概要
人類を抹殺せんとする「地球」と、それを阻止しようとする人々の戦いをテーマにした長編小説。
「大いなる悲鳴」と呼ばれる大災害により人類の3分の1が死に絶えた世界を舞台に、科学や魔法を用いて「地球」へ対抗しようとする人々の姿が描かれる。
講談社ノベルスから『西尾維新史上、最長巨編』と銘打って2012年に刊行され、2013年に『悲痛伝』『悲惨伝』『悲報伝』『悲業伝』が発表されたことにより『伝説シリーズ』としてシリーズ化が決定した。
1巻のみ仮面ライダーオマージュで2巻以降は最終巻まで魔法少女ものである。
登場人物
地球撲滅軍
- 地球撲滅軍
- 人類のために古くから地球と戦う大規模な秘密組織。非常に高度に発達した科学技術と組織力を駆使して活動を行う。目的の為には手段は選ばず、多少の犠牲は気にしないような体質であり、人体実験、拉致、大量虐殺、政治への介入など、倫理的に問題のあることをやってのけるようなブラック組織でもある。
- 空々空(そらから・くう):コードネーム『醜悪(グロテスク)』
- この物語の主人公。『悲鳴伝』の時点では13歳。『悲亡伝』の時点で14歳。学校では野球部に所属していた。左利きであるが文字を書くときは矯正された右手で行うクロスドミナンス。普通の中学生だったが、ある日を境に地球と人類との戦いに身を投じていくことになる。感情がほとんど欠落しており、本人もそれを自覚し隠しながら生きてきた。普通の人間が直視すると感動の余り目が潰れてしまう「地球陣」を殺すため、彼のパーソナリティに目をつけた地球撲滅軍に拉致スカウトされる。軍からの支給品は透明化スーツ『グロテスク』と、地球陣の擬態を見破るゴーグル『実検鏡』(いずれも命名は空々)。怪人と戦うより人間と戦っている場面の方が多く、敵を殺すより味方を殺すことの方が多い『英雄』。
- 剣藤犬个(けんどう・けんか):コードネーム『寸刻み』。
- 地球撲滅軍の実戦部隊「第九機動室」に所属する少女。年齢はおよそ18歳。上司から空々のスカウト、及び世話係という名の監視役を任され、彼と一つ屋根の下で暮らすことになる。牡蠣垣閂からは『失敗した英雄』と呼ばれるなど、軍の中における待遇はあまりよくない。軍からの支給品は自動で敵を殺戮する大太刀『破壊丸』と特殊仕様の剣道着。感情的かつ情緒不安定な人物でもある。絶対平和リーグとの間に繋がりがあるようで、『悲痛伝』以降も同組織の魔法少女から名前が挙がることも。
- 氷上法被(ひがみ・はっぴ):コードネーム『火達磨』。
- 第九機動室に所属している若い男性。主に制圧、殲滅といった大規模作戦を担当する。
- 軍からの支給品=施された人体改造は極めて高い温度を持つ灼熱の血液『炎血』。
- 生粋のバトルマニアで、元放火魔。懲役を免除される代わりに軍に所属している。どう考えても悪役。
- 氷上竝生(ひがみ・なみうみ):コードネーム『焚き火』。
- 氷上法被の姉であり、同じく軍に所属している。20代半ばくらいの女性。
- 『悲痛伝』以降の空々の直属の部下を務める人物。空々にはとても忠実。
- 常に冷静で、感情をあまり表に出さない人物。クールビューティー。
- 支給品は弟と同じ「炎血」。ただし、暴走を恐れた軍により法被のものと比べて出力が抑えられている。
- その年齢で魔法少女コスはさすがに・・・。
- 左在存(ひだり・ざいぞん):コードネーム『犬歯』。
- 剣藤の飼っている犬。精神が不安定な剣藤は彼女を抱いて寝ることで安らぎを得ている。以下反転ネタバレ。
- 人間であり不明室室長の左右左危と飢皿気鰻の娘。マッドサイエンティストの母親によって数々の薬物を投与されており、7歳とは思えないほど饒舌。軍からの支給品は首輪の形をした装置『共鳴環』。
- 花屋瀟(はなや・しょう):コードネーム『蒟蒻』。
