可変戦闘機とは、
- 可変機構を有する戦闘機(現時点では複雑な可変機構を有する戦闘機は現存しないので架空の兵器である)
- TVアニメ「超時空要塞マクロス」をはじめとした、マクロスシリーズに登場する架空の兵器(通称:バルキリー)
である。
本記事では2項のマクロスシリーズに登場する架空の兵器について記述する。
概要
TVアニメ「超時空要塞マクロス」にて、河森正治氏がデザインしたVF-1が起源。
その後のマクロスシリーズにおいても「歌、三角関係、そして可変戦闘機」の三大要素として、シリーズを語る上で欠かす事の出来ない存在である。
初の本格的な量産型可変戦闘機・VF-1バルキリーの名を取って、作中でもしばしば可変戦闘機全体のことを「バルキリー」と呼ぶ事が多い。
特徴
変形機構
以下の3形態への可変機構を有するのが大きな特徴と言える。
特に可変戦闘機において特徴的なのが、中間形態のガウォークである。
これはファイター形態から手足を展開した状態とする事で、航空機と人型兵器両方の特徴を併せ持つという利点がある。
また、低速安定性にも優れホバリングにも使用できる他、不整地への着陸もガウォークで行うことが出来る。
脚部のみを展開することも可能であり、これによって空戦時に敵機をオーバーシュートさせるなど、ドッグファイトにおける戦術の多様化にも貢献している。
作中では「開発途中に偶然にも有用性が発見された」という設定となっており、本来の開発では予定されていなかった形態である事をうかがい知る事が出来る(実際のデザインも、河森氏が自作したVF-1のモックアップ模型で、手足のロックが外れたところ、マクロス以前に企画・デザインしていた戦闘機ブレスト・ファイターの中間形態に偶然にも酷似していたところから、正式にガウォークとしてVF-1のデザインに組み込まれたという経緯となっている)。
機種によって違いはあるが、VF-1を例に取ると以下のようにファイターからバトロイドへ変形を行っている。
- エンジンブロックが下垂。膝部で折れ曲がって脚部となる。
- 尾翼を収納
- 機体下部に収納された腕部を展開(ここまでの段階を終えた状態がガウォークである)
- 主翼を背面へ収納
- 胴部が前後に屈折。胸部と背部を形成。また胸部となる操縦席近辺を覆い保護する。
- 頭部(外部カメラユニット等を搭載)を展開
- 脚部を伸張
なおVF-1では、この変形を終えるのに約3秒が必要という設定である(作中では表現の都合上短縮されている)。
後の機体では変形機構に様々な工夫が加えられ、変形時間の短縮等が可能になった他、従来胸部正面に配置されていた操縦席を内部に収納する事でパイロットの生存性向上等が図られている。
武装
機体によって違いはあるが、概ね以下のような武装が共通して採用されている。
- 携帯型ガンポッド
口径30~50mm程のガトリング砲にフェアリングを施した携帯型のガンポッド(最新型ではビーム砲もある)
ファイター形態では機体底部に固定され、腕部を伸ばした際はマニピュレーターで保持される。
初代のVF-1から最新型のYF-30に至るまで、可変戦闘機の主武装として採用され続けている。 - ミサイル
中型~小型のものまで、様々なミサイルが機体本体及び拡張装備に搭載されている。
マクロスシリーズの特徴でもある「板野サーカス」を語る上で欠かす事の出来ない武装。
また反応弾(一種の核兵器)等の強力な戦略兵器を搭載することも可能。 - 頭部レーザー機銃
バトロイド時の頭部ユニットに固定装備されたレーザー機銃。
機種によって砲門数は異なるが、機体の固定装備としてほぼ全ての機種で採用されている。
またファイター、ガウォーク時にも外部に露出されており、これらの形態でも使用可能。
特にVF-11以降の機体では、進行方向後方に発射も可能になり、背後の敵機へ攻撃することも可能になった。 - ピンポイントバリア
AVF以降に可変戦闘機にも搭載されるようになったエネルギー障壁。
基本的にはバトロイドでの使用が主だが、VF-27以降の最新鋭機ならばファイターでも展開可能。
