則巻千兵衛(のりまき せんべえ)とは、鳥山明の漫画『Dr.スランプ』の元・主人公である。身長175cm、体重80kg。口からヨダレを垂らすのが特徴。
担当声優
おしっ、でけたぞ! これが天才博士の概要だ!
メインキャラクターのひとり。本作は則巻アラレが主人公となっているが、元々は千兵衛を主人公に「博士ものの漫画」を想定してスタートしたため、タイトルも「失敗作ばかりの発明家」という意味が込められた『ドクタースランプ』となっている。アラレは他の発明品同様『1話限りのゲスト』のはずだったが、担当編集者の鳥嶋和彦がアラレを気に入ったことやアラレ人気が出てしまったことで、結局千兵衛を退けそのまま主人公の座についている。
初登場は第1話の『アラレ誕生!の巻』で、設定上は1980年5月3日のこととなっている(これは本作連載開始時点で3ヶ月ほど“未来”に当たる)。キュイー・・・ン、という機械音を響かせながら咥えタバコで人間型ロボット(アラレ)を組み立てる彼のシーンから物語が始まるが、最初の台詞はそのロボよりも後で、あくびをしながら「あ~たいくつ」と漏らす彼女に対して発した「先にクビをつくるとうるさくてかなわんな・・・」だった。
なお、漫画自体の最初のコマは“Doctor. 則巻千兵衛”と名前にルビ入りで書かれた新聞入りの郵便受けと則巻邸で、この漫画が「最初は千兵衛博士一人だった家が、時間が経つにつれ賑やかになり、アラレ、ガッちゃん、妻みどり先生、長男ターボくんと、次第に家族が増えて郵便受けの名前もそれに合わせて追記されていく」ということを象徴するコマでもある。
完成間近のロボットに右手を動かす指示を伝えると、いきなり股間にズムッという重いパンチを喰らっている。
3ページ目にて文字通り死ぬ思いで完成したとロボット共に以後何度も披露されることとなる劇画顔に変身、「こわい・・・ わたしは自分の才能がこわい・・・ こんなに 完璧な 人間型ロボット(アンドロイド)を かんたんに つくって しまう なんて・・・」と自身の才能に汗をたらしながら驚嘆していた。
但し、戦闘ロボットとして作られていないことや貧乳として製作されたことに当人は若干の不満を漏らしていた。
また、「完璧」といいつつも、既にその少女ロボットは重大な欠陥があり『ロボットなのに近眼』であることが判明、彼自身はメガネは不要なはずだが、持っていた近眼鏡で急遽視力補正を行った。
これが印象的な「メガネをかけた女の子ロボット」誕生の瞬間である。
また、当時28歳という年齢にも関わらず、独身だったため(2010年代でこそ大して珍しくはないが、1980年代前半は20代前半の結婚は都市、地方問わずほぼ当たり前の時代で、このぐらいの年齢なら子供が居てもおかしくなかったことに注意)、女性用の衣類が全く家になかったため、当初はロボットに縦縞模様のパジャマの上着だけを着せていたが、"いつまでもオレのパジャマをきとるわけにはいかんだろ"、という配慮からTHEデパートのオムツからミサイルまで何でも5割引セールを利用して女児服一式を揃える。
最後の難関は下着だったが、変態扱いされることを嫌い店員に「母へのプレゼント」と称して女装用の婦人服を見立ててもらうが、何故かセーラー服を買わされる羽目になるという大恥をかいて、ようやく全部揃えることが出来た。なお、この1巻12ページの婦人服コーナーのメガネ店員は3コマだけの登場ながら連載当時隠れた人気キャラだった。つか、買うときにレジで気付くだろ普通!やっぱし博士も大概のアホである。
かくして、オーバーオール姿という若干ボーイッシュな雰囲気になってしまった(当時はあまり女性が着る服とは見做されていなかった。この漫画のヒットで女の子もこういう格好をするようになってきた。)ものの、博士の当初の目的である「村の“人間”として溶け込ませる」という最初の実験のため、「他の連中がロボットだと気付かんようなら大成功」とアドバイスした上で行きつけの喫茶店COFFEE Potに向かう。なお、この時点で「首と胴体が簡単に分離可能でそれぞれに独立した意思で動かせる」という機能が残されて当人も気にせず首をボールの如く投げて遊んでいたが、やめんか、と咎めている。
店に入るなり、「んちゃ」と店員・木緑葵に挨拶を交わすといきなり「ドクタースカンク」と名前を間違えられる。
上記の通り、この挨拶言葉の元祖は千兵衛博士である。
葵は見知らぬ少女を博士が連れていることにすぐ気付いたが、千兵衛の子供か?と問うとその場で苦し紛れに「オレはまだ28だぞ! え・・・と 妹だ 妹!」と誤魔化した。
千兵衛に似なかったことを褒める葵だったが、当然ながら彼女の名前が気になり、少女に問いかけるが博士はこのロボットに完成まで名前など付けていなかったらしく、大汗をかきながら慌てふためいて
