初音ミクとは、クリプトン・フューチャー・メディアが展開しているバーチャルシンガー、音声合成ソフトウェアである。
概要
クリプトン社の女性バーチャルシンガー。
「ピアプロキャラクターズ」の中でも飛び抜けて高い人気・知名度を持ち、「電子の歌姫」や「公主殿下」の二つ名でも知られる。
第1弾製品はVOCALOID2エンジンに対応した歌声合成ソフトとして発売され、爆発的ヒットを記録。ネット発の一大ムーブメント「初音ミク現象」を起こし、企業、プロ、アマチュアを「創作の連鎖」に巻き込み、「ボカロ」と呼ばれる音楽ジャンル・文化を築き上げた。
ミクの登場はネット発の文化や音楽シーンにも大きな変化を及ぼしたと言われ、その影響力の高さから後年には教科書にも掲載されている。
「キャラクター」として音声合成という枠を越えて活躍しており、音楽やイラスト、グッズ(マーチャンダイズ)、ゲーム、イベント、アパレル、広告を展開。
この他、総合芸術・伝統芸能といったハイカルチャー、有名なアーティスト・他作品・ブランドとのコラボなどさらなる多角展開を実現させた。
ニコニコ動画で元気にネギを振り回していたミクは、ネット発の文化の象徴的存在の一つとなった。
2020年、クリプトン社が深く関わる「プロジェクトセカイ」がリリースされ、若年層を中心に大ヒット。さらにVOCALOIDではないクリプトン社の内製エンジンを採用したミクの歌声合成ソフトがリリースされ、ミクを取り巻く環境は劇的な変化を見せた。
2021年、海外メディアの取材で初のオリジナルアニメ/漫画のシリーズを制作中であることが判明。これまでアニメ化に否定的だったクリプトン社の姿勢にも変化が見られる。
2024年、AIを採用した2つの歌声合成ソフトも発表され、以後は自社エンジンと他社エンジンをベースにした複数シリーズでパラレル的な展開が行われる。
初音ミク現象
初音ミクはUGC=ユーザー生成コンテンツとそれによって形作られるCGM=消費者生成メディアによって成立している。
黎明期にはニコニコ動画(CGM型サイト)でクリエイターが他者の創作を引用しつつ表現を重ねていく「n次創作」の現象が発生。クリプトン社はこれを「創作の連鎖(ピアプロダクション)」と呼んだ。「初音ミク現象」はこの「創作の連鎖」を土台とした様々なムーブメントのことである。
ジャンル・文化の創出 ~ 拡大
- ミクの登場によって「ボカロ」という音楽ジャンル・文化が生まれた。ボカロ文化はDTMおよびアイドルマスターMAD文化の様式を継承しており、当時の“架空のアイドルをプロデュースしたい”という熱気・需要をミクが一手に引き受ける形となったとされている。
- メルトショック(詳細は記事を参照)
- 海外展開の拡大
- 国外ではミクの公式ライブコンサート等の違法アップロード動画により人気が広がり、ジャンルも確立されていった。また、「北米トヨタ×初音ミク」と「Google Chrome×初音ミク」は初音ミクというキャラクターを世界へと羽ばたかせた。
- 冨田勲×初音ミク「イーハトーブ交響曲」やミクを起用した世界初のボカロオペラ「THE END」など、格式高いハイカルチャーでの成功も国内外での地位向上に貢献している。
- 中国ではミクの人気が「bilibili」の創業に繋がっている(元々、bilibiliは「Mikufans」というミクのファンサイトだった)。中国での愛称は「公主殿下」。ミク関連の世界売り上げは中国の一強状態とされ、販路の問題もあるがおま国中国限定の商品も結構多い。
- 公式アカウントの登録者数が300万人を上回るサイトもある(微博、Youtube、bilibili)。
初音ミク文化圏の形成
- クリプトン社は初音ミクを創作における「象徴(アイコン)」及び「きっかけ(ハブ)」として扱っており、自社の公式メディアミックスを「クリエイターの創作活動の場」となるように調整している。この試みは様々なジャンルに及び、「初音ミク文化」を形成するに至った。
- ライブコンサート
- 広告塔としての実績
- ミクはバーチャルタレント、アンバサダー(広告塔)として実績を残している。クリプトン社はもちろんのこと、最初期から協業しているグッドスマイルカンパニーやセガ等の商業企画、さらには地域のイベントや事業でミクが起用されるケースも多い。
- 後年には重要文化財の関連プロジェクトに参加したり、東京国立博物館で展示・販売されたり(重要文化財コラボや150年後の国宝候補として)、G20サミット関連の国際プロジェクトの企画で日本の代表文化の一つとして重要文化財コラボ品が展示されたりしている。
- 海外で有名なGoogle ChromeのCMは「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」の2部門で銀賞・銅賞が授与されている。
