火星 |
双月巫女とは、「コミックフラッパー」にて2005年6月号から掲載されていたアキヨシカズタカの漫画作品である。副題は"Gene Maiden"。
概要
ふんわりした絵柄で描かれる巫女さん達が主役の大正風ほのぼの日常漫画でありつつ、パラテラフォーミングされた火星が舞台のSF漫画。単行本の紹介文では「SFハートフルストーリー」「新感覚SFスローライフストーリー」と紹介されている。2008年星雲賞ノミネート作品。
世界観
現在から1000年後の火星が舞台。火星には「地球遺産」として108つのドーム世界が構成されており、その一つである「国東(クニアズマ)」で物語が繰り広げられる。これは大分県の宇佐・国東半島がモチーフとなっている。
国東は大正時代の日本が島邦の形で再現されているが、歴史や環境に疑問を持つ者も存在した。ロケットや宇宙飛行士を描いた画を用いた文化が定着しているが、ロケットが馬と呼ばれるなど具体的な内容が理解されている訳ではない。元の地球人に関しては神話や神として扱われている。
しかし、こんな世界は老朽化や隕石の落下により緩やかな滅亡へと歩んでいた。
出会いと交流を繰り返し、自らの使命を知り、世界の真実を知りながら、積み重ねた想いを胸に抱えて生きていくヒト達の物語。
用語
- 天津(アマツ)
- 未来の地球。月と共に滅んでいる模様で、月の破片が火星に降り注いでいる。
- 火星(ヒボシ)
- 太陽系第四惑星。テラフォーミングが施されている最中の種の大地。人類が残しておきたいと願う「地球遺伝子」である世界遺産を基軸に再構成されたドーム世界が108つ構成されているが、ドームの老朽化が進行しつつある。ドームの外には惑星地球化の為のドロイトと人工衛星が機能している。
- 父母司(フォボス)、弟妹司(ダイモス)
- 火星の宙に昇る双つの月。
- 国東(クニアズマ)
- 火星のドーム世界の一つにある邦。そこに住む人々には島邦として認識されており、帝都と呼ばれる都が島の中心。かつての人々は黒髪だったと伝えられているが、大多数の住民は金髪となっている。一年の長さは地球換算で686.98日で、季節の移ろいは半分程の速さ。主な産業は農業と水産業。周囲には六方にドームを取り囲む「獣の牙」と呼ばれる光の線が見え、概ね決まった周期で「恵みの雨」が降る。
帝都には路面電車が走っている他、島を縦断する帝都鉄道には蒸気機関車のクラウス号が走っている。だが、資源の枯渇が問題になっており油や電気の使用の制限が始まった他、帝都鉄道の廃止が決まっている。
海の向こうには西洋が存在するとされており、それに由来する文化や物品は存在するが実際に足を運んだと言う者は存在しない。 - 宇佐野神社(うさの-)
- 大元山の頂にある神社。ヒメが一人で住んでいる。
大鳥居や神楽殿のあるそこそこしっかりとした神社で、人が多く訪れる場所では無いが村人が参拝に通う事もあり、野菜などがよく供えられている。裏参道には道が繋がっていない。一角にはヒメの菜園も。また、裏からは帝都を望める。
国東の成り立ちに関する記録が隠されている。 - お役目の儀
- 56日に一度ヒメが行う、一月分の厄払いの儀式。祓所から雨を司り、「世界を見渡す目」で国東の景色を眺める。国東の環境を維持する為の儀式。
- 龍の穴大事変
- 3年前、隕石の落下により双子山の兄岳が失われ龍の穴と呼ばれる大穴が空いた事変。龍の穴の周辺には穴へと引き込む強風が吹いており、邦に禁止区域に指定されている。
- この事変の為にヒメの前の巫女は力を使い果たし失われた。
- 姫島(ヒメシマ)
- 「宗像三女神」を祀る3つの島。「磐座」と呼ばれる不思議な鉱石の様な塊が祭られている。
黒巫女の先祖が何処からか辿り着き神社を築いたと言う。
登場人物
- 比売(ヒメ)
- 宇佐野神社の巫女。長い黒髪で優しい性格をしている。神社に来る前の記憶は殆ど無く、神域から出る事が出来ない。九十九の御柱に仕えており、その声や意志を感じる。
お役目の儀を通して国東の人々や生き物を見守っており、世界の異変の予兆を感じ取っている。
子供の頃は感情が希薄で機械的な受け答えしかしなかったが、アキとの交流を通して心が芽吹いていった。 - ドームをメンテナンスする力を与えられている、国東の世界を維持する為の道具として生み出された存在と考えられ、18代目の巫女であるが龍の穴大事変の影響で幼い状態で送出されていた。
- 安岐(アキ)
- ヒメの親友。髪は金髪で大雑把な性格をしており誰にでも物怖じせずに人に接する。よく食べてよく寝てよく遊ぶ元気一杯の子。
神社の手伝いとしてヒメに会いに通っており、ヒメや子供達とよくじゃれている。
山の麓の御許村に住んでおり、両親を亡くしている。 - 子供達
- 御許村に住む子供達で宇佐野神社にも遊びに来る。アキ曰く舎弟。
- 鶴屋伊美(ツルヤ イミ)
- 国東で大きな影響力を持つ鶴屋家のお嬢様。眼鏡を掛けており、やや辛辣。金髪に染めていたが地毛は黒髪で、本当の自分を隠して過ごしていたが、ヒメらとの出会いをきっかけに染めるのを止めた。ヒメを姉様と慕い、神社に手伝いに訪れるようになる。
- 来縄(クナワ)
- 帝都の高名な学者でイミの家庭教師もしている。国東では当たり前に思われている事を不思議に捉え世界について研究しているが、伊美にしか受け入れられていない模様。
世界の成り立ちや起源が不明瞭である事を疑問に思っており、生活に根ざしている洋風の文化等も大いなる存在に与えられた知識や手段ではないかと考えている。ヒメとの対面と宇佐野神社の調査を通じて真実を知り「宇佐野録」を執筆するが、内容が内容の為に伊美にしか読ませていない。 - 使用人
- 鶴屋家で働くメイド。伊美に付き添っている。
後に来縄と結ばれる。 - 殿方
- 過去の記憶を持っていない黒い髪の謎の青年。来縄の元で研究生として過ごしていた。
ヒメの「世界を見渡す目」に気付く。その後、宇佐野神社を訪れヒメとお互いの境遇を理解し、惹かれ合うようになる。命と引き換えに世界を修復する力を持っており、ヒメを神域から解き放った。 - 国東の世界の壊れてしまった部分を活性化して、危機を救う為の道具として生み出された存在と考えられ、龍の穴大事変の影響で使命を正しく与えられていない状態で送出されていた。
- 神主
- ヒメを宇佐野神社に連れて来た謎の人物。現在は不在。
- 黒巫女(くろみこ)
- 姫島の神社の巫女で黒い髪を持つ。おおらかな性格だが人の心を感じ取る能力を持っており、神通力だと囃し立てられている。先祖はヒメと殿方に瓜二つで、12代目の巫女らの子孫である事が示唆されている。
- ドロイド
- ドームの外で火星の環境を整えようと活動している凡そ人型のロボット。胞子の様な物を散布して植物を育てているが順風満帆とはいかない様子。破損していたり朽ち果てている個体も。火星を青い宙と緑の大地の惑星にするべく人知れず動き続けている。
関連商品
紙のコミックは絶版して久しいが、電子書籍版が各サイトで販売中なのでそちらで読むのがオススメ。
関連項目
- 1
- 0pt