「浮かばれない動画」供養します。
動画供養とは、日の目を見ることの無かった動画達を供養するイベントである。
概要
動画供養とは、人目に触れることなく埋もれてしまった動画を、導師蝉丸Pが供養するイベントである。2010年に歌供養(後述)にちなんで初めて行われた。その後2019-2023(除2021)年にニコニコ超会議の一部として行われた。
超動画供養(2023年)
2023年は例年通りニコニコ超会議2023の「超テクノ法要×向源」で行われる。ニコニコ超会議2023の開催日は2023年4月29日(土)と30日(日)。応募条件もこれまで同様で、「再生数1000以下」「コメント100以下」「マイリスト10以下」の動画が対象。「動画供養希望」タグがタグロックされると応募完了となる。
導師蝉丸Pは例年舞台の上で供養を行うのだが、2023年は参列者が椅子に座る中、蝉丸Pは床の敷物の上で執り行った。読経はDXの波に乗りタブレットを参照していたが、なぜか動画番号は紙媒体で読み上げていた。司会の紹介では、削除された動画の供養であるかのような話になっているが、削除動画は参加できていない気がする。
法話パートでは仏教の歴史に触れて分かったことを2日間に渡って語った。師匠から(インターネットのような)儚い流行に迎合した活動に時間を費やしてどうするとダメ出しを受け、仏教を勉強し直したとのこと。
唐の滅亡(西暦907年)より後の中国は北方騎馬民族の侵攻により混乱し、日本は新刊(新しい経典)が手に入らないコロナ禍のコミケ中止のような状態が続いていた。その結果、後期仏教は(北部の混乱を逃れて南部から伝わった禅宗を除き)日本に入って来なかった。
日本で主流の中期仏教までは体の欲(煩悩)は悟りに邪魔なものと扱われていたが、後期仏教では人生で一番長く乗る乗り物は自分の体なのだから大事にすべきという教えに変化したとのこと。1日目では、自分の体のメンテナンスが大事ということは若いうちはわからないかもしれないが、40-50歳になると堪えるので気をつけるようにと説いた。蝉丸Pはこの時点で50代突入まで半年を切っている。
(中期仏教のドグマ的禁欲に対し)後期仏教では禁欲の戒律遵守について理論付けが行われている。体のチャクラのパワーを目先の快楽に惑わされることなく頭に回せば悟りに近づくことができ、永続する悟りの快楽となって返ってくるので体も大事というのが後期の考え方。プラーナ(生気)やチャクラ(脈輪)は、現代日本ではシン・仮面ライダーのようにフィクションの元ネタとして扱われることが多いが、後期仏教の概念である。
こういった思想背景の変化を受けて、(インド諸宗教の修行法である)ヨーガでも知恵・信仰・体などどれに重きを置くかで分化が見られた。日本にはヨーガの分化した考え方は伝わってこなかったが、日本でも同様の分化が独自に起こっており、日本仏教でも後期仏教の幸せに到達することは出来る。
我欲・自我を減らす懺悔滅罪をして福を入れる空き容量を作ることについては中期仏教が優れている所もあるので、自身に縁のある日本のお寺を訪れてみては、というダイレクトマーケティングで2日目を締めくくった。
運営発表による今回の応募件数は4,797件だったのこと。
過去の動画供養
[ 2010年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2022年 ]
動画供養(2010年)
2010年4月1日0時、ニコニコニュースにて「動画供養」を執り行うという告知がされた。
このイベントに応募する条件として 「再生数1000以下」「コメント100以下」「マイリスト10以下」の動画 を目安として該当動画に「動画供養希望」タグが付加・タグロックされると応募完了となる。(自薦・他薦は問わない)
告知を行った日付よりエイプリルフールのジョークではないかと見る向きもあったが、2010年4月17日(土)16時~17時半頃、本当に動画供養が執り行われ、その様子がニコニコ生放送にて放送された。
供養された動画は「動画供養希望」タグが「この動画は供養されました」タグに置き換えられた。
実際に動画供養が行われたのは始めの30分ほど(内後半の20分間では供養対象の動画IDの一部が読み上げられた。リストは公開されていない)で、その後に導師・蝉丸Pからの法話が13分、さらに第2部として40分ほど歌謡ショーが放送された。
蝉丸Pの法話では供養とは必ずしも死者に対して行う儀式ではなく、他人を慈しむ心(具体的にはうp主にGJとコメントするなど)を養い育てることが大切なのだという内容であった。ただし司会を含むほとんどの出席者は喪服姿であった。
超動画供養(2018年)
2018年、動画供養が帰ってきた?! 告知日はまたしてもエイプリルフール。応募条件は前回同様で、「再生数1000以下」「コメント100以下」「マイリスト10以下」の動画が対象。「動画供養希望」タグがタグロックされると応募完了となる。(自薦・他薦は問わないタグロックは本人しか出来ないので自薦しか無いのでは? とも思えるが、他人がつけたタグにロックをつけても、自分のつけたタグにロックをつけてもいいという意味か)。運営の開始時の挨拶では人知れず削除されてしまった動画を供養するかのような話があったが、応募対象の動画は供養後も視聴可能である。
応募締め切りは2018年4月23日23時59分。動画供養自体は4月28日・29日のニコニコ超会議「超テクノ法要×向源(11時〜夕方)」ブースで、「超動画供養(4/28: 14:00〜14:30, 4/29: 14:15〜15:00)」として行われた。導師を務めたのは前回と同じく蝉丸P。
読経では、背景に供養される動画のワンシーンを流しながら、一部動画の動画IDとタイトルが読み上げられた。2010年同様献花も行われた。ビリー・ヘリントン氏の追悼も読経に織り込まれた。R.I.P.