- また、中国のライブコマースツールの公式出演で同接数“300万人”、紹介した品の売上額“約30億円”を記録し、ついでにサーバーも落としてみせたという伝説(?)を持つ。
- 初音ミクフィギュア
- ミクはフィギュアシーンに「初音ミクフィギュアブーム」を起こした。ミク初のフィギュア「ねんどろいど 初音ミク」は飛ぶように売れて記録的な大ヒット商品になり、さらにスケールフィギュアでも破格の成功を収めた。
- ミクのフィギュアは模型シーンにおける「定番商品」の一つとなり、現在ではCGM発の衣装違いや雪ミク、桜ミク、マジカルミライのミク、レーシングミク、セカイのミクたち(プロセカ版ミク)など国内外において様々な商品が発売されている。
- ねんどろいどは全キャラ中最多とされ、2023年には100体目のねんどろいど初音ミクの商品化企画が立ち上がっている。ねんどろの造形(主に顔)はミクで完成し、新たなフォーマットとなった。こうした影響関係から「ねんどろいどはミクと共に成長した」とも評される。
- pixivではキャラ別のタグ投稿数で大差の1位を誇る(作品名タグを含めると5位)。音楽より絵の方で馴染み深いという者も多いようである。
- ミクの名を冠したソフト「MikuMikuDance」の公開によって、3DCGを動かすことに対する敷居が格段に低くなった。ミクは日本史Aや英語、音楽の教科書に掲載されているのだが、後にMMDも情報の教科書に掲載されることになる(題材はミク)。
バーチャルシンガーソフトウェア
- 初音ミク(V2) / Append
- 2007年8月31日に発売されたVOCALOID2エンジン対応ソフト。
一つの音楽ジャンル・文化を創出に導き、様々な現象が生み出されていった。ソフトとしても(同社の鏡音リン・レンと比べると)扱いやすいと評判であった。
2010年4月30日にV2の拡張版として「Append」が発売。「Sweet」「Dark」「Soft」「Light」「Vivid」「Solid」の6種の拡張音声ライブラリを採用。 - 初音ミク V3 / V3 ENGLISH
- VOCALOID3エンジンに対応。2013年8月31日より英語用音源から発売され、翌月26日に日本語版および英語版付属のバンドル版が発売。KAITOと同様、クリプトン社の「総合パッケージ」構想の商品であり、クリプトン内製のボーカルエディタ「Piapro Studio」が付属する。
- 初音ミクV4X / V4 CHINESE / V4 English
- VOCALOID4エンジンに対応。2016年8月31日よりV4X、英語音源のV4 English、バンドル版が発売。巡音ルカで搭載されたクリプトンによる新機能「E.V.E.C.」の最新版を搭載している。
- 初音ミク NT(ニュータイプ)
- クリプトン製エンジン(NT)の新シリーズ。産総研が基礎技術を一部提供。
2020年11月27日に発売。後にNTエンジンを一新することに(後述)。 - ピアプロキャラクターズ・スーパーパック
- 初音ミク、鏡音リン・レン、巡音ルカ、MEIKO、KAITOの6名合同ソフト。V3・V4のOriginal相当の音源をチューンナップしたもの。「SP」とも略される。
2024年8月1日に下記2つのAI採用ソフトと同時発表され、2024年8月30日に発売。佐々木いわく、某ゲーム(プロセカと思われる)で6名で歌う機会が増えていること等から思い至ったという。過去作とのクロスシンセシスも想定されている。 - 初音ミク V6 AI
- VOCALOID6エンジンに対応。2024年リリース予定。
AIによる自然な調整の利便性を押し出したソフト。 - 初音ミク NT Ver.2
- 「M9エンジン」に一新されたNTの新バージョン。2025年前半リリース予定。
AIによる自然な調整の利便性を押し出したソフトで、クリプトンのこだわりにより“らしさ”を追求したとされる。AIによるパラメータ調整でユーザーの創作を支援する機能群「Piapro Studio - Automatic Control」を搭載している。
公式プロフィール
年齢 | 16歳 |
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身長 | 158cm |
体重 | 42kg |
イメージカラー | ブルーグリーン |
上記の情報は公式ポータル「piapro.net」より(2024年時点)。
公式展開以外のミクの楽曲・イラストは、ニコニコ動画やピアプロなどのCGM型プラットフォームで発表されたもので、それらをクリプトン(公式)の商業企画が汲み取るというのがピアプロキャラクターズ界隈での様式となっている。