主に防御に用いられるが攻撃にも用いられ、マニピュレーターに展開して格闘時の機体の損壊率を下げる、ナイフの刀身に展開し切れ味を上げるなどの例がある。
拡張装備
以下の様な拡張装備により、機体性能の向上等を図ることが出来る。
- ファスト(FAST)パック(スーパーパック)
推進剤増槽、及び追加武装等を積んだ装備一式。VF-11以前の機体は推進剤槽の容量不足により大気圏外では増槽が必要不可欠なため、宇宙空間においては実質的に標準装備であると言える。
初期のVF-1等では、機体背面へ背負うような形が主流であったが、VF-25等では主翼に挟むように装備される。 - プロテクターウェポンシステム(アーマードパック)
機体に重装甲を施すと同時に、ミサイルを大量に追加した、重武装・重装甲仕様装備。
従来機ではバトロイド形態限定の装備であり、装備中は他形態への変形を行う事が出来なかったが、VF-25にて装着状態での3段変形を実現している。
もっとも、本装備自体はバトロイド形態時の熱核タービンエンジンの余剰出力を有効活用するために開発された物がそのルーツである。
作中での開発・発展の歴史
開発初期段階
作中の年代で1999年、南アタリア島に落下した巨大宇宙船によって、地球外に巨大人型生命体の脅威が存在する恐れがある事が知られたことで、これに対抗する兵器として人型機動兵器の開発が叫ばれた。
この声に対して、上がった案の一つが「重武装を施した陸戦機動兵器」(後のデストロイド)、そしてもう一つが「航空機に変形可能で優れた移動能力を有する人型兵器」の二つである。
すなわち当初の予定では「人型兵器」としての性格が主であり、航空機への変形が副次的なものであった。
しかし、その後、脅威たる地球外生命体が高度な機動兵器を持っている可能性が指摘されると、空戦能力も期待されるようになり、空陸両用兵器としての開発へシフトされる。
なお当初の運用構想では以下の様な戦闘が想定されていた。
- ファイター形態で高高度・高速飛行からの攻撃により地上の対空兵器を排除。
同時に周辺の航空脅威を排除し、航空優勢を得る。 - ガウォーク変形。低空から密な掃射を行い、着地地点の安全を確保。
- バトロイドで着地。地上の制圧を行う。
すなわち空軍と陸軍、両者の仕事を単独で行う事が期待されていたと言える。
また宇宙空間ではファイター形態で敵艦の防空網を掻い潜り、艦内へ強行突入。
バトロイドで艦内を制圧するという、白兵戦的戦闘も想定されていた。
また、オーバーテクノロジーにより開発された熱核反応エンジンを搭載。
「取り込んだ大気を核融合反応によって、圧縮噴射する」という画期的なエンジンであり、大気圏内ではほぼ無限の航続距離を得る。プロペラント(強制推進剤)を搭載するだけで大気圏外でも活動可能であると同時に、搭載された発電タービンによりエネルギー変換装甲(機体外殻にエネルギーを流すことで分子結合そのものを強化する機構)やレーザー機銃への電力供給も可能にした。
マクロスゼロ~超時空要塞マクロス
マクロスゼロの時代、即ち統合戦争の最中に反統合同盟がいち早く可変戦闘機SV-51実戦投入。
統合軍はこれに対し、VF-1 バルキリーの試作型であるVF-0 フェニックスを急遽量産、実戦配備。
マヤン島事変において、史上初の可変戦闘機同士による空中戦が繰り広げられた。
なおVF-0は熱核反応エンジンが完成していなかったため、統合軍の可変戦闘機の中で唯一のジェットエンジン搭載機である。
その後、2009年にゼントラーディとの遭遇により第一次星間戦争が勃発。
しかしマクロスが宇宙空間へフォールドしてしまった為、いざ戦争が始まってみると地上兵器として使用される事は少なく、またゼントラーディとの戦力差により艦隊へ乗り込んでの白兵戦法も叶わず、可変戦闘機の主な任務はマクロスの直擁任務となる。
なおこの当時は一般的な戦闘機、航空機のパイロット出身者が多く、空中で変形を多用するパイロットは少数であった(一条輝もその一人である)。
しかし、マクシミリアン・ジーナスなど既存の操縦法に捉われないパイロットや、ロイ・フォッカーを始めとしたエースパイロットは空中戦においても変形を多用するのが有用である事を証明。
