傷つけない笑いとは、2020年より広まったお笑いブームの一つである。
概要
今までのお笑いに多かった「ボケのズレた発言や観念をツッコミが強い言葉や暴力で指摘する漫才」「ハゲやブスなどの身体的特徴を題材にした自虐・イジリネタ」「下ネタや政治ネタなど人を選ぶ芸風」は古い笑いの取り方であるとし、「演者の仲の良さがわかる漫才」「前向きになれるネタ」「みんなが不快にならない芸風」こそが、今後評価されるべき新しいお笑いの形であるとしたブームのこと。
近年の多様性やポリティカル・コレクトネスを尊重する風潮と合致したことで生み出されたと思われる。
傷つけない笑いを扱う芸人
ぺこぱ
ブームの発端。シュウペイの雑なボケを松陰寺が氷室京介のようにツッコミそうでツッコまない「ノリツッコまない漫才」をM-1グランプリ2019で披露し、人気を博す。
予想を微妙に超えてくるツッコミワードや、ビジュアル系が言いそうなフレーズのシュールさが笑いどころではあるが、このブームによって「どんなボケも松陰寺が否定せず優しく受け入れてくれることが魅力」という風に持ち上げられるようになる。
本人らも遅咲き芸人としてこのブームに乗っかるようになったが、自身の生み出したブームによって他芸人がやりづらくなっていたことに責任を感じてもいたらしい。
かが屋
お笑い第7世代の芸人。彼らの作るコントは「後味の良さ」を心がけているらしい。
傷つけない笑いだけではなく、「ちょっと変わった人と鉢合わせた時の気まずさ」を取り上げたネタや、女優の木野花の「いかにもお母さんっぽい顔」という身体的特徴を扱ったネタも存在する。
ティモンディ
「やればできる」を代表とした、ボケの高岸の何を言われてもポジティブに返すキャラクターがプチブーム。
傷つけない笑いに振り回されているかといえばそうではなく、怪我によって野球選手の夢を断念していた高岸はその後プロデビューを果たす等「やればできる」を体現し続けており、多くの人々に夢を与えている。
なかやまきんに君
本人のブームはYouTubeチャンネルの人気や『仮面ライダーゼロワン』の腹筋崩壊太郎がきっかけだが、彼の「いかにも筋肉ムキムキな人っぽいキャラと言動によるネタ」も傷つけない笑いとされた。
ただ、彼の芸風は「オチの弱いギャグをゴリ押しでオトして笑いを誘う」スベリ芸が中心であり、バラエティでは割とボロカス言われていることが多い。
もう中学生
段ボールで作り上げたイノセントな世界観のネタが印象的なピン芸人。
「ためになったね〜」「よかったね〜」と褒めながら締める芸風が傷つけない笑いと言われるようになった。
彼の再ブームは傷つけない笑いではなく『有吉の壁』等で見せた彼の芸風に潜む狂気的な部分がウケ始めたことがきっかけ。
反応
そもそもお笑いとは、そのヒトやモノにあるちょっと変わった特徴・考え方の違和感を取り上げて、客に共感させることが主となるため、それを扱う以上誰も傷つけないことは不可能だという声は当初から多かった。
また、ぺこぱと同時期にM-1で人気を博したミルクボーイの「地味な物への偏見」をネタにした漫才が「傷つけない笑い」として一緒くたにされており、その定義はかなり曖昧なものだった。
他にもサンドウィッチマンやぼる塾など、コンビ間で仲が良い芸人は互いを尊重し合っているとして「傷つけない笑い」にされることもあった他、ダウンタウンや千鳥(お笑い)といった人をイジる芸風の芸人も、コンビ仲が良ければ「傷つけない笑い」としてひっくるめられることもあった。
さらには超新塾・アイクぬわらや濱田祐太郎など、自虐であれば人種や障害も傷つけない笑いになるというダブスタ気味な評価もあった。
この時期より、文春砲によって「良い人だと思ってたら実はガッカリな人だった」タレントが続出しており、傷つけない笑いブームは「視聴者を決して不快にさせない人がテレビに出続けるようになる」ことを期待して生まれたきらいはある。
このブームの反動か、以降鬼越トマホークやウエストランドなどの「明確に人を傷つける笑い」や、岡野陽一や相席スタート・山添といった「クズ芸人」がブームになった他、『水曜日のダウンタウン』ではクズ芸人の安田大サーカス・クロちゃんやコンビ仲の悪いおぼん・こぼんを取り上げた大型企画が何度か放送されるなど、業界内でもこの風潮を嫌っていた者は少なくなかったのかもしれない。
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関連項目
- お笑い第7世代 同時期に起こっていたお笑いブーム
- 漫才か漫才じゃないか論争
- 僕とロボコ 「傷つけない笑い」を意識した作風となっている。
- Undertale 誰も傷つかなくていいRPGだが、お笑いとは関係ない。
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