僕にとっては、『今』が一番なんです。
Re:Birth/聖剣伝説 伊藤賢治アレンジアルバム ライナーノーツより
伊藤賢治とは、SAGAシリーズなどの音楽担当として知られるゲーム音楽作曲家、ピアニストである。
概要
元スクウェア所属のゲーム音楽作曲家で現在はフリー(gentle echo主宰)。
近年はPiece of Wonderや植松伸夫との共演など、ライブ/コンサート活動も精力的に行っている。
スクウェアではサガ2秘宝伝説の植松氏との合作(これが作曲デビュー作)、聖剣伝説 〜ファイナルファンタジー外伝〜におけるソロで始まり、ワイルドカードへの作曲を以て退社する。
「イトケン」の愛称で親しまれ、特に戦闘曲に関してはカリスマ的な存在である。但し、本人曰く戦闘曲は得意でないとのこと。穏やかな優しい曲にも定評がある。
ファンタジー作品でギターがぎゅんぎゅん鳴ってドラムがドスドス響きまくるのは日常茶飯事。
時には曲の半分以上がイントロみたいな曲を作ったり、毒魔法をピョイピョイプゥにしたり、いきなりヘェーラロロォールノォーノナーァオオォーしたりもする。
ニコニコ動画でも彼の戦闘曲メドレーは非常に人気がある(※ただし、版権曲を無断アップロードする行為自体には苦言を呈している)。
他の作曲家の楽曲をイトケン風にアレンジした、という動画も数多く投稿されている。(→ロマサガ風アレンジ)
ゲーム自体それほどしない上、サガシリーズが軒並み難易度が高い作品なので、自身が担当したゲームはあまりプレイしたことがない。ただし、新約聖剣伝説はプレイしたそうだ。しかし、(本人にとっては)難しかったようで、わざわざスタッフに電話して攻略法を聞いたそうだ。新約ってそんな難しいっけ?ちなみに、氏にとって聖剣伝説1は初のソロ担当だったこともあり、非常に思い入れのある作品である。そのため、久々に4の担当になった際は嬉しかったらしい。
作風
バラードが得意、と自負することから非常に情緒ある曲が多い。また雰囲気を重視したメロディーであるため、聞いていて飽きが来ない。ロマサガ2まではクラシカルな曲が多かったが、ロマサガ3では割とカオスな世界観だったせいか曲のジャンルにも幅を利かせてきた。次作のサガフロンティアでは、西洋な世界観から完全に乖離したものになったため、音源の増加もあってか「作曲しやすかった」と述べている。本作で初めてテクノミュージック、プログレミュージックを作曲した。尚、プログレの作曲にはご存知師匠こと「植松伸夫」に助言してもらったそうだ。その後カルドセプトではジャンルの変化もあってか、サガフロンティアを昇華させたような様々なジャンルの曲を産出。ミンサガでやや原点回帰するも、前述の通り「熱情の律動」が生まれることにもなった。原点回帰というのならば、名実共に聖剣伝説4が最も近いだろう。
バトル曲は1フレーズ毎にドラムが入ることが多い。
例「~~♪、ドコドン!、~♪」といったかんじである。
サビの部分が低音で、そこだけ聞くとバラード調に思えるのが特徴。いわゆるクサメロという部類で、聞いててこっちが恥ずかしくなるくらいものっそいメロディーが臭いものになっている。しかし、ゲームを愛する諸兄の皆様には非常にウケがいいため、これこそイトケンの真骨頂、称して「イトケン節」と言われている。ちなみにイトケン節とは、(デビュー当時)三和音しか出力できない環境での苦肉の策である。
ロマサガシリーズを担当しなかったかもしれない?
