十天君とは、中国の伝奇小説、またはそれをルーツにした諸作品「封神演義」に登場するチームである。
安能版では「一聖九君」と表記される。
「天君」は尊称であり、本名は各自別に存在している。
概要
仙界を二分する勢力「崑崙山派(闡教)」と「金鰲島派(截教)」のうち、後者に属する十人構成の仙人集団。
それぞれ名前に「天」の字を持つ(例外あり)。またそれぞれ特殊な効果を持つ空間術「陣」を有しており、これらは「十絶陣」と総称される。
下界の易姓革命(殷王朝を斃して周王朝を興さんとする歴史的な戦争)に場を借りた両派の抗争が激化するなか、周の軍師であり崑崙派の道士でもある太公望(姜子牙)を支援する仙人を一掃すべく、十絶陣を携えて参戦したのが十天君である。
これに応じて崑崙側も高位仙人集団「十二仙」を集結させ、仙界の覇権を賭けた死闘が繰り広げられることとなる。
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以上の大まかな設定については、封神演義の原典と、その超訳の安能務の小説版と、安能版を基にした藤崎竜の漫画版では共通しているが、実際の扱いについては大きな差がある。
メンバー構成/使用する十絶陣
- 秦天君(秦完)/天絶陣
- 趙天君(趙江)/地烈陣
- 董天君(董全)/風吼陣
- 袁天君(袁角)/寒氷陣
- 金光聖母/金光陣
- 孫天君(孫良)/化血陣
- 柏天君(柏礼)/烈焔陣 ※安能版では白天君(白札)
- 姚天君(姚賓)/落魂陣 ※安能版では姚天君(姚斌)
- 王天君(王変)/紅水陣 ※安能版では王天君(王奕)
- 張天君(張紹)/紅砂陣
金光聖母は十天君の紅一点であり、女性ゆえに名前に「天君」の尊称がないイレギュラー的存在。
原典・安能務版
特に地位も権力もない一介の仙人集団であり、同門の聞仲が苦戦してるのを見かねて助力に馳せ参じた。
周の本拠地・西岐城下に「十絶陣」を敷き、これを破ってみろと挑戦する。
……が、正真正銘のエリート集団である崑崙十二仙の前では十天君など赤子も同然の雑魚キャラでしかなく、次々に陣を破られ、奮闘虚しく十天君はひとりずつ順番に殺されていった。
金鰲島の幹部仙人は別に存在しており、崑崙vs金鰲の全面戦争は十天君との戦いとは別に行われている。
藤崎竜版
金鰲島の仙道を束ねる幹部集団であり、指導者の通天教主が心神喪失に陥っているため全指揮を代行している。原典や安能版とは違い、殷の軍師であり金鰲派の道士でもある聞仲とは極めて険悪な仲。崑崙派と戦うための作戦中も常にギスギスした空気だった。
殷と周の全面戦争が始まるに際して、聞仲が協力を仰いだ際も通天教主への面会を妨げ、それでも聞仲が会おうとすると姚天君が落魂陣で遮り、聞仲が本気でこれを破ろうとすると10名全員の力で聞仲を異空間に封印してしまっている。
その後、趙公明が太公望たちにやられると聞仲を解放し、王天君をリーダー格として聞仲と連携を取りながら仙界大戦に臨み、金鰲島に侵入してきた崑崙門徒を各個撃破すべく各所で待ち伏せを行う。
……が、十天君の中でも戦闘力にバラツキがあり、崑崙側の強キャラといい勝負をするものもいればギャグ混じりで瞬殺されるものもおり、ひどいのになると撃破された瞬間しか戦闘シーンが描かれなかったものもいる。
もっとも、崑崙も金鰲も等しく人間界にとっては害悪と考えていた聞仲は、この戦いで両者を完全に消滅させるつもりであり、十天君の全滅は当初からの予定通りであった。
原典・安能版メンバー解説
秦天君
十天君のリーダー格であり、十天君の総意として意見表明するときは彼が先頭に立つ。
が、真っ先に陣を破られて絶命した。(裏を返せば彼らが十天君などと称して大仙ヅラできたのははじめだけで、いざ戦端が開かれると烏合の衆として右往左往するだけだったということでもある)
