同人マークとは、作家(一次著作物の権利者)が同人誌即売会などでの二次創作を黙認する、または積極的に認める意思表示をする為のマークである。
丸の中にマンガで使うペン先とOKの字が描かれたデザインになっており、このマークを使用したい人は無料で自由に使用する事ができる。
TPP参加により著作権侵害の非親告罪化が導入され二次創作が不可能になるのでは、という危惧から2013年に誕生し、「現状維持」を目的としている。
詳細記事: 著作権の非親告罪化 [1]
TPP参加によって2018年に改正された著作権法では、二次創作やパロディは引き続き親告罪となっており、このマークがなくても「現状維持」が達成できたことから、考案者の赤松自ら「めでたく使わずに済んだ」「非親告罪化が回避された時には危ないのでこのマークは使わないで欲しい」として今後の使用は推奨しておらず、利用は縮小していくと思われる。
以下は過去の議論や非親告罪化が導入されていた場合の法律上の扱いなどです。
概要
日本ではいわゆる二次創作作品(同人誌、イラストなど)は権利者の許可を得ずに公表され、独自の巨大な文化圏・経済圏を形成してきた歴史がある。日本の著作権法が定める著作権侵害は親告罪で、権利者自身が警察に通報しない限りはグレーゾーンのままであり大半の権利者が二次創作を黙認していたためである。
しかしTPP参加によって予想される非親告罪化により、この黙認ができなくなり権利者に許可を得ていない二次創作作品について、第三者の通報による警察の摘発が可能となり、権利者の本意に沿わない状況が発生すると予想されていた。
この問題の対策として提案されている手段の1つが「同人マーク」である。
独自の許可ルールを考えるのは面倒だが二次創作してもかまわないという場合、マークを付けるだけで気軽に使用できる選択肢の1つとして考案された。
同人誌やイラスト程度に警察が対応するのか、という疑問などは 著作権の非親告罪化 を参照。
沿革
2013年3月27日 文化庁主催『第8回コンテンツ流通促進シンポジウム』にて、同人マークの原型となる「二次創作における『意思表示システム』」の提案が行われた。
2013年8月16日 同人マークのデザインが公募により決定された。
2013年8月28日 コモンスフィアより正式に同人マークに関するライセンスおよびFAQが公開された。
2013年10月10日 公式ベクターデータ(画像データ)が公開された。
2013年12月現在、クリエイティブ・コモンズを扱うコモンスフィアのライセンスの1つとして、実際に商業漫画で使用して問題点がないかなどの実験が行われている。
大々的な広報・普及活動はTPP導入によって著作権侵害の非親告罪化がどうなるか判明してから行うとしている。
そのため現時点では採用している作品はまだ多くないが、必要な次点で一気に広められるよう準備をしている事を赤松氏はニコ生やTwitterなどで明らかにしている。
2016年3月、TPPを実際に国内法に反映する内容が明らかになり、引き続き原則として親告罪のまま。[2]海賊版などに対しては非親告罪化となる、といった具体的な内容が明らかになった。二次創作は従来の範疇に含まれる。
同人マークのTPPにおける非親告罪化対策としての側面はなくなり不要となるというのは、考えられる中でも非常に良い結果であり、同人マークに関して特に精力的に活動していた赤松健さんは「めでたく使わずに済んだ」とコメントしている。
同人マークの今後については不明であるが、即時無効となることはどうやら無さそうであるし、また同様のライセンスを引き続き使用したいという場合は、似たライセンス(マーク)を作るのも自由である。
同人マーク採用作品の一例
利用方法・Q&A
このQ&Aは公式のものが開設される前に作成されているため、公式の内容を優先して下さい。
どんな作品の形態なら同人マークを使用できるか
限定は無く、例として「マンガ、小説、動画、音楽、フィギュア、衣装など」があげられている。
ツイートを読み込み中です