「え!? あ!・・・ な・・・名前ね ん・・・と・・・・・・ ・・・アラレ! そ そう 則巻アラレじゃないか!」
と答えた。開始16ページ目にしてようやく、そして史上最も有名なメガネ少女ロボットが命名された瞬間であった。
が、肝心の葵の評価は「ふぅ・・・ん 兄だい そろって ジョーダン みたいな 名前ね・・・」と今でいうところのDQNネーム(キラキラネーム)であることを小バカにした様子だった。
ここまで葵をはじめとして他の人間は誰一人彼女が人間であることを疑うものは居なかったが、アラレ自身は飲み物の注文を「機械オイル」と答えたり、年齢を「きょう できたての ホヤホヤ」と答えるなど、まだ人工知能があまり発達していない様子が伺えた。(年齢については13歳と、またも博士がその場しのぎの即興で答えたため「中学生には見えない」と突っ込まれた。年齢設定は博士もミスを認めており、2巻第1話「アラレ空をとぶ!の巻」で小学生ぐらいのトシにしとけばよかったと若干後悔している模様)
また、アラレはジュースを飲んでおながが錆びることを心配していた。
さすがに何も考えずに完成だけのために作っていたことでバックの『人間としての人となり』を考えなかったことから、「あんまし 質問せんで くれっ!」と怒っていた。
また、この1話目の時点で自分が漫画の登場人物であることを自認していたらしく、アラレの鼻の穴が無いことを葵に突っ込まれた際にいきなり「おのれだってないだろがっ!! マンガなんだぞ マンガ!」と目を飛び出しながら激しく突っ込んでいる。
一応、初実験は成功裏に終わったが、アホらしくなったため帰宅することに。
なお、アラレは去り際に「グッドバイ グッドバイ グッド バイバイ」と手を振っており、まだ「バイチャ」では無かった。
外に出て飛行機の真似事でキーンと道路に飛び出したアラレはクルマを跳ね飛ばし、メガネを割ってしまった上、新品の服をボロボロにしてしまうところで第1回は終了する。
が、これだけの状況でありながら、やはり誰一人としてアラレが人造人間であることに気付く者は居なかった。
バカもの わしはいつだって完璧なものしかつくらん!
第2話では世間の目を完全に欺くためにアラレを村立中学園に入学させる。
旧知の仲である校長(※園長ではない)には「カラダが弱くて 今まで病院に入院していた」と説明したが、校長は博士の両親が幼少期に亡くなっていることに若干の不信感を抱いた模様だった。
この際に、校長室にて後に生涯の伴侶となるアラレの担任教師、山吹みどり先生と運命的な出逢いを果たし、一気に身長まで変えてアラレの後を託している。
3話目では学校の体育の着替えにおいてアラレに『だいじなものがついていない』という事が発覚。
博士もそれ自体は気が付いていたものの、唯一の資料では「見えない」という理由で付けていなかった。なお、男に改造することも進言したものの、既に女の子として世間に発表してしまった以上そうもいかなかったため、3話目にして早くも自身のエロパワー炸裂の人類最高の発明「非生命体透過メガネ」を7コマで完成させる。
このメガネを使えば、生命体以外を透過して観ることができる、即ち衣類や物質以外のものを見られる、という、男なら100%そういう目的にしか使わないであろう作品である。
ここまで特に博士がスケベである、という設定は表立っては出てこなかったのだが、この話以降この設定はずーっと最終回まで保持されたままとなる。
ちなみに、アラレ以外で最初に登場した発明がこのエロメガネである。鳥山明も欲しかったのか?
結局アラレに付いていなかったのはへそで、女性器のことではなかった(が、後に彼女に性器が付いたという話はないため、結局はツンツルリンのまんまと思われる)
第5話「どれにしようかナ?の巻」では出番がたった2コマと激減。
作者に文句を言うが「ゴチャゴチャいっとるヒマがあったら アシスタント・ロボでもつくれ!」と逆に言いくるめられた。
この時点で既に主役はアラレに移っており、学校の部活部員に混じっていることをあかねに指摘され「今回ほかに出番がないの!!」と無理やり出演した旨を不満気に語っていた。
5話目以降は前述のとおり主人公をアラレに置き換えていったため、「千兵衛の発明品をアラレが使って騒動を起こす」といった流れや「千兵衛の冒険について行って結果として博士を助ける」といった流れになっていった。
第10話では早くもタイムマシン「タイムスリッパー タイムくん&ツンツル板」を徹夜して完成させる。若干AI設定を間違えたらしく、タイムくんの性格について「ちょっと設計とちがうみたいだなあ・・・」と困惑していた。
なお、この話で2桁の暗算が出来ないことが判明(・・・なのにタイムマシンが作れるとは、アホなのか天才なのか?)
