冬虫夏草(とうちゅうかそう)とは、昆虫に寄生し、それを殺して昆虫の体からきのこを生やす菌類のことである。
狭義の冬虫夏草
厳密には、冬虫夏草というと、ガの仲間に寄生するただ一種の菌類を指す。
【分類】核菌綱ボタンタケ目バッカクキン科ノムシタケ属
【学名】Ophiocordyceps sinensis
(学名の由来)Ophiocordyceps→蛇+棍棒+頭部/sinensis→中国産の
【和名】トウチュウカソウ・シネンシストウチュウカソウ・フユムシナツクサ
冬には虫の姿をしているが、夏になると虫の体内からきのこが出てきて草(植物)になるという意味のチベット語が名前の由来。宿主のHepialus armoricanus(中国語で蝙蝠蛾とよばれるが、日本のコウモリガとは異なる)の幼虫が日本に存在しないため、本種も日本では自生していない。中国・チベット・ネパールの高地に分布する。
漢方薬として用いられるが、非常に高値で取引されるため、(特に中国では)アヤシイ物も大量に出回っている。漫画「もやしもん」では登場人物が本種(作中では旧学名のC・シネンシスの名前で登場)を育てて一儲けしようと企図していたが、不慮の事故により失敗に終わった。しかし、仮にアクシデントが無かったとしても培養は不可能だったであろう。本種の培養に成功したという例は世界中を探してもまだ無く、(特に中国で)アヤシイ成功報告はあるにはあるが、商業的な問題で情報が錯綜しており真偽が不明なのである。
広義の冬虫夏草
冬虫夏草はC・シネンシスただ一種を表す言葉だとして「虫草(ちゅうそう)」の名称を広めようとしている人もいるが、定着しているとは言い難い。
普通、日本では冬虫夏草というと、昆虫やクモなどの体からきのこが生えているさまを指す。このような特徴があるのはノムシタケ属(Cordyceps)の菌類全般(現在この属は細分化されている)および近縁のトルビエラ属(Torrubiella)で、中にはタンポタケのように虫ではなく菌類から生えるものもあるが、これも合わせて冬虫夏草という。
冬虫夏草は活物寄生菌であり、必ず生きた昆虫にとりついて体内に入り込む。パラス(ポケモン) が冬虫夏草をモチーフにした架空のキャラクターとして有名であるが、実はこのように虫が生きている状態できのこが生えてくることは絶対にない。まず菌糸が昆虫体内の隅々まではびこり、昆虫を殺した後で表皮を破ってきのこが生えてくるのである。
冬虫夏草に侵された虫は、しばしば枝をよじ登ったところで力尽きている。高い場所は菌類にとっては胞子散布に有利なので、冬虫夏草が死の直前の昆虫を操り、高い場所に登らせているという説がある。その点、パラス(ポケモン)の進化後に位置づけられる架空のキャラクター・パラセクトは、宿主である虫の意思が既に亡く、冬虫夏草が全ての行動を支配し操っている…という設定のため、菌虫共生状態とも受け取れる進化前よりは、幾らか現実の冬虫夏草に近い設定と言えそうである。
冬虫夏草を見つけるには、夏場に森の中の湿った場所を探せばよい。冬虫夏草の中には、虫が土や朽木の中に埋まっている状態のものも多いので、まずは見つけたきのこが冬虫夏草であることをきちんと認識することが大切である。冬虫夏草の標本で最も重要なのが宿主の部分なので、知らずに引っこ抜いてしまうと柄が切れて何の価値もなくなってしまう(これを通称ギロチンという)。
冬虫夏草と人間
人間からきのこが生えてくるとしたら、それはホラーである。例えば映画「マタンゴ」では人間が徐々にきのこに変貌していく恐怖が描かれており、漫画「未確認少年ゲドー」ではまさにその名前を冬人夏草(Cordyceps homoparasiticus)という未確認生物が登場した。13年6月20発売予定のPS3ゲーム『The Last of Us』の敵クリーチャー(infected 感染者)のモデルは、製作者曰く種を越えて人間に感染するようになった冬虫夏草だとの事。
しかし、生きた人間に感染するキノコはスエヒロタケとヒトヨタケしかなく、どちらも感染するのは免疫力が落ちた状態で非常に稀である。ただ、感染が非常に稀である故にどちらも治療方法は見つかっておらず、重篤化し死亡する例がある。因みにスエヒロタケの場合、肺・気管に感染し、子実体を形成する例もある。
菌類の菌糸が人間の体を侵すことはしばしばある。このような病気を真菌症といい、白癬菌による水虫・しらくも・たむしなどはその代表例である。
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これはキモい!! 世界のキノコ画像集(微グロ注意)の35,48,72,136枚目が冬虫夏草である。
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