ミクを代表するアイテム「ネギ」も元はCGM発の設定(ネギ、Ievan Polkkaを参照)。
公式には性別、年齢、身長、体重、得意な音域・音楽ジャンル、イメージカラー程度しか発表されておらず、設定や容姿は企画ごとに異なる。
「プロジェクトセカイ」の様なクリプトンが根底から関わるケースでも「あくまでその作品における公式設定」という形になっており、ユーザーの投稿作品とクリエイティビティが尊重されている。
パッケージ絵で分かる通りやや貧乳気味。キャラクターデザインを担当したKEI曰く、大きなツインテールはバーチャルな存在なら大丈夫だろうと思ってデザインしたとの事。
受賞歴
- 第13回 AMDアワード:年間コンテンツ賞・優秀賞
- 第39回 星雲賞:自由部門
- 第13回 アニメーション神戸賞:作品賞・ネットワーク部門
- 2008年度 グッドデザイン賞
- 2011年度 SUPER GT300:シリーズチャンピオン / 谷口信輝&番場琢、GSR初音ミクBMW
- 第66回 北海道新聞文化賞:特別賞
- カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル:
エンターテインメント部門・銀賞 / ダイレクトマーケティング部門・銅賞 - ファミ通アワード2012:最優秀キャラクター賞
- 第17回 AMDアワード:大賞/総務大臣賞
- 2014年度 SUPER GT300:シリーズチャンピオン / 谷口信輝&片岡龍也、GSR初音ミクZ4
- 2015年度 日本商品化権大賞:グローバル部門
- 2016年度 最有态度异度偶像
- 2017年度 SUPER GT300:シリーズチャンピオン / 谷口信輝&片岡龍也、GSR初音ミクAMG
- 第22回 AMDアワード:大賞/総務大臣賞
- 2023年度 日本ネーミング大賞:最優秀賞
主なメディアミックス・商業企画
クリプトン社が主催・開発・運営・監修・協賛などの形で関係する企画。
本項では「キャラクター」「プロジェクト」「イベント」「ゲーム」「アニメ」「その他」に分けて解説する。あまりにも多すぎるので「クリプトン公式かつ恒例化/シリーズ化している企画」「初音ミク史にとって重要なもの」を特筆事項として単独で記載、それ以外の単発企画は分野ごとに纏める。
キャラクター
ミクたちピアプロキャラクターズにはメディア展開のために設定された衣装・姿が存在する。
- ピアプロキャラクターズ
- バーチャルシンガーとも呼ばれるクリプトン社のキャラクター達。
初音ミク、鏡音リン、鏡音レン、巡音ルカ、MEIKO、KAITOの6体を指し、キャラクターとしても様々なメディアミックスで成功を収めている。 - 雪ミク
- 冬季版ミク。クリプトン社の地元である札幌市および北海道の「冬」を象徴するご当地キャラクター的な存在。後述するイベント「SNOW MIKU」を中心に活躍する。「SNOW MIKU」におけるデザインは公募で(2012以降)、テーマ曲とともにシーズンごとに変わる。
- 桜ミク / 初音ミク 桜バージョン
- 淡い桜色が特徴の春季版ミク。2019年には青森県・弘前さくらまつりの公式応援キャラクターに就任し、それ以来青森のイベントにも頻繁に起用されている。
- レーシングミク / 初音ミク レーシングver
- 「初音ミクGTプロジェクト」用にデザインされたレースクイーン。その年のデザインがマシン(通称:ミク号)やピット、レースクイーン(レーシングミクサポーターズ)にも反映される。
- モジュール / コスチューム
- モジュール:ゲーム「初音ミク -Project DIVA-」シリーズの概念。簡単に言えば基幹となるキャラとその衣装・亜種・派生キャラの3Dモデルの事で、これらを自由にコンバートできる。DIVAの3Dモデルはセガが関わった3DCGライブにも流用されている。
モジュールには楽曲動画やクリプトンが運営するCGM型サイト「ピアプロ」で公募したデザインを取り入れている。さらにマジカルミライや雪ミク、桜ミク、レーシングミクといったバリエーションの他、ファンメイドの派生キャラクターもモジュールや背景として登場する。
コスチューム:ゲーム「プロジェクトミライ」でも上記と同一のシステムを採用しているが、ハードの客層やゲームデザインに合わせる為か「コスチューム」という名称に変更されている。 - ミクダヨー / 初音ミクの着ぐるみ1号
- 初音ミクに似た何か。
誕生経緯からクリプトン、セガ、グッドスマイルカンパニーが共同で権利を持っている。 - セカイのミクたち
