の時間経過を理由に、同月13日付で賠償金を96億9千9百万円(+遅延損害金)に増額したことを報告した(コロプラの開示情報)。開示情報の中でコロプラは「当社のゲームが任天堂の特許権を侵害する事実は一切無いものと確信しており、その見解の正当性を主張していく方針」を繰り返し表明した。
その後2021年8月4日に、コロプラが任天堂に対し、任天堂の特許についての今後のライセンスを含めた和解金総額33億円を支払い、任天堂が訴えを取り下げることで和解に合意したと両社が発表した(任天堂のリリース、コロプラのリリース・同開示情報)。事実上コロプラが特許侵害を認めた形となる。なお、和解成立の発表時点で白猫プロジェクトの差し止めは無く、サービスは継続する(ゲーム公式の告知)。
関連動画
任天堂法務部に関するニコニコ動画の動画なんてありま……せん?。
外部リンク
スペシャリストをめざせ!ゲームを支えるお仕事特集「法務のお仕事」(任天堂公式サイトのwebアーカイブ)
関連項目
- 任天堂
- 訴訟
- ハッカーインターナショナル - ファミコン黎明期に裁判が難航した例。違法であったのは改造ファミコンハード「HACKER JUNIOR」のみでソフトは合法的に回避していた為、難を逃れた。この件がなかったら今の法務部はなかったかも・・・。
脚注
- *「任天堂vsマリカー」判決文公開、詳細明らかに…著作権侵害には踏み込まず - 弁護士ドットコム
- *「マリカー」訴訟、任天堂側の勝訴が確定。MARIモビリティ開発側に5,000万円の賠償 - GAME Watch
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