次々と新しい戦術、テクニックが生み出され、これは後世の可変戦闘機の発展に大きく貢献することとなる。
また、ボドル基幹艦隊との決戦時には反応弾を抱えての戦闘攻撃機としても出撃する等、可変戦闘機の汎用性を大きく示すこととなる。
第一次星間戦争の終結後は、可変戦闘機の主な任務は治安維持、及び宇宙へ進出する移民船団の護衛任務が主なものとなる。
これに伴いVF-4 ライトニングⅢ、VF-9 カットラスなどの新たな可変戦闘機が開発されたが、これらの機体は完全にVF-1を置き換えるには至っていない。
勿論特定の領域(例えばVF-4ならば宇宙空間)ではVF-1以上の性能を発揮するとはいえ、汎用可変戦闘機としてのVF-1の後継機が誕生するまでには長い時間を要した(それだけVF-1という機体が優れたものであったとも言える)。
マクロスプラス~マクロス7
長らく続いた先述の状況を打破する機体として登場したのがVF-11 サンダーボルトであった。
VF-11はVF-1と同様に「汎用性」を重視した機体であり、決して限界性能は高くないものの、安定性が高く、様々な任務を遂行する事が出来た。そのため本機はVF-1以来の新たなスタンダードとなり、広く普及する事となる。
しかし宇宙への進出が進む中で、新統合政府内において、様々な政治的・思想的問題に起因するテロ活動等が活発化。一般の治安部隊では対処し切れないこれらの事案を制圧するべく、更なる精鋭向けの高性能機の開発が望まれるようになる。
このような要求から開発されたのが特殊作戦機のVF-17 ナイトメアであり、レーダーへの隠密性を重視したことから、本機はステルスバルキリーとも呼称される。重厚なシルエットをもつ機体ではあるが、新世代エンジンである熱核バーストタービンエンジンを搭載したことにより見かけ以上の機動性を誇った。
そして、VF-17以上の高性能機の機体の開発の為に行われたのが、マクロスプラス劇中の「プロジェクト・スーパーノヴァ」である。
これによって選ばれる次期主力可変戦闘機=AVF(Advanced Variable Fighter)には、以下の様な要求がなされた。
- 迅速な行動の為、ブースター装備無しで大気圏内外両方を連続長距離飛行可能である事
- 敵陣深くへの奇襲作戦の為、単独フォールド能力及び非常に高いステルス性を有する事
- 敵航空優勢下を強行突破出来るだけの、高度な空戦能力
- 敵施設内を制圧する為の、高度なバトロイド形態での戦闘能力
すなわち単機、又は少数機で敵拠点を速やかに制圧可能という、従来機では到底なし得ない難しい要求がなされた。
これを実現するため、計画の参加機YF-19及びYF-21では、VF-17よりも高出力の熱核反応バーストタービンエンジン(追加装備無しで大気圏外へ到達可)、ピンポイントバリア、アクティブステルス、BDI(脳波操縦)システムなどの新技術が惜しげもなく投入されることとなり、従来機の性能を遥かに越える可変戦闘機が誕生することとなった。
しかしここで一つの転機が訪れる。人工知能を搭載した無人戦闘機・ゴーストの台頭である。
ゴーストの開発自体はVF-0と同時期から行われていたが、人工知能の性能不足により、これまでVFのサポートとして運用されていた。しかし、この時代において人工知能の性能は著しく向上し、「人体」があるが故に生じる限界を、無人戦闘機は容易くクリア。AVF計画機すら超える高性能を見せ付けたことで、一転無人戦闘機が新たな主流となりかける。
しかし「シャロン・アップル事件」により、人工知能の脅威が認識され無人戦闘機の開発は凍結。
正式採用が決まったYF-19はVF-19 エクスカリバーとして、またその高性能を見込まれたYF-21はVF-22 シュツルムフォーゲルⅡとして、新統合軍に採用。
マクロス7の劇中において、腕の確かなエースパイロット達の愛機として活躍することになる。
マクロスフロンティア~マクロスΔ
しかしVF-19やVF-22は、精鋭部隊では素晴らしい戦果を挙げたものの、一般兵士に普及することは無かった。
これらの機体は高性能すぎて、デチューンしない限り一般兵士が扱えるような代物ではなかった為である。