- ゲーム「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」に登場。5つの主要ユニットのメンバーの“想い”から誕生した、5つの「セカイ」とピアプロキャラクターズ。
作中では「教室のセカイ」「ワンダーランドのセカイ」「ステージのセカイ」「ストリートのセカイ」「誰もいないセカイ」が登場し、セカイのミクたちは容姿・性質がそれぞれ異なる。 - 初音ミクif
- ミクの初期デザイン(ボツ案)がベースのバリエーション。髪型がハーフアップ(公式的にはポニーテール)になっている。名称は公式イベント「初音ミク・クロニクル」で設定された。
- それ以外
- 「初音ミク公式イラストに付けられた愛称一覧」の記事にもある通り、クリプトン公式イベントで誕生した衣装違いのミクに、ファンがあだ名をつける事が恒例化している。
- また、発音ミクやフェイ・イェンHDに代表される商業IPコラボから誕生した派生キャラの他、はちゅねミクに代表されるCGMシーン発の公認・非公式の派生キャラもいる。
プロジェクト
- 初音ミク GTプロジェクト
- レーシングミクを主体としたグッドスマイルレーシングとのコラボプロジェクト。SUPER GT300クラスに参戦している。ミクの痛車だが色物で終わらず何度もシーズンチャンピオンと表彰台の栄冠を掴んだ古豪である。
- SEGA feat. HATSUNE MIKU Project
- セガ×初音ミク(クリプトン社)のプロジェクト。ゲームやグッズ、3DCGライブイベントの技術協力・制作など長期に亘って展開されており、グッドスマイルカンパニーと共に初音ミクのシーン形成で重要な役割を果たした。
2007年9月に発案。セガからクリプトン社に打診し、2008年5月に正式なプロジェクトが発足。第一弾のリズムゲーム「初音ミク -Project DIVA-」制作開始を皮切りに、ミク(ピアプロキャラクターズ)を主体とした様々な展開に関わる。「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク」など、ミクを中心とした新たなメディアミックスプロジェクトも行っている。 - 初音ミク Happy 16th Birthday -Dear Creators-
- クリプトン社によるミクの16歳(周年)記念プロジェクト。「共創」によって多種多様なコンテンツを創出し、現在ではバーチャルシンガーとして活躍するミクの軌跡を振り返りつつ、新規企画を実施。メインビジュアル(担当:Rella)ではバーチャルの垣根を越えて「初音ミク」を形作ってきた創作ツールの集合体「創作の羽根」を背に纏っている。
- ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE
- 株式会社ポケモンとのコラボプロジェクト。ポケモンの設定を元にした18タイプのミクと相棒ポケモンたちのイラスト及び楽曲展開が行われる。クリプトン社のピアプロキャラクターズもコラボ対象に選出されている。
2024年に「ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE High↑」にリニューアルされ、新たな展開へのチャレンジを行っていくことが発表された。
イベント
- ミクFES'09(夏) / MIKU FES'24(春)
- クリプトン社×インクス社による公式ライブコンサート。
ミクFES'09(夏):
2009年8月31日に開催。透明なディラッドスクリーンにミクを投影して「実在と非実在の境界を曖昧にする」という試みが初めて行われた。初音ミク文化の礎を築いたライブとして重要視されている。なお、後述するように現地での初ライブはアニサマ2009、仮想空間も含めると真のファーストライブはProject DIVAの発売記念ライブなので要注意。
MIKU FES'24(春):
2024年3月31日に開催。2度目の武道館ライブであり、16周年企画の一環。 - SNOW MIKU
- クリプトン社が主催する「雪ミク」のフェスティバル。毎年新たな雪ミクのデザイン・曲が発表され、ミク以外も冬季仕様になる。
- ミクの日感謝祭 / 最後のミクの日感謝祭
- 3月9日=ミクの日にちなんで行われた、当時としては最大規模のミクの公式コンサート。ゲーム「初音ミク Project DIVA」の関連イベントでもある。2010年に初開催、次に2012年に「ミクの日大感謝祭」としてミクパと共催された。
- 初音ミク ライブパーティ / ミクパ♫
- 2011年~2013年まで行われた「ミクの日感謝祭」の後継/姉妹イベント。国内のみならず国外(シンガポール、香港、台湾)でも開催され、下記の「ミクノポリス」や「アニメフェスティバルアジア2009 / 2011」と共に国外へと展開幅を広げた。
