同人誌とは、出版形態の一種である。
概要
商業誌ではない自費出版物において、同好の士が集まって作ったもの、あるいは個人や仲間とだけで作り上げた雑誌のこと。
元々は歴史上で有名な詩人たちが作成した、いわゆる文学誌が主流だった。明治時代では夏目漱石達などが同人誌を作っている。
が、現在では漫画・アニメ・小説・ライトノベルそのほかの二次創作同人誌を指すことが圧倒的に多い。特に成人向け(男性向け、女性向け問わず)の同人誌が一定以上の勢力を持っている。また、成人向けは豹に売り上げ期待できることから、本来の同人誌の存在意義(趣味による非営利)から大きく外れ、商業目的での制作・販売が圧倒的に多いとされている。その売り上げ額・冊数は、メジャー紙のプロの作家をしながら同人誌を販売している作家に「同人誌の売り上げで食っているようなもの」と言わしめるほどである。出版社や編集部を通さず、作家のみで制作し自費出版するため、1冊当たりの作家の儲けが非常に大きくなるのである。また、商業誌のコミックに比べ、圧倒的にページ数が少なく、かかる手間も少ない割に1冊当たりの値段が割高なのも儲けの効率が良い原因である。
そのため「同人誌といえば成人向け二次創作」という認識がされる場合まである。だが例えばコミックマーケット参加作品の比率を見れば成人向け作品の比率は全年齢向けより少なく、またオリジナル創作同人誌も少なくないため、この認識は一種の偏見である。詳しくは「同人」記事に書いてあるので、そちらをご覧ください。
俗に「薄い本」とも呼ばれる。これは同人誌が総じて「薄い」ためである。「夏に薄い本が出るな」「冬に薄い本が出るな」といったインターネット上でよく使用される定型句もあるが、上記の偏見に引きずられてか主にエロマンガ的展開に使われる。
昨今では、成人向け二次創作同人誌が(おそらく元作品の著作権者にも二次著作者にも無断で)無料で閲覧できる状態で大量に公開しているサイトが乱立しており、誰でも容易に成人向け同人作品を無料で閲覧できる状態が続いている。日本の法律上は二次創作物にも著作権は発生する(オリジナルの著作権者の許諾は問わない)とされるため、こういったサイトの運営は日本の法律に照らせば違法であり、2020年2月には東京地裁にて二次的著作物の違法アップロードに対し損害賠償を命じる判決が下されている。
同人誌の作り方
同人誌を作るには、大きく分けて何種類か方法がある。
- 自宅のプリンタで印刷し、それを折ってホチキスでとめて製本する。この方法はお手軽であり、原稿の形式などを気にしなくてよいというメリットがあるが、大部数の印刷には不向きだし、表紙などに関しても普通のコピー用紙になるのが大半である。原理的に締め切りは、会場に入るまでの移動時間を差し引いたぎりぎりまでである
- コピーができるところへ持って行って印刷し、印刷したものを1と同様の方法で製本する。大部数の印刷には相応に費用がかかるが、結局自宅で印刷するにもインク代・電気代・紙代などがかかること考えたら似たようなものである。原稿形式はある程度制約される(コピーができる形式に変換しないといけない)。締め切りはおおむね、コピーができるところの直前の閉店時間や予約状況に左右される
- 専用の印刷業者に入稿し、印刷を依頼する。費用は一番高くつき、原稿の形式も制約が大きくなるが、普通のソフトカバーの本と遜色ないような本を作ることも可能。締め切りはほかのところに比べると大幅に早くなり、5日前のお昼過ぎとかざらである(また、大規模イベント直前は締め切りが前倒しになる傾向にあり、2週間前なんてことも)。費用を多く積めばハードカバーの本も作れるが、納期もさらに早くなり、さらに10日以上前倒しになることも。なお、専用の印刷業者に依頼する場合、部数が多ければ多いほど単価は安くなる傾向にある。一例として、とある印刷業者に表紙フルカラー、本文1色刷り、表紙込みA5版無線綴じ36ページの同人誌を印刷してもらう場合、以下のような値段設定となる(オプションなし、割引割増なしの場合。オフセットの場合、表紙カラーはオフセットとする。また、価格は2023年7月時点のもの)
- 10部 - オンデマンド12300円(@1230円)
- 50部 - オンデマンド16300円(@326円)/オフセット32900円(@658円)
- 100部 - オンデマンド21000円(@210円)/オフセット36500円(@365円)
