名張市(なばりし)とは、三重県にある、色々特殊な事情を抱えた市である。
概要
三重県の北西端、旧国名でいえば伊賀地方に位置する市である。人口は約8万人弱。なんで、こんな場所なのに人口が多いのかというと、戦後、特に高度経済成長期以後、近鉄特急アーバンライナーなど近鉄大阪線速達列車の停車によって、1時間以内に大阪市中心部へアクセスが可能になり、急速に発展することになった住宅都市だからである。よって、中京圏への影響が強く、関西地方と呼べない三重県の中で唯一、京阪神大都市圏に属するベッドタウンとなっていた(一方の伊賀市上野は関西への鉄道アクセスは良くなく、最初からベッドタウンとしての発展はしていない)。
奈良県との間に曽爾高原や笠間峠があり、それも隔絶した独特の環境を醸し出している。そんなわけで、近鉄名張駅のホームメロディが「峠の我が家」だったという。
しかし、最盛期は8万5000まで増えた人口も、近年は7万5000ぐらいまで減ってきている。都心回帰が進んだことと、奈良県が香芝市や大和郡山市などに、より近い場所に大規模ニュータウンを造成したりしたからであり、今は大阪への通勤人口も大幅に減少し、阪神大都市圏のベッドタウンの定義からは外れるほどになるなど、ニュータウンの高齢化、高所得者層の流出などが深刻な問題となっている。
また、急速にベッドタウン整備によって発展した都市であるため、沿線はロードサイド店が多い。一方で、桔梗が丘など当初は富裕、中産階級も多かったニュータウンも、金のある人はより近場を求めるようになったため、近鉄桔梗が丘店は閉店、他のGMSも伊賀上野エリアとの競合などもあって、オークワなどいくつかは姿を消してしまった。なお、関西系と中京系の商業施設が入り交じる、特異な形態となっている。
市街地は、桔梗が丘を初め、至る所に花の名前を冠したニュータウンが丘陵沿いに開発されている。しかし、一歩別の道に入れば、旧市街さながらの古い町並みに入り込んだりとかなり起伏が激しく複雑であり、さながら迷路のようになっている。
歴史を繙けば、元々は東大寺の荘園であり、戦国時代には伊賀忍者の忍び里、江戸時代には伊勢街道への宿場町として発展した。しかし、明治以後は交通の便に恵まれず、ようやく日の目を見たのは参宮急行電鉄(後の近鉄大阪線)の整備から。これがJR関西本線沿線の伊賀市上野と明暗を分かつようになった(伊賀市上野は伊賀国の中心地だったのだが、交通アクセスに恵まれず、一帯の中心地止まりとなっており、人口も少なかった。しかし、伊賀市は後に名阪国道沿線という地の利を活かした物流、工業都市となっており、市内勤務も多い中心都市である)。
名張は関西なのか中京なのか?
前述したように三重県名張市は、大阪、奈良への通勤目的として発展した経緯がある。そのため、三重県にありながら、大阪、奈良の影響が非常に強い。
その傾向が顕著なのはマスコミ系であり、新聞やスポーツ新聞は在阪系が主流である。また、テレビ放送も関西系と中京系のいずれも選択可能であり、関西を選択する世帯が多かったのだが、地デジ普及以後は中京系しか映らなくなってしまった。だが、市民にとって馴染み深い関西の情報が入らないという苦情が相次ぎ、在阪系の放送を行えるケーブルTV局が設置された一因となっている。
一方、銀行など金融機関は中京系が強い。奈良県地盤の南都銀行もあるが、三重銀行、第三銀行、百五銀行など三重県地盤が強い。そのため、商業施設もアピタやマックスバリュ中部といった中京系地盤の企業が案外強い。
食文化はどちらかというと関西寄りであり、東日本で販売中止となったカールも、名張市ならば普通に購入可能だったりするほか、どん兵衛なども津市や四日市市と異なり、西日本バージョンが販売されている。
観光
赤目四十八滝という無数の滝が見られる渓谷が有名であり、室生赤目青山国定公園のエリア。また、オオサンショウウオの生息地として知られ、PRキャラクターとしてエリアの赤目に因んだAKM48(アーカーメーry)という、完全にギャグとしか思えないオリジナルマスコットが登場した。完全に観光地となっており、休日や紅葉シーズンには人並みでごった返しているが、道はそこまで広くない上に観光バスまで入り込んでいる。
また、香落渓(こおちだに)という渓流エリアもあり、こっちは赤目四十八滝よりマニア好みの場所である。紅葉シーズンには大勢訪れるが、それ以外は川遊びやキャンプに興じる人がちらほら見られるぐらいであり、ドライブやツーリングも人気。
また青蓮寺湖(しょうれんじこ)という治水ダムもある。一帯はブドウの生産が盛んで、ぶどう狩りやワイナリーが名物で青蓮寺湖ブドウ、または青蓮寺ブドウとしてブランド化を勧めている。他にもイチゴなども栽培しており、観光農園が人気。
伊賀市上野(伊賀上野市ではない)と並び、関西では神戸ビーフや近江牛に匹敵するともいわれる伊賀牛の本場でもあり、「奥田」は当地の名店。
近代推理小説の第一人者、江戸川乱歩の出身地でもある。そのため、乱歩にちなんでイベントやウォークラリーが行われている。博物館のようなものはないが、名張市図書館には乱歩コーナーがあり、書籍が充実している。
また、伊賀市上野と比較すると全然知られていないが、戦国時代に伊賀忍者が実際活動していたのはこの名張周辺であり、天正年間、織田信長に焼き討ちされてしまった歴史がある。
ほかの出身有名人に、平井堅(大阪生まれ名張育ち)がおり、名張に因んだご当地ソングも歌っている。
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