- 空々の古くからの友人で、学校の先輩だった人物。空々と違い自ら希望して軍に入隊しており、学校に通いながら軍にも所属している。第九機動室の副室長であり、機動室設立の立役者だと言われている。隊内で唯一『火達磨』の暴走を制することができるとされる実力者。現場主義らしい。軍からの支給品は刀身はおろか影すらも不可視な『透明な剣』。正式名称は不明(シャレた名前らしい)。
- 牡蠣垣閂(かきがき・かんぬき):コードネーム『茶飲み話』。
- 第九機動室の室長。空々や剣藤の直属の上司にあたる20代くらいの男性。
- 紳士的な態度をとり年下の空々に敬語を使ったりするが、剣藤に対してはやや冷たい。
- 剣藤とともに「大いなる悲鳴」の生存者に対する軍へのスカウトを担当していた模様。
- 支給品は詳細不明の液体。剣藤から「紅茶」と呼ばれており、牡蠣垣の気配を遮断する能力を持っていた。
- 左右左危(ひだり・うさぎ):不明室室長。
- その存在は地球撲滅軍でも一部しか知らないとされる極秘開発部署「不明室」の室長。非常に優秀な科学者で、その天才的な頭脳を活かして戦略兵器「悲恋」を完成させる。しかし、あまりにも不明室内部でも異端だったため、後に彼女は悲恋のプロジェクトから外されることになり……。この作品の中でも特に道徳観が欠如した人物で、人体改造などを平気で行うマッドサイエンティストである。『非業伝』で魔法少女と化した彼女の姿は竝生の視点からはおぞましい何かのように描写される。
- 悲恋(ひれん):大量破壊兵器
- 不明室が開発した地球撲滅軍の戦略兵器。
地球撲滅軍に関連する人物
- 飢皿木鰻(きさらぎ・うなぎ) :お医者さん。
- 小さな診療所を開く傍らスクールカウンセラーも行っている。実際には撲滅軍と繋がりがあった模様。
- 何人かの主要人物が彼のもとを訪れ、自身の人格に対する相談や、心理カウンセリングを受けている。
- 彼と会話するシーンがある人物は総じて精神的に問題を抱えている者ばかりである。この小説において、独特な精神状態のキャラの内面をわかりやすく読者に解説してくれる人物。かつては妻帯者だった模様。
絶対平和リーグ
- 絶対平和リーグ
- 四国に本拠地を置く対地球組織。地球撲滅軍から見れば同業者にあたる勢力。絶対平和リーグ独自の謎の技術「魔法」を駆使して活動を行う。構成員の多くはあちこちから勧誘されてきた十代の少女達『魔法少女』によって構成されている。魔法の原理も含め多くの謎に包まれた組織で魔法少女の中でも詳しい情報を知るものはほとんど居ない。実際のところは少女を大量に連れて来て、詳しい情報を与えずに武装をさせて危険な任務に就かせるという、撲滅軍と大して変わらないレベルのブラック組織でもある。『悲痛伝』以降、物語が進むにつれて、同組織の実態が徐々に明らかになっていく。
魔法少女/魔法少女製造課
- 伝説シリーズにおける『魔法少女』とは、専用の飛行能力を持ったコスチュームと、『固有魔法』の行使に用いる魔法のステッキ『マルチステッキ』を支給された十代の少女達から成る絶対平和リーグの戦闘員である。全体的に短命らしく、本編に登場する魔法少女はほぼ全員中高生ぐらいの年齢である。各地でスカウトを受けた彼女たちは、研修を受けた後専用の装備を支給され、各地方のチームに配属される。
- 魔法少女製造課は、彼女たちの教育や人事、『固有魔法』の開発などを行う部署で、彼女たちの上司でもある。
- 登檻證(のぼりおり・しょう) 魔法少女『メタファー』
- 香川県出身。若干偉そうだが、比較的フレンドリーで明るい性格が特徴。
- 秘々木まばら(ひびき・まばら) 魔法少女『パトス』
- 香川県出身。チーム『サマー』のリーダー。
- 手袋鵬喜(てぶくろ・ほうき) 魔法少女『ストローク』
- 感受性が高い、感情的で思い込みが激しい魔法少女。
- 臆病な性格をしていて、魔法少女という立場に対して深い思いと誇りがある様子。彼女も幼いころに、飢皿木鰻によるカウンセリングを受けた人物でもある。
- 杵槻鋼矢(きねつき・こうや) 魔法少女『パンプキン』
- 最年長の魔法少女。ほかの魔法少女たちに比べて、何処か斜に構えた態度をとっている。魔法少女の中でも孤立している。帰属意識が薄く、柔軟な発想ができる努力家。生き延びるのに長けた少女。
