備長炭(びんちょうたん)とは、木炭の一種である。
同名の実況プレイヤーは「備長炭(実況プレイヤー)」を、キャラクターについては「びんちょうタン」を参照。
概要
主にカシの木の仲間を使って作られた木炭の一種。ウバメガシを使ったものが高級品ではあるが、ウバメガシの自生のためには、一定量以上の降水が必要であり、自生エリアは和歌山県の日高地方、高知県の安芸地方など限られている。それ以外では、これに限らずアラカシやアカガシ、アオガシなども用いられるし、代替の高級品に至ってはナナカマドが使用されるため、もはやカシですらない。ちなみに後述する紀州備長炭はウバメガシ、アラカシ以外のものは名乗れない。
紀州産が最高級品といわれ、他産地では再現できない条件が2つある。一つはウバメガシの存在、もう一つは高温の焼成に耐えられる縦窯を作れる土の存在である。その2つを兼ね揃えた紀州産(特に日高川~みなべ~田辺市山間部)だけが、瞬時に火力を出せる極上の備長炭を焼成できる。かつては旧南部川村が日本一の産地であったが、昨今では市町村合併によって日高川町が県内一の産地となっており、Iターンによる炭焼き職人もけっこういたりする。この日高川町は古くは林業や木炭製造が盛んであったのと、煤煙や降灰を懸念しなくて済む、隔絶されたような谷間の集落が無数に存在するからであり、町も備長炭の産業活性化と後継者育成、原料となるウバメガシ植林に注力している。和歌山県内では日高川町、田辺市、みなべ町の順であり、県内でも産地変遷が目まぐるしい(合併もそうだが、職人の高齢化、その他産地が原料のウバメガシを伐採してしまったのも原因)。
ちなみに、他の産地では土佐産と日向産が有名だが、土佐はウバメガシは豊富に生えているのもの土の問題で縦窯が作れず、横窯で半ば大量生産的に行っている(それで備長炭としては和歌山県より生産量が多い年もある)。また日向では縦窯は作れるがウバメガシが植生していないのでアカガシで代用している。いずれも紀州備長炭には見劣りするが、それでも他の中国産や東南アジア産よりは遥かに高価であり、一般に備長炭といえば紀州備長炭、土佐備長炭、日向備長炭のみがブランド品とされている。また近年では秋田や石川、徳島などでも備長炭を作り始めている地域がある。
瞬時に高い火力を出せるので鰻屋、焼き鳥屋に至っては紀州備長炭でないと、とこだわりを持つ職人も少なくない。また、アラカシを使ったものは持続力があるので、じっくりと焼きたい場合に向いている。
燃やした際の火力そのものは数ある木炭の中でもそれほど高くないのだが、煙が発生しにくいため店舗内で炭火焼をするような料理屋には重宝される。逆に言えば煙が出ないので燻製用途には向かない。 また、低温とはいっても長時間にわたり持続して燃えるため、家庭や団体旅行でのバーベキュー用途などにも良い。
そして備長炭において燃やす以外に有名な用途が、化学物質の吸着作用である。ご飯を炊く前に釜に入れてカルキ臭や水自体の雑味除去、簡易浄水、防臭作用など、これらは備長炭を焼成した際に出来た微細な穴が分子量の小さな水分子などは素通りさせ、臭いや味などの基となっているある程度大きい有機化合物分子だけを止めるからである。
吸着用途に特化させるように化学処理をほどこした活性炭に比べれば見劣りするが、粒の細かい活性炭を下手にご飯にはブチ込めないし、用途上の棲み分けはなされているので問題は無い。生活の知恵である。
関連項目
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