概要
オタク的な分野(マンガ・アニメ・ゲームなど)の同人誌の頒布をするものが圧倒的多数であり、本項もそのような同人誌即売会について説明する。
同人誌の他にも、自主制作のアニメ・ゲーム・CD・グッズなどが頒布されている同人誌即売会もあり、コスプレのためのスペースを設けるところもある。
コスプレの規模については、即売会が開催されているホールの片隅をコスプレスペースとする程度のものから、即売会会場とは別にコスプレ会場を設けたり、即売会に前後して別個にコスプレイベントを開催するものまで様々である。
また、プロの登竜門、若手の育成の場として機能もあり、アマチュア同人誌作家からプロデビューしたものも少なからずいるため、未許諾の二次創作物に対して、黙認している著作権者も少なからずいる。
なお、同人誌即売会全般を指して「コミックマーケット」または「コミケ」と言うのは誤りなので注意が必要である。
種類
同人誌即売会にはさまざまな形態があり、その分類法もさまざまであるが、ここでは「オールジャンル」と「オンリージャンル」の2種類について説明する。
オールジャンルの同人誌即売会
オールジャンルの同人誌即売会とは、サークルの頒布物の内容について特に制限を設けない同人誌即売会である。
オールジャンル同人誌即売会の代表的なものとしては、毎年8月と12月に東京で開催される世界最大の同人誌即売会「コミックマーケット」があり、2009年8月に開催されたコミックマーケット76では3日間で過去最大の56万人の来場者があったと発表された。[1]
オンリージャンルの同人誌即売会
オンリージャンルの同人誌即売会とは、サークルの頒布物の内容について制限を付ける同人誌即売会である。
例えばVOCALOID限定の同人誌即売会であれば「VOCALOIDオンリー同人誌即売会」、「VOCALOIDオンリー」などと呼ばれる。限定範囲は「ゲーム全般」のように非常に広い場合から、「ゲームの特定の登場人物」に限定する場合まで多種多様である。
オンリージャンルの即売会は、ジャンルを限定しているため、オールジャンルの同人誌即売会に比べて規模が小さい事が多く、一般に参加サークルは数サークルから大きくても数百サークル程度となる。このため、複数の小規模オンリー同人誌即売会が合同で同人誌即売を開く場合もある。大きなオンリーイベントが小規模なオンリーイベントを併催する場合、併催イベントのことを「プチオンリー」と称することもある。
オンリージャンル同人誌即売会の代表的なものとしては、オリジナル作品オンリーの「コミティア」、擬人化オンリーの「擬人化王国」、東方projectオンリーの「博麗神社例大祭」などがある。
地方で開催される同人誌即売会
三大都市圏以外で開催される同人誌即売会のことを俗に地方イベント(地方即売会)という。
人口が少なく交通の便も大都市ほどよくないこと、大都市にあるような大きな会場が存在しないことなどから、多くても百サークル前後のイベントが多く、公民館の一室を借りて十数サークル程度で行うようなごく小規模のイベントも珍しくはない。
同人の世界が動員数の面でも経済規模の面でも大きくなっていくにつれ、近年では地方に居住しながら専ら大都市のイベントに赴き、地元のイベントには関心を示さない作家も増えており、ほとんどの地方イベントは参加者数の減少にあえいでいる。地方イベント有数の規模を誇る「ガタケット」が存続の危機を訴える声明を発表したことは、作家をはじめ同人に関わる人間にとって記憶に新しい。
一方で、定期的に大都市へ赴く経済力をもたない中高生の同人作家にとっては、創作活動の成果を発表する場として依然重要なポジションを担っており、地方イベントへの参加を通じて腕を磨き、やがて大都市へ活動の場を移して人気作家へ成長していく者も少なくない。
近年では、作品の舞台など原作ゆかりの地で開催されるオンリーイベントも増えている。こういったイベントは即売会への参加ついでに聖地巡礼もでき、他の地方イベントの窮状とは対照的に活況を呈するイベントも多い。
著名な即売会
- コミックマーケット
通称コミケ。説明不要の即売会界の巨人。東京ビッグサイトで開催される。
参加数・規模・知名度すべてが圧倒的であり、3日間で56万人が来場する怪物イベント。参加者はなおも増加中。
会期中は国内外の様々なメディアで取り上げられるため、同人誌に興味は無いけどコミケは知っているという人も多い。
夏(お盆前後)と冬(年末)の2回開催。夏コミ・冬コミと呼ばれるが、同人作家の間では単に「夏」「冬」でも通用する。 多くの同人作家にとって、年間を通して最も重要なイベントである。 - コミックシティ
企業が開催する即売会。 東京・大阪・福岡で、年間合計20回開催される。