スペックだけ見ればかなり強力そうな性能の「天絶陣」だったが、白蓮や金色の蓮華、五つの金光に守られた文殊広法天尊の前にはまったく通用せず、陣の発動を完全に封じられてあっさり破られた。
天絶陣の能力
原典:先天の術を練り、精気を得て布いたもの。中には天・地・人という三つの旗が立っている。凡人が陣に入ると雷が鳴ると共にその身は灰塵と帰し、仙人道士といえどもその身体は粉々に砕かれる。
安能版:陣内への侵入者の気配に反応して三種類の術が段階的に発動する仕組みになっており、まず相手の存在感覚を奪って昏倒させる。それでも動ける者には衝撃波が襲いかかって五体が分解される。それにも耐えうるものには雷が落ちて灰燼となる。
趙天君
地裂陣は懼留孫によって早々に破られ、捕縛用宝貝「絪仙縄」によって生け捕りにされる。柱に縛られたまま十絶陣破り~趙公明との死闘~雲霄三姉妹の仇討ちという作中の山場となる戦いの連続の間、ずっと放置され続けていた。
これらの連戦が終結した最後のシメとして原典では武吉に切られ、安能版では哪吒に遊び半分で処刑された。
地裂陣の能力
原典:地道の術に基づいている。中は天地の気を凝縮し、変化極まりない。陣中には赤い旗があり、それが動くと天には雷が鳴り、地には火が燃え上がる。凡人も仙人もこの陣に入れば生きてはいられない。たとえ五行の妙術を持つ人と言えども、この災厄は逃れることはできない。
安能版:性質的には天絶陣にかなり近いが構造はもっとシンプル。侵入者の気配に反応して発動する雷火で相手を灰燼にする。
董天君
戦う前から陣の仕掛けを見破られており、メタを張るため風を治める宝貝「定風珠」を入手した慈航道人にあっさり破られる。慈航道人は吸い込んだ相手をただちに消滅させる宝貝「琉璃瓶」を用いて速やかに殺した。
安能版では、慈航道人は「死んだふりに協力するから逃げないか?」と逃亡を勧めるが、厚意には感謝しつつもプライドが傷ついた董天君は徹底抗戦を選んだ。
風吼陣の能力
原典:地・水・火・風のうち、の玄妙な風と火が隠れている。この風と火は先天的な気と三昧真火で、その中から千軍万馬が出てくる。凡人も仙人もこの陣に入ると狂風と烈火の中に巻き込まれ、いく千万の刀剣を浴びて、四肢が直ちに滅多切りにされてしまう。天地を覆すような法術を持っていても、この陣に入れば身体が必ず血膿と化す。
安能版:陣内の震動を感知して暴風が巻き起こり、設置された百万の刀が乱舞して侵入者を切り刻む。
震動を発しないように侵入しても術者の指令で同じことができる。
袁天君
特に語るところがない。
十絶陣破りのテンプレ通りに予定調和の流れで普賢真人に殺された。
強いて言うなら十絶陣破りの際にどの媒体でも普賢真人と戦い、普賢真人が氷山を溶かす方法が媒体によって微妙に異なっている。
原典 → 身にまとった瑞雲から金の光が出て氷山を溶かす
安能務版 → 「三昧の真火(口から火を吹き出す術法)」を両手に移して増幅し、フィンガー・フレア・ボムズみたいに指先から放って氷山を溶かす。
藤崎竜版 → 元素変換によって氷雪をすべて溶かす。
寒氷陣の能力
原典:名は寒氷だが、その実は刀剣の山。陣の中に玄妙があり、風雷が吹き荒れている。上の氷山は刀剣のように、下の氷山は狼の牙のようになっていて、凡人も仙人もこの陣に入ると、上下の氷に粉のように砕かれる。どんな法術をもってしてもその難を逃れることはできない
安能版:上下二対の巨大な氷山(めっちゃトゲトゲしてる)が鎮座する陣であり、音に反応して氷山が噛み合って侵入者を挽き肉にする。
金光聖母
十絶陣破りのテンプレ通りに予定調和の流れで広成子に殺された。
他の陣と違い、鏡という実体を持った道具を使っての陣立てだったため、丁寧に鏡を割られて陣を破られている。
金光陣の能力
