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この記事は政治的主張を取り扱った記事です。 |
保守左派とは、政治思想におけるグループ分け、ポリティカル・コンパスにおける思想の一つである。ここでは日本の保守左派について説明。
権威主義、経済左派。
理想の国は、伝統秩序重視の社会主義福祉国家である。言葉だけ聴くと「は?」って感じだと思うので解説していく。
概要
保守=右翼であり、革新=左翼であるという考え方が一般的かもしれないが、保守左派はそれぞれの持つ特徴を別々の分野で併せ持つ考え方のことである。つまり保守左派という文字を見て、「矛盾だ!」と糾弾するのは誤り。
つまり、論理・道徳・秩序・伝統については保守的な価値観を重視する一方、経済政策については「富の再配分」「格差社会の是正」「福祉政策」などといった社会主義的な価値観を重視する。
自由貿易への警戒感と、憲法改正、独自外交などの観点からアメリカ合衆国と一定の距離を置こうとする傾向がある。
だが、アメリカ合衆国と距離を置くことは、必ずしも保守左派の統一された思想ではない。
現存する右派との区別は比較的曖昧な点も多いが、現存する左派との区別は明確に行おうとする傾向がある。それは特に日本において、左派=売国というイメージが持たれているためで、これを否定したいからである。
保守左派を自認、支持する者たちは「愛国左派」「愛国左翼」という表現を用いることもある。
また、左翼、革新勢力などからすれば「反動」ですらあり、彼らに「保守反動」または「右翼反動」と呼ばれることもある。
保守左派について論ずるときは、政治思想が右と左と真ん中しかいないという固定概念を捨て去る必要がある。
また、ネット右翼と混同されることもある。理由は後述する。
日本での具体的な考え方
- 国の持つ歴史や文化は守るべきである。
- 愛国心を育むことは必要である。
- 自国の産業や国産品を守るべきであり、TPPには反対である。
- 自衛隊は安全保障のために必要である。増強、再編などにも賛成である。
- 産業保護、国防、外交の観点からアメリカ支配からの脱却を目指す必要がある。
- 移民や帰化に関しては、厳格な基準を設けるべきである(移民政策には基本的には反対)。
- 外国人については、国籍問わず労働意欲の無い者は受け入れるべきではない。
- 格差社会は無くすべきである。
- 天皇や皇室は日本の伝統であるため、守るべきである。
- 憲法9条は改正すべきである。
- 従業員の使い捨て雇用や、サービス残業などの問題を解決して、労働者の負担を減らすべきである。
- 社会福祉や医療制度は、現在よりも更なる発展を目指すべきである。
- 若者の修学・就労は国が積極的に支援するべきである。
- 国益に反する企業・団体は規制し、大企業中心の経済は政府がある程度コントロールすべきである(計画経済)。
- グローバリズムには基本的に反対である。
日本人と保守左派
理由としては、
- 保守的な政党が政権を握っている期間が非常に長い。
- 日本の伝統や文化は守られるべきである、あるいは変えたくない、変化を嫌う。
- 皇室は存続すべき、またはあえて撤廃する理由はない。
- 大規模な政治的・経済的混乱があるぐらいなら今のままがよい。
- 日本の従来の左翼は信用ならない。
という、日本人の古い性質的な考えが、保守的な考え方を良しとする思想として現れている。戦後の過激な活動などで従来の左派が信用を失っているということもある。一方で以下のような左派的(日本の左派ではない)考えがある。
- 長期間続いている官僚政治への不満がある、あるいは無くすべきだ。
- 一億総中流の時代からバブル崩壊、就職氷河期などを経て、ワーキングプアを初めとする格差社会への不満。
- 社会保障の更なる充実を図るべきである。
- 貿易、外交的にアメリカに従属するのはもうやめて、独自の外交を貫くべき時代が来ている。
- 自分たちの国家は、政治的、経済的、軍事的に自分たちで守るための体制が必要であり、現在のままでは不可能。
- 日本国憲法は現代に即しておらず、議論が必要である。特に憲法9条を理由とした無防備や無抵抗には反対である。
といったものである。これらは特に、アメリカによる戦後教育から完全に分断されている若者世代に多くなってきている。だが同時に、若者の政治への関心の低さからこれらの考え方があまり広がっていないのも事実である。
また、日本に存在する従来の左派政党とは違い、憲法改正を視野に入れるなど、本来の意味での左派的考えを標榜するのも特徴である。
保守左派の外交関係
特定アジアと保守左派
以下は単純に見れば保守でも左派でもない考え方だが、特に若年層に多い考えであり、保守左派的な考え方として見なされる場合もある。主にこれらはネット右翼と混同される理由でもある。
- 東南アジアでの平和的・経済的関係は強化していくべきであるが、韓国・中国・北朝鮮の3か国は、国益、及び国民感情を著しく害する為、無条件での友好は難しい。
・対韓国:
慰安婦問題は基本的に日韓基本条約で完全に解決済。
過去の談話については再検討、議論、撤廃も必要である。
