初音ミク(はつね みく)は、クリプトン・フューチャー・メディアから発売された音声合成ソフトウェア、およびキャラクターとしての名称。
概要
クリプトン社のバーチャルシンガー。
同社の「ピアプロキャラクターズ」でも高い知名度を持ち、「電子の歌姫」の二つ名でも知られる。
第一弾はVOCALOID2エンジンを使用した「キャラクター・ボーカル・シリーズ01」として発売され、爆発的ヒットを記録。
ネット発の一大ムーブメント「初音ミク現象」を起こし、アマチュアやプロ、企業、地域を「創作の連鎖」に巻き込み、音楽シーンに「ボカロ」という新ジャンルを打ち立てた。
ミクの登場は時代のターニングポイントとなり、後の文化や音楽シーンにも大きな変化を及ぼしたと言われる。その重要性は複数の教科書に掲載されるほどだった。
「キャラクター」としても世界中に波及しており、後述するCGM発の創作文化を商業シーンに取り入れた膨大な数のメディアミックス作品が国内外で展開されている。
ニコニコ動画で元気にネギを振り回していた子は、今や新たな文化の象徴的存在/現代ネット文化のキーパーソンになったのである。
「ピアプロキャラクターズ」としての初音ミク
ピアプロキャラクターズ関連のイベント・ゲームはミクが中心となって展開されるケースが多い(メディアミックスについては後述)。
マジカルミライ、ProjectDIVA、SNOW MIKU(雪ミク)、初音ミクGTプロジェクト(レーシングミク)、初音ミクシンフォニー、プロジェクトセカイなどのミクをアイコンとした商業企画が至るところで盛況を見せている。
2021年には海外メディアによりミク初のオリジナルアニメ/漫画のシリーズが展開予定であることが報じられており、今後も目が離せない。
初音ミク現象
初音ミクはUGC=ユーザー生成コンテンツとそれによって形作られるCGM=消費者生成メディアによって成立している。ミク関連では、CGM型投稿サイトの中で様々なクリエイターが二次創作、三次創作、四次創作と表現を重ねる「n次創作」の現象が生まれた。クリプトン社はこれを「創作の連鎖」と呼び、この項で扱う「初音ミク現象」の土台になった。
- ミクの人気・歌声によって「ボカロ」という音楽ジャンルが生まれた。ミクは初代ボカロではないが、それまでの他のバーチャルシンガー達はジャンルを築く程のムーブメントを起こせなかった。
- ディラッドスクリーン他、各種XR技術を使った3DCGライブイベントを国内外で展開しており、仮想世界で生み出された熱気を現実世界で可視化させる事に成功する。ミクはこの手のバーチャルライブの先駆者・代表格として扱われている。
- メルトショック
- ミクはフィギュアブームの火付け役・牽引役でもある。ミク初の立体商品「ねんどろいど 初音ミク」は飛ぶように売れ、2013年3月までに12万個以上を出荷する記録的なヒット商品となった。ねんどろいどはミクと共に成長したブランドと言われる。
- pixivではキャラ別のタグ投稿数で大差の1位を誇る(作品名タグを含めると5位)。音楽よりイラストの方で馴染み深いという者も多いようである。
- 歌唱/読み上げソフトの普及と知名度向上に大きく貢献。ミクが失敗したらボカロ自体が断絶していた可能性があったという。
- ミクの名を冠したソフト「MikuMikuDance」の公開によって、3DCGを動かすことに対する敷居が格段に低くなった。ミクは日本史Aや英語、音楽の教科書に掲載されていたのだが、その後MMDも情報の教科書に採用されることになる(題材はミク)。
プロフィール
年齢 | 16歳 | 得意ジャンル | アイドルポップス/ダンス系ポップス |
---|---|---|---|
身長 | 158cm | 得意な曲のテンポ | 70~150BPM |
体重 | 42kg | 得意な音域 | A3~E5 |
ソフトウェアについてはVOCALOID、初音ミクNTの記事を参照。
公式設定以外のミクの楽曲・イラストはニコニコ動画やピアプロなどのCGM型プラットフォームで発表されたもので、それらをクリプトン公式などの商業企画が汲み取るというのがピアプロキャラクターズ界隈での様式となっている。
ミクを代表するアイテム「ネギ」も元はCGM発の設定(ネギ、Ievan Polkkaを参照)。
公式には年齢、身長、体重と得意な音域及び音楽ジャンル程度の情報しか発表されていない。容姿に関しても、パッケージイラストの他に歌っている姿を表したイラストと「はちゅねミク」とは別の方向で描かれたデフォルメイラストの計3点のみが公式とされる。
