南海電気鉄道[なんかいでんきてつどう]とは、大阪・ミナミのターミナル・難波から和歌山・高野山・関西空港などを結ぶ路線を保有する鉄道会社である。通称「南海」「南海電鉄」。
概要
大阪市内の難波駅(以下、対外表記の「なんば」駅)をターミナルとし、和歌山県北部、関西国際空港、高野山、泉北高速鉄道経由で泉北ニュータウン、南海フェリーに連絡して徳島を結んでいる。
大手私鉄16社の1つであり、1885年に開業した阪堺鉄道をルーツとする日本最古の純民間資本私鉄である。
関西大手私鉄の中で唯一、標準軌の路線を有していない。ただ、1980年までは現在の阪堺電気軌道の路線を経営していた(南海大阪軌道線)。
路線図に記された駅ナンバリングの符号は、当社線各駅が NK 、乗り入れ先の泉北高速線は SB 。
スルッとKANSAI・全国山岳鉄道‰会加盟社。
歴史
1885年に、難波~大和川(廃駅)間で開業した阪堺鉄道がルーツである。釜石鉱山鉄道の資材を譲受し、軌間838mmで建設された。1888年に大和川橋梁が完成し、堺駅(吾妻橋駅)まで延伸され全通した。
阪堺鉄道の成功を見て、和歌山市まで鉄路を繋げようという機運が高まる。1985年に阪堺鉄道との合併を前提として南海鉄道が設立され、1898年に合併が成立して阪堺鉄道は解散した。南海鉄道は狭軌(1,067mm)で建設されることになったため、阪堺鉄道の軌間も改軌された。同年10月に和歌山北口駅(現:紀ノ川駅)まで開業、1903年に紀ノ川橋梁が完成して和歌山市駅まで全通した。
1906年に鉄道国有法が成立し、和歌山市駅で接続していた紀和鉄道(→関西鉄道)も国有化されるが、南海鉄道は海岸線であることを理由に、軍事的立場から除外された。
1905年より電化に取り組むことが決議され、1911年に全線電化を達成した。
一方、阪堺鉄道と南海鉄道が合併した1898年には、大小路(堺東)~狭山間で高野鉄道が開業した。1900年に汐見橋駅が開業し、当初の計画である汐見橋~長野(河内長野)間が全通した。
1907年に高野登山鉄道が設立され、高野鉄道の事業一切が譲渡された。1915年に和歌山線の橋本駅まで延伸され、同年に大阪高野鉄道と改称された。高野大師鉄道を設立してさらなる延伸を目指すが、1922年に南海鉄道との合併が成立し、同社の高野線となった。1925年に南海本線との連絡線が完成し、難波駅への乗り入れが開始された。同年に高野山電気鉄道が設立され、南海鉄道は高野下駅まで、そこから先は高野電気鉄道が担当することとなった。
また、1915年には南海鉄道とライバル関係にあった阪堺電気軌道(初代)と合併し、同社の軌道線とした。
1940年に陸上交通事業調整法により赤字に苦しむ阪和電気鉄道を引き取ることとなり、同社の山手線となった。しかし、1944年には戦時買収により国に路線を取り上げられてしまう(阪和線)。その直後に国の命令により関西急行鉄道と合併させられる事態となり、近畿日本鉄道となって南海鉄道は消滅した。
もともと合併が自発的なものではなかったこともあり、戦後すぐに両社が分離する機運は高まった。高野山電気鉄道が合併されることなく単独で残っていたため、1947年に社名を南海電気鉄道に改称し、南海鉄道の事業を譲渡することで両社の分離は完了した。
近年では多奈川線・高師浜線等のローカル線の車両を2200系から比較的新しい2000系へ置き換えを進めており、サービスの向上を図っている。
営業路線
南海電鉄では、1990年代頃から「支線」と呼ばれる路線が無くなっている。
- 南海本線(南海線)
- 空港線(泉佐野駅 - りんくうタウン駅 - 関西空港駅)
- 高野線
なお、高野線は途中の中百舌鳥駅以北、なんば駅まで「泉北高速鉄道」の車両が乗り入れる。
なんば駅~橋本駅には「りんかんサンライン」という愛称があったような気がするが(゚ε゚)キニシナイ!!