ロマサガシリーズにおける数々のBGMが生み出されない可能性もあった。
『Sa・Ga2 秘宝伝説』のあと『聖剣伝説2』と『ロマンシング サ・ガ』のどちらを担当するか植松伸夫に聞かれ、伊藤は『聖剣伝説2』を選んだ。前作『聖剣伝説 〜ファイナルファンタジー外伝〜』を担当した流れからである。
その後、一日考えた植松に『ロマンシング サ・ガ』を担当して『ロマンシング サ・ガ』プロデューサー・河津秋敏に揉まれてくるようにと言われる。
この植松の判断がなければ『ロマンシング サ・ガ』はもちろん、『ロマンシング サ・ガ2』や『ロマンシング サ・ガ3』、そして『サガ フロンティア』のBGMが生み出されなかった可能性がある。
バトル曲の逸話
氏の特徴といえば言わずもがなバトル曲だが、デビューから現在まで未だにバトル曲が苦手だという。以下、バトル曲にまつわるエピソード一覧。
Q.イトケンさんといえばバトルですが、苦手ということでプレッシャーを感じませんか?
A.感じますね!
- 秘宝伝説サガ2の作曲の際、師匠から「通常とボス戦よろしく」と頼まれた際に断ろうとした。しかも三和音というコンポーザ泣かせの環境で弱音を吐いたが、師匠から檄を飛ばされ、何とか書き上げることに成功。さすが音魔導師である。
- バトル曲は毎回時間がかかるらしいが、頑張って作っちゃうからクオリティがすごいことになる。
- ロマサガ3の「四魔貴族バトル2」はイントロだけで数週間かかった。ちなみに再生してもイントロだけで1:07かかる。
- ロマサガ1の「決戦!サルーイン」はX JAPANを(間接的にだが)参考にしたと公言している。
- サガフロのCM販促用のBGMを作曲して提出したが曲名がなかった。その時咄嗟につけた名前が「Battle #4」。今でこそ名曲として名高いが、味気なさ過ぎるんじゃないか。
- サガフロのBattle #1のイントロは四魔貴族バトル2よりはマシだが長いが、これはバトルに入るまでのロードのためにわざとした…のは全くのデタラメであり、真相は以下である。
イトケン「ねえキョン(小泉今日治の愛称)、バトル曲書いたよ、どう?」
キョン「いいね、でもイントロ長くない?バトルの尺に合わないよ?」
イトケン「ゑ?じゃあバトルまでのロード長くしてよ。できるでしょ?キョンなら^^」
- サガフロでは主人公分のラストバトル曲を書き上げるという脅威の制作環境だったが、その際はアセルスにはクラシック(One Night Re:birth Againインタビューより)、エミリアにはプログレ(勿論アドバイザーはあのヒゲ師匠である)を大胆に活用し、自らの作風に新たな風を巻き起こしたという。実際、サガフロの環境が最も作曲しやすかったと言う。
- ミンサガ及び聖剣伝説4の作曲の際、バトルのほとんどを関戸剛にお願いしたらしい。PTA大困惑。実際、聖剣伝説4のバトルの大半は関戸剛が担当している。(イトケンがフルで作曲したのはラストバトルと愚者の舞のみ)
- 河津神から「ロマサガっぽいくさメロバトル書いてよ」と言われて作曲したのがBelieving My Justice。わかりやすいね。
- モンスターキングダム ジュエルサモナーで通常バトルを担当されたが、色んな意味で他の曲を凌ぐほどの熱さになってしまった。少なくとも雑魚戦のクオリティとは思えない。
- クロスゲートの曲である「剣もて疾る」→「閃光」→「戦士の誇り」を順番に聴くと…。
- ポップンミュージックでは直々にバトル曲をお願いされて渋々バトルXIIIを書いたが、次回作ではスパニッシュバラッドというよくわからない曲を執筆した。バラードにしてはやたらテンポがいいのはご愛嬌。
- でもギタドラではバトル曲を二曲続けて提供。特にShake and Shout!!の作曲は非常に難産だったことを激白。デビルサバイバー2でもやっぱりバトル曲を担当。どう聴いてもロマサガ(特に運命への挑戦)です。本当にありがとうございました。
- バレットソウル(かの悪名高いこんにゃくアニメ版を輩出した5pb作)ではRESONATORとして高橋コウタと合作。ライナーノーツも生き生きとしてる。楽曲もバリバリロックでノリがよい。でもステージ1はやっぱりロマサg(ry
