会話成立とは、会話の意味が通ることである。空耳動画などで台詞の空耳同士が会話しているように聞こえるとき、shitaコマンドなどを使って目立つようにコメントで書き込まれることがある。
一般的な会話成立
誰かの発話には表向きの意味(表意)のほかに、それが暗に意味しているもの(高次表意)がある。人が「うるさいな」と言うとき、うるさいので静かにして欲しいということや、その人がわざわざ婉曲的な表現を使ってキツい物言いを避けたのだろうということなどが、相手に伝わる。会話をしている人同士は、話し相手の発話と関連度の高い文脈(推意前提)を頭の中に呼び出し、相手の真に言わんとしていること(推意結論)を推し量る。ここで推意前提がお互いに食い違っているとそもそも会話が成立せず、聞き手が話し手の推意前提を知らないと何を言っているのか分からなくなる。
たとえば、AとBという二人の人物がいたとしよう。AはBに写真を送り、その内容をBに電話で説明する。二人は同じ写真を見ながら話をしていると思っているが、実はBは誤って違う写真を開いてしまった。
AはBと異なる写真を見ている。Aの写真に写る人物は背が高く、Bの写真に写る人物は胸が大きい。例えばBが写真に写っている人物の胸の大きさについて「大きいですね」と言った場合、Aは自分が見ている写真の中から「大きい」ものを探そうとする。このとき、「背の高い人物を大きいと呼ぶ場合がある」という前提がAの頭の中に呼び出され、AはBがその人物の背の高さにフォーカスしていると理解するのである。
会話が成立していない場合、お互いの推意前提が食い違っている可能性が高い。このようなことを防ぐためには、曖昧な物言いを避け、お互いにどういった意味でその言葉を使っているのか、都度確認することが重要である。
ニコニコ動画において
複数の人が代わる代わる喋る際に、関係のありそうな文同士が隣り合い、会話しているように見える時、会話成立と書かれることがある。
会話成立という語がいつからニコニコで使われ始めたのかは定かではない。ニコニコ動画の空耳は文同士が互いに独立しており、会話しているように繋がる例は少ない。そのため、人々はある種の感動を覚えるのだろう。
CCOぺディアによれば、このように会話が成立しているように見える空耳字幕は「物によってもたらす効果の異なる職人技を除けば、最も高レベルな笑いを醸し出す字幕」なのだという。文章表現における諷喩もそうだが、何かと何かを一旦結びつけた際、その関係性を連続して使うことに人は快感を覚えるものなのかもしれない。
なお、会話が成立しているのかいないのか分からないように見える場合もある。本人達はまるで成立しているかのような一体感で会話するのだが、視聴者には何がどうなったらそういうやり取りになるのか、意味不明である。
音という繋がり
明確に何を言っているのか分かっている場合でも、同音異義語が音という繋がりで無理矢理流用されていると、クスリと来るものである。何かの素材が意外な方法で別のものに使われていて、しかもその素材が明らかな時、込み上げてくる笑いが何なのか解き明かすヒントは、もしかしたら会話成立と同じところにあるのかもしれない。
関連項目
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