名古屋競馬場とは、愛知県弥富市にある地方競馬の競馬場である。住所は弥富市駒野町1。
2021年度までは名前の通り所在地も名古屋市であった(住所:名古屋市港区泰明町1丁目1)。こちらは所在地の旧地名から土古(どんこ)競馬場と呼ばれることもあった。
キャッチコピーは「推理とロマンの名古屋けいば」。
また2014年に愛称の公募が行われ、「金シャチけいばNAGOYA」と名付けられた。
概要
愛知県、名古屋市、豊明市からなる一部事務組合・愛知県競馬組合によって公営競馬が開催される地方競馬場である。なお主催者に豊明市が入っているのは、2002年まで豊明市の中京競馬場でも愛知県競馬組合が競馬を実施していたため(地方競馬は、競馬場所在地の都道府県または市町村のみが開催権を持つ。中京競馬場での地方競馬開催も正式には休止扱い)。
オグリキャップ等を輩出した岐阜県の笠松競馬、石川県の金沢競馬と相互発売体制をとっている。開催は笠松競馬と1週交替で平日4~5日間の連続開催が基本。冬季を除く火曜日は金沢競馬が開催されることが多いため、火曜日のみ休みとなることが多い(週によっては火曜日でなく月曜日を休みにする場合もあるので要確認)。
早春の「かきつばた記念」(1500m・JpnIII)、ゴールデンウィークの「名古屋グランプリ」(2100m・JpnII)、年末の「名古屋大賞典」(2000m・JpnIII)とダートグレード競走が3競走実施されている。
1970~1980年代前半に天才ジョッキーと称された坂本敏美、10年連続リーディングジョッキーとなったほか、中央競馬への参戦も多かった吉田稔など、有名ジョッキーを輩出した競馬場としても知られる。また、日本人女性騎手として初の600勝を挙げるなど、日本人女性騎手最多勝記録をもつ宮下瞳(本名:小山瞳)は2011年に一旦引退したものの、出産を経て2016年に騎手免許試験に合格し復帰。一旦引退した女性騎手が現役復帰したのは日本の競馬史上初であったが、引き続き第一線での活躍を続けており、重賞勝ちも果たした他、2020年には日本の女性騎手史上初の1万回騎乗を達成している。
競馬場
旧競馬場(土古)
コースは1周1100mのダートコース(右回り)。フルゲートは12頭だが、重賞などの開催ごとに発表される競馬番組で指定された競走以外は10頭以内で行われる。スタンド前の直線194mはわが国の競馬場の中で最短であった(当場廃止後は水沢競馬場・浦和競馬場・高知競馬場・佐賀競馬場の200mが最短となる)。
かつて障害競走が行われていた時代があり、一コーナーから三コーナーに向かってたすき状にコースが延びていたり、三コーナー近辺の内馬場には生垣障害が残っていたりする。
新競馬場(弥富)
コースは1周1180mのダートコース(右回り)。フルゲート12頭。スタンド前の直線は240mと土古時代に比べてかなり長くなり、西日本(東海・北陸およびそれ以西)の地方競馬の競馬場で最長となった。
結果、施行可能距離もかなり変更されている(例えば前述のダートグレード競走については、土古時代は名古屋大賞典が1900m・かきつばた記念が1400m・名古屋グランプリが2500mで施行されていた)。特に名古屋グランプリの2500mはダートグレード競走の最長距離競走であったが2100mに短縮されたため、以後はダイオライト記念(船橋競馬場)の2400mが最長となっている。
また、ナイター開催も可能となっている。基本的に南関東競馬との開催とリンクしており、南関東が日中開催のみの場合にナイター開催が行われるようになっている。
弥富トレセンへの移転
弥富の名古屋競馬場はもともと、1977年にトレーニングセンター(トレセン)として開設された設備を整備したものである。地方競馬ではトレセンを内部に持っているところが多いため、比較的珍しい部類であった。
なお、トレーニングセンターを整備して競馬場化した他の例としては、ホッカイドウ競馬の門別競馬場が挙げられる。
立地的に市街地からのアクセスは良いものの老朽化が進み、他の地方競馬が次々導入しているナイター競馬も困難な元の名古屋競馬場に関しては、経営難時代にも馬の輸送が無くなり、立地的にナイター開催も不可能ではない弥富トレーニングセンターへの移転が検討されていたこともあったという。そんな中、2026年に名古屋でアジア競技大会が開催されることになり、選手村の用地として名古屋競馬場を敷地を活用する案が浮上。弥富トレーニングセンターに観戦スタンド等を建設して競馬開催ができる形に大改修し競馬開催をこちらに移転、現競馬場を選手村用地とするプランが2016年に決定された。
弥富トレセンにおける整備事業は2020年に起工式が行われ、2022年3月~4月に移転が実施された(2021年度の名古屋競馬場での開催は2022年3月11日をもって終了、新競馬場での競馬開催は2022年4月8日から)。2022年3月7日に名古屋競馬場の公式サイトで、新競馬場の案内パンフレットが公開された。