続く第11話ではアラレ以外では初めて2話連続登場となった発明品のタイムスリッパーで原始時代に行く実験を行う。空豆タロウ&ピースケ、木緑あかねを誘ったが、タロウは野球の試合でドタキャンし、あかねは二日酔いでダウンしたためピースケとアラレのみ時間旅行に同行した。さすがに怒りを隠せなかったものの、とりあえず原始時代にタイムスリップ。
初めての時間旅行に「す すごい! ホントについたぞっ!!」と興奮気味であった。
が、何故か原始時代に存在していた怪獣に追い回されるなど散々な目に遭ったので、帰ろうとする。
しかし、そこでピースケの先祖と自分の祖先に出会い、ピースケの先祖に100円ライターをプレゼント。そのお返しに何かのタマゴをお土産に貰う。
現代にこれを持ち帰って自作の孵卵器にかけると、産まれて来たのは恐竜の子供・・・ではなく、触覚の付いたおしゃぶりを咥えた赤子だった。
次の話ではこの奇妙な赤ん坊をどうするのか悩んでいたが、原始時代に返してアラレの怒りを買うことを恐れたため、そのまま自宅で家族として育てることに。
また、何でも食べてしまうという恐ろしい食欲や、卵から服を着たまま生まれてきたという非常識さ、アラレの高すぎるたかいたかいで落っこちてもまったくダメージが無い様子には、自称天才の博士も青ざめていた。
また、風呂の中でこの赤子に羽が生えていることや性器にあたるものが何も無いことも発見。
「ありゃ ひょっとしたら 天使っちゅう やつかも しれんな!」と、この子の正体をズバリ言い当てているのだが、風呂桶を食い始めた様子からその可能性はあっさり捨て去った模様。
そして、アラレのときと同じように、名前を考えなければいけないという事態にも直面。
アラレは「ゴジラ」「ガメラ」「ポチ」「タマ」「ケロちゃん」「ジャンプ」、果ては「センベエ」まで様々な名前を考えたがゴジラとガメラをあわせて「ガジラ」と命名。縮めて愛称は「ガッちゃん」とした。
このネーミングには「ガッちゃん・・・ 則巻ガッちゃん ア アホか! なんのこっちゃ・・・!」と呆れていたが、当のガッちゃんは名前も気に入ったらしく笑顔で喜んでいた。
その後、千兵衛の天然パーマ頭はタマゴ時代の感触に近いらしく、ガッちゃんのベッドとして定位置化する。
鳥山作品に登場するほかの博士との関係
本作に登場する悪の科学者ドクター・マシリトは千兵衛の学生時代のライバルに当たり、常にトップだった千兵衛にマシリトはついに一度も勝つことができなかった。
作中でも千兵衛の発明品であるアラレを倒して世界征服を狙うが、結局アラレチームに勝つことは出来なかった(ただし、「アラレ個人」は1度完全にバラバラにして勝利した)。
鳥山の次回作にあたる『ドラゴンボール』には悪の天才科学者として主人公の孫悟空と敵対するドクター・ゲロというレッドリボン軍の残党博士が登場する。
人造人間の製作目的は「家族を作った千兵衛」に対し「世界征服及び孫悟空抹殺目的」というまるで正反対の二人だが、意外にも共通項が多い。
まず、上記の通り、ほぼ人間と遜色の無いアンドロイドをたった一人で組上げるという点や苦手分野がAI制御とロボットの戦闘力コントロールである点などである。
どちらも発明者自身を殺しかねないほどの致命的な欠点なのだが、実際に人造人間17号に手にかけられたゲロに対し、千兵衛は度々ヒドイ目に遭わされてはいるものの、基本的に意思を持った発明品たちには悪態つかれながらも好かれていることが伺える。事実、博士が本当に死亡してしまった際にアラレは迷うことなく天国行きに付き合っているほか、家族一同大泣きしていた。
また、千兵衛はAIを「過剰なまでに人間味溢れるように作りすぎる」のが欠点で、そのためにアホな性格のロボットや、放尿してマーキングする犬ロボット、自分に危機が及ぶと自爆するバカなどが出来てしまうのだが、ゲロの場合は「極端な悪人か善人を作り上げてしまう」ということが欠点で、人間を改造した8号、17号、18号は人間の性格を完全に取り除けなかったことが失敗となり、16号は「孫悟空を殺すことのみ」にしか命令を振り分けられなかったことで失敗としている(16号とゲロをゲームで戦わせると「ゲロの命令を聞くようにはプログラミングされていない」と言ったことを発言する)。13号~15号、及びセルに関しては彼の死後コンピューターが組上げたためゲロに対する忠誠心は不明。唯一の成功作品だった人造人間19号は大幅なパワーダウンを余儀なくされた上にべジータに破壊されてしまった。
ある意味、ゲロは"千兵衛が悪に走った場合にどうなるのか?"が描かれているとも言えなくは無い。
もし、ドクター・ゲロが道を誤らなければ、千兵衛やロックマンのライト博士のように、ゼロから人間の友達と成り得るロボットを開発して人類社会に貢献していたのかもしれない。
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