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医薬品とは、人や動物の病気の治療や診断に用いられる薬である。
概要
医薬品は国の定める医薬品医療機器等法(旧薬事法)第2条第1項により、以下のように定義されている。なお、読みやすいよう一部を抜粋、改変している。下線は編集者による。
第2条 この法律で「医薬品」とは、次に掲げるものをいう。
日本薬局方とは、医薬品医療機器等法第41条に基づいて厚生労働大臣が定め、交付している医薬品に関する品質規格書である。つまり、医薬品は国によって厳密に規格化されており、製造が承認されている商品なのである。
医薬品の分類
医薬品は行政上の分類では「医療用医薬品」と「一般用医薬品」に、医薬品医療機器等法(旧薬事法)の分類では「処方せん医薬品」と「処方せん医薬品以外の医薬品」にと、それぞれ2つに区分されている。また、これらとは別に「後発医薬品(ジェネリック医薬品)」などの分類をすることもある。
医療用医薬品
普段われわれが薬局などの店先では見ることのない医薬品。効能効果、用法用量が厳密に定められている。効き目が強く重篤な副作用を起こす可能性もあるため、医師の診断と処方に基づいて薬剤師が調剤し、患者に使用される。薬局や病院の調剤室の中や、入院、通院時に処方される薬ぐらいでしか普段見る機会はない。
普段よく見る「バファリン」や「ガスター」などの中にも医療用医薬品に指定される種類のものがあり、生産されている。
一般用医薬品
普段われわれが薬局などの店先でよく見かける医薬品。医師による処方箋がなくても購入できる。市販薬、一般薬などとも呼ばれ、カウンター越しに販売されることからOverTheCounter Drug=OTC薬とも呼ぶ。医療用医薬品に比べれば作用は穏やかで、副作用の心配も比較的少ない。
2009年に完全施行された改正薬事法により、一般用医薬品はリスクの程度に基づいてさらに3つに分類されている。
第一類医薬品
副作用などにより日常生活に支障をきたす程度の健康障害が生ずる恐れのある薬剤のうち、その使用に関して安全上特に注意を要する薬や、承認から一定期間を経過しない新薬がこれに該当する。ミノキシジル(例:大正製薬の育毛剤「リアップ」)、ファモチジン(例:第一三共の胃腸薬「ガスター10」)などがこれ。薬局のみでしか販売できず、販売時は薬剤師による文書での積極的な情報提供(薬の説明)が義務づけられている。
後述の「処方せん医薬品」を一般用医薬品として認可した、ロキソニン(2011年認可)などの「スイッチOTC」や、医療用医薬品として使用実績がないものを一般用医薬品として認可した「ダイレクトOTC」もここに含まれる。
要指導医薬品
2013年成立の改正薬事法より盛り込まれた新たなカテゴリ。後述の通り2013年の一部改正は一般用医薬品のネット販売を認める内容なのだが、これを例外的に認めない、とする一般用医薬品がここに含まれる。
具体的には、認可後のリスク評価期間が済んでいないスイッチOTC(スイッチ直後品目)、同じくリスク評価期間が済んでいないダイレクトOTC、劇薬指定品目。
第二類医薬品
副作用などにより日常生活に支障をきたす程度の健康障害が生ずる恐れのある薬剤で、第一類医薬品以外のもの。特に注意を要するものは「指定第二類医薬品」に指定され、アスピリン(例:バファリン顆粒)などがこれにあたる。一般用医薬品のほとんどが第二類医薬品である。
薬局以外のスーパーやコンビニなどでも販売することができるが、薬剤師または登録販売業者の常駐する店舗でないと販売することはできない。販売時の商品情報提供は、法律で「努力義務」であると規定されている。
第一類、第二類医薬品は対面販売が原則であり、離島居住者や継続使用者への第二類医薬品の通信販売を除き、現在はネットや電話での通信販売は法律上禁止されていた。この規制に対しては改正を求める声が上がっており、厚生労働省に対して訴訟も起こされている。
2012年4月、東京高裁は医薬品のネット販売規制は違憲という判決を下したが、国は最高裁に上告している。
→2013年1月、最高裁は医薬品のネット販売規制は違憲という判決を下し、国の訴えを退けた。
→2013年12月、これを受けた改正薬事法が成立。新たに設けられた「要指導医薬品」というカテゴリを除き、第一類を含む全ての一般用医薬品を条件付きでネット販売することが認められた。(施行は2014年6月より)
なお訴訟の発端となった楽天の子会社「ケンコーコム」は、一連の販売規制は明確な科学的根拠に基づいていないとして、「要指導医薬品」の指定差し止め訴訟、処方せん医薬品のネット販売規制を違憲とする行政訴訟も起こしている。
第三類医薬品
第一類、第二類医薬品以外の一般用医薬品。薬局以外のスーパーやコンビニ、通信販売でも販売することができる。第二類医薬品と同様、薬剤師または登録販売業者の常駐する店舗でないと販売することはできない。販売時の情報提供は法律で規定されていないため、質問がない限りは行わなくてよい。
処方せん医薬品
医薬品医療機器等法(旧薬事法)の定める、処方せんに基づいて使用すべき医薬品。薬局や病院に販売するなどの正当な理由無しに処方箋の交付を受けた者以外に販売することはできない。抗生物質製剤、ホルモン製剤、注射薬全般、麻薬製剤などの、耐性菌を生じやすかったり使用法が難しいもの、血糖調整薬など定期的な医学検査が必要なもの、向精神薬など、本来の目的以外に使用される恐れのあるものなどがこれにあたる。医療用医薬品の多くがコレ。
クエン酸シルデナフィル(バイアグラ)や経口避妊薬など、処方せん医薬品の中にも保険が適用されないものがある。
処方せん医薬品以外の医薬品
必ずしも処方せんを必要とせず、処方せん無しでも販売できる医薬品。医療用医薬品にもこれに含まれるものがある。
後発医薬品(ジェネリック医薬品)
既に特許の切れた医薬品(先発医薬品)を、他の製薬会社が製造、販売する際に区別してこう呼ぶ。先発医薬品は数多くの試験を行い、20以上の資料を申請時に提出する必要があるのに対し、後発医薬品は既に薬効や安全性の確かめられたものを生産するため、少ない試験をパスし数種類の資料を提出すれば製造の認可が下りる。そのため開発費用が少なくて済み、先発品と比べて薬価が安い。
医療費削減の一環として厚生労働省により普及が進められているが、現在の普及率は他国と比べても低い。
試験のデータ上は先発医薬品と同等であるという結果が出ているから承認されるわけだが、実際は「効果に差がある」とする声も多い。例えて言うなら同じ材料で同じ料理を作ろうとしても、我々が作る料理と速水もこみちが作る料理がまるっきり違うものになるようなもので、薬効成分が同じであっても製造する会社によって添加物や味付けが異なるため、このような差異が生じるのである。
先発医薬品の特許が切れるとゾロゾロとでてくることからお医者さんの間では「ゾロ」と呼ばれることもある。というかジェネリック医薬品という呼び方が普及しだしたのはCMで使われ始めてからなので、一般の人に普及させるにあたってジェネリック医薬品という呼び方が選ばれたようである。
管理や使用に注意が必要な医薬品
毒薬、劇薬、麻薬、覚せい剤なども医薬品として使用することがある……というか元々医薬品の一種である。
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