移転後も競馬場の名称は「名古屋競馬場」のまま。
公共交通機関で来場することは困難な立地である(鉄道駅からは10キロ以上離れているうえ、後述の連絡バス以外では限られた本数のコミュニティバスしかない)ことから、駐車場は一定数確保されるものの、ネット販売中心となっている現状も踏まえ、新競馬場のスタンド収容人員は旧競馬場の半分以下となる2000人となった。なお競馬場への連絡バスは、当競馬場での開催がある日に限り、旧競馬場(場外発売所として営業、後述)・名鉄バスセンター(名古屋駅直結)・近鉄蟹江駅から運行されている(無料)。
コースは現状の1周1100mから80m拡張され1180mとなり、日本一短かったスタンド前直線が延びる予定。また、ナイター開催対応の照明施設の設置が決まっており、冬季を中心にナイター開催が行われる。100億円弱の事業費については弥富トレセンに未利用地があることからこれを売却することなどにより競馬組合が自前で賄った。
土古の現名古屋競馬場跡地には駐車場付きの場外馬券売場の設置が決定しており、敷地内のうちアジア大会の選手村とならない位置に開設される予定である。ただし競馬場の弥富移転の時点でこの場外馬券売場が開設されるわけではなく、当面の間は旧競馬場の施設の一部を場外馬券売場として利用する(参照:2022年3月11日の名古屋競馬公式リリース)。
なお土古の名古屋競馬場跡地へ入居する予定である施設に大学もあったことから、同大学が場外馬券売場に近い位置へ移転することに反対、最終的に大学の全面移転を取り止める形で決着した(参照:朝日新聞の2022年2月4日の記事)という混乱もあった。
ちなみにもともと想定されていた、旧名古屋競馬場の敷地を使ったアジア大会の選手村建設については、費用高騰などの影響もあって取り止められる方針が2023年3月に明らかになった(参照:読売新聞の2023年3月28日の記事)。
なお、弥富市への移転後も愛知県競馬組合の構成団体は愛知県、名古屋市、豊明市のままで弥富市は現在加入していない。一方、競馬場が名古屋市から移転しても名古屋市が構成団体に留まっているが、これは中京競馬場が豊明市と名古屋市にまたがって立地しており、豊明市と共に名古屋市も引き続き(やろうと思えば)公営中京競馬を開催する要件を満たしているためである。(そういった事情で公営中京競馬はあくまで休止にしているといえる。)
個人協賛競走
地方競馬の例に漏れず名古屋競馬も財政状況は厳しく、2010年には6年ぶりに赤字転落するなど廃止論が何度も浮上した。
この状況を打破するために導入されたのがニコニコ動画でお馴染みの個人協賛競走(冠協賛レース)で、導入は2005年と荒尾競馬場や高知競馬場よりも古く、廃止された上山競馬場、高崎競馬場に次いで三番目だった。
もちろん痛レースも複数行われており、特にアイマスの水瀬伊織の誕生日記念レースは2009~2011年まで3年連続で名古屋競馬場で開催されている。
なお、協賛費用とは別に料金を払うと、レース名を入れたゼッケンを作成することができ、それを付けてレースが行われることもある。協賛レース名入りゼッケンのプレゼントは他場でもあるが、そのゼッケンを付けて馬が走るのは名古屋競馬場だけである。
2014年度からは協賛費用が従来の1万円+賞品から、2万5千円に引き上げられる。賞品提供の必要はなくなり、記念ゼッケンは1枚無料提供に変わったが、やや敷居が高くなった。
2022年4月の競馬場移転に伴ってしばらく新規受付を休止していたが、6月7日開催より受付が再開された。
なお、これに伴い有料指定席への招待や表彰式への開催がなくなった等特典内容が変更となっている。
ファンファーレ
- 2005年のJBC競走開催に合わせ、ダートグレード競走用ファンファーレが導入されている。
ニコニコではそれに合わせて名古屋めしの名前を並べ、最後に「おーみーそー」と締めるのが定番となっている。
ちなみに、通常の重賞競走のファンファーレはかつて名古屋競馬のテレビCMにも使用された。 - 2015年に、一般競走と特別競走のファンファーレが公募より選ばれたものに変更された(名古屋競馬公式
)
- 2022年4月からの弥富移転にあたり、前月の旧競馬場閉場式典の際に「鉄騎」、翌月の新競馬場の最終競走発走時に「躍動」の2種類のファンファーレがお披露目されたものの、その時点では何のファンファーレか紹介がなく、また移転後も重賞やナイターになってもしばらく本馬場入場曲やファンファーレは変更されなかったため、一見何も変化がないと思われた。
- 初のナイター重賞となった同年5月30日の「第5回湾岸スターカップ(SPII)」で「鉄騎」、同年8月2日の準重賞「けやき杯(P)」で「躍動」がファンファーレとして使用される。また、「第5回湾岸スターカップ(SPII)」ではこれまでとは違う本馬場入場曲が流れた。
