この項目は、ネタバレ成分を多く含んでいます。 編集者はブラックカレーを食べ過ぎました。頭がボーっとしています。 |
包丁人味平とは、作・牛次郎、画・ビッグ錠による漫画作品である。週刊少年ジャンプに1973年28号から1977年45号まで連載されていた。1986年にはフジテレビの「月曜ドラマランド」にてテレビドラマ化されており、木村一八、横山やすしなどが演じている。
概要
主人公の塩見味平が料理修行を通して、包丁人として人間として成長していくさまを描いた料理漫画である。
ストーリー全体に料理対決が描かれており、次々と現れるライバル料理人、命がけの修行、奇想天外な調理技法を編み出す主人公やライバルなど、料理漫画ではなくスポ根漫画(※1)であるという声もある。ただし、相沢重太郎氏が亡くなったことや、四条流・大草流・進土流による闘茶、上野不忍池の包丁塚、豚肉の部位や切り方なども描かれている。
※1 ビッグ錠は文庫版のあとがきにて「スポ根とは縁の無かった僕が料理人の世界を描いて少年誌で通用するのかな」といった類のことを書いているので、今作をスポ根漫画と捉えていたようだ。
ストーリー
ストーリーを大まかに分けると以下のようになるが、公式で定められたものではない。
- キッチンブルドック編
- 塩見味平がコックになるため家を飛び出し、東京は新宿の洋食屋「キッチンブルドック」で修行をする。
- 包丁試し編
- 塩見味平が仲代圭介の策略にはまり、上野不忍池包丁塚前で包丁試しという料理勝負をする。
- 点心礼・闘六味編
- 塩見味平が料理人としての料理観の違いから団英彦に勝負を挑む。愛知県名古屋市の熱田神宮が舞台。
- 荒磯勝負編
- 塩見味平が鹿沢練二の挑発にのり、静岡県焼津市の荒磯の板場での荒磯勝負に挑む。
- カレー戦争編
- 塩見味平が東京はひばりヶ丘での白銀屋と大徳というデパートの競争に、料理を通じて巻き込まれていく。
- ラーメン祭り編
- ひょんなことから北海道は札幌まで来てしまった塩見味平が、偶然にも開催されていた第1回全日本ラーメン祭りに参加する。
- エピローグ
- 札幌から東京へ戻った味平が恩師である北村チームの誘いを受けて旅立つまで。
奇想天外な調理技法・料理
作中にはおもわず目を疑ってしまうような調理技法・料理が多数登場する。
- 鯛の生作り
- 生きた鯛を殺さずに包丁をいれ、身を全て削ぎ取り刺身を作り、骨だけになった鯛を水槽に放し泳がせる。なお、鯛から身を削ぎ取る際には、鯛を包丁の背で叩き眠らせる(起こすときも包丁の背で叩く)。日本でこの技術を習得しているのは、関東包丁会の大場彦三、関西調理師連合会の遠山政治、東日本包友会の湯原良一、塩見松造の4人である。なお、この技術は実在しており、本当に骨を見せたまま生け簀を泳ぐ魚を展示している料理店がテレビで紹介されていたりする。
- 玉ネギの皮むき
- 包丁で玉ネギの頭の部分を切り、お尻の部分をくりぬく。さらに玉ネギに対して縦に切れ目をいれ、皮を外側から一枚一枚横にはずすようにむく。玉ネギ1個をものの1、2秒でむくことができる。
- アイスクリームのフライ
- アイスクリームに小麦粉をまぶし卵をつけ、パン粉をつけて油で揚げる。これも『揚げアイス』として実在する調理法。意外と美味しい上簡単に試せるので高校の文化祭にでも使ってどうぞ。
- アイスクリームの壷あげ
- 球状のアイスクリームをくりぬき壷状にして、その中にジュースを流し込む。そのあと、アイスクリームの壷に蓋をしてフライに揚げる。技術が未熟でアイスクリームが溶け出す心配がある場合は、アイスクリームをオブラートで包むこともできる。
- 五条流水面浮島ぎり
- ボウルに水を張り一本のキュウリを浮かべる。包丁を振り下ろし、キュウリをピクリとも動かさず水面をまったく波立たせずに、キュウリを縦にまっぷたつに切る。場合によっては、キュウリを十文字に4等分したり縦に3等分したり、ボウルごとキュウリを切ることがある。
- 白糸バラシ
- 豚肉の塊に包丁で切れ目をいれ、その切れ目に沿うように白糸で縛りつけ、肉を骨から外し部位ごとに解体する。白糸を2本使って行う二刀流も存在する。
- 白糸つり鐘くずし
- ぶらさげられた豚肉の塊に包丁で切れ目をいれ、その切れ目に沿うように白糸で縛りつけ、肉を揺らしながら骨から外し部位ごとに解体する。白糸バラシが糸に力を込めて肉を解体するのに対して、白糸つり鐘くずしは肉自体の重み・反動を利用して肉を解体する。
- 地雷包丁
- マグロを立たせ包丁を数本突き刺し、火薬で爆発させる。爆発の威力で包丁が推進しマグロが部位ごとに解体される。
- ガスバーナーを使った焼き魚
- ガスコンロで焼いている魚を上からガスバーナーであぶり、両面を一気に焼き上げる。短時間で焼くことができるが、魚の表面だけが焼け、中は生である。
- ブラックカレー
- スパイスの中でも麻薬に近いものを使って作られたカレー。見た目はコールタールを流したかのような真っ黒い色をしており、食べられるようには見えない。しかし、ひとたび食べ始めると食べ終わるまでやめられず、しばらくするとまた食べたくなる中毒性がある。カレーではないが、単純なリピーター目当てで中国の料亭においてケシ科の粉を混ぜた料理を出すという店が続出しているという。ダメ、ゼッタイ!!
