体罰の会とは、「子供には教育としての体罰が必要である」「学校教育の場に体罰を取り戻す必要がある」と考える人々の会である。
初期には「教育における体罰条項を考える会」「教育における体罰を考える会」という名称で活動していた時期もあった。
概要
2008年4月28日に設立された会。理事や顧問には「日本会議」「新しい歴史教科書をつくる会」「日本文化チャンネル桜」などに所属するいわゆる右派・保守派の人士が多く、記念すべき第1回総会は靖国神社で開催された。
設立当初、「教育における体罰条項を考える会」(略称KTKK)であった頃のオフィシャルウェブサイトのURLは
「http://ktkk.s349.xrea.com/」
だったが、「体罰の会」に改称した後にはURLが
「http://taibatsu.com/」
に変更された。タイバツドットコム。なんとパワーのあるURLだろうか。
2009年6月26日には「教育における体罰条項を考える会」として、「維新政党・新風」の「鈴木信行」や「日本文化チャンネル桜」の「水島総」の協力の元に「教育における体罰を考えるシンポジウム」を開催。当時の東京都知事「石原慎太郎」とジャーナリスト「櫻井よしこ」による対談「教育における体罰について」や、様々なパネリストを招いたパネルディスカッション「教育に体罰は必要か?」などが行われた。
しかしその後は、数回の「研修会」を開催したものの2010年12月を最後にオフィシャルウェブサイトの更新が途絶えてしまう。2018年6月にはドメイン名が失効したことによりサイトが消滅してしまった。
ただしオフィシャルサイト以外の情報源からは、オフィシャルサイトの更新が途絶えた2010年以後も活動を継続している記録が確認できる。例えば本記事の「関連生放送」欄に掲載した2013年の「緊急集会」など。
とはいえ、2019年10月現在時点でインターネット上で検索して探し出せる限りでの直近の活動は、2016年5月28日に開催された「男の教育 体罰を語る」と題したシンポジウムであるようだ。3年以上も活動の痕跡が無いことから、既に解散あるいは自然消滅してしまっている可能性もある。
主張
※以下は、オフィシャルウェブサイト(消滅済みのためインターネットアーカイブ)のトップページにある「趣意書」(2009年版)を要約したものである。内容の科学的/論理的な妥当性は保証しない。
- 教育において体罰は必要である
- 進歩を目的とした体罰と、単なる暴力や虐待とは異なる
- 仮に体罰と称して度を越えるような事例があったとしても、体罰自体は否定されるべきものではない
- ノーベル賞受賞者の動物行動学者コンラート・ローレンツが種内攻撃は善(種族保存・秩序維持に寄与する)だと証明している、よって同じ種内攻撃の体罰も善であると科学的に証明されている
- 子供には体罰を含む教育を受ける権利がある
- 国家には子供に体罰を含む教育を受けさせる義務がある
- しかし学校教育法第11条但書により学校では体罰が禁止されてしまっている
- 一方、民法第822条では親権者が子に必要な範囲の懲戒を行うことが認められているため、家庭で親が子に体罰を課すことは合法である
- 家庭で合法な体罰が学校で違法となるような矛盾した状況は科学的ではない
- 科学的でない現状は「体罰禁止教」という宗教に支配された状況である
- 戦後の教育は子供の自主性を尊重し、命の大切さだけを教える個人主義の「理性教育」である
- 個人主義の理性教育では「自分の命を捨ててまで守るべきものがある」ことを教えないため、自分の命だけが大切になってしまう
- こうした戦後の教育のせいで親子の序列と秩序、そして教師と生徒の序列と秩序が乱れ、イジメ・不登校・自殺などが起きている。
- ひいては教育全体が回復不能となり、そして社会秩序が崩壊寸前である
- これを正して教育を復活させるには体罰が必要である
- そのためにまず、学校教育法第11条但書の改正(削除)を目指そう
- 「児童虐待の防止等に関する法律」は虐待と体罰の区別もつかない欠陥法である
- この法律に基づいて、児童相談所が体罰を行った親権者から児童を拉致し、親子を引き離して家庭を崩壊させる事案が恐ろしい勢いで増加しており問題である
なお、設立当初である2008年版の「趣意書」は上記で要約した2009年版の「趣意書」とは内容が異なっていた。例えば2008年版には
「戦後日本の現状は、東京裁判史観に立脚した占領政策の残滓の中、わが国が伝統的に保持してきた美徳を著しく毀損する様々な現象を目の当たりしています。」
といった文章が登場するが、2009年版ではこの文章が消滅している。
また、法律の変化によって一部が古い記述になってしまっていることにも注意。2019年6月に「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」(略称:児童福祉法等改正法)が成立し、2020年4月から施行された。この法律では「児童虐待の防止等に関する法律」の改正を定めており、体罰は民法第822条で定める「必要な範囲」を超えること、すなわち家庭においても体罰が違法とみなされることが明文化された。よって、上記の主張のうち「民法第822条では親権者が子に必要な範囲の懲戒を行うことが認められているため、家庭で親が子に体罰を課すことは合法である」「家庭で合法な体罰が学校で違法となるような矛盾した状況」という部分は過去のものとなっている。
理事・顧問
※オフィシャルウェブサイト内「体罰の会 理事・顧問」のページ(同じくインターネットアーカイブ)に掲載されていた名簿より。ただし「平成22年6月10日現在」の情報とのこと。
会長
副会長
理事
顧問兼支部長
顧問
- 水島聡(「聡」は原文ママだが、おそらく「総」の誤字か) … 水島総は「日本文化チャンネル桜」創立者にして代表取締役社長
- 村松英子 … 女優・詩人、「日本会議」メンバー
- 青柳武彦 … 社会学者、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター客員教授(2010年当時)
- 田久保忠衛 … 政治学者、「新しい歴史教科書をつくる会」顧問、後に「日本会議」会長
- 松本道弘 … 英語通訳者
関連動画
上記「概要」で触れた、2009年の「教育における体罰を考えるシンポジウム」の録画映像。
「体罰の会」副会長である「南出喜久治」が2009年に行った記者会見で児童相談所を批判する様子を記録した動画。顧問である「戸塚宏」も出席している。上記「主張」内で登場した「コンラート・ローレンツが種内攻撃は善と証明したので、体罰も善と証明されている」という論法が、ここでも主張されている。
「日本文化チャンネル桜」の討論番組であり「体罰の会」とは直接の関連はないが、顧問として名を連ねる「戸塚宏」と「水島総」が登場して「体罰」について討論する動画。
関連生放送
2013年2月5日に「体罰の会」が行った「緊急集会」の様子。タイムシフト視聴が可能。
関連商品
この「体罰の会」から出版された書籍は無いようだ。
しかしこの会が発足した後の2010年に出版された、同会の顧問兼支部長である「戸塚宏」が「田母神俊雄」と共著した体罰肯定論の書籍として『それでも、体罰は必要だ!』というものがある。
関連リンク
関連項目
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