コミケの直後に大阪で行われるものや、春に東京で行われるものは特に大きく、1日あたりの規模はコミックマーケットを超えることも。夏の大阪の入場者数は、2日間で10万人強。
インテックス大阪で行われるものは特に『インテックス』と呼ばれ、時に東のコミケ・西のインテとして比べられることも。
女性向けの性格が非常に強い。というか参加者は殆ど女性。 - コミティア
年に4回、2月・5月・8月・11月に東京ビッグサイトで開催される。
参加サークル数の増加を受け、5月・11月を中心に規模を特別に拡大することが多い。
同人界隈では二次創作が人気だが、ここではオリジナル、すなわち一次創作に限定した即売会として人気を集める。
関連するイベントに「関西コミティア」「名古屋コミティア」「新潟コミティア」が存在する。これらは別々の団体が主催する独立したイベントではあるが、東京のコミティアと共に協力関係にある。 - クリエイション
大田区産業プラザで行われるコミッククリエイション、池袋サンシャインシティで行われるサンシャインクリエイションから成り、特に後者が有名。
サンシャインクリエイションの来場者数は、毎回2万人前後。
不祥事が取り沙汰された事が多い。 - COMIC1
ゴールデンウィーク前にビッグサイトで行われる。
2007年に生まれたばかりだが、年々参加者が膨れ上がっており、3万人程度の入場者数を誇る。 - 博麗神社例大祭
毎年春に行われる、東方projectオンリーイベント。ニコニコで特に有名な即売会だろう。
オンリーイベントとしては史上類を見ない規模を誇り、年々参加者数が膨れ上がっている。
第7回の時点で来場者数は50,000人を超えると言われる。
その規模に加え、冬コミから夏コミまでのちょうど中間に位置する開催時期もあって、東方ジャンルで活動する作家にとってはコミケと並ぶ重要イベントとなっている。 - M3
東京を中心に行われている音楽、同人ソフト等の即売会で、春秋の年2回開催。
(かつて、大阪や神奈川でも行われたことがある)
音楽CDの割合が極めて高く、音楽系サークルにとってはコミケに匹敵する程重要度の高いイベントである。
もちろんVOCALOID系やニコニコ動画系の音楽サークルも多い。
一方で同人誌の割合は低いが、音楽批評本の他、譜面やノウハウ本などが頒布されている。 - THE VOC@LOID M@STER
VOCALOIDオンリーでは最大級となる同人誌即売会。「ボーマス」と略される。
基本的には年4回程度開催されるが、日程はまちまちである。
こちらも2007年の第1回以降、回を重ねるごとに参加者数が増加しており、特に一般参加者の増加が際立っている。
同人誌に対する同人CDの割合が、他イベントと比べてきわめて高いことが特徴。 - ガタケット
新潟市でほぼ隔月で開催されるオールジャンル即売会。「ガタケ」と略される。
主催者のガタケット事務局は、コミティアの所で述べた「新潟コミティア」の主催も務める。
地方イベントの中では有数の規模と歴史を誇るが、参加者の減少に加え東日本大震災の影響も重なった2011年春には、事務局側がイベント存続の危機を訴えサークル側に参加を呼び掛ける声明を発表するまでになっている。 - けもケット
毎年春に関東で、秋に関西で開催されているケモノオンリーイベント。「けもケ」と略される。
2012年の第1回以後、参加サークル数は増加してきている。2015年からは1月に開催される「新春けもケット」もスタートした。
参加者について
「全員が参加者である」という思想のもと、同人誌を購入する側であっても「一般参加者」と呼ぶ(頒布側は「サークル参加者」)。これは、草創期においてはほとんど全ての参加者が同時に創作活動者であり、「同人誌即売会は皆で作り上げるもの」という共通認識のもとで出来たものである。
しかし近年では、自身では全く創作活動を行わない者(いわゆる「買い専」)の増加や、同人誌を扱う業者の展開によって同人誌を転売して利益をあげるもの(いわゆる「転売厨」)の出現により、同人誌即売会は大きな変質を迫られている。
プロへの登竜門の場として
同人誌即売会には出版社の人間が足を運んで、プロになれそうなものを見つけ出す場としての機能が存在し、同人誌即売会で声を掛けられてプロデビューした者の例は多い。
また、コミティアのように雑誌編集部が「出張編集部」として持ち込みを受け付けてる場を設けている同人誌即売会もある (但し、コミティアは、一般的な二次創作物を頒布する同人誌即売会とは一線を画するとして、「自主制作漫画誌展示即売会」と名乗っている)。
関連項目
脚注
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