- MIKUNOPOLIS in LOS ANGELES
- ロサンゼルスで開催された「Anime Expo 2011」の主要企画。初の海外単独公演。
ちなみに海外初公演はシンガポールで行われた「アニメフェスティバルアジア2009(AFA2009)」である。言い方の問題なのかは不明だが、海外初公演と誤解されがち。 - 冨田勲×初音ミク
- シンセサイザー音楽の第一人者・冨田勲とのコラボ。
「イーハトーヴ交響曲」(2012年)と冨田の追悼コンサート「ドクター・コッペリウス」(2016年)でプリマドンナとして出演。クリプトン社のR3システムや3次元的に形状が変わるスクリーン、ホログラム投影といった画期的な演出も採用された。
2017年には手塚治虫記念館「初音ミク×手塚治虫展―冨田勲が繋いだ世界―」展を実施。 - THE END
- ミクを起用した世界初のボカロオペラ。渋谷慶一郎を中心に制作され、フランスのハイブランド「ルイ・ヴィトン」がミクの衣装デザインを手掛けた。
初演は2012年・山口のYCAM。国外ではフランス(パリのシャトレ座)、オランダ(同国の最古最大の芸術祭「オランダフェスティバル」招聘上演)、ドイツ、デンマークで上演された。 - 初音ミク「マジカルミライ」
- クリプトン社×TOKYO MXによるピアプロキャラクターズ総合イベント。通称:マジミラ。
国内におけるミク関連の祭典で、透過型スクリーンを使った3DCGライブ、グッズ販売、展示など様々な企画が催され、多彩なクリエイターや企業が出展したり各々の成果を披露する。ライブイベントの制作はクリプトンとセガが担当している。
ミクフェスやミクの日感謝、ミクパの後継的なイベントでもあり、初開催の前日には「夏祭初音鑑」というライブイベントも行われていた。 - 名称は「本気(マジ)なコンサートと初音ミクの文化(カルチャー)のこれまでと未来(ミライ)」から。
- MIKU EXPO
- 2014年に始まったクリプトン社が主催するミクの世界ツアー。
ジャカルタ公演を皮切りに、2023年時点で世界30都市にて計68公演が実施されている。 - HATSUNE MIKU DIGITAL STARS
- ミクの影響下にある様々な創作文化とその創作者によるカルチャーミックス企画。通称:デジスタ。以前はMIKU EXPOのサブイベントだったが、2020年に初の単独開催。
- 初音ミクシンフォニー
- 2016年より継続的に開催されているピアプロキャラクターズ関連のオーケストラコンサート。
- MIKU with YOU(未来有你)
- 中国で2017年より開催されているミク(中国名:初音未来)の公式ライブイベント。中国ではEXPOから引き続き3年連続での開催。後に恒例イベントとなる。2020年から新型コロナによってオンラインイベント化・開催中止に追い込まれたが、2023年に復活した。
中国ではこれ以外にもbilibiliのフェスティバル(BILIBILI MACRO LINK)に出演している。 - 超歌舞伎
- 二代目中村獅童との共演企画。ミクらしくデジタルな技術を駆使した歌舞伎公演。屋号は「初音屋」。「今昔饗宴千本桜」が第22回AMDアワード大賞が授与されるなど大きな反響を呼んだ。その後も共演が行われている。
- 初音ミク×鼓童 スペシャルライブ
- 太鼓芸能集団「鼓童」との公式コラボコンサート。
超歌舞伎と同様、伝統芸能とデジタルなバーチャルポップスターの融合は大きな反響を呼んだ。その後も共演が行われている。 - DIVAシリーズの関連イベント
- ゲーム「初音ミク Project DIVA」シリーズは、2009年7月2日に発売された第一作目から発売を記念したイベントを毎回実施している。第一作目の発売記念のバーチャルライブこそがミクのファーストライブである。
- プロジェクトセカイの関連イベント
- プロセカのイベント。基本的にはミク達がやってきたことを踏襲している。
セカライこと「プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE」はクリプトン社も主催に名を連ねており、ライブ制作を引き受けている。 - 芸術展・展示系イベント
- >「MIKU10」「初音ミク10周年記念展」「初音ミククロニクル」「初音ミク POP UP MUSEUM」など初音ミクの歴史に焦点を当てたイベントが開催。ニコニコ関連では、2023年に「ニコニコ動画と初音ミクのキセキ」が開催。この他、初音ミク系フィギュアを集めた展示イベントも。
