名誉挽回とは、「汚名挽回」や「名誉回復」と同じような意味で用いられることの多い日本語である。
概要
従来「汚名を雪いで名誉を回復する」という意味の言い回しには「汚名挽回」や「不名誉挽回」が用いられていた。
しかし1970~80年頃に汚名挽回誤用説なるものが流布されると、その説に賛同した人々を中心として「汚名挽回」にかわる「名誉挽回」という言葉の使用が広まっていった。そうした人たちによれば「○○挽回は失った○○を取り戻すという意味であり汚名挽回では雪いだ汚名を取り戻す意味に誤解する可能性がある」ため「名誉挽回」は「汚名挽回」よりも優れた表現なのだという。
ただし「○○挽回」を「失った○○を取り戻す」と意訳することが妥当であるかについては漢文学者らから疑問が呈されている。
というのも、古典漢文や現代中国語の「挽回」は不利な現状と組み合わせて「○○という不利な状況を覆す」と用いる言葉であって[1]、目標となる状況と組み合わせて「失った○○を取り戻す」や「○○な状況に戻す」といった意味で「挽回」が用いられた実例が過去1000年の膨大な文書をあさってみても殆ど見つからないからである。
そのため「名誉挽回」が本当に「失った名誉を取り戻す」という意味であったと仮定すると「名誉挽回」は「○○挽回」の中では少しばかり孤立した言葉になってしまっており、もともと「名誉挽回」は「名誉回復」「汚名挽回/不名誉挽回」などが混ざってしまってうまれた言葉だったのではないかとも考えられる。 実際、汚名挽回誤用説が流布する以前に出版された『日本国語大辞典』[2]などには「汚名を挽回」や「名誉を回復」は載っていても「名誉を挽回」は載っていないようである。
とはいえ、近年ではマナー講師らによる「いかがでしたか?」系WEBサイトでも「汚名挽回」の使用を避けて「名誉挽回」を使用するよう推奨されており、その出自に疑わしい部分があるとはいえ「名誉挽回」は同系の言葉の中では最有力の地位を築いているといっていいだろう。
汚名挽回誤用説が迷信であったことが広まり「汚名挽回」が汚名挽回しつつあるこれから「汚名挽回」と「名誉挽回」の勢力図はどのように変化していくのだろうか。
関連項目
脚注
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