公職選挙法とは、日本の国会議員・都道府県知事・市区町村長・都道府県市区町村議会議員の選挙を規定する法律である。
概要
1950年(昭和25年)制定。
選挙を規定する法律は、歴史的には1889年(明治22年)の「衆議院議員選挙法」、1925年(大正12年)にそれが改正されたものの通称である「普通選挙法」があった。大日本帝国から日本国になった後に、普通選挙法の条文に加え、1947年(昭和22年)に制定された参議院議員選挙法の条文と、地方自治法の選挙に関する条文が統合・改正する形でこの法律が作られた。
以下に重要そうな、あるいは日常生活にも関係しそうな条文をざっくりとピックアップして、豆知識も交えながら紹介する(2019年4月末時点)。なるべく元の条文から意味が外れないように記述するが、わかりやすく言い換えた部分もあり、もとの条文からすれば正確に見れば若干意味が外れている箇所も多い。詳しく知りたい人、もっと正確に知りたい人はもとの条文を読むこと。
第4条(議員定数)
学校のテストで数字を覚えさせられたという人もいるかもしれないが、実は時期によって数字が変わっている。例えば2018年には一票の格差を縮小させるという理由で参議院議員の定数が6増加した。
また、地方議会では過疎により議員定数に満たない状態になってしまったケースもある。1ケタ台の偶数の議員定数になってしまった上に議員が与党5人・野党5人となってしまい、そこから選ばれる議長の投票がなかなか決まらず99回も行われたケース(2018年与那国町)もある。
第9条(選挙権を有する資格)
18歳以上の日本国民である。2016年より前は20歳以上だった。
ちなみに現在の日本の成人年齢は20歳とされているが、2022年からは18歳となる予定。
ただし、引っ越しなどで居住地に住み始めて3ヶ月未満の状態では、その地方公共団体の長・議員の選挙には参加できない…などの制約がある。
また、「日本国民」と書かれているように、外国人には選挙権がない状態となっている。外国人参政権をめぐってこの部分が議論されることがある。
ちなみに第10条には被選挙権の規定があり、概ね25歳か30歳以上の日本国民となっている。
第11条(選挙権・被選挙権を有しない者)
条文を見るといきなり「一 削除」という項目があるが、ここには成年被後見人(精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、
禁錮以上の刑に処せられており、その刑が執行中である期間中は選挙権がない状態となる。また、公務員の賄賂を処罰する法律である刑法197条の違反者や、あっせん利得処罰法の違反者といった、汚職事件にかかわって処罰を受けた公職の人も一定の期間選挙権がない状態となる。
第35条(選挙の方法)・第36条(一人一票)
当たり前のように感じるかもしれないが、「一票の格差」という言葉もあり、一票が常に平等な状態となっておらず、実際は「一人一票」になっていないという批判もある。
ちなみに連記投票制(複数の候補を書く場合の投票)であった場合も、複数の候補名が書かれた一枚の票が「一票」とみなせるため、この原則が要求される。
第40条(投票時間)
一番最初に投票所に行くと、投票箱の中身を見せてもらえる(公職選挙法施行令)。これは投票箱の中にあらかじめ何も入っていないことを確認するための仕組み(零票確認)。そのため、当然一番乗りで見に行っても何も入っていない箱の中身を見せられることになる。しかし、中にはこの行為に情熱を燃やし、早起きして投票所に行く人もいるようだ。
第44条(投票所における投票)
選挙人は、選挙の当日に自ら投票所に行き投票をしなければならない。
行けない事情がある場合についても言及がある。以下の条項を見ること。
第48条(代理投票)・第48条の2(期日前投票)
まず、障害などで文字が書けない人の場合は、第48条の規定により投票所で立ち会った上で代理人に投票させることができる。
また、当日に仕事が入っていたり、病気で病院から出られなかったり、交通が不便な離島に住んでいたり、災害で投票所に行けなかったり、当日の悪天候が予想されたり…などの場合は、投票日より前に投票に行く(期日前投票に行く)ことができる。
第49条(不在者投票)
重度障害でベッドの上からさえも動けない人や、外国に住んでいる人で特定の条件を満たす人などは「不在者投票」として、封筒を利用した投票をすることになる。
また、船員など投票日に海の上にいる人や、南極の基地を拠点にして調査をしていたりする人はFAXで投票することになる。
第58条(投票所に入れる人)
選挙人(投票の資格を持つ人)と、選挙事務にかかわる人と、監視役以外は投票所に入ることができない。
ただし例外があり、選挙人に同伴する18歳未満の子供は入ることができる。しかし、これでは学校の社会見学と称して担任に同伴する児童生徒が1学年まるまる投票所に入る…なんてこともできてしまうため、混雑・喧噪を考慮して断ることも可能となっている。
第68条(無効票)・第68条の2(同名の票の場合)
- 所定の用紙を用いないもの(付箋とかその辺の紙切れとか)
- 公職の候補者ではないものを記名したもの(となりの田中さんの奥さんとか)
- 一投票中に二人以上の氏名を書いたもの
- 氏名以外のことを書いたもの(「二古堂さん、応援しています!」など)
- 自署していないもの(先述した例外を除く)
- 誰のことかわからないもの(「アイツ」など)
以上のような票は無効票となるので注意。ほかにも規定があるが省略した。
ちなみに、例えば鈴木さんが2人立候補しているとき、「鈴木」としか書かれていない票については有効として、その票を按分することになる。直近の例では赤坂大輔港区議会議員とマック赤坂港区議会議員が票を按分しており、それぞれ1638.588票、1114.411票を獲得して当選している。
第69条(開票の参観)
開票作業は参観することが可能。入場無料であり自由に出入りが可能。
ただし、「開票所等参観規程」に示されているように
は入ることができない。また、
などが参観人に求められる。開票する人が作業に集中するための規定なので守ろう。
第92条(供託金)
選挙に立候補する場合は供託金が必要である。
得票が供託金没収点以下となった場合、供託金は没収される。
- 衆議院比例区、参議院比例区…600万円
- 衆議院選挙区、参議院選挙区、都道府県知事…300万円
- 政令市長…240万円
- 市長、区長…100万円
- 町村長…50万円
- 都道府県議会…60万円
- 政令市議会…50万円
- 市議会…30万円
- 町村議会…15万円
泡沫候補乱立の防止を目的として供託金が定められているが、諸外国と比較しても極めて高額なため国民の参政権を制限するものとして批判されている。
しかし、2020年の最高裁判決では国会の裁量を逸脱していないとした。
カナダとフランスでは違憲判決が下り、G7で供託金制度が残存しているのは日本とイギリスのみである。
また、イギリスの場合は国政選挙で500ポンドと日本と比較して極めて少額となっている。
町村議会議員の場合、供託金を設定してしまうと議員の数が確保できなくなる恐れがあるため、供託金は設定されていなかったが菅義偉政権の2020年6月に導入された。
なお、総務省公表の「地方選挙結果調」によれば無投票当選者の割合は増加の一途である。
(以降作成中)
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