https://twitter.com/KenAkamatsu/status/370070432008785920
この質問は、株式会社TENGAが自社の商品を擬人化した作品などに関連して行った物。
二次創作(例えば同人誌)には付けられないのか
このマークはオリジナル = 一次創作側が付けるものであるが、二次創作が許可されている作品の二次創作同人誌についても、もしその同人誌を元に三次創作が行われた場合、三次創作作品を許可・黙認するためにも使用できると思われる。
二次創作イラストや同人誌を作っているが、三次創作をした人がもし捕まったら嫌という場合には使用は有効ではないかという意見もあるが、このあたりはまだ情報不足である。
無料で公開しているオリジナルマンガ/イラストに同人マークを使用できるか
無料・有料は関係なく利用できる。非親告罪化の対象が有料コンテンツだけになる、といった情報も今のところは確認できていないため有効。もし有料のものだけが非親告罪化となるとしてもマークを掲載する事は問題無い。実際無料のWebマンガにも使用されている。
同人マークはどこに掲載すれば良いか
このマークの制定にあたっては、漫画家が許可/黙認したいとしても出版社に禁止される可能性が考慮されている。そのためマークは過度に主張しないものとなっており、マンガに登場するキャラクターのTシャツの模様に書くといった利用も想定しているようだ。
消極的な黙認であればそういった掲載方法も可能で、もちろん表紙などに大きく掲載しても個人の自由となるようだ。
ただし、あまりにもわかりにくい掲載方法だと実際に裁判になった際に「意思を示したとは認められない」と判断されてしまう可能性があるので注意(非親告罪化を前提としたマークなので、検察や裁判官に認めてもらえないと意味が無い)。
同人マークに関する誤解
同人マークの情報が出た直後、以下のような情報が主に一部のまとめサイトなどでネット上に出回った。
以下のような誤解は公式に公開されたFAQでも説明されているのでそちらも参照。
同人マークのついている作品はあらゆる二次創作が許可される
同人マークで許可されるのは、同人誌の作成と、同人誌即売会での無断配布(有償・無償問わず)のみである。作成した同人作品をインターネットで公開したり、同人ショップ等で委託販売することは許可していない。また、同人誌以外の形態(フィギュア、アニメ、音楽、コスプレなど)や、過剰な性的表現などを伴う表現(要するにエロ同人)も許可していない。
同人マークがついていない作品の二次創作は違法になる
無許可での二次創作活動は元々違法であり、同人マークによって違法化される訳では無い。そのような力はこのマークには無いし、マークを付けていないコンテンツへの効力は無い。
独自の許可ルールを作り二次創作を許可することは今までも行われており、同人マークは二次創作を許可する意思表示の1手段でしかない。
同人マークがついていない作品の二次創作が行いにくくなる
以前から独自のガイドラインで二次創作を許可していた東方Project、VOCALOIDなどの作品が存在するが、これらの作品の存在によってその他の許可していない作品に影響があるとは考えられない、という分析がある。(公式FAQ参照)
同人マークを掲載する作品が出るわけが無い
すでに、提案者以外の複数の商業マンガ作品やWebマンガでの使用も確認されているためこの指摘はすでに当てはまらない。提案した赤松氏によると、非親告罪化が確実になってからタイミングを見計らって本格的な普及を目指すため今は下準備中とのことで、商業コミック類での現時点での利用数はあくまで実験的利用をしている作品のみであり数が少ないのはそのためと考えられる。
このマークはマンガの中に掲載するなど自由な利用が可能であり、警察から見ると、二次創作同人誌の作者を捕まえたのにオリジナル作品に同人マークが付いているかも知れない、という状況により二次創作を現行の親告罪のように萎縮させないという効果も期待されて考えられている模様。公務執行妨害では?
