概要
力づくの手段によって「現状」(status quo)に何らかの変更を加えること。
例えば領土問題や民族問題に関して関係各国で意見の相違がある場合に、交渉や国際司法裁判所への提訴などの外交的手段を用いずに、侵攻などの武力に基づいた手段を用いて現状に変更を加えようとすることである。
英語では「changing the status quo by force」など。というかこの言葉を日本語訳したものが「力による現状変更」であろう。動詞的に記す場合は「change the status quo by force」など。
英語で表記する場合、「status quo」はラテン語に基づく言葉であるので「changing the status quo by force」といったようにこの部分だけ斜体で記されることもある。ただし既に英語の慣用句として定着してもおり、わざわざ斜体では記さない事の方が多いようだ。
現在の日本はこの行動を認めない立場を取っているので、他国の行動について懸念の意を示す際などによく用いられる。ニュース記事などでこの言葉を目にしたことがある人も多いだろう。
用例
太字化は引用者による。
日中戦争勃発後から真珠湾攻撃で連合国との全面戦争に至るまでの期間には、アメリカやイギリスなどの連合国側の政府や議員などが日本を牽制・非難する際にこの言い回しを用いたことがあるようだ。それを和訳して紹介した記録がある。
政治の方面においては、英國政府は武力による現狀の變更を承認せざること――このうちには中央政府の同意なくして「地方政府」がつくられる場合も含まれてゐる――を幾度か聲明して、獨立のために苦闘する支那を助けた。
※昭和15年(西暦1940年)4月25日
大阪朝日新聞社調査部パンフレット19「大陸政策に關する文獻書目竝解說 第十四輯」
附録『英國の極東政策』より
21世紀現在の日本政府やその要人は、中華人民共和国やロシアの行動に対して牽制・非難する意見を国際的に表明する際に用いることが多く、その場合は英訳文も同時に発表されることが多い。
安倍総理より、日中関係は最も重要な二国間関係の一つであり、「戦略的互恵関係」の基本的考え方に則り、日中関係を進めていきたい旨述べる一方、今般の中国による「防空識別区」の設定の発表は極めて問題であり、今般の米国による迅速かつ力強い立場の表明、具体的行動、日米連携を高く評価する旨述べた。また、安倍総理より、中国の力による一方的な現状変更の試みを黙認せず、引き続き日米で連携して対応していきたい旨述べた。これに対しバイデン副大統領からも、同様の発言があった。
Prime Minister Abe stated that the relationship between Japan and China is one of the most important bilateral relationships for Japan and that he hopes to enhance this relationship based on the concept of “Mutually Beneficial Relationship Based on Common Strategic Interests”. At the same time, he stated that China's recent announcement of its establishment of the "East China Sea Air Defense Identification Zone" is a serious problem and that he highly appreciated the United States’ quick and firm expression of its stance, its concrete actions and the coordination between Japan and the United States on this issue. Prime Minister Abe added that Japan will not tolerate China's attempt to unilaterally change the status quo by force and that he hopes to continue to work closely with the United State. In response, Vice President Biden made similar remarks.
※平成25年(西暦2013年)12月3日
「バイデン米副大統領による安倍総理表敬(概要)」
の日本語版及び英語版より
- On February 24, Russia launched military actions in Ukraine.
- These actions clearly infringe upon the Ukraine’s sovereignty and territorial integrity, constitute a serious violation of international law prohibiting use of force, and are a grave breach of the United Nations Charter. Any unilateral change of the status quo by force is totally unacceptable. This is an extremely serious situation that shakes the foundation of international order not only in Europe but also in Asia. Japan condemns the actions in the strongest terms. Japan strongly urges Russia to cease the attack and withdraw its forces back to Russian territory immediately.
※令和4年(西暦2022年)2月25日
「ロシアによるウクライナへの軍事行動の開始を受けた制裁措置(外務大臣談話)」
の日本語版および英語版より
関連項目
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