優等列車
- ラピート(南海本線・空港線:なんば~関西空港)
- 「鉄人28号」こと、なんばと関空を結ぶ特急列車で、名実共に「南海の顔」である。
空港輸送という点ではJRの「はるか」に比べて圧倒的に不利な状況であり、一時は乗車率が可哀想な事になっていたが、近年では関空会社がLCCの受け入れに積極的なため、前の座席をグルっと回して4人席の1名占領なんてもうできないくらい乗客が復調傾向にある。どちらかというと難波~泉佐野以北でのビジネス特急に徹してる感が否めない。 一部座席のモケットはヒョウ柄である。 - サザン(南海本線:なんば~和歌山市・和歌山港)
- なんば~和歌山を結ぶビジネス特急。
車両は10000系(先代の特急「四国号」に使われた1000系の機器を一部流用)と12000系(2011年デビュー)が使用されているが、いずれも特急車両の座席指定車と普通車両(10000系の相方には塩害魔王7000&7100系、12000系の相方には8000系・9000系リニューアル車)の自由席車を併結させて走る珍しい特急(他社で同様の運転形態を取る例に、名鉄特急がある)であり、快適性、込み具合共に、自由席車との格差が非常に激しい。後のJR各路線の快速列車群と京阪特急がこの列車を参考にした座席指定サービスを始める。
2011年9月の12000系(サザンプレミアム)導入より、全車禁煙となった! - こうや・りんかん(高野線:なんば~極楽橋、りんかんはなんば~橋本)
- なんばと高野山を結ぶ観光特急で、ラピート登場前の南海の顔。別名「南海の女王」とも。通常は4両運転が基本。後述のりんかんと併結して8両で走る(橋本で分割併合を行う)便もあったが、2015年12月の「泉北ライナー」運転開始と同時になくなった。 なお、冬季の閑散期には車両点検(定期検査)の都合により、運休となる列車がある。
「りんかん」は冬期運休対策と、橋本以北高野線のビジネス特急系統として1992年にデビューした。それ以前も1985年から同様の形態での運行がされていた特急があり、通称「H特急」と言われていた。
以前は高野線特急車では唯一の20m級車両である「11000系」をメインに使用し、平日ラッシュ時の列車は8両運転が基本であったが、2015年12月から11000系が「泉北ライナー」専用編成となってからは「りんかん」も30000・31000系での運転が基本となり、11000系は冬季(概ね1月上旬から2月末頃の間)の検査時にしか「りんかん」運用に入らなくなった(この時期に限り「泉北ライナー」はサザンプレミアム用の12000系が運用に入る)。朝上り1本のみ8両運転、他は4両で運転される。知名度的には私鉄特急の中でもトップクラスの地味さではないだろうか。
- 泉北ライナー(高野線・泉北線:なんば~和泉中央)
- 2015年12月5日から運行開始した特急で、泉北線初の定期特急列車。早朝・夕方ラッシュ時に運行を行うことから、事実上の着席保証列車・ホームライナー列車として運行されている。
2022年5月27日に発生したこうや用の30000系電車が事故により運用から離脱し車両が足りなくなった際、新型コロナウイルスの影響で運休状態が続いていたラピート用の50000系に白羽の矢が立ち、2022年11月1日から当面の間一部の編成が泉北ライナーの運用に入るようになった。50000系が泉北ライナーとして用いられる際は、ラピートの時と異なりスーパーシート・レギュラーシートどちらに乗車しても特急料金が変わらない乗り得列車と化す。
また、高野線の特急車両には1本も予備がないため、定期検査のたびに運休が発生する。突発的な車両故障などが発生した際には即、運休につながる。その場合、一般車両による全車自由席の特急が走ることもある。
観光列車
- 天空(高野線:橋本~極楽橋)
- 南海2208系(展望車・指定席)2両と南海2300系または南海2000系(自由席)2両を併結して運行している。