原典版:内に日月の精を奪い、天地の気を秘めている。21の宝の鏡が21本の高い竿の上にかかっていて、どの鏡の上にも縄で結んだ輪がある。人や仙人などが陣に入ると、輪を引き上げて雷の音で鏡を振動させ、金色の光を放ってその身体を照らす。そうすると、その相手はただちに血だまりに沈む。翼があったとしても逃れることはできない。
安能版:陣内に設置された21面の鏡により金光を放ち、一斉照射にさらされた侵入者はたちどころに焼けただれる。
孫天君
特に語るところがない。
十絶陣破りのテンプレ通りに予定調和の流れで青蓮や瑞雲で守りを固めた太乙真人に殺された。
強いて言うなら最初に相対した道士・喬坤が安能版では一瞬持ちこたえたあたりがセオリー破りなだけである。
化血陣の能力
原典:先天の霊気を使っているが、陣の中には風雷があり、黒い砂が秘められている。人か仙人が陣に入ると、雷が鳴り、風が黒砂を巻き起こして、あっという間にその人を血だまりにしてしまう。たとえ神であっても、その死を逃れることはできないだろう。
安能版:触れたものを血膿に変える「化血砂」を紙に包んで投げつけたり枡からドサドサ降らせたりする大雑把な能力。
柏天君(白天君)
柏天君と彼の烈焔陣は、十絶陣やぶりのテンプレートから外れ、最初の犠牲者がいない。また、話の展開的にはひとつのターニングポイントとなっている。
崑崙十二仙は十絶陣破りと並行して趙公明とも戦っており、やたら打たれ強く様々な宝貝を次々に繰り出す彼には手を焼いていた。
そこに陸圧という道士が助っ人に現れる。道士といっても実力的には十二仙を上回る怪物である。陸圧は趙公明を呪殺する秘術を姜子牙に与え、趙公明は呪いをかけられてしまう。
原典
趙公明は呪いの初期段階でイライラして心が落ち着かず、軍議に参加も出来なくなってしまったため、孫天君が代わりに出撃する。
烈焔陣に挑む陸圧に対して孫天君は炎を浴びせかけるが、陸圧は炎の精霊のためまったく意に介さず、何もできないまま柏天君は倒された。
安能版
自分が呪殺されようとしていることを知った趙公明はその阻止を聞仲に懇願する。
聞仲が派遣した部隊はなんなく撃破できたが、十天君までも繰り出されると面倒と考えた陸圧は見せしめのために烈焔陣破りを思いつく。
無造作にずかずか陣に入った陸圧に対して白天君は全力で炎を浴びせるが、陸圧はまったく動じない。
観念した白天君は殺される前に陸圧へ正体を尋ねると、陸圧は自分が「燧人氏(最初に火を発見した天界の神)」の弟子であり火の風呂を浴びて育った火人間だと明かし、防御不可能の斬撃を飛ばす宝貝「飛刀」で白天君を斬首した。
これにビビった十天君は呪殺の阻止に尻込みし、趙公明が生き延びる希望は断たれることとなる。
烈焔陣の能力
原典版:陣の中に三昧火・空中火・石中火という三つの火が秘められ、三つの旗がかかっている。人か仙人が陣に入ると、三つの旗がひるがえり、三つの火がいっせいに飛びまわる。そうすると、中に入った者は瞬く間に灰塵に帰してしまう。たとえ火よけの術があっても、三昧真火を逃れることはできないだろう。
安能版:術者含めて三方向から「天中火」「地下火」「三昧火」を浴びせるまさに集中放火の陣。
姚天君
ろくに描写なく殺される十天君のなかでは活躍したほう。
「姜子牙(太公望)を暗殺すれば問題解決じゃね?」と、落魂陣による呪殺を提案した。
さっそく実行に移して三魂七魄のうち二魂六魄を拝みとるが、残る一魂一魄は崑崙側に保護され呪殺は阻止された。
姜子牙の二魂六魄を取り戻すために赤精子が落魂陣に挑むものの、一度目は姚天君に気付かれて黒砂で阻止され、二度目は仙界の至宝「太極図」を携えて再び落魂陣に侵入して魂を奪い返すことには成功するが、再び黒砂による攻撃に不意を突かれ、不注意により太極図が姚天君の手に渡ってしまう。