世界各国で行われているロビー活動を批判し、正しい歴史認識を広め誤解を解く為の最大限の努力を行う。
竹島問題には国際司法裁判所への提起も含め、毅然として対応していく。
・対中国:
南京大虐殺は存在そのものについて議論が必要で、人数についても同様である。
領海侵犯には現在よりも厳しい措置を取れるよう、法改正含め、議論を行ってゆく。
・対北朝鮮:
拉致問題は完全に解決するために、北朝鮮との対話・圧力は弱めるべきではない。
国内協力者とのつながりを徹底的に調査し、厳しく追及する。
だが勘違いしないでほしいのは、保守左派が中国朝鮮に強硬な態度に出るからネット右翼と混同されるようになったというより、ネット右翼だと思っていた人が中国朝鮮に強硬な態度をとり、ポリティカル・コンパスなどによって保守左派的な思想であると判断されたため、これらの考えが混同されるようになった、ということであろう。
当然、ネット右翼と混同されることを嫌う者もいる。
アメリカと保守左派
戦争の究極の目的は勝つことであり、決断を先延ばしにすることではない。
戦いにおいては、代わりに勝利を収めてくれる代理人はいない。
保守左派は、産業保護の観点から自由貿易に対して反対の立場であり、アメリカとの相互協力には消極的な姿勢を取る。
以下の点から保守左派はアメリカとの関係に否定的である。
- 特に国家防衛の観点からの憲法改正と自衛隊の強化を推進する(アメリカは日本の軍備拡張には反対の立場)。
- アメリカ(GHQ)が行った戦後教育に対して批判的。
- 日本が他国間の戦争に巻き込まれることへの強い忌避感を持つ。
- 自国産業と技術を守るために自由貿易に批判的。
また、日本と関係が悪化している中国や韓国に対して、アメリカが断固たる態度を取ろうとしないこと、それに伴ってアメリカに対する信頼に懐疑的になっていること、中国韓国が周辺国の中では数少ない憲法改正に反対している国家であること(=日本が国際社会での影響力を増す)、アメリカが憲法改正の延長上にある軍事拡張に反対してること、などの理由がある。
といってもこれらは副次的でもあり、一番は「国家防衛のためには自衛隊の力を増す必要があり、そのためには憲法改正も必要である」という政治的理由と、前述した自由貿易への反対という立場から、アメリカとは距離を置こうとしているだけ、と受け止めることもできる。
保守左派の問題点
保守左派の考え方の問題は、それらをどう両立させるか? ということから始まり、この思想は危険ではないか?に結び付きかねず、バランスよくかじ取りをする必要があるということである。
思想そのものは理想的であったとしても、これらを両立させることは並大抵のことではない。日本の政党は残念ながら親米保守か反米左派のどっちかに属するものが目立つ(かつて民主中道を掲げる政党が政権を担ったことがあるが、その結果は…→民主党)。一応、反米保守という考えも存在はする。
日本で最大の政党である自由民主党は、長期間にわたり第一党を貫き、政権の座にあった保守政党であるから、官僚政治の権化のような存在である。日本の安全保障のために戦後アメリカとの関係において譲歩を重ね、いわゆる「弱腰外交」と呼ばれる日本を作ってきた張本人でもあるが、現在の日本の経済や世界における日本そのものの地位を担うにあたって、重要な役割を果たしているのは事実である。
左派的な代表格と言える各政党は、殆ど政権を担ったことがない。官僚政治などには反対し、平和国家の存続を謳うが、自国の安全保障のビジョンが不透明(あるいは理想主義的)、国益や国民感情を害する国家に共鳴・同情する、自分たちの戦後活動を棚に上げる(あるいは不透明)、革新派の筈なのに憲法保護を掲げるなど、マイナス側面あるいはダブルスタンダードな面が目立つ。
日本のマスコミはどちらかといえば左寄りであるが、昨今のマスコミの論調も若年層からは反発を招いている。
保守左派に比較的近い政治団体・政党であっても、経年と共に保守か革新かのどちらかに偏っていく可能性があり、これらの考え方を維持し継続することは難しい。
また、自由貿易を警戒するあまり反グローバリズムが強くなり、民族主義などの一面が台頭するといわゆるファシズムや国家社会主義、排外主義などに近づく可能性がある。逆に革新に偏り過ぎれば、スターリン主義などの過激な左派思想に近づいてしまう。極左と極右は紙一重。
これら諸問題により、保守左派という考え方は成立そのものが困難であり、保守や左派の考え方をどれだけ取り入れるかによって定義も曖昧になりがちである。
加えて、保守左派はその政治思想から比較的穏健派で行動に関しても消極的であるため、他の政治団体や組織と違って大規模な組織化に至っていない傾向があり、「日本には保守左派の政党が無い」という事実から「では作ろう!」とならずに「あったら投票するのに」程度に留まっているのも特徴の一つであり、問題点の一つでもあろう。日本人らしいと言えばそれまでなのだが。
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関連項目
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