2208系の車両検査時には、残念ながら運休となる。ネット予約全盛の時代にも関わらず指定席券は事前の電話予約のみ。(10日前~前日まで)その他の予約方法は2024年4月現在設定がない。乗車当日に受け取りとなる。近々展望車・指定席の車両も2000系に置き換える計画がある模様。
沿線風景
大阪ミナミの繁華街、堂々とそびえるなんば駅から出た電車は、通天閣やスーパー玉出を望み、ドヤ街の真横や直上、下町、商店街、路地裏、山の手、フツーの住宅街、ドブ川、絵に描いたようなニュータウン、海を渡って空港の中、海岸沿い、峠をトンネルでパス、潮の香りがする港、巨大古墳のすぐ横、急曲線と急勾配を軋ませながらいくつものトンネルをくぐり、清流をまたいで山奥を目指し、いよいよ地形的に行き止まりとなった場所でケーブルカーに乗り継いで行った先は、世界遺産の山上宗教都市…と、まぁ何でもござれなフリーダムであり、沿線風景はヒジョーに多様である。ついでに高野山駅前からは、一般車通行禁止のバス専用道(南海りんかんバスの私道)があるオマケつき。もういいよお腹いっぱいだよ!私鉄1社の車窓風景としては満漢全席級コース。
大手私鉄では珍しく、地下駅施設が全く無い(南海線・高野線ともにトンネル区間はある)。これは大手でも南海と、西日本鉄道(地下駅もトンネルもない)だけである。なお、南海の名誉のために申し述べておくが、東武鉄道の押上駅(地下)は、東京メトロ半蔵門線との相互乗り入れによって生じた「副産物」的な駅および区間であり、駅の管理者は東京メトロである。とはいえなにわ筋線開業に合わせ建設される新難波駅が地下駅になるそうなので気を落とさないでほしい。
運賃
京阪神地区のような都市間連絡輸送をしているわけではないため、近鉄と並んで関西大手私鉄の中では運賃水準は高め。難波駅から和歌山市駅など、ある程度の距離を乗ってしまえば阪和線などより安くなるのだが、40kmまでの運賃はJR西日本の幹線より高い(2024年1月現在)。当然、電車特定区間に指定されている阪和線との価格差はさらに大きくなるが、36kmで並び、それ以降は上記の例のように南海の方が安くなる。
中百舌鳥駅を挟んで南海高野線 - 泉北高速鉄道を乗り通す場合は、初乗り運賃が2社分徴収されるが、2015年3月1日より乗継割引額が100円に設定されている。これにより、南海高野線だけ乗った時の運賃との価格差はかなり小さくなった。ただ、それ以前は20円しかなかったため、中百舌鳥駅で大阪メトロ御堂筋線に乗り換えてしまう乗客も多かった(地下鉄は長距離乗った方が割安感が出るため)。2023年10月に値上げしたが、難波~中百舌鳥が特定運賃適用で10円程度の値上げに留めたのでそこまで大阪メトロには流れないと思われる。このあたりの運賃は泉北高額鉄道が南海と合併しても変わらない模様。
阪急・阪神・京阪、それから北大阪急行などに慣れてしまった人は、駅の運賃表を見上げて唖然とする…かもしれない。
実証実験
南海電鉄グループでは2021年4月3日から一部の駅・路線でVisaカードのNFC機能を用いた実証実験を実施しており、駅構内の自動改札機等にNFC専用カードリーダーを取り付けている。
現時点での対応駅・グループ交通機関
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
- 泉北高速鉄道
- 阪堺電気軌道
- 南海フェリー(同社100%出資の子会社)
- 南海バスグループ(同社100%出資の子会社)
- 和歌山バスグループ(同社傘下の子会社。立場的には南海バスグループの片割れのようなもの。南海電鉄が経営していた路面電車の「和歌山軌道線」の廃止代替バスとしての側面も持つ)
- 関西空港交通(同社と航空会社3社が共同出資して誕生した高速バス会社。関空と関西の主要都市を結ぶ)
- 阪和線
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