協定世界時(UTC)とは、世界各地の時間帯を決めるための基準となる「世界標準時」ことである。
概要
略称のUTCは、Coordinated Universal Timeの頭文字の組み合わせから取られている。現行の「世界標準時」である。
一般的に「UTCと各国標準時との時間差」は、UTC±nの形で表される。日本標準時(JST)は、協定世界時から9時間進めた時間帯である。よってJSTは、UTC+9と表される。なお必ずしも時間帯は1時間区切りではなく、30分や45分の場合もある。インド標準時(IST)は、UTC+5:30となる。
かつてはイギリスの標準時・グリニッジ標準時(GMT)の使用が多かった。現在でも世界標準時=GMTとする意識も根強い。ただ従来通りの方法を利用したGMTでは、100年で約18秒遅延が発生する。
UTCの原理
かつての世界標準時(GMT)は太陽の角度や地球の自転、公転などの天文学を元に制定されていた。人類は、1日の24等分を1時間、1時間の3600等分を1秒と定義しているためである。しかし巨大地震などで自転の速さが変化するなど、天文の動きにはふらつきがある。そのため、この方法では遅延が発生してしまう。
一方、セシウム原子の振動数を利用した原子時計が開発されると、極正確な1秒が定義された。セシウム原子における振動数の1秒は、正確には「セシウム133原子の基底状態の2つの超微細準位間の遷移に対応する放射の9192631770周期の継続時間」とされている。この時計の精度は、1年に百万分の1秒も狂わない。
…簡単に言うと「物理学を利用した、世界一正確な時計」ということである。この原子時計の運用は、1958年1月1日に開始された。この開始時の時間帯を、国際原子時(TAI)と呼ぶ。
ただ原子時計オンリーで天文学を完全無視すると、逆に太陽の動きとズレてしまう。そこでTAIに「うるう秒」の挿入を行うことで、現実の太陽の動きと時間の正確性を両立させた。この時間帯がUTCである。
UTCの利用
相手国の時差を知る際や、異なる時間帯を計測する際の尺度として利用される場合が多い。
航空機や国際列車の運行、国際放送の番組表、インターネットなどで使用されている。世界万人向けに設計されたチャットサイトでは、国別のほかUTCの表示もなされている場合がある。一部の言語を除き、Wikipediaの投稿時間はUTCである。
また各種スマートフォンや時計には、UTCの項目がない場合がある。その場合、レイキャヴィーク(Reykjavík)の設定すると良い。イギリスには夏時間があるが、アイスランドは通年UTC+0である。
その他
TAIの時間正確さと現実の太陽の動きを一致させるためUTCは、うるう秒を挿入する。日本はUTC+9なので、数年に一度、午前9時にうるう秒が挿入される。このうるう秒の挿入日のみ、UTCは午後23時59分60秒、JSTは午前8時59分60秒となる。
うるう秒の挿入当日、東京都小金井市と兵庫県明石市に集結する人々がいる。
明石市には明石天文台、小金井市には国立研究開発法人 情報通信研究機構(NICT)があるためである。
前者は、グリニッジ標準時の本初子午線から東へ135度離れたJSTの標準となる子午線(日本標準時子午線)が通る。後者はそのJSTを決定し管理維持している。特に小金井市のNICT本部前には大型の電光掲示板が設置され現在時刻が表示されている。電光掲示板の8:59:60を見るためだけに人々が集まる。
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関連項目
参考
- GMT と UTC の違いは何?(シチズンHD株式会社)
- 国際原子時・協定世界時とうるう秒(国立研究開発法人 情報通信研究機構)
- 1秒の定義(国立研究開発法人 情報通信研究機構)
- 協定世界時(暦Wiki)
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