労働協約とは、労働組合と使用者(経営者)がとりかわす契約である。
概要
定義
労働組合と使用者が団体交渉をして結ぶ契約のことを労働協約という。
適用範囲
労働協約Aは、それを締結した労働組合A"の構成員と、それを締結した使用者に適用される。
ただし、ある事業所で労働組合A"の構成員が全体の3/4以上を占めるのなら、労働組合A"に所属していない労働者にも労働協約Aが適用される(労働組合法第17条)。
また、ある地域で従業する同種の労働者の大部分が労働協約Aの適用を受けるに至ったとき、その労働協約Aの当事者(労働組合と使用者)のどちらか片方が申し立てを行い、労働委員会が決議することで、その地域が1つの都道府県に収まっている場合なら都道府県知事が、その地域が複数の都道府県にまたがっているなら厚生労働大臣が、「労働協約Aの適用を受けていない少数派の労働者も労働協約Aの適用を受けるべきである」と決定することができる(労働組合法第18条)。条文では「労働者の大部分」と書かれているが実務的には「おおむね労働者の3/4以上」とされている(厚生労働省資料)。
効力が強い
労働協約は「職場の憲法」と言われるほど効力が強い。
労働協約に反する労働契約[1]は無効となる(労働組合法第16条)。
労働協約に反する就業規則[2]は無効になり、行政官庁から変更を命じられることがある(労働基準法第92条)。
就業規則によって労働契約の内容を定めることができ(労働契約法第7条、第10条)、労働契約の中で就業規則に反した部分は無効になる(労働契約法第12条)。ただし、その就業規則が労働協約に反していれば、就業規則による労働契約の設定・無効化が不可能になる(労働契約法第13条)。
効力の発生と最長期間
労働協約は、労働組合と使用者が合意し、書面に作成し、両当事者が署名または記名押印することによって、その効力を生ずる(労働組合法第14条)。
労働協約は有効期限を定めて作成することができるが、有効期限の最長期間は3年である(労働組合法第15条第1項)。勘違いで3年を超える期間を定めて労働協約を作成した場合は、「有効期限が3年の労働協約」として扱われる(労働組合法第15条第2項)
労働協約は有効期限の定めを設けずに作成することができるが、そうした労働協約は、労働組合または使用者のどちらか片方の都合によって一方的に解約することができる。労働組合または使用者のどちらか片方が解約するときは、署名または記名押印した文書によって相手方に予告してから解約する(労働組合法第15条第3項)。予告は解約の90日前までに行わねばならない(労働組合法第15条第4項)。
関連項目
脚注
- *労働契約は労働者1人と使用者が合意して結ぶ契約の中で、労働者が労働を提供して使用者が対価として賃金を支払うことを取り決めるものである。労働契約法第6条で「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。」と定められている。
- *就業規則は使用者が一方的に制定する職場内規則である。常時10人以上の労働者を使用する使用者は、一定の内容を満たす就業規則を作成し、行政官庁に届け出る必要がある(労働基準法第89条)。ただし、労働者の過半数で構成される労働組合の意見を聞いて書面にして行政官庁に提出する必要があり、そうした労働組合がない場合に労働者の過半数を代表する者の意見を聞いて書面にして行政官庁に提出する必要がある(労働基準法第90条)。
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