公募増資とは、企業の財務に関する言葉の1つであり、増資の形態の1つである。
概要
定義
公募増資は、不特定多数の株式市場の参加者に対して株式の購入を呼びかけ、応募者に対して株式を売却してその代償として出資を受け、出資金額の1/2以上を資本金として、それ以外の出資金額を資本準備金にするものである。
長所その1 企業の資金調達の金額が大きくなりやすい
公募増資と第三者割当増資は、既存の株主以外の新しい人から資金の提供を受けられるので企業の資金調達の金額が大きくなりやすい。一方で株主割当増資は既存の株主からの資金提供に頼るので、企業の資金調達の金額が小さくなりやすい。
新自由主義を採用して金融市場の国際化を進め、資本の国際移動の自由化を進め、そうしたうえで株式会社が株式を市場に売り出せば、世界中の投資家が買い手となり巨大な金額の出資を受けることができ、巨額の公募増資をすることができる。新自由主義が席巻する国において、公募増資は第三者割当増資よりも企業の資金調達の金額が大きくなりやすい。
長所その2 既存の株主は資金と意思があれば自らの利益を維持できる
既存の株主は資金と意思があれば公募増資に参加でき、所有する株式の数を増やすことができ、持ち株比率・議決権比率を維持できる。議決権比率51%の既存株主は、公募増資のために売り出された株式の51%を買い占めれば議決権比率を51%に維持することができる。
公募増資をすると「自己株式を除く発行株式総数」が増えてEPS(1株あたり税引後当期純利益)が低下して「株式の希薄化」が発生する。しかし既存の株主は資金と意思があれば公募増資に参加でき、所有する株式の数を増やすことができ、受け取り配当金額を一定の金額に維持することができる。税引後当期純利益が100万円で1株1議決権の企業があり、100株をすでに売り出していて、そのうち20株を投資家Aが所有しているとする。その状況で100株の公募増資をするとEPSが1万円から5千円に下落するのだが、投資家Aは売り出された100株のなかで20株を買えば「EPSが半分になったが所有する株式が2倍になったので受け取り配当金額が維持されるだろう」と考えることができる。
ちなみに、既存の株主に資金や意思がなく、既存の株主が公募増資の呼びかけに応じない場合、その株主は持ち株比率・議決権比率を減らすことになり、受け取り配当金額を減らす可能性がある。
短所
公募増資は第三者割当増資や株主割当増資よりも手続きが長くなりやすく、資金を得るまでの時間が長くなりやすい。
公募増資は株式を引き受ける相手を株式会社が指名できず、「どんな人が株主になるのだろう」という不安と隣り合わせになり、株式会社に敵対的な投資家が株式を取得する可能性がある。
公募増資は市場を介する資金調達であり、直接金融の典型例である。狭義の直接金融の定義は「銀行以外の投資家による社債や株式の購入であり、銀行以外の投資家が市場を介して融資・出資すること」というものであるが、そういう「狭義の直接金融」は、資金の出し手と資金の受け手の距離が遠く、情報交換が盛んに行われず、企業に情報が届きにくく、企業の成長を促しにくいという短所がある。
必要な手続き
公募増資をすることができるのは証券取引所に株式を上場している株式会社(上場会社)に限られる。そしてそうした上場企業は原則として公開会社[1]である。
公開会社において公募増資の発行株式数と1株あたり金額と増資金額を決定するには取締役会の決議のみを必要とする(会社法第199条第1項・第2項、第201条第1項)。株主総会の普通決議や特別決議を必要としない。
ただし、新株を発行して、株式市場で流通する時価よりも10%ほど低い金額という特に有利な条件で株式市場参加者に売り出して公募増資をするには、株主総会の特別会議を必要とする(会社法第199条第1項・第2項・第3項、第201条第1項、第309条第2項第5号)。
関連項目
脚注
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