主な登場人物
- 塩見味平
- 日本料理界の重鎮、塩見松造の息子。父親に反発し、大衆料理の道を志す。性格は、基本のんびりしているが料理に対しては頑固な一面も見せ、挑発にはすぐにカッとなり相手の口車に乗ってしまう。魚アレルギーを持ち、魚を食べると蕁麻疹が出る。
- 塩見松造
- 神林道風の弟子の一人で築地の料亭「かつらぎ」の花板。日本では4人しか作れない鯛の生け作りの技術を習得している。
- 川原
- 大学を卒業し「キッチンブルドック」で修行する見習い料理人。担当は野菜場。ブルドッグの2階の部屋に味平と住み込みで働いている。
- 留さん
- 「キッチンブルドック」で働くベテラン料理人。その豊富な経験からか、料理対決では彼一人が先の展開に気づくことも多い。担当はストーブ前。
- 小田切
- 「キッチンブルドック」で働く中堅料理人。印象が薄い。担当はセカンドコック。川原や味平の直接の先輩。
- 北村チーフ
- 「キッチンブルドック」のチーフコック。味平の料理技術の根幹は彼の教えによるもので、味平の師匠といっても過言ではない。かつて超豪華客船「クイーンメリー号」のチーフコックを務めており、その際に鹿沢練二に勝負を挑まれ敗北、町の洋食屋の雇われコックに落ちぶれる。
- 仲代圭介
- 神林道風の弟子の一人。渡りチーフとして丸ノ内調理師紹介所から「キッチンブルドック」にやって来た。味平を松造の息子と知るや否や、味平に包丁試しを挑む。
- 一の瀬
- 銀座の高級レストラン「ミンクス」から「キッチンブルドック」にやって来た料理人。仲代一派の一人。仲代は彼のことをイビリだしの名人と称している。
- マスター
- 「キッチンブルドック」の経営者。料理に疎く、「店が儲かればそれでいい」という考えを持っており、典型的な素人経営者。
- 鹿沢練二
- 神林道風の弟子の一人。人呼んで「無法板の練二」。まじめに料理人として修行していたが、病気で胸をやられてしまい自暴自棄になり、いつしか賭け包丁に挑む無法板になる。右目につけている眼帯がトレードマーク。
- 神林道風
- 「四条流」「四条園流」「進土流」などと並んで日本の五指に入る料理の流派「五条流」の宗家。包丁界に伝説として伝わっている人物。滅多に人前に姿を見せない。
- 団英彦
- サリー・ワイルの教え子のひとりで、東京都内の超一流ホテル、東洋ホテルの調理部長。人呼んで「包丁貴族」。そのキザな立ち居振る舞いや異様に高いプライドは見るものをイラつかせるが、料理の腕は一級品。性格は非情に冷徹。サリー・ワイルいわく「その才 天才に似たり しかしその料理の心 いささか良ならぬ故 我このまず」。父は元東京荘調理部長の団三津彦。
- 新井弘
- 焼津ロイヤルホテルの花板。客前でマグロの解体をやっていたところ無法板の練ニに勝負を挑まれ、「このロイヤルホテルは料理が売り物だ!!」と威勢良く勝負を受けたものの惨敗する。
- 桜小路侯爵
- 元侯爵という身分にありながら、若いころから食い道楽でこの世のあらゆる料理を口にしてきた男。自らの味覚に対する欲望のためにはどんな犠牲もいとわぬ姿勢を見せ、財産を使い果たし乞食に落ちぶれるほど。気に入った料理に出会うと、その料理人に自分の持ち物を与える癖がある。
- 福助
- 横浜の港湾労働者相手への金貸しを生業としており、街の労働者からは血も涙も無い男として嫌われている。作中では思わせぶりな登場を何度かするが、何もないまま登場しなくなる。
- マイク・赤木
- アメリカ帰りの青年実業家。両親の顔も知らないまま孤児院で育ち、12歳から港で働き始める。そののち、密入国でアメリカに行きスキヤキレストランを開き成功を収める。カレーライスで日本を征服するために6年ぶりに日本に帰国し、カレーハウス「インド屋」を開く。