- 200部 - オンデマンド32100円(@160.5円)/オフセット45100円(@225.5円)
- 500部 - オフセット67600円(@135.2円)
- 1000部 - オフセット107500円(@107.5円)
綴じ方は大きく分けて3種類ある。
- 平綴じ - 紙を積み重ねて横からホチキスで数か所とめる製本方法。製本に専用の器具はいらないため扱いやすいが、のどの部分を開けない、ホチキスの針が見えるなどの問題から、1の方法で作る本で使うことが多い。ページ数は大きい針を使えば数百ページくらいまで対応可能
- 中綴じ・折綴じ - 見開きで紙を積み重ねてホチキスで真ん中をとめる製本方法。ホチキスのとめ方に工夫はいるが、専用の器具は不要。また、完全に見開けることもメリット。ただし、分厚い本には向かない(数十ページくらいが上限)こと、ホチキスの針が見えることなどから、ページ数が少なく、見開きにしたい場合に使うのがベスト。構造上、ページ数は4の倍数である必要がある(ほかの製本方法では、理論上は偶数ページであればよい)。某印刷業者では、折綴じは表紙と本文で同じ用紙を使うもの、中綴じは違う用紙を使うものという区別がある
- 無線綴じ - 紙を表紙の紙に糊付けして製本する方法。専用の器具が必要なため、この製本方法をとる場合、3の方法を用いることになる。しっかりとした製本なので長期保管に向いていることが一番の長所であり、また、まさに本であるという見た目になること、分厚い本まで対応可能ということは大きいが、逆にページ数が少ない本には向いていないこと(最低でも本文16ページ程度はないと作れない)、多少値段が高くつくことなどの短所もある
専用の印刷業者に入稿する場合、印刷方法を選ぶこともできる。
- オフセット印刷 - 原稿から版を作り、その版を用いて印刷する方法。この方法はきれいに印刷できること、大部数の印刷においては安く上がることなどのメリットがあるが、逆に少ない部数には向いていない。数百部以上印刷する場合は、この方法がベストである
- オンデマンド印刷 - 原稿から印刷機械で直接印刷する方法。少ない部数(10部くらいからでも印刷可能)からでも印刷できるが、大部数の印刷には向かず、色の再現性はオフセット印刷に一歩劣る
印刷業者に依頼する場合のだいたいの流れは、以下の通りである。話を簡単にするために、今回はインターネット経由で原稿をアップロードする前提で説明する。
- 印刷業者を選定する。選定する業者により、多少原稿の形式が変わる点に注意せよ
- 原稿を作る。文字ベースの原稿であればフォントの埋め込み、成人向け同人誌であれば、商業誌に準じた局部などへの修正などに気を付けること
- 印刷業者に発注をする。決済はこの段階で行う
- 入稿する。問題がある場合、印刷業者から連絡が行くので適宜対応すること
同人誌に特化した印刷業者の場合、一部のイベントへは直接搬入をサポートしており、そちらのほうが送料が優遇されることも多い。
同人誌の流通
同人誌は多くの場合、同人誌即売会を経由して頒布/販売されるが、これには以下のような問題がある。
このため、最近は受託販売という形で専用の業者が販売することが多い(サークル側は委託販売という形でその業者に委託をして頒布/販売する)。また、最近はダウンロード販売という形で電子化したうえでの頒布/販売も可能になっている。
ただし、そういったところ経由で購入した場合、通常、手数料が3割程度かかることから価格が上乗せされるか、サークル側に入ってくる金銭が減るかすることになる。とはいえ、通信販売もあることから、全国どこにいても手に入れられることは大きなメリットだろう(昔はサークル自らが通信販売をやっていたが、そういうサークルは最近はあまり見かけない)。
また、一部の同人誌は中古マーケットへ流通することもある。特に絶版した同人誌はそこ経由でなければ入手できないことが多い(大人気サークル委託なし再販未定とかだと中古需要は極めて高くなる)。
関連コミュニティ
関連項目
- 同人
- 自主制作
- サークル
- 同人音楽
- 同人誌即売会
- オタクショップ
- 二次創作
- 同人マーク
- 夏に薄い本が出るな
- 冬に薄い本が出るな
- 薄い本が厚くなるな
- 負けたら薄い本
- エロ同人みたいに!
- ウ=ス異本
- エロ漫画
- エロ本
- 厚い本
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