「プロジェクトセカイ」の様なクリプトンが一部関わるケースでも「あくまでその作品における設定」という形になっており、ユーザーの投稿作品とクリエイティビティが尊重されている。
パッケージの公式絵等で分かる通りどちらかと言うとやや貧乳気味。キャラクターデザインを担当したKEI曰く、大きなツインテールはバーチャルな存在なら大丈夫だろうと思ってデザインしたとの事。胸があまり無いだけでかなりのモデル体型。
主な商業作品・企画
基本的にはクリプトン社が主催・開発・運営・監修・協賛などの形で関係する企画。
中長期企画・シリーズ
長年続いている恒例となったもの。
- 初音ミク GTプロジェクト(自動車レース)
- ミク×現グッドスマイルレーシングのコラボ。SUPER GT300クラスに参戦している。痛車だが、色物どころか何度もシーズンチャンピオン(と表彰台)の栄冠を掴んだ古豪である。
- レーシングミクと呼ばれる専用デザインのミクが発表され、その年のデザインがマシン(通称:ミク号)やピット、レースクイーン(ミクサポーターズ)にも反映される。巡音ルカにも専用デザインが用意されている。
- 初音ミク -Project DIVA-(ゲーム)
- SEGA feat. HATSUNE MIKU Projectで誕生したリズムゲーム。通称:DIVA。
ピアプロキャラクターズ及び各キャラが歌う楽曲(MV)を収録している。数多くの派生デザインを「モジュール」としてクリプトン案件に組み込んだ意欲作。現在のピアプロキャラのシーン形成に大きな影響を与えた。 - SNOW MIKU(イベント)
- クリプトン社が主催する北海道のローカルイベント。
冬季版ミク「雪ミク」と一緒に北海道の冬を盛り上げる。毎年新たな雪ミクのデザイン・曲が発表される。ミク以外も冬季仕様になる。 - 初音ミク「マジカルミライ」(イベント)
- クリプトン社×TOKYO MXによるピアプロキャラクターズ総合イベント。通称:マジミラ。
透過型スクリーンを使った3DCGライブ、グッズ販売、展示など様々な企画が催される。セガも関わっている。ライブにはDIVAとクリプトン系のモデルが使用されている。
名称は「本気(マジ)なコンサートと初音ミクの文化(カルチャー)のこれまでと未来(ミライ)」から。 - 初音ミク and Future Stars Project mirai(ゲーム)
- SEGA feat. HATSUNE MIKU Projectのリズムゲーム。通称:mirai、プロミラ。
3Dモデルが「ねんどろいど」のデザインになっているのが特徴。いわばDIVAのデフォルメキャラ版。このゲームの宣伝の際に「ミクダヨー」が生まれたんダヨー。 - MIKU EXPO(イベント)
- 国内外で展開されるミクのワールドツアー。いわば海外版マジミラ。日本ツアーも行われている。
- HATSUNE MIKU DIGITAL STARS(イベント)
- ミクの影響下にある様々な創作文化とその創作者によるカルチャーミックス企画。通称:デジスタ。以前はMIKU EXPOのサブイベントだったが、2020年に初の単独開催。
- 初音ミクシンフォニー(イベント)
- ピアプロキャラクターズが出演するオーケストラコンサート。他社のキャラが出演することも。
- プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク(ソシャゲ・企画)
- セガ×カラフルパレットによるスマホ向けリズムゲームを中心としたメディアミックスプロジェクト。マジカルミライで発表された。
ピアプロキャラクターズが総出演しており、ゲームオリジナルの人間キャラが主体となって展開される。曲は人間×クリプトンのバーチャルシンガーによるcoverまたはオリジナル曲であるため、ゲーム外での扱いには注意が必要。
その他
短期または単発の企画。wikipediaではミクのメディアミックス甩ページの大半を占める。ぶっちゃけて言えばこの記事では記載できないほど多い。
- 3DCGライブ(上記以外)
- 最初に透過型スクリーンを使って行われた「ミクフェス09(夏)」や「初音ミク ライブパーティ(ミクパ)」「ミクの日感謝祭(ミク感)」は、その様式をマジカルミライへと継承している。それ以外にも「Project DIVA発売記念ライブ」「初音鑑」「初音ミク GALAXY LIVE」など恒例イベント以外も散発的に行われている。
- 2023年にはEXPO以来7年ぶりの日本ツアー「初音ミク JAPAN TOUR 2023 ~THUNDERBOLT~(ミクボルト)」が開催され、クリプトンから派生した雷音株式会社の本家ミクライブデビューを飾った他、バンダイナムコグループが制作に関わるなど異例の要素が多い。