- 鼻田香作
- 「カレーの魔術師」と呼ばれるカレーの天才料理人。10歳のときからカレー屋のキッチンで働き、カレー作りの魅力にとりつかれ、カレーで有名な各国の料理店を転々としカレーの腕を磨いた。カレーに関してはヨーロッパの一流レストランのコックも彼に敵わない。嗅覚を敏感に保つため、常に鼻マスクをつけている。
- 神山佐吉
- 横浜で港湾荷役の労働者として働いていたところ味平に出会い、カレー戦争に巻き込まれていく。好きな食べ物がカレーなだけあってカレーの味にはうるさく、味平が一目置くほど。
- 香川梨花
- 横浜を牛耳る暴走族「ブラックシャーク」の女団長。味平にカレー戦争のことを教えた張本人で、自身もブラックシャークとともにカレー戦争に巻き込まれてゆく。父はデパート「大徳屋」のひばりヶ丘支店長。包丁さばきはなかなかだが、味付けは苦手。
- 柳大吉
- 横浜でうまいと評判のラーメン屋台「大柳軒」の店主。味平にスカウトされ、カレー戦争に参加する。客と少し話しただけで客の出身地が分かり、そこから好みを推定し料理に反映させる「味割り」の技術を習得している。のちにザルソバ式ラーメン「タレーメン」で第1回全日本ラーメン祭りへ参加し、味平と対決することに。
- 井上洋吉
- ラーメンが好きな札幌在住の長距離トラック運転手。東京のラーメン屋で味平と出会い意気投合。そのまま味平をトラックで札幌に連れて行き、ともに第1回全日本ラーメン祭りに参加する。
- 石田鉄竜
- 札幌の人気ラーメン店「鉄竜」の料理人。石田兄弟の兄で、体が大きいほう。「鉄竜」のラーメンは彼が一人で作っており、非常に評判が高い。料理の腕前も確かで外見もベテランラーメンマンの雰囲気を漂わせているが、その経歴は謎に包まれている。
- 石田石竜
- 石田兄弟の弟で、体が小さいほう。札幌の人気ラーメン店「鉄竜」を兄とともに経営している。
名言
作中にはおもわず唸ってしまうような名言が多数登場する。
おれはなにも金で弁償してくれっていってんじゃねえんだよ あやまれってんだよ!!
ところが残念なことに今やこの化学調味料がプロの間でもつかわれるようになってしまうのです これでは今に日本全国どこの店でたべても同じ味になってしまいます
「相沢重太郎」とは何者か
包丁試しの途中、アイスクリームの壷あげ勝負の結果発表の際、物語を中断して入る訃報のお知らせ。
なんでもビッグ錠の元に読者からハガキが届き、そこには相沢重太郎氏が亡くなったことがしたためてあったらしい。相沢重太郎氏というのは上豊調理師会の会長で、上野不忍池にある包丁塚の建立者といっても良い人物、その名は包丁界には広く知られているらしい。
しかし現在、インターネット検索を活用しても、そういった人物のことは出てこない。そんなすごい人なら出てきて当然のはずである。なぜ出てこないのか、あれは物語にリアリティを持たせるために作られた話なのだろうか。謎である(ちなみに団英彦の師として登場したサリー・ワイルは実際に存在した人物であり、Wikipediaにも項目が存在する)。
このことについて情報をお持ちの方はぜひ掲示板にご一報いただきたい。
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単行本は全23巻、文庫本は全12巻発売されている。単行本の巻末には高木ブーをはじめとした有名人の文章が収録されている。文庫本1巻の巻末には初代林家木久蔵(現木久扇)の文章が収録されているが、ネタバレがひどいので初見の際は注意。文庫本12巻の巻末にはビッグ錠のあとがきが収録されている。
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