十絶陣やぶりが本格的に始まると、赤精子が自らの不始末の責任を取るために落魂陣破りに名乗りを上げる。(安能版では当初、燃燈道人は魂魄のない哪吒に破らせるつもりだった)
これまでの対戦で落魂陣のからくりを見抜いていた赤精子は、十分に守りを固めたうえでもはや勝手知ったるとばかりに足を踏み入れ、黒砂をかけられようとも意に介せず「陰陽鏡(照射した相手を昏倒させる宝貝)」を使って姚天君を昏倒させ、奪われていた太極図を回収したうえで、首を落として殺害した。
姜子牙の魂を人質にしていたとはいえ、十天君が十二仙を相手に2度も撃退し、至宝「太極図」を奪ったのは十分敢闘と言えるだろう。
落魂陣の能力
原典:生きる道を閉ざし、死への門戸を開く陣立て。内には天地の気を凝結し、白紙の旗を立てて、その上に符を貼ってある。白い旗が動くと、陣に入った人の魂が飛び散る。神仙といえども、陣に入れば、たちどころに死んでしまう。また、黒い砂を振りまいて相手に当てても相手の魂を奪うことができる。
安能版:陣の中央には符術を施された幡が立てられており、これを揺らすことで対象の魂魄が一瞬にして抜き取られる。振りかけることで魂魄を抜き取る「吸魂砂」も備えているなど隙のない性能。
また、原典・安能版共通で、この陣を祭壇として利用することで陣の外にいる相手の魂魄を拝みとる呪術を発動できる(姜子牙の暗殺に用いられたのはこの効果)。原典版では二十一日、安能版では二十一刻(42時間)で相手を呪殺寸前まで追い込んだ。
王天君
特にぱっとしない存在。むしろ相対する道士・曹宝のほうがキャラ立っていた。また、道徳真君によって殺されるところは一緒だが、殺され方が違っている。
曹宝は仙界の争いから距離を置いている立場の仙人だったが、「落宝金銭」という強力な迎撃用宝貝を所有していたため戦いに巻き込まれて道友を失っている。
原典
曹宝は王天君と知り合いであるものの、やりとりはテンプレート的なものに過ぎず、落宝金銭を使うこともなく、紅水を浴びせられ絶命する。
王天君は道徳真君の宝貝「五火七禽扇」で扇がれ、灰と化して殺された。
安能版
曹宝はこの世に争いを免れる場所はないと悟って落宝金銭の処分とともに自分を殺してもらうことを願って旧知の間柄だった王天君の紅水陣を訪れる。
親切心からこれを拒否し、いろいろアドバイスをする王天君だったが、彼の決意が固いのを見て望み通りに殺してやる。
なんともいえない複雑な心境のなか、続いて挑戦してきた清虚道徳真君と戦う。
うかつに動くのは危険と考えた道徳真君により、フッ!!と息を吐いて敵を撃ち抜く「気鑽」の術で狙撃されて陣を破られた。
紅水陣の能力
原典:壬癸の精華を奪い、天乙の玄妙を秘めた、変化極まりないもの。陣中には八卦の台があって、台の上には三つの瓢箪がある。この瓢箪を投げ下ろすと、洋々たる限りない水が流れ出る。この水を一滴でも身体に浴びたら、凡人も仙人もたちまち血水となる。
安能版:陣に入ってきたものに対し、瓢箪に入っている「紅水」を浴びせることで相手を血水と化して溶かし尽くす。瓢箪からはとめどなく紅水があふれるため、最終的には陣内が紅水の池となる。
張天君
十絶陣のトリを務めた。とは言うものの攻略される順番が最後だったけであり、仲間たちが次々に惨たらしく殺されるのを手をこまねいて眺めていただけなのだが。
最初は燃燈道人の策により、周軍の親玉である武王が雷震子と哪吒を護衛に紅沙陣へ差し向けられ、張天君は訝しがりながらも武王を紅砂陣内に監禁する。あえて武王を差し向けたのは、原典では武王には大きな福運があり、彼に百日の災厄を受け入れてもらえば紅砂陣が自然に破れるためと説明されていたが、安能版では最大の利益を受ける武王にも手伝ってもらわなければならない程度しか説明されていない。