- 「レディー・ガガ」や「BUMP OF CHICKEN」「鼓童」「Aqours」など人気アーティストグループとのスペシャルコラボも行われている。ファンメイドのライブもあるがここでは除外対象とする。
- 雑誌・ムック
- ピアプロキャラクターズ関連の資料。セガのゲームのファンブック(DIVAやmirai、プロセカ)、マジカルミライやMIKU EXPOなどのライブイベントの冊子が販売されている。
さらに「MIKU-Pack」という現ピアプロキャラクターズ専門雑誌、セガとGSRのミクプロジェクト全体に視点を当てたムック、報知新聞と読売新聞が発行するミク関連のタブロイド、本家ソフトウェアの攻略ガイドブック、ミクを題材にしたイラストメイキング資料なんかも発売されている。 - 漫画・小説
- 現ピアプロキャラクターズとクリプトンが窓口を受け持つ派生キャラが出演。
漫画:最初期に展開された「ちびミクさん」「はちゅねミクの日常 ろいぱら!」「みくよん」「週刊はじめての初音ミク」、KEI氏による「メーカー非公式 初音みっくす」「初音ミク ‐Project DIVA‐ オムニバスコミック」など。「プロジェクトセカイ」の公式4コマにも出演している。また、公式イベント用の漫画
など単行本化されないものも…。
- 小説:ボカロ小説と呼ばれるボカロ曲を題材とした小説作品が展開されている。ただし、登場するのはバーチャルシンガーをモチーフとした名前・デザインが酷似したキャラである。
派生デザイン/モジュール
ミクたちピアプロキャラクターズには楽曲動画やリアルイベントのために設定された衣装・姿形が存在する。CGMによって成り立つミクは、それらを他のクリプトン関連企画に輸入することが多々ある。
モジュール、コスチューム
モジュールは先述したゲーム「初音ミク -Project DIVA-」シリーズの概念。簡単に言えば基幹となるキャラとその衣装・亜種・派生キャラの3Dモデルの事で、これらを自由にコンバートできる。DIVAの3Dモデルはセガが関わった3DCGライブにも流用されている。
モジュールには元動画がベースのデザインやクリプトンが運営するCGM型サイト「ピアプロ」で公募したデザインを取り入れている。さらにマジカルミライや雪ミク、桜ミク、レーシングミクといったバリエーションの他、重音テト・亞北ネル・弱音ハクなどの派生キャラクターもモジュールとして登場する。
同じ「SEGA feat. HATSUNE MIKU Project」のゲーム「プロジェクトミライ」には「コスチューム」と言う概念もあるが、デザインの切り替えという観点で同じ概念と言える。
SEGA feat. HATSUNE MIKU Project
初音ミク(クリプトン社)×セガのコラボレーション。ゲームやグッズ、3DCGライブイベントの技術協力・制作など長期に亘って展開されており、グッドスマイルカンパニーと共に初音ミクのシーン形成で重要な役割を果たした。
2007年9月に発案。セガからクリプトン社に打診し、2008年5月に正式なプロジェクトが発足。第一弾のリズムゲーム「初音ミク -Project Diva-」制作開始を皮切りに、ミク(ピアプロキャラクターズ)を主体とした様々な展開に関わっている。
- 初音ミク -Project Diva- シリーズ(セガが販売・開発)
- ミクの日感謝祭(セガが主催)
- 初音ミク and Future Stars Project mirai シリーズ(セガが販売・開発)
- プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク(セガが販売・開発)
- 関連グッズ、3DCGライブの制作・技術協力 ..etc
近年ではクリプトン社自体がライブを積極的に手掛けたり(クリプトンの社長とライブ担当Pが雷音株式会社を立ち上げる程)、セガの組織再編、DIVAシリーズの開発が不透明である件からも疎遠になる事が心配されていたが、プロジェクトセカイが大ヒットしたため再びミクシーンとの繋がりを強めている。
余談だが、セガは2021年12月にクリプトン本社の近くにセガ札幌スタジオを設立している。
初音ミクの登場まで
発売前史
初音ミクはボカロ・音声合成ソフトブームの立役者だが、初のVOCALOIDというわけではなくそれまでにも数体のVOCALOIDが発売されていた。
2003年にヤマハが初代VOCALOIDを発表。2004年にイギリスのZero-G社が初のVOCALOID「LOLA」と「LEON」を発売した。Zero-G社はクリプトン社と交友があり(クリプトンの伊藤社長いわく友達)、クリプトン側がVOCALOID技術を紹介して開発を持ちかけたとされている。