1日目の法話は10分ほどで、諸行無常についてニコニコ動画のプレミアム会員減少についても忌憚なく例に上げながら、変化は悪いことだけではない。変化するからこそ悪いままでなく良くなることもあるのだから、変化は受け入れなければならないと説いた。
2日目の法話は20分ほどで、台本を用意してこなかったとのことであったが、運営から事前に要望があったとのことでSNS炎上に関連して、摩訶止観について説いた。創作実話と呼ばれる義憤に駆られて拡散したくなるような記事を見かけたら、条件反射的にリツイートするのではなく、少し立ち止まって3分ほど自分の中の感情を客観的に観測することを勧めた。義憤に駆られたところで心と体力をすり減らすのは自分だけ、と。
超動画供養2019(2019年)
2018年に続き、2019年も動画供養が行われることとなった。その名も超動画供養2019…ってそのまんま。告知日はまたしてもエイプリルフールだったっぽいが、気づいた人からの報告が2019年4月2日だったので真相は永遠の謎となった。開催日は2019年4月27日・28日ニコニコ超会議「超テクノ法要×向源」ブースで行われる(4/27: 12:55-13:30, 4/28: 12:30-13:00)。導師を務めるのは恒例の蝉丸P。
応募条件もこれまで同様で、「再生数1000以下」「コメント100以下」「マイリスト10以下」の動画が対象。「動画供養希望」タグがタグロックされると応募完了となる。応募締切は2019年4月21日23時59分。だが、運営の冒頭の挨拶では現存する動画よりも削除された動画が対象であるかのような口ぶりであった。
第一部の法要パートでは、両日とも例年同様20分ほど読経・献花とともに動画IDの読み上げ・一部画像の表示が行われた。
第二部は10分ほどの法話パート。1日目は平成のの時代はネットが発展した一方で、身体性が失われモニターの向こう側に相手がいるということを感じ取る力も失われたことを現代の新たな問題点として指摘した。観音菩薩の慈眼視衆生(じげんじしゅじょう)を挙げ、相手が存在することを認識して慈しみの心をもって見れば、現在ネットで横行するような暴言・誹謗はなくなるはず、新しい元号令和にふさわしくおだやかな気持ちにならなければならないと説いた。
なお、輪廻転生は仏教の概念だが、異世界転生は仏教のジャンルではないとのこと。
2日目は運をテーマに唯識派の種子熏習(しゅうじくんじゅう・しゅじくんじゅう)という考え方を挙げた。SNSなどでキャラを作っている人は、染み付いたそのキャラに引きずられる。同様に自分は運が悪いと考えるよりも、自分は運がいいのだと考える方が運が向いてくる。どうしても自分は運が良いと考えられない人は、仏様に手を合わせると運が良くなった気になれる。
手を合わせるだけでは納得できない人は、かき集めるのでなく、与える・思いやる気持ちを持つことも大事、回り回って自分に運が向いてくるものであると説いた。蝉丸Pはこの方法でFGOのガチャで星5を一発で出したらしい。
運営の最後の報告では今回の応募件数は4,655件だったとのこと。
超動画供養(2020年)
新型コロナウィルスが猛威を振るう中、2020年も動画供養は予定を変更しつつ実施された。例年4月1日に告知が出るっぽいのだが、2020年4月1日のニコニコネット超会議2020のページに告知はなく、告知の初出は4月3日のTwitter上だったようだ。
募集条件は例年通りで、再生数1000以下・コメント100個以下・マイリスト10件以下の動画。供養したい動画に「動画供養希望」タグを追加したりタグロックするだけで「超動画供養」への応募が完了する。自薦・他薦は問わないとのこと。応募締切は2020年4月15日23時59分。
文言通りに解釈すると、これまでと異なり本人がタグロックしなくても応募できるようにも読めるが、「たり」の呼応表現が脱落しているので誤植である可能性が微粒子レベルで存在している・・・?
