八百長(やおちょう)とは
真剣に争っているように見せながら、事前に示し合わせた通りに勝負をつけること。
概要
やお‐ちょう〔やほチヤウ〕【八百長】 の解説
《相撲会所に出入りしていた長兵衛という八百屋(通称八百長)が、ある相撲の年寄と碁 (ご) を打つ際に、いつも1勝1敗になるように手加減していたことからという》
1 勝負事で、前もって勝敗を打ち合わせておいて、うわべだけ真剣に勝負すること。なれあいの勝負。「八百長試合」
2 なれあいで事を運ぶこと。「八百長の質疑応答」
スポーツ・ゲームにおいては、全ての競技者が勝利や上位などよりよい結果を目指して切磋琢磨することを前提としており、事前に結果がわからない真剣勝負であるからこそ成立している。
しかし、たとえばその競技を賭博の対象としている者にとっては、だからこそ事前に結果が分かっていればそれを利用して大儲けすることができる。そのため、競技者に勝利よりも大きい利益(主に金銭)を提供することで、わざと負けるように依頼し、競技者がそれを受けて全力を出さずにわざと負ける。これが八百長である。あるいは、競技者が対戦相手の境遇に同情してわざと勝ちを譲る、などの場合もある。
これが行われると、参加者が全力を出してより良い結果を目指す真剣勝負という競技の前提が成立しなくなるため、およそ競技として行われるものについては、八百長は厳しく禁止されている。発覚した場合には競技からの永久追放などの厳しい処分が下されることになる。
無くならない理由
それでも八百長がなくならないのは、その競技で得られる収入が少なすぎて競技者が八百長に手を染めないと生活できなかったり、あるいは競技内に慣例的に根付いてしまっていたりするためである。プロスポーツ選手の報酬が一般人の感覚からすると異様に高額に見えるのも、充分な収入を保証することで八百長を排除するためという一面がある。
ただし、一部スポーツにおいてはルール上「負けることがよりよい結果に繋がる」状況が成立する場合があったりする(例:予選突破を既に決めた後の消化試合で負けた方が決勝トーナメントで楽なブロックに入れる、完全ウェーバー制のドラフト会議があるため最下位になることでその年のアマチュアの目玉選手を確実に指名できる、など。2018 FIFAワールドカップで日本代表がグループリーグ突破のために負けている状況でパス回しで時間稼ぎをしたこともこれに該当する)。その状況において目先の勝利を目指さないことは、真剣勝負の原則に反すると批判されることもあるが、長期的なより良い結果を目指すためとしてルール上は容認される傾向にあるため、八百長とは言いにくい。
ただし、あまりに露骨であれば「無気力試合」として警告や処罰の対象となる場合がある。また、そういった消極的な試合が目に余るようになると、原因であるルールが改正されることになったりする。たとえばサッカーの勝ち点はかつて勝利2、引き分け1、敗北0だったが、引き分け狙いの消極的な試合が増えすぎたために勝利の勝ち点が3に引き揚げられた。
定義
なお、八百長とは語義的には「勝つことを目的としている競技でわざと負ける」こと(敗退行為)を指す。なぜかというと、同レベルの選手やチームが競い合う場合において、負ける側の合意なしに確実に勝つことは困難であるからだ。片方が勝利のために審判を買収して有利な判定を得ようとするような行為は、相手が「負ける」という合意をしていない場合、買収した側がどんなに有利な判定を貰っても実力で負ける可能性があるため、試合単体や一度の競技では不正が行われたとしても八百長としては成立しない場合がある(勝敗や順位が完全に判定者によって決まる採点競技の場合はその限りではない)。
しかし、より長期的なリーグなどでは、特定のチームに有利あるいは不利な判定が続くように仕向けることで最終的な順位をある程度恣意的に操作することは可能である(例:2000年代に発覚したサッカーセリエAのカルチョ・スキャンダル)。そのため、「競技において勝敗・順位を操作しようとする不正行為」全般を指して八百長とも言う。
発覚した八百長事件の例
- ブラックソックス事件 (1919年、メジャーリーグベースボール)
- 1919年のワールドシリーズで、敗れたシカゴ・ホワイトソックスの主力選手8名が賄賂を受け取り敗退行為を行ったとして刑事告訴された事件。刑事責任は問われなかったが、8名は永久追放となった。しかし下された処罰の不公平感から、追放された8名を悲運のヒーローとして扱う風潮もある。「嘘だと言ってよ、ジョー!」という観客の少年の有名な言葉は言っていない台詞らしい。
- 黒い霧事件(プロ野球) (1969年~1971年、日本プロ野球)
- 西鉄ライオンズを中心に、当時のパ・リーグに蔓延していた八百長が発覚した事件。最終的に6人(事実上のものを含めれば9人)が永久追放、その他多数の処罰者を出し、パ・リーグの人気低迷の大きな原因となった。当該記事を参照。
- カルチョ・スキャンダル (2006年発覚、サッカーセリエA)
- イタリアのサッカー一部リーグ・セリエAにおいて、ユヴェントスFCのGMが中心となり長期的・組織的に審判を買収・脅迫して自チームに有利な判定や他チームの勝敗の操作を行わせていたことが発覚した事件。ユヴェントスは2004-05シーズンと2005-06シーズンの優勝を剥奪され、セリエBに降格。関与していたACミラン、フィオレンティーナ、ラツィオも勝ち点剥奪などの処罰を受けた。
- 大相撲八百長問題 (2011年、大相撲)
- それ以前も大相撲の八百長はたびたび疑惑が報じられていたが、金銭の授受を伴う白星の売買が初めて具体的な証拠つきで発覚した事件。同年の春場所が中止になり、関与が発覚した20名以上の力士が引退するなど大問題になった。
- RIZIN.33 シバターVS久保優太(2021年、総合格闘技)
- 2021年の大晦日の総合格闘技興行「RIZIN」にて組まれたシバターvs久保優太戦において、試合前にシバター側から「殴られるとしびれる障害があるので本気で殴らないで欲しい」「1ラウンドは流して、2ラウンド目からガチで試合をしよう」と持ち掛けられ、久保側が了承してしまったことが発覚した。しかし、シバターはこの提案を自分から一方的に破棄し、久保を騙し討ち。試合は1ラウンドでシバターが勝利した。勝敗を決めていたわけでもない上にシバターが結局騙し討ちしたので厳密には八百長ではないのだが、騙し討ちをしたことやその後のRIZIN公式の対応を巡って非難が殺到した。
ゲームにおける八百長
八百長は現実のスポーツだけでなく、
オンラインゲーム等における対戦ゲームでも用いられる。
「アビューズ行為」と呼ばれ、事前に示し合わせてキル/デス数を稼ぐ、短時間で終了させる試合を意図的に繰り返して経験値やポイント、イベント報酬を過剰・不正に獲得することなどが挙げられる。不正なチートツール等は必要ないため数値異常やプログラム使用による不正が検出しづらく、証拠がなければ摘発しづらい。
関連動画
関連項目
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