概要
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
対象が邸宅であれば邸宅侵入罪、建造物であれば建造物侵入罪、艦船であれば艦船侵入罪となる。
ちなみに条文の後半は「不退去罪」にあたる(後述)
客体
住居とは人の住む住宅(人が起臥寝食(きがしんしょく)のために日常的に使用する場所、と専門的にはいう)を指し、それ以外の場合には邸宅・建造物への侵入が罪として扱われる。例えば、学校への侵入は建造物侵入罪となる。
この罪は建物の周りの土地に侵入した場合にも成立する。庭や、住宅や建造物に接していて壁などで遮られている土地は「囲繞地(いにょうち)」とよばれ、住宅や建造物の一部として扱われる。そのため、庭に入っただけの場合にも住居侵入罪の既遂となる。
「侵入」の意義
もっとも、新聞配達のにーさんがマンションの共用部に入っただけでこの罪が成立するのはおかしいため、「侵入」の定義による限定がなされる必要がある。もっとも、この限定にはこの罪の保護法益(その罪が何を守りたいのか)に絡んで学説が分かれている。
- 旧住居権説: 保護法益は家長の居住権とする説→家長の意思に反する立ち入りが「侵入」
この説だと、ビッチ娘が男を連れこんだ場合、よほど寛容な父親でなければ男は既遂となる。戦前の説。 - 平穏侵害説: 保護法益は住居の事実上の平穏→住人や利用者の平穏を害する立ち入りが「侵入」
この説だと、強盗目的を隠して家に入った場合でも、郵便配達を装うなど平穏であれば成立しない。 - 新住居権説: 保護法益は全住人・利用者の居住権とする説→住人や利用者の意思に反する立ち入りが「侵入」
この説だと、ビッチ娘が男を連れこんでも成立しないが、平穏であっても不法な目的の立ち入りは成立する。
最高裁は、新住居権説を取っているとされる。
判例としては、自衛隊の官舎に反戦ビラを投函するために官舎の敷地・各住居の玄関前の新聞受けまで立ち入った行為が、最高裁で「侵入」とされている。これは、住人は反戦ビラの投函という活動を求めていないという点で居住権を害したためである。もっとも、言論の自由との関係からマスコミ・一部学者からは猛烈に批判されている。ちなみに、平穏侵害説からは平穏に反戦活動をした以上は成立しないことになる。
その他
住居侵入罪はその後に殺人罪・窃盗罪・強盗罪・放火罪・強姦罪などをすると、「牽連犯」となって「科刑上一罪」が成立し、法定刑としては無視される。住居侵入罪の後にやっちゃうだいたいの罪には牽連犯が成立してしまうので、処断刑で考慮されるのはともかく、この罪が議論になるのは現実としてはあまりない。
刑法130条文の後半、「又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者」の部分は「不退去罪」にあたり、即時退去を要求できる。望まぬ訪問客(訪問販売・宗教勧誘・新聞拡張員・押し売り・押し買い・金の無心・NHK・点検商法・居座りなど)はもちろん、家に招き入れてしまった後に「実はアカン奴だった」と気付いた場合にはこちらが適用できるので覚えておこう。ガチで悪質な場合は警察への通報もためらわないこと。
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関連項目
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