- >「Ghost in the Cell」や「LOVE展:アートにみる愛のかたち シャガールから草間彌生、初音ミクまで」、「TRANS CITY FEAT. HATSUNE MIKU」などの美術展・芸術展。2024年には国内初のミクの現代アート展示「ART OF MIKU」を実施。
この他にも千本桜展(楽曲コンテンツ系)やスタンプラリー、遊覧・観光(ユーザー参加系)など様々なジャンル・形式のイベントが実施されている。 - 上記以外の3DCGライブコンサート
- >「HATSUNE Appearance」「初音ミク GALAXY LIVE」「MIKU BREAK」など、恒例イベント以外も散発的に行われている。
- >2023年にはEXPO 2016以来7年ぶりの日本ツアー「初音ミク JAPAN TOUR 2023 ~THUNDERBOLT~(サンボル,ミクボルト)」が開催。バンダイナムコGが制作に関わるなど異例の要素も。
- >冨田や鼓童の他にも「レディー・ガガ」「BUMP OF CHICKEN」「Aqours」等とのスペシャルコラボも行われている。
>先述したように国内外の音楽祭や芸術祭に呼ばれることもある。というか現地での初ライブが通常の大型スクリーンを使用したアニサマ2009であった。
主なゲーム・デジタルコンテンツ
- 初音ミク -Project DIVA-
- 「SEGA feat. HATSUNE MIKU Project」で誕生したリズムゲーム。通称:DIVA。
ピアプロキャラクターズ及び各キャラが歌う楽曲(MV)を収録。数多くの派生デザインを「モジュール」としてクリプトン案件に組み込んだ意欲作。初音ミクシーンに大きな影響を与えた。 - 初音ミク and Future Stars Project mirai
- 「SEGA feat. HATSUNE MIKU Project」のリズムゲーム。通称:mirai、プロミラ。
クリプトン社のwat氏のアドバイスを反映して3Dモデルに「ねんどろいど」のデザインを採用しているのが特徴。このゲームの宣伝の際に「ミクダヨー」が生まれたんダヨー。 - プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク
- 「SEGA feat. HATSUNE MIKU Project」の開発体制にカラフルパレットを加えて誕生した、スマホ向けリズムゲーム。クリプトン社はプロデューサーに近い形で深く関与しており、ライブイベントの主催・制作・バーチャルシンガーの音源周りも担当している。
曲は人間×ピアプロキャラクターズによるcoverまたはオリジナル曲であるため、ゲーム外での扱いには注意が必要。
ピアプロキャラクターズと人間のシンガーが共演する3DCGライブイベント等、プロセカを軸にした新たなメディアミックスも展開されている。 - クリプトン・デジタル・コンテンツチームによるゲーム作品
- クリプトンのデジタルコンテンツチーム(元CSP推進室、モバイルコンテンツチーム)のコンテンツ。携帯ハード向けとされているが、後に「初音ミクVR」のようなPC・据え置き向けも手掛けており、正直よくわからない事になっている。VOCALOID神話入りを果たしたあの人気曲もここから誕生した。
- POPPRO(ポッププロ)
- 中国の初音ミク公式投稿サイト。運営は中国のエージェンシー「上海新创华文化发展有限公司」。
大雑把に言えば初音ミク特化型のピアプロといった感じで、先述した「未来有你」の楽曲やフィギュア・ぬいぐるみ等の原案デザインの公募企画も実施されている。日本でもPOPPRO発のデザインが商品化される事がある。 - MIKU LAND(ミクランド)
- 初音ミク公式のVRアミューズメントパーク。メタバース空間上でのコミュニケーションやイベント、デジタルグッズの展開などメタバースならではの試みがなされる。
- Fit Boxing feat. 初音ミク -ミクといっしょにエクササイズ-
- 「Fit Boxing」とのコラボ作品。発売元はイマジニア。2024年3月に発売。
- その他
- セガから「ミクフリック」「初音ミク ライブステージ プロデューサー」「初音ミク VRフューチャーライブ」がリリースされている。
「スーパーロボット大戦UX」にはセガコラボから誕生した派生キャラ「フェイ・イェンHD」が参戦した他、ミク本人も色んなソシャゲにコラボ(限定)で出演させて貰っている。
アニメ
- (名称不明)
- クリプトン社、Graphic India、Carlin West Agencyが制作しているというオリジナルアニメ+漫画のシリーズ企画。クリプトン海外チームのドゥヴィーニュ・ギヨームが米国メディアの取材に対し「ファンによる創造性と芸術表現の機会を無限に与えてくれる初音ミクの本質に忠実なアニメをつくるため画期的な方法を見つけたと信じています。これはミクと世界中のファンにとって大きな瞬間となるでしょう」と答えている。詳細は不明だがアニメと実写と音楽が融合したミクバースの物語らしい。