同年11月にクリプトン初のVOCALOID「MEIKO」をリリース。当時の成功基準の3倍もの本数を売り上げた。その後に男性音源の「KAITO」を発売するも、当時(※)はMEIKOの半分にも満たない本数に終わった。売上の低迷・開発の縮小により、VOCALOIDが断絶する可能性もあったという。
※その後、ミクの成功を受け新商品が発売。今となってはむしろ大成功である。
「電子の歌姫」初音ミクの登場
ヤマハとクリプトンの協議の末、クリプトン側が提案した「架空の少女(バーチャルアイドル)に歌わせる」というコンセプトのもと新プロジェクトが始動。後に「キャラクター・ボーカル・シリーズ」と銘打たれたこの商品企画は、これまでシンガーを起用していた中で「声優」を起用することを前提に進められた。そこで選ばれたのが『アーツビジョン』所属の藤田咲であった。
藤田が選ばれた理由は「地声がロリータボイスっぽい」「あまり演技をしていない(声を作っていない)」「藤田の声とボカロエンジンの相性が良かった」という事が大きな理由に挙がる。ミクの開発者の佐々木(wat)は「チャーミングでポップでキュートなボーカロイド」になると確信していた。
2007年6月にクリプトンのブログで「ミク」というコードネームとKEI氏のイラストが公開。発売前の時点で反響があり、予約が殺到した。
2007年8月31日、「初音ミク(V2)」が発売。発売直後から大ヒットを記録し、あまりの人気に欠品状態が続き、Amazon予約で当日に届かないことでも話題となった。
この時期に、後のワンカップPがMEIKOを使って投稿した「初音ミクが来ないのでスネています」という動画などでさらに注目を集め、話題が話題を呼び、従来のボカロを大きく上回る売り上げを叩き出した。
ニコニコ動画における初音ミク
初音ミクブームの要因、そしてクリプトンのある札幌市と並ぶ「ミクの故郷の一つ」とも言えるのがニコニコ動画(以下、ニコ動)である。
ニコ動ではミクを使用したカバー曲が次々とアップされ、しばらく後には投稿者自ら作曲したオリジナル曲が人気を得るようになっていく。オリジナル曲は当初、歌詞が「初音ミク」そのものを題材にしたものが多かったが、 やがてラブソング等、ミクの持つ独特のイメージに縛られない歌が脚光を浴びるようになっていった(メルトショック)。
ニコ動の中で「初音ミク」という無機質なデータが様々な投稿者達の手によって色々な要素を肉付けされ、 設定でしかなかったイラストがニコ動ユーザーによって形作られていった。本当の意味で、インターネットによって作られたバーチャルアイドル誕生である。
そして彼女はDTM、VOCALOIDの代名詞と言えるべき存在に成長し、今もなおとどまる所を知らない。
2008年8月31日、初音ミクの代表作の一つ『みくみくにしてあげる♪【してやんよ】』が15:09(3時9分=ミク)に500万再生を突破した。 因みにこの日は初音ミクの発売1周年の日でもある。
2009年7月2日にはセガから初音ミクを題材とした音楽ゲーム『初音ミク -Project DIVA-』がPSPで発売された[3]。このシリーズ及びSEGAとの協力体制は、ピアプロキャラクターズを取り巻く創作に大きな影響を及ぼす事となった。
2009年7月2日同日に、上記の『初音ミク -Project DIVA-』のPSPで発売を記念してPlayStation®Homeで初音ミクのファーストヴァーチャルライブが行われた。
初音ミクを取り巻く騒動
初音ミク削除騒動
2007年10月17日頃から、GoogleやYahooのイメージ検索で、初音ミク関連の画像が一切表示されないという事象が確認された。
MSNのイメージ検索では、問題なく表示できていた。
Yahooでは10月21日頃から、Googleでは10月23日頃から検索にHITするようになり始めた。
この騒動の原因は未だ定かではないが、Yahoo、Googleは共に、意図的削除はなかったと表明している。
技術的な問題に関する説(新規イメージが検索可能になるまでに2ヵ月半ほどのタイムラグがあるなど)がいくつか報告されてはいるが、真偽は定かではない。
イメージ画像
初音ミク | はちゅねミク(初音ミクの公認デフォルメキャラっぽい) |
![]() |
![]() |
ねんどろいど 初音ミク | グッドスマイルカンパニー 初音ミク |
![]() |
![]() |
関連商品
その他は「VOCALOID関連商品の一覧」を参照。
関連コミュニティ
関連リンク
関連項目
コラボレーションした作品や企業など
|
注釈
- 133
- 0pt