太上老君や元始天尊まで出陣する崑崙勢力総出で雲霄三姉妹を撃破したあとの後始末的なノリで、南極仙翁と白鶴童子に雑に殺された。
紅沙陣の能力
原典:陣立ては天・地・人という三気に分かれ、その中に三斗の赤い砂を蔵している。大風が吹き、雷がなると、鋭利な刃のような砂がひどく荒れ狂って、人を無惨に殺し、身体も骨まで粉に砕かれる。どんな修業を積んだ仙人でも、この陣からは逃れられない。
安能版:陣内には巨大な落とし穴があり、その内部は方角も上下も時間もない異空間である。ここに落ちた者は思考も意識も奪われて立ったまま動けなくなる、殺傷能力のない生け捕り特化の陣。
落とし穴に入らないものには「紅沙」を浴びせ、前後不覚にさせて穴に突き落とす。
藤崎竜版解説
王天君
十天君のリーダーであり、パンクファッションに身を包み謎の錠剤をガリガリかじる退廃的な雰囲気の小柄な仙人。
もとは崑崙の道士であったが、魂魄を分割できる特異体質の持ち主であることで上層部の陰謀に巻き込まれ、楊戩を崑崙で引き取る際のトレード要員として金鰲島に送り込まれて幽閉される。
幽閉生活で病んだ精神に付け込むかたちで妲己に洗脳され、妲己を母と慕う手駒となってしまう。その際に魂魄は分割され、妖怪をベースとする身体に移し替えられている。妲己の指示の下で、暗躍し、自分の恵まれない境遇への怨念返しを行う。
敵方の太公望に匹敵する策士っぷりで仙界大戦をかき回し、以降も妲己に都合のいいように戦局を誘導する。
物語の上で魂魄が分割された王天君は計3人登場しており、一人目は楊戩を、二人目は聞仲を、三人目は太公望に強い執着を抱いていた。また、個体によって微妙に能力が異なるらしく、一人目の王天君に変化した楊戩では二人目の王天君の紅水陣は解除できなかった。
物語終盤では彼の本当の出自と使命が明かされ、妲己に利する数々の行動や私怨による残虐行為にも別の意図が働いていたことが語られる。
紅水陣の能力:
強酸の血を霧状に放出させて現実空間にフィールドを形成し、なかにいるものを燻り殺す。
王天君曰く、「他の十天君は異空間を作ってその中でのみ万能になれるがこのオレは通常の空間に『自分の場所』を作れるのさ」。実際、他の陣は現実とは隔絶された亜空間にしか生成できず転送ゲートを踏ませないと敵を引き込めないのに対し、紅水陣は任意の場所に展開できることが可能なうえ、空間転移能力と組み合わせることで敵を陣に引き込むハードルが極めて低い破格の性能を持つ。
このため紅水陣は応用力や利便性が段違いであり、王天君はこれを大いに活用して太公望を(文字通りに)苦しめた。
さらに、一度紅水陣のなかに取り込んでしまえば「この血で満たされた空間自体がオレだ」というように、その中は王天君の体内にいるようなものとなってしまい、王天君本体は姿を見せず幻で対応するようになるため、他の陣のように本体を狙って倒すことはほぼ不可能になる。
一方、聞仲のように陣全体を無理やり破壊すると本体にもダメージが行くようで、陣を破られただけで二人目の王天君は封神されている。
ダニの宝貝:
ダニに模した生物宝貝。仙人や道士に寄生すると特徴的な刺青のような模様ができ、常に宝貝を使い続けている程度のダメージを宿主に与えていく。
仙界大戦中は全戦域にばらまかれ、崑崙側の戦力にダメージを与えた。対処法としては王天君を倒すしかないが、仙桃などを食べることで一時的に体力回復して戦うことはできる。
姚天君
陰陽デザインの仮面を被った仙人。
王天君が前に出ないときは彼が十天君の代表として振る舞うサブリーダー的存在。
物語上、最初に登場した十天君であり、招集に応じない十天君に業を煮やして聞仲が乗り込んできた際に対応した。
仙界大戦では金光聖母とタッグを組んで哪吒・楊戩・韋護と戦う。
落魂陣と金光陣を組み合わせた多重空間で一進一退の激戦を繰り広げるが、仲間を守るために死力を尽くす崑崙門徒たちに一歩及ばず敗北。