-
チーム『ウインター』
- 地濃鑿(ちのう・のみ) 魔法少女『ジャイアントインパクト』
- 常に利己的、かつ極めて楽観的でマイペースな性格が特徴的な魔法少女。
- 組織内では素行不良で、かつその行動は予測不能であり、チーム『ウインター』の中でも一人浮いていた。
- 都度井浮世(つどい・うきよ) 魔法少女『キスアンドクライ』
- 白臼討議(しらうす・とうぎ) 魔法少女『マゴットセラピー』
- 魚鳥木つづり(ぎょちょもく・つづり) 魔法少女『スピログラム』
- パドドゥ・ミュール 魔法少女『ゲストハウス』
- ロシアの対地球組織『道徳啓蒙局』からの交換留学生。姉にトゥシューズ・ミュールという姉がいる。
チーム『スプリング』
高知県を中心に活動する魔法少女チーム。武闘派と呼ばれている。チーム『オータム』とは不仲。
徳島県を中心に活動する魔法少女チーム。魔法少女『アスファルト』いわく『弱っちいチーム』。
- 忘野塞(わすれの・ふさぎ) 魔法少女『アスファルト』
- チーム『スプリング』のリーダーを務める、落ち着いた雰囲気の魔法少女。
- ほかのメンバーへの強い信頼と、組織へ対する深い帰属意識を持っているような言動が特徴的。
鈴賀井縁度 魔法少女『ベリファイ』
高知県桂浜にて、空々空を襲撃した『砂使い』の魔法少女。
花綵まなこ 魔法少女『フローズン』
春秋戦争の最終局面において、チーム『オータム』の迎撃に打って出た魔法少女のひとり。
矢庭ゆべし 魔法少女『デシメーション』
愛媛県を潰滅させた魔法少女。
禾幟 魔法少女『ベリーロール』
春秋戦争の最終局面において、チーム『オータム』の迎撃に打って出た魔法少女のひとり。
チーム『オータム』
- 忘野阻(わすれの・はばみ) 魔法少女『クリーンナップ』。
- チーム『オータム』のリーダーを務める、明るい雰囲気の魔法少女。
- ほかのメンバーへ対する深い仲間意識を持っており、彼女たちのことを大切に思いやるような言動が特徴的。
チーム『白夜』
魔法少女たちの間で、噂される謎のチーム。四国ゲームでは暗躍していた。
- 虎杖浜なのか(こじょうはま・なのか) 魔法少女『スペース』
- 『風』を操る黒衣の魔法少女。『天才』のひとり。空々空とは因縁があるらしい……?
- 国際ハスミ(くにぎわ・はすみ) 魔法少女『シャトル』
- 『水』を操る黒衣の魔法少女。『天才』のひとり。吉野川を氾濫させた。
- 好藤覧(すいとう・らん) 魔法少女『スクラップ』
- 『土』を操る黒衣の魔法少女。『天才』のひとり。方言の強い話し方をする。美意識が強く、虎杖浜なのかには『そのうち自分の歯の並びが気に入らないといって、全部歯を抜きかねない』とさえ言われている。
- 誉田統子(ほんだ・とうこ) 魔法少女『スタンバイ』
- 『木』を操る黒衣の魔法少女。『天才』のひとり。『焚き火』や左博士、手袋鵬喜が彼女の襲撃に遭っている。
- 灯籠木四子(とうろぎ・よんこ) 魔法少女『スパート』
- 『火』を操る黒衣の魔法少女。『天才』のひとり。『白夜』のリーダー。誰にも話していない『秘密』があるらしく、その『秘密』が、人工衛星『悲衛』にて開催された太陽系サミットで才覚を振るうことになる。
魔女
酒々井かんづめ(しすい・かんづめ)
先のことを見ることができる幼女。魔女の生まれ変わりにして、火星陣。
太陽系
メタール(水星)- 太陽に強い友情を感じる甲冑少女。
- ツートン(金星)
- だらしない少女。
- スピーン(木星)
- 麦わら帽子の少女。
- リングイーネ(土星)
- 天使の少女。
- ブループ(天王星)
- 横たわる女学生。
- ウォー(海王星)
- 水着の少女。
- ノーヘル(冥王星)
- 死神の少女。
ブルーム(月)- バニーガール。
- 太陽(たいよう)
- 太陽系の頂点にして中心。
- 地球(ちきゅう)
- 人類を滅ぼそうとする悪しき地球にして、人類の敵。