- 現在名古屋競馬公式のファンファーレ紹介ページ
では、「鉄騎」はSPII重賞、「躍動」はP競走(準重賞)のファンファーレとして紹介されている。SPII、準重賞ともに移転後最初の競走がこの競走だったため、使用が遅くなっただけであった。また、SPII重賞の際にはこれまでと違う本馬場入場曲を使うようである。
- 旧競馬場のSP重賞ファンファーレはSPI重賞のみの使用となった。なお、ダートグレードの「おーみーそー」は引き継がれている。
その他
- 入場料は100円(コインゲート式)。
- 2022年4月の弥富移転後、同年6月24日まで入場料を無料とすることを発表していたが(名古屋競馬公式
)、後に令和5年3月31日まで無料期間が延長した(名古屋競馬公式
)。
- 土古当時も入場料は100円だった。 ただし、火曜日は女性が無料になるほか、公式webサイトや公式ケータイサイトに無料入場券の画像があり、入場料を払う方が珍しいくらいのサービスが行われている。また、あおなみ線が競馬場への主な公共交通機関として用いられていたため、名古屋市交通局の一日乗車券の提示で入場料が無料になったり、往復乗車券であおなみ線を利用して復路乗車券を提示するだけで特別観覧席かグリーンホール(自由席の有料観覧席)に無料招待となるサービスもされていた。これらのサービスは弥富移転に際して廃止となった(名古屋競馬公式
)。
- 2022年4月の弥富移転後、同年6月24日まで入場料を無料とすることを発表していたが(名古屋競馬公式
- 弥富移転後はとにかく飲食関係の選択肢が狭い。レストランは競馬場の2階のみ、売店は競馬場前にあるヤマザキYショップしかなく、他の飲食店やコンビニも徒歩10分以上は軽くかかる。ただ、競馬開催時には広場のスペースにいくつかキッチンカーが出店している。開場後は早めに食事の購入をしたり、あらかじめ腹ごしらえしておくなどの対策が必要。
- 名古屋だけあってキモい青いやつが来たことも。
- 2013年4月よりJRA開催日は旧名古屋競馬場(現サンアール名古屋)とサンアール磯部が「J-PLACE名古屋」「J-PLACE磯部」となり、JRA全レースの馬券を発売するようになった。名古屋競馬とJRAはよほどでなければ開催がかぶらないため、かつて一部の競馬場で見られた「客が来ても売れるのは中央の馬券ばかり」という状況にはならない。そのため2012年度時点で累積赤字が再び40億円を超え、当時存廃問題が現実味を帯びていた名古屋競馬にあって、競馬事業としての売り上げ増への救世主となるか注目された。初年度は名古屋市内のWINSが工事中だったことと、車でも来やすい利便性が受けて好成績を収め、定着した。
2015年4月からはサンアール弥富(移転後の名古屋競馬場の近くに、移転前から設置されていた)も「J-PLACE弥富」としてJRA全レースの馬券を発売しており、名古屋競馬場移転後はそちらでも発売されている。 - また、インターネットでの馬券発売が浸透し地方競馬全体の売上が急回復を遂げたことで、収支が急速に改善。名古屋競馬は2017年度に累積赤字を解消した。
場外馬券発売所
- サンアール磯部(三重県志摩市)
- サンアール大須(愛知県名古屋市中区)※J-PLACEの扱い(JRAの馬券の発売・払戻)なし
- サンアール一宮(愛知県一宮市)※J-PLACEの扱い(JRAの馬券の発売・払戻)なし。旧・一宮競輪場(2014年廃止)の敷地内に設置。競輪・オートレースの場外発売所と併設
- サンアール名古屋(愛知県名古屋市港区)※移転前の名古屋競馬場を2022年3月に場外発売所化。前述の通り、敷地内の別位置に移転計画あり
- 中京競馬場
- 笠松競馬場
- シアター恵那(岐阜県恵那市)
- 大井競馬場「ふるさとコーナー」※ただし南関東公営競馬開催日のみ発売。 2023年9月30日営業終了
中京競馬場は愛知県競馬組合(名古屋競馬の主催者)が場外発売所を借りて場外発売を行っている(かつては上述の通り、同場で愛知県競馬組合による競馬の開催もあった)。
シアター恵那は岐阜県競馬組合(笠松競馬の主催者)の設置。
このほか、弥富トレーニングセンターの近くに場外発売所「サンアール弥富」が設けられていたものの、同トレーニングセンターが新しい名古屋競馬場となることに伴い、2022年4月2日より名古屋競馬場の外向発売所(競馬場のすぐ外に設置される発売所)という扱いに変更されることとなった。
なお土古の名古屋競馬場にも外向発売所は設けられていたものの、こちらは移転に伴い廃止となった(競馬場本体の一部のみ場外発売所として利用)。
関連動画
土古
移転前最終開催
弥富
最初のレース
その他
関連コミュニティ
関連項目
- 4
- 0pt