落魂陣の能力:
亜空間内に多数設置された「落魂の呪符」から魂魄を消し飛ばすビームを放つ極悪性能。
さらには金光聖母のアシスト能力として光の屈折による幻で呪符の位置も攻撃の方向もカモフラージュされており手がつけられない。
が、魂魄を持たない宝貝人間ゆえに落魂攻撃を食らっても死なない哪吒と、敏感肌により目に頼らず攻撃を察知できる韋護とは相性が悪い。
また、攻撃オプションとして「破壊の呪符」も有しており直接的な攻撃能力を持たない金光聖母をサポートした。
張天君
異様に長い腕を持ち、脚ではなく腕を使って歩行する仙人。
劇中で最初に崑崙側と交戦した十天君であり、崑崙側の最強格のひとりである楊戩を苦戦させる。
妖怪仙人らしからぬ知性と紳士的な態度の持ち主であり、謎多き楊戩の正体を鋭く考察したりもした。
紅砂陣の圧倒的な能力で楊戩相手に優勢を保つが、本性を表した楊戩のチート能力のゴリ押しの前に敗北した。
一連の十絶陣戦では一番槍を務め、十天君の強さと十絶陣のヤバさを読者に印象づけた。あとに続く連中がどんどんその印象を貶めていったが。
紅砂陣の能力:
広大な砂漠の亜空間を形成し、「紅砂」の風化能力で敵を弱体化させつつ、大量の砂を操って大規模な質量攻撃を仕掛ける。
陣内では自在に空間転移を行えるため、敵の攻撃からどこまでも距離を取って有利に戦いを進めることができる。
孫天君
「化血陣」を使う。
蝉玉と四不象を人質にとった上で自分の勝ちが確定しているゲームを太公望・玉鼎真人に強いるが、太公望のペテンと玉鼎真人の神速の抜刀術により盤外戦で敗北する。
化血陣の能力:
マンションの一室程度のスペースに所狭しとオモチャやぬいぐるみが転がっている亜空間。
この陣のなかで行われるゲームに負けた相手を人形にする能力を持っており、この人形は自在に操ったり自爆させたりできる。この能力で人質を増やし、次なるゲームを持ちかける。
なお、化血陣内の遊具はすべて孫天君の意のままでありイサカマし放題であるし、相手がイカサマを使うことも難なく封じられる、まさしくチートな能力。
……が、「陣内で物理的な攻撃が有効」という点で非常に使い勝手の悪い能力となっている。
敵側からすればゲームで勝てなくても物理で殴ればいいのである。
孫天君もこの弱点を理解しており、自分の姿は他のオモチャに紛れ込ませたうえで別のぬいぐるみを操っているが、この程度の対策では太公望に太刀打ちできるはずもなく、ゲームの裏で着々と進めていた仕込みにより居場所を特定されている。
そもそもにして敵がゲームに乗らなかったら詰みである。
似たような能力のダービー兄弟は相手をゲームに引きずり込む一工夫があったが、孫天君は特にそういう用意もなかった。蝉玉がめっちゃノリノリでゲームに食いついたからよかったようなものの、太公望が真っ先に発言したように「敵と遊べるか 普通に戦うわい」となっていたらどうするつもりだったんだろう。
(ターゲット一行の中にいる蝉玉の性格を見抜いていたという推測も立たないわけではないが、そこまで洞察力があるならもうちょっと化血陣の弱点にも対策張れそうなものである)
董天君
金鰲島に殴り込みをかけた黄一家をサイコロステーキにしようとするが、自分も大した実力じゃないくせに相手を舐めてかかる態度が災いして敗北。
風吼陣の能力:
渦巻く強風を操る陣であり、吹き飛ばされた者は底部に張り巡らされたワイヤーに落ちて切り刻まれる寸法。
ただ、この陣は術者自身も底に落ちると同じ運命を辿ることになり、これに対して「陣の中央に配置した鉄柱にしがみつく」という杜撰な安全策しか講じていないという致命的な欠陥がある。
袁天君
「寒氷陣」を使う。
毛むくじゃらで幼児番組に出てきそうなファンシーな姿とは裏腹に無常観漂う枯れた言動を好む仙人。