- ぷちセカ
- プロセカのミニアニメ。全10話。登場人物の頭身がデフォルメされている。
- 劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク
- “初音ミクを描いた初のアニメ映画”として展開されるプロセカの映画。2025年1月17日公開。
- その他
- 他社IPにコラボ出演させて貰っている。
派生キャラ:
「新幹線変形ロボシンカリオン」では「発音ミク」として登場し、シンカリオン H5はやぶさの運転士となった(『劇場版』では雪ミク仕様になった)。Netflix配信アニメ「ヤキトリ」では「初音ミミ」という管制AI設定の派生キャラが登場する。
本人:
「【俗・】さよなら絶望先生」「あはれ!名作くん」「邪神ちゃんドロップキックX」では本人が登場。
書籍・関連グッズ
- 模型(フィギュア、プラモ、ドール等)・ぬいぐるみ
- ミクは様々なブランド・シリーズから多種多様な模型・ぬいぐるみが展開されている。模型の中でも「ねんどろいど 初音ミク」シリーズや初のスケールフィギュアは「初音ミクフィギュアブーム」を起こすと共に模型業界に初音ミクというIPを確立させ、さらにクリプトン社とグッドスマイルカンパニーを協業させた特筆すべき存在である。
立体分野はミクの多様性との相性が良く、雪ミク、桜ミク、レーシングミク、歌唱曲デザイン、公式イベントver、ゲーム用デザイン(モジュール、セカイのミクたち等)などの豊富なバリエーションが展開されている。こうしたアレンジの幅の広さこそ初音ミクの特色と言える。 - アパレル・雑貨
- ミクの商品で特に数が多いのはアパレルと雑貨である。
2024年3月現在、アパレルでは100社以上のパブリッシャーから、少なくとも50ものアパレルブランドの商品が発売されている。 - 雑誌・ムック
- ピアプロキャラクターズ関連の資料。
初音ミク文化を纏めた史書・アーカイブ、セガやグッドスマイルカンパニー系のムック(ゲームやプロジェクトのファンブック)、マジカルミライやMIKU EXPOなどのライブイベントの冊子、ピアプロキャラクターズ専門雑誌の「MIKU-Pack」、スポーツ報知と読売新聞によるミクのタブロイド、本家ソフトウェアの攻略ガイドブック、フィギュア本、イラストメイキング本などが発売されている。 - 漫画・小説
- 現ピアプロキャラクターズとクリプトンが窓口を受け持つ派生キャラが出演。
漫画: - 最初期に展開された「ちびミクさん」「はちゅねミクの日常 ろいぱら!」「みくよん」「週刊はじめての初音ミク」、KEI氏による非公式商業作品やボカロ楽曲作品のコミカライズ等。「プロジェクトセカイ」の公式4コマやアンソロジーコミックにも出演している。また、公式企画・イベント用の漫画など単行本化されないものも…。
- 小説:
- ボカロ小説と呼ばれるボカロ曲を題材とした小説作品が展開されている。ただし、登場するのはバーチャルシンガーをモチーフとしたキャラである。
- コラボレーション
- 大元が歌唱合成ソフトのミクにとっては殆どの展開がコラボレーションと言える。
クリエイター:
今でこそピアプロキャラクターズ関連商品は万単位の数が存在するが、当初のクリプトン社にはライセンスビジネスのノウハウが無く、ミクたちのビジュアルも限定的だった。そこから様々なクリエイターに依頼したり、ミクが中心の創作シーンを商業方面に組み込む流れが作られた。
コンテンツコラボ:
ミクは他社コンテンツ(IP)とのコラボ企画が非常に多い事で知られる。中にはハローキティ、すーぱーそに子、ラスカル、ロディのように複数回に亘ってコラボしたキャラクターもいる。作品に出演したり、ポケモンのようにコラボプロジェクトとして展開されるケースもある。
アンバサダー・PRキャラクター
- グッドスマイルレーシング 初音ミクGTプロジェクト:レースクイーン/専用キャラクター(初音ミクRQ ver→レーシングミク、2008~)
- 初音ミク Project miraiシリーズ:プロモーションキャラクター(ミクダヨー、2011~)
- 2017冬季アジア札幌大会:広報大使/PRアンバサダー(雪ミク、2016-17)
- Cassette Store Day Japan:公式アンバサダー(初音ミク、2017)
- 弘前さくらまつり:公式応援キャラクター(桜ミク、2019~)
- ポカリスエット:公式アンバサダー(初音ミク、2019~)
- Bリーグ ALL-STAR GAME 2020 IN HOKKAIDO:デジタルアンバサダー(雪ミク、2019-20)