あらすじ
悲鳴伝
二〇一二年十月二十五日、午前七時三十二分三十一秒から五十四秒までの二十三秒間。
人類を無差別に三分の一、削った悲鳴が世界中に響き渡った。
人類を滅ぼそうとする悪しき地球と戦うために感情を持たない少年・空々空が地球撲滅軍に迎えられる。
悲鳴から始まる新たなる英雄譚、第一弾。
地球の悲鳴が、聞こえるか。
悲痛伝
『大いなる悲鳴』から一年後の十月二十五日。
四国全住民消滅事件を調査するべく、単身四国に乗り込む空々空。
人のいない四国で英雄が出会ったのは魔法少女だった。
悲鳴から始まる英雄譚、第二弾。
少女の悲鳴は聞こえない。
悲惨伝
脱出せよ、ヒーロー。
魔法少女『パンプキン』こと杵槻鋼矢と同盟を結び行動を共にする空々空。
彼らの前に突如として現れる黒衣の魔法少女。
その一方で地球撲滅軍の不明室が企てる『新兵器』投入への時間が刻一刻と迫っていた。
悲鳴から始まり、悲痛な別れを繰り返す英雄譚、第三弾。
悲報伝
魔法少女は、殺し合う。
愛媛県の魔法少女チーム『オータム』と高知県の魔法少女チーム『スプリング』が対立していた。
そんな最中、高知県へと英雄・空々空、魔法少女『ジャイアントインパクト』こと地濃鑿、魔女・酒々井かんづめの三人は到着する。
そして、新兵器『悲恋』がついに四国へと上陸する。
一方で、空々たちとは別行動をしているもう一人の同盟・杵槻鋼矢は愛媛へとやってきて魔法少女チーム『オータム』と接触していた。
悲鳴から始まり、悲痛な別れを繰り返し、悲惨な死すら超えていく英雄譚、第四弾。
人類は、絶滅前に自滅する。
悲業伝
少女よ、生き抜け。
『大いなる悲鳴』をきっかけに絶対平和リーグへと参加することになった十三歳の少女、手袋鵬喜。
彼女は絶対平和リーグの研修終了後にあった魔法少女製造課課長、酸ヶ湯原作との面接で『究極魔法』について訊ねられ、その回答によって才能を見出され魔法少女チーム『サマー』へ配属されることになる。
そして四国ゲームが始まり、四国へ上陸してきた『英雄』によって、彼女にとっての世界が粉々に破壊されてしまう。
『英雄』から逃げ出した手袋は干上がった川で奇妙な大人二人と出会う。
地球撲滅軍不明室室長の左右左危と、地球撲滅軍第九機動室室長補佐の氷上竝生の二人だった。
二人は魔法少女の衣装を身にまとっていた。
悲録伝
勝者は、一人。
魔法少女同士の死闘をあらゆる手段で生き延びた一団。
空々空、酒々井かんづめ、地濃鑿、杵槻鋼矢、『悲恋』の五人は奇妙な三人、氷上竝生、左右左危、手袋鵬喜と合流する。
様々な死闘を乗り越えた八人の『魔法少女』たちが一堂に集う。
思惑も思考も能力も――何もかもが異なる八人の目標は『究極魔法』を手に入れること。
空々空が四国に上陸して七日目を迎える最後の夜。
幼児にして魔女の酒々井かんづめは、『ある過去』を彼らに告げる。
地球と『魔女』の戦いを。
魔女の語る『過去』はあまりにも爆弾発言だった。
そして、爆弾発言がもう一つ、空々空たちが繰り広げるミーティング内に響く。
悲鳴に始まり、悲痛な別れを繰り返し、悲惨な死すら越え、悲報が渦巻く戦争の、悲業な最期に続く英雄譚、第六弾。
悲亡伝
悲衛伝
悲球伝
突如途絶えた、人工衛星“悲衛”の消息。
乗船していたのは空々空と地球撲滅軍九名だった。地上残留組の元魔法少女・杵槻鋼矢と手袋鵬喜、人造人間『悲恋』は、捜索を開始。
アフリカ大陸の新興国『人間王国』と、救助船『リーダーシップ』へ赴くことを決める。
かつて同志を救えなかった少女達は、友の悲鳴に応えることができるのか?地球を破壊するための、仲間を助けるための、宇宙規模のプロジェクトが幕を開ける―!
悲終伝
人口の三分の一が失われた地球で、感情を持たないがゆえ、突如ヒーローに選ばれてしまった少年。
生きるために逃げていたはずなのに、戦い続けるうちに死に損なっていた。
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