太公望と普賢真人を「寒氷陣」に引き込み、平和主義者の普賢真人が対話を求めるのにも耳を貸さずに一方的に攻め続ける。
王天君から「油断するな」と念を押されており本人も油断なく戦っていたのだが、普賢真人の持つ宝貝「太極符印」の「元素を操る能力」のスケールに理解が追いつかず、寒氷陣を完全無効化されたうえに核融合爆発を至近距離で食らって死亡する。
寒氷陣の能力:
陣内に猛烈な吹雪を発生させて敵を凍死させる。
趙天君
「地裂陣」を使う。
モノリスの姿をした仙人。
金光聖母
スナフキンみたいな装いをした仙女。胴体と脚がない(死神13みたいなイメージ)。
仙界大戦では姚天君とタッグを組んで哪吒・楊戩・韋護と戦う。
落魂陣と金光陣を組み合わせた多重空間で一進一退の激戦を繰り広げるが、仲間を守るために死力を尽くす崑崙門徒たちに一歩及ばず敗北。
金光陣の能力:
金光で照らした敵の影から、強さはオリジナルの1/10程度ながらもダメージを反射する特性を持った影法師を生み出して敵自身と戦わせる。
なかなかに反則的な能力だが、物陰に入って金光を遮ると影法師が消滅するという弱点があり、これを補うために姚天君の「破壊の呪符」で遮蔽物を破壊してもらって金光のもとに引きずり出すという戦術を用いた。
また、光の屈折を利用して敵に幻を見せるアシスト能力がある。
秦天君
岩石の集合体のような姿の仙人。
白天君の「烈焔陣」を組み合わせた多重空間で黄一家と雲霄三姉妹を襲うが、三姉妹がより大きな亜空間「究極黄河陣」を発動させたことにより陣が消滅。
敵を虫けら以下にしてお茶会のテーブルの上に彷徨わせる圧倒的な陣に打つ手をなくし、降伏を勧められるが、答える前に末妹のマドンナにお菓子と間違われて食べられてしまいあえなく死亡。
天絶陣の能力:
瞬殺されたので詳細は不明だが、宇宙空間のような亜空間で隕石を降らせる能力らしい。
白天君
秦天君の「天絶陣」を組み合わせた多重空間で黄一家と雲霄三姉妹を襲うが、三姉妹がより大きな亜空間「究極黄河陣」を発動させたことにより陣が消滅。
敵を虫けら以下にしてお茶会のテーブルの上に彷徨わせる圧倒的な陣に打つ手をなくし、降伏を勧められるが、答える前に末妹のマドンナにお菓子と間違われて食べられてしまいあえなく死亡。
烈焔陣の能力:
瞬殺されたので詳細は不明だが、火属性の能力らしい。
余談
原典・安能務版における十絶陣の戦いは非常に形式的な展開であり、
- 燃燈道人(十二仙よりもさらに別格の、崑崙派の仙道の取りまとめ役の仙人)が、実力不足の道士(場合によっては道士ですらないただの武将)に陣破りを指示する
- 命令に従って挑戦した道士が瞬殺される
- そのあとに十二仙の誰かが陣を破る
という流れが律儀に繰り返される。中盤以降になると十天君側から「なぜいちいち若輩者を犠牲者として送り込むのだ!」と毎回非難されるようになるが、多少の例外はあれど最後までこのテンプレが踏襲された。
なぜこんな儀式めいた手順で十絶陣破りが行われたかというと、雑魚を捨て石にして陣の仕掛けを確かめるという側面もあるだろうが、作中で強調的に示されたものは「若輩者の道士をここで処分するため」である。
原典・安能務版における「封神計画」とは、「出自が人間ではない仙人(藤崎竜版でいうところの妖怪仙人)」、「仙骨が足りずに仙道として完成できない道士」、「道士ではないが凡骨を超越している人間(藤崎竜版でいうところの天然道士)」を殺して神界に封じるという粛正計画で、封神榜(リスト)に名前の挙がっている身内を処分するには都合のいい環境だったのだ。
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藤崎版
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