同人マークを掲載していない作品が非難されるようになる
これについては読者の良心に期待するしかない。
作者には同人マークを付ける選択肢もあるし、独自のガイドラインを作る事も、二次創作を全て禁止する事も、何もしない事も、自由である。
同人マークのつく作品の二次創作を作ったら作者に使用料を払わされる
同人マークには使用料を払えば許可される、といったオプションは用意されていない。
仮に有料での二次創作を希望する作者が居た場合同人マークのみでは使用できず、追加で独自のルールを作る必要がある。
管理団体が利権を得て一儲けするために同人マークを作った
マークを作った 特定非営利活動法人 コモンスフィア は 以前より続けている クリエイティブ・コモンズ と類似の新しいマークとして今回の同人マークを扱っているだけである。コモンスフィアが二次創作を管理する事などできず、新たな団体が設立されるという情報もない。
またこのマークは審査などは無く使用できるので誰が使用しているのか把握する手段が無い。
仮に将来利権が出来たり、そういった不安があるようなら、同人マークと似たルールの別のマークを作成して利用するなどの方法もある。
日本でもパロディ規定、フェアユースの導入が行われると考えられるので同人マークは不要
提案者はそういった新しい法律で同人マークが使用されないとすれば、それは新たな選択肢であり望ましいと発言している。(関連ニコニコ生放送、Twitterなど) しかしこれらの法律が確実に制定されるかは不明であるため、手段を用意したとの事。
同人マークで誰かが儲かるわけでは無いため、極端な話同人マーク以外の素晴らしい解決策が誕生し、同人マークが普及しなくとも二次創作が守られるのなら大歓迎という考えを明らかにしている。
赤松健はこのマークを作って利権を得ようとしている
現状、このマークで収入を得る事はできない。このマークは許可無く自由に利用でき使用料もかからない。
マーク自体もコモンスフィアが無償で利用可能としているもので赤松健氏の物ですらない。
誤解に関するまとめ
著作権の非親告罪化適用後「私はこの作品の2次創作を認めてるんです。警察は私の作品の2次創作を作った人を逮捕するのはやめてください。」と主張するためのポジティブリストとしてのマークである。
同人マーク | あり | なし |
---|---|---|
非親告罪化前 | ○ | △(著作権者次第) |
非親告罪化後 | △(裁判次第) | ×(警察次第?) |
特定非営利活動法人 コモンスフィアは 「クリエイティブ・コモンズ」 というライセンスを扱っているが、これは 「この条件を守れば私の作品を自由に使って良いですよ」[3]というライセンスである。
このライセンスではオリジナルのイラストをそのまま複製して使用できるといった二次創作の許可とは異なる方向性になってしまい使用できなかった。そこで二次創作に的を絞り作られたのが同人マークである。
なお、作者がポジティブリストとしてマークを使ったのか他者には判別出来ない点に注意が必要である。「単なるデザイン・引用として用いただけで、二次創作を認める意思は無い」という主張も可能なことは覚えておこう。この大百科記事も冒頭に同人マークを載せているが、二次創作を認めているわけではない(そもそも編集者には可否を決める権限が無い)。
余談
赤松氏は児童ポルノ法改正による創作物の性表現に対する規制に反対の主張もしており、これとは別にTPPによる著作権の非親告罪化による同人文化の破壊にも警戒感を持っておりさまざまな方策を行っている。
恣意的なまとめ記事などに惑わされず、正しい情報の入手を心がけたい。(下の参考資料も参照)
参考資料
関連項目
- 著作権
- 著作人格権
- 一次創作
- 二次創作
- 著作権の非親告罪化
- 二次創作のガイドライン
- クリエイティブ・コモンズ
脚注
- *「警察の萎縮効果狙う」 赤松健さん、2次創作同人守るための「黙認」ライセンス提案 (1/2) (日本のTPP参加で著作権が非親告罪化した場合でも、作家が作品の中でこのマークを明示していれば、2次創作同人誌のイベント販売に安心感が得られる。)
- *TPPによる日本国内の著作権法の変更について
- *クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは
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