- Re:BirthIIではまさかの「サガバトルアレンジ」というファン垂涎のコンセプトで、氏の絶対自由すぎる音の連携が炸裂(特に七英雄バトル)し、ファンを興奮させた。
- 決戦!サルーインは当時隆盛を極めていたX JAPANを後輩から借りて参考にしたという。後輩ありがとうございます。
- Battle #5は色んな人からTHE ALFEEみたいと言われる(本人も自覚済み)が、それを踏まえて自分の個性をどう活かすか試行を重ねたという。
- パズドラZの作曲の際、依頼曲の1/3がバトル曲だった。
- サガ30周年フィナーレ生放送ではサガフロの2曲をピアノで生演奏したが、その後「Battle#5」もリクエストに応じて演ってしまった(さすがにAサビのみだが)
それ以外の逸話
- ピアノの音に聴き入って足を止めた際、母に「ピアノやりたい?」と聞かれて頷いたことから、音楽への道が拓けた。ただし、男のくせにピアノを嗜むという偏見のせいで、よくからかわれたらしい。
- 何故か姉がいるという噂がひとり歩きしていたが、2012年8月24日のニコニコ生放送にて本人が「一人っ子ですよ」と姉の存在を否定した。但し崎元仁氏のスタッフの中に公認の妹[偽]が居る模様……。
- ゲーム音楽への目覚めは、友人がプレイしていたドラゴンクエスト3がきっかけ。
- 就活の際、様々なゲーム会社へデモテープを送ったが、面接まで進めたのがスクウェア(現スクウェア・エニックス)のみだった。現在は落ちた企業からもお仕事をもらっている。
- 杉田智和とのTwitterで、何故かけいおん!の話題に。イトケンは紬推しだった模様。
- 同期でもあった北瀬佳範との対談のとき、「今のFFはツマラン。やはり昔のFFに戻るには坂口さんや植松さんが不可欠」と力説。「誰がまとめるのさ?」と渋い北瀬に対して、「そういう役割を俺が、いや俺が!ってやる気を出す人材が求められてるよね」と、珍しくスクエニの現状を批判した。でもイトケンはFFはあまり担当してない。
- 担当しているパズドラもプレイしているが、まだまだ(自称)初心者らしい。ちなみに、ドラゴンボールコラボの際、バンドメンバーである山本健司がその作曲者であることを知らなかった。また、パズドラの仕事を依頼された際、ゲームのプロトタイプを見て「これ面白いんですか?」と疑問をぶちまけた。
- かなりのイケメンボイス(逸話っていうか特徴だが)。MC担当が増えていったことにより、その才能も声を活かして花開いている。
- SSGやロマンシング佐賀で最近何かとイベントの多い本シリーズだが、イトケンはその時のトークショーにほぼ必ず参加している。いかにコンポーザーとはいえ、担当作のイベントにここまで出張するのも珍しいのではないだろうか。もちろん、サガへの愛の表れであるし、ファンも嬉しいのでwin-winなことである。
- ロマサガ3作成前の合宿で海釣りをしていたところ、落ちた(その後他のスタッフに笑われたという)
- アセルス編の作曲を手掛ける際、参考にベルサイユのばら全巻を購入して読破した
手がけた作品
など。
記事のある楽曲
関連人物
- 植松伸夫…師匠。彼がいなければ、イトケンは今とは違う評価だったのは間違いない。
- 関戸剛…相棒。主にミンサガ以降、共作が多い。
- 高橋コウタ…5pbで得た新たな相棒。
- 河津秋敏…サガにイトケンあり、を確立した偉大なる邪神。
- 浜渦正志…後輩であり、正当なるサガの後継者。勇者30 SECONDを除いて、今現在共作はない。
- 岸川恭子…熱情の律動やデス戦、はたまた愚者の舞でボーカルを務めた歌手。
- X JAPAN…決戦!サルーインの参考にしたという。
- 光田康典…シャドウハーツ2にて共作。2001年には氏によるインタビューも行われた。
- 下村陽子…サガっぽい聖剣伝説LOMのコンポーザを務めた。光田氏を交えた座談会も開かれている。
- REVO…イトケンを「師匠」と呼び、過去にはサガシリーズのアレンジも行っていた。
関連動画
関連生放送
関連項目
関連リンク
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