- 内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室:コロナ対策サポーター(初音ミク、2020)
- 札幌モーターショー:公式アンバサダー(雪ミク、2020)
- CBCラジオ開局70周年:公式イメージキャラクター(初音ミク、2021)
- 札幌市制100周年記念事業:PRアンバサダー(雪ミク、2022)
- 弘前ねぷた300年祭:公式応援キャラクター(初音ミク、2022)
- 初音工房プロジェクト:公式アンバサダー(初音ミク、2023~)
- 札幌モビリティショー:公式アンバサダー(雪ミク、2023~)
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- 札幌観光大使(雪ミク、2024年~)
その他、トヨタ・カローラ(2011)、Google Chrome(2011)、赤い羽根共同募金(2012~)、大阪府警察本部サイバー犯罪対策課PR(2017)、農林水産省/食文化PR(2017)など。
初音ミクの登場まで
発売前史
初音ミクはボカロ・音声合成ソフトブームの立役者だが、初のVOCALOIDというわけではなくそれまでにも数体のVOCALOIDが発売されていた。
2003年にヤマハが初代VOCALOIDを発表。2004年にイギリスのZero-G社が初のVOCALOID「LOLA」と「LEON」を発売した。Zero-G社はクリプトン社と交友があり(クリプトンの伊藤社長いわく友達)、クリプトン側がVOCALOID技術を紹介して開発を持ちかけたとされている。
同年11月にクリプトン初のVOCALOID「MEIKO」をリリース。当時の成功基準の3倍もの本数を売り上げた。その後に男性音源の「KAITO」を発売するも、当時(※)はMEIKOの半分にも満たない本数に終わった。売上の低迷・開発の縮小により、VOCALOIDが断絶する可能性もあったという。
※その後、両者ともにミクの成功を受けて人気を得た。今となってはむしろ成功である。
「電子の歌姫」初音ミクの登場
クリプトン社が提案した「架空の少女(バーチャルアイドル)に歌わせる」というコンセプトのもと新プロジェクトが始動。後に「キャラクター・ボーカル・シリーズ」と銘打たれたこの商品企画は、これまでシンガーを起用していた中で「声優」を起用することを前提に進められた。そこで選ばれたのが『アーツビジョン』所属の藤田咲であった。
藤田が選ばれた理由は「地声がロリータボイスっぽい」「あまり演技をしていない(声を作っていない)」「藤田の声とボカロエンジンの相性が良かった」という事が大きな理由に挙がる。ミクの開発者の佐々木(wat)は「チャーミングでポップでキュートなボーカロイド」になると確信していた。
2007年6月にクリプトンのブログで「ミク」というコードネームとKEI氏のイラストが公開。発売前の時点で反響があり、予約が殺到した。
2007年8月31日、「初音ミク(V2)」が発売。発売直後から大ヒットを記録し、あまりの人気に欠品状態が続き、Amazon予約で当日に届かないことでも話題となった。
この時期に、後のワンカップPがMEIKOを使って投稿した「初音ミクが来ないのでスネています」という動画などでさらに注目を集め、話題が話題を呼び、従来のボカロを大きく上回る売り上げを叩き出した。
ニコニコ動画における初音ミクの黎明期
初音ミク現象の要因、そしてクリプトンのある札幌市と並ぶ「ミクの故郷の一つ」とも言えるのがニコニコ動画(以下、ニコ動)である。
ニコ動ではミクを使用したカバー曲が次々とアップされ、しばらく後には投稿者自ら作曲したオリジナル曲が人気を得るようになっていく。オリジナル曲は当初、歌詞が「初音ミク」そのものを題材にしたものが多かったが、 やがてラブソング等、ミクの持つ独特のイメージに縛られない歌が脚光を浴びるようになっていった(メルトショック)。
ニコ動の中で「初音ミク」という無機質なデータが様々な投稿者達の手によって色々な要素を肉付けされ、 設定でしかなかったイラストがニコ動ユーザーによって形作られていった。本当の意味で、インターネットによって作られたバーチャルアイドル誕生である。
そして彼女はネット発の文化の代表的な存在にまで成長し、その快進撃は留まる所を知らない。
2008年8月31日、初音ミクの代表作の一つ『みくみくにしてあげる♪【してやんよ】』が15:09(3時9分=ミク)に500万再生を突破した。 因みにこの日は初音ミクの発売1周年の日でもある。
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