またどれだけ高性能な機体でも「人体の存在」故に生じる限界を超えることは出来ず、開発は頭打ちとなる。
そして無人戦闘機・AIF-7Sの開発により、時代は大きく変わる。
この機体は従来の無人戦闘機の問題点を解消、また性能を故意に「人間が対処できる範囲」に限定する事で、暴走時の脅威を排除できるという画期的なものであった。
これにより
精鋭部隊 > 無人戦闘機 > 一般兵士
という構図が出来上がったことで、従来よりも一般兵士に求められる役割が減少。
それ故、高性能機に搭乗する必要も無くなり、新統合軍の主力機にはAVF以前の機体であるVF-17・ナイトメアを改良した、VF-171・ナイトメアプラスが採用される事になった。
これによって新統合軍に取っても人的なリスクが無くなり、軍の安定した運用が可能になったが、それは同時に軍全体の士気・練度低下という結果を招く。
しかし、これに警鐘を鳴らす形となったのが、第117次調査移民船団のバジュラによる壊滅事件である。
船団がバジュラに襲われた際、新統合軍の各隊は救援に向かったが、限界性能の低い機体に乗った練度の低いパイロット達はバジュラに対して全くの無力であり、船団の完全壊滅という悲劇を招く結果となる。
これによって、再度高性能な有人機の必要性が再認識。
「人体の限界を超越する」事を目的とした、新機体の開発が開始される。
これに対して一つの答えを出したのがYF-24 エボリューションであった。
この機体には大きな特徴としてISC(慣性蓄積コンバーター)を採用。フォールド技術の応用により、慣性=パイロットへの負荷を一時的に異空間へ蓄積。徐々に通常空間へ還元する事で、一時的ではあるが人体の限界を超える機動を可能とした。
またパイロットスーツ及びコックピットを飛行ユニット化したEX-ギアシステムなどの新技術も採用。
この機体のデータは各船団・惑星に送られ、それぞれにおいて新機体が開発された。
フロンティア船団ではYF-24のコンセプトをほぼそのまま活かしたVF-25 メサイアを開発。
狙撃仕様や電子戦仕様、多くの追加パーツなど、様々なバリエーションによって幅広い運用を可能とした。
またギャラクシー船団ではVF-27 ルシファーを開発。
IVC(ISCと同機構)に加え、「パイロットの人体そのものをインプラントで強化する」という発想により、従来機を遥かに越える性能を実現した。
しかしこれらの新技術には貴重な鉱石であるフォールドクォーツが必要不可欠であり、量産は未だ難しい状況となっている。
その最たる例がYF-29 デュランダルであり、高純度のフォールドクォーツによる無尽蔵のエネルギー供給を可能とするフォールドウェーブシステムを搭載した「超可変戦闘機」とも言うべき機体であるが、大量のフォールドクォーツの確保の困難さ故に、マクロスF劇中では1機のみが完成に至ったのみである。
バジュラ戦役の一年後にはYF-30 クロノスが開発される。
従来の可変戦闘機とは異なるアプローチで開発された本機は多目的コンテナを搭載し、スーパーパックや特化仕様に依らない運用を行えるようになった。
また、YF-29に搭載されたフォールドウェーブシステムを発展させた「フォールドディメンショナルレゾナンスシステム」を搭載。これによりフォールド断層を突破する「可変超時空突入艇」としての性能を持ち合わせている。その後、VFとしての有用性から本機の制式仕様としてVF-31 カイロス及びジークフリートが完成。カイロスは純粋な可変戦闘機の後継機として、ジークフリートは特殊作戦(戦術音楽ユニット「ワルキューレ」の支援)用途に運用されている。
一方で反統合勢力の可変戦闘機の系譜も脈々と受け継がれている。
2067年に統合政府に宣戦布告したウィンダミア王国の可変戦闘機であるSv-262 ドラケンⅢは、統合軍の可変戦闘機とはかけ離れた独特のフォルムをしており、多対少の戦闘を有利に行う為に増加ブースターにもなる無人機リル・ドラケンや強力なジャミング機能を備えている。
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