吉川英治文学新人賞とは、財団法人吉川英治国民文化振興会が主催し、講談社が後援する文学賞。
最新の受賞作は、藤岡陽子『リラの花咲くけものみち』（第45回）。
第45回（2024年）候補作
選考委員：朝井まかて、大沢在昌、京極夏彦、辻村深月、村山由佳
概要
1967年に設立された吉川英治文学賞（こちらは功成り名を遂げたベテラン作家の力作に与える賞）から派生する形で、1980年に設立。略称は主に「吉川新人賞」。
選考は年1回、3月に行われる。対象は前年の1月1日から12月31日までに刊行された小説。選評は『小説現代』誌上に掲載される。
「新人賞」とついているが、一般公募の文学賞ではなく、大衆文学の若手作家の商業出版作品が対象。具体的に言うと、まだ直木賞や山本周五郎賞を獲ってないエンターテインメント作家のための賞。事実、直木賞や山本賞を獲ったあとに吉川英治文学新人賞を獲った例は一例も無い。エンタメ作家にとっては直木賞の前に獲っておきたい賞だが、2000年以降では吉川新人賞のあとに直木賞を獲ったのは池井戸潤、辻村深月、恩田陸、西條奈加、佐藤究、今村翔吾の6人なので、この賞の受賞が直木賞に直結するわけではない。
今野敏がデビュー28年目で受賞したりもしているが、基本的には30代～40代の新進作家の出世作に与えられる賞という側面が強く、大沢在昌（『新宿鮫』）、真保裕一（『ホワイトアウト』）、馳星周（『不夜城』）、柳広司（『ジョーカー・ゲーム』）など、この賞の受賞作をきっかけにブレイクした作家は数多い。が、賞自体の知名度は直木賞と比べて圧倒的に低い。
ジャンルはわりとなんでもありであり、ミステリー、冒険小説、青春小説、恋愛小説、時代小説や歴史小説といったあたりはもちろんのこと、直木賞ではまずスルーされるホラーやSFも対象になり、受賞作も出ている（高橋克彦『総門谷』、鈴木光司『らせん』、月村了衛『機龍警察 暗黒市場』など）。直木賞と比べると、若者に支持されるタイプの作品が獲りやすい。たまに受賞作が直木賞候補にも挙がるがダブル受賞を果たした作品は無い。一方、本屋大賞とは近しく、過去4作のダブル受賞作が出ている（恩田陸『夜のピクニック』、佐藤多佳子『一瞬の風になれ』、冲方丁『天地明察』、和田竜『村上海賊の娘』）。
なお、直木賞や山本周五郎賞と違ってなんとなく年齢制限があるようで、候補になれるのは50代ぐらいまでのようだ。最年少受賞は栗本薫の28歳、最年少候補は判明している限りで辻村深月の26歳。最年長受賞は伊東潤の52歳、最年長候補は伊岡瞬の59～60歳（誕生日非公表につき不確定）。
大百科に記事のある受賞作
詳しい受賞作・候補作リストはWikipedia
か「直木賞のすべて」の当該ページあたりを参照。シリーズ中途の巻での受賞作はシリーズ全体の記事へリンクしている。
- らせん （第17回、鈴木光司）
- 終戦のローレライ （第24回、福井晴敏）
- 夜のピクニック （第26回、恩田陸）
- 隠蔽捜査 （第27回、今野敏）
- ジョーカー・ゲーム （第30回、柳広司）
- 天地明察 （第31回、冲方丁）
- 機龍警察 暗黒市場 （第34回、月村了衛）
大百科に記事のある受賞作家
- 栗本薫 （第2回 『絃の聖域』）
- 北方謙三 （第4回 『眠りなき夜』）
- 連城三紀彦 （第5回 『宵待草夜情』）
- 船戸与一 （第6回 『山猫の夏』）
- 岡嶋二人 （第10回 『99%の誘拐』）
- 大沢在昌 （第12回 『新宿鮫』）
- 宮部みゆき （第13回 『本所深川ふしぎ草紙』）
- 真保裕一 （第17回 『ホワイトアウト』）
- 福井晴敏 （第24回 『終戦のローレライ』）
- 伊坂幸太郎 （第25回 『アヒルと鴨のコインロッカー』）
- 恩田陸 （第26回 『夜のピクニック』）
- 今野敏 （第27回 『隠蔽捜査』）
- 池井戸潤 （第31回 『鉄の骨』）
- 冲方丁 （第31回 『天地明察』）
- 辻村深月 （第32回 『ツナグ』）
- 月村了衛 （第34回 『機龍警察 暗黒市場』）
- 宮内悠介 （第38回 『彼女がエスパーだったころ』）
- 佐藤究 （第39回 『Ank: a mirroring ape』）
- 藤井太洋 （第40回 『ハロー・ワールド』）
- 今村翔吾 （第41回 『八本目の槍』）
- 呉勝浩 （第41回 『スワン』）
関連項目
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- 直木賞
- 芥川賞
- 山本周五郎賞
- 本屋大賞
- 日本推理作家協会賞
- 江戸川乱歩賞
- 本格ミステリ大賞
- 柴田錬三郎賞
- 三島由紀夫賞
- 野間文芸新人賞
- 吉川英治文学賞
- 大藪春彦賞
- 山田風太郎賞
- 泉鏡花文学賞
- 中央公論文芸賞
- 吉川英治文庫賞
- 日本ミステリー文学大賞
▶もっと見る
- 2
- 0pt