ニコニコネット超会議2020の「超テクノ法要×向源」で行われるというのは通例通り。生放送は2020年4月19日(日)午前3時からの予定とされていたが、2度の予定変更を経て2020年4月18日21時より行われた。当日は45分の予定を延長して50分強、行われた。
新型コロナウィルスの影響によりニコニコネット超会議2020自体もオンライン開催であるが、導師蝉丸P自身も収録会場には現れず寺からの中継放送すなわち寺ワークにて行われた。残念ながら中継による音声の乱れが多々見られた。法要パートの読経には疫病退散が盛り込まれた。
法話パートでは、真言密教で悟りに至るための重要な段階である「三密」についての話。
身口意(体・口・心)という3つが人間の行動の全てであり、それらすべて罪のもとであり三業である。例として自分で見聞きしたことだけを元にして、社会・他人に対して高い要求水準をつきつける風潮を取り上げた。
ワイドショーなどで不安を煽られて攻撃に走るのではなく、「遮情(情報の遮断)」により心の回転を一回止める。そして、世の中は真理の現れという「表徳」の考え方に基づきもう少しよく調べて真実はいつも今ひとつ(であり、高い水準を求めることはできない)ということを把握するべき。そうすることによって身口意を仏に近づけていくのが三密であると説いた。
運営発表では、今年の応募件数は5,793件であったとのこと。
超動画供養(2022年)
2021年は行われなかったが、2022年は4月29日と30日の13時から執り行われた。応募条件もこれまで同様で、「再生数1000以下」「コメント100以下」「マイリスト10以下」の動画が対象。「動画供養希望」タグがタグロックされると応募完了となる。締め切りは特に書かれていない。
法要パートの読経には今年も疫病退散が盛り込まれた。ギフト機能の実装に伴い、献花では視聴者にもギフトやコメントでの献花が呼びかけられた。
現地での実施は3年ぶりとなる導師蝉丸Pの法話第1日目は15分ほどで、新型コロナウイルスの流行に伴い動画視聴文化が普及したことを背景とした問題として、ネット上のウソに免疫のない低年齢世代や定年世代が、無料動画のデマを信じ込んで「真実に目覚めた」とか語りだす問題を取り上げた。
最近のデマの特色について、昔の愉快犯的釣り動画は「騙されたなw」とネタばらししてくれたが、今では仕掛けた側が「真実に気づくことの出来た鋭いあなたは選ばれた人です」と騙された状態を肯定・助長し、「(選ばれし者のための)我々の(有料)サロンへようこそ」と「養分」として(経済的利益のために)利用するようになっていると指摘した。
お釈迦様ですら「私が言っているからといって信じるな」と説いているとのこと。何事も鵜呑みにせずに自分で確認するべきと説いた。(確認時、エコーチェンバー現象に注意)
2日目の法話も15分ほどで、奈良ナラティブという言葉を挙げ、ネットのような文字情報の世界だと、現実と行動原理が変わってしまう現象を取り上げた。
無料動画を信じ込むよりはマシだが新聞に広告が出ている出版社の本というだけで信用してしまうといった具合に、人は文字情報だと信じてしまう傾向がある。自分の考えに過ぎないのに、ツイートで文字にしてしまうと一つの物語として現実味を持ち(ナラティブ)、それを世界標準と思い込んで異なる意見を攻撃する。
お釈迦様の教えに「苦しみに自分から近づくな」とあるのだが、現代人はネットだと嫌いなものをわざわざ見に行って腹を立てている。アメリカのテレビ番組製作ノウハウに「貧乏人の娯楽は何かに腹を立てることだ」というものがあるが、もはやその人には怒ることが娯楽になっているのではないか。
Twitterのトレンドを見て腹を立てて消耗するのは馬鹿らしいので、ミュートやブロックで対処し、見るのならネコの画像など自分の好きなものを見るように勧めた。
運営発表による今回の応募件数は3,906件だったのこと。
関連動画
供養された動画を見る場合は「この動画は供養されました」でタグ検索。残念ながら何年に供養されたかまではわからない。
スタッフ(2010年)
関連リンク
- 動画供養 - ニコニコ動画
- 4/17 動画供養を執り行います‐ニコニコニュース
- 4/30 旧動画プレーヤー提供終了‐ニコニコニュース
- 【Web】注目されない動画を供養 - MSN産経ニュース
- ニコ動で「動画供養」実施、浮かばれない動画を自薦・他薦で募集 -INTERNET Watch
- 4月17日、動画供養を行いました。‐ニコニコニュース
- ※第2部の歌謡ショーの曲目も載ってます
- 企画:超動画供養 | ニコニコ超会議2018 公式サイト
- 企画:超動画供養2019 | ニコニコ超会議2019 公式サイト
- 「超動画供養」参加動画募集中 ‐ 4月15日23:59まで|ニコニコインフォ
- 超テクノ法要×向源 | ニコニコネット超会議2020 公式サイト
- 超テクノ法要×向源 | ニコニコ超会議2022 公式サイト
関連項目
コラム: 歌供養
2010年の動画供養の監修を行った船村徹氏が毎年行っている歌供養は1984年ごろから毎年6月12日(6月12日は氏の誕生日)に行っているものである。そこでは献花などが行われる。
それ以前にも歌供養というイベントは行われたことがあり、その頃はそこで評判の良かった曲は再発売されるという救済が行われていた。たとえば、1969年の歌供養では「秋の砂山」という曲がピックアップされヒットしたという。
2010年の動画供養では動画IDを読み上げるときに動画の一場面がモニターに表示されたが、第2部で特定の動画を上映するといったことは行われなかった。
なお、船村徹氏は2017年2月16日に84歳で亡くなっているが、2018年2月16日には一周忌が歌供養を兼ねて行われた。
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