名鉄7000系とは、名古屋鉄道の保有していた車両の1つである。愛称は「パノラマカー」。
ここでは、この形式より派生した7100系、7700系、発展型である7500系、異端車である7300系についても記述する。
概要
7000系
名鉄で初めて客席を最前部までにし、運転台を二階に設けた車両である。
他にも連続窓の採用、ミュージックホーンの採用などといった特徴のある車両である。しかも製造費が高い(5500系の1.5倍)。
最高速度は110㎞/hで、客室は転換クロスシート装備。ミュージックホーンの他にも電気笛を備え、落成当初は方向幕などが全く無かった(後に逆富士型の表示板が取り付けられた)。表示板の取り付けられる以前は、公式の愛称である「Phoenix(フェニックス、不死鳥)」が、小さく表示されていた。現在、舞木検車区に保存されているモ7001号車で見ることができる。
鉄道友の会より第五回ブルーリボン賞を授かった車両である。
先頭の油圧ダンパ(前照灯と一体化している)は、事故が起きた際にクッションの役割を果たし展望席の乗客を守るように設置された。しかし油圧が強すぎて踏切事故でダンプカーを跳ね飛ばしたことがあったため、7000系は一部で「ダンプキラー」と呼ばれている。
6連と4連が存在し、一部の先頭車には連結のためにジャンパ栓、M式自動解結装置などを取り付けられた。また、ごく一時期だけ8両固定編成で走った記録があるほか、試運転では10両固定での運転も行われた。
1982年には、特急運用の専用車両として車内のグレードアップを行った編成が登場。これらの編成は車体に白帯が巻かれ「白帯車(はくたいしゃ)」として区別された。
2008年12月26日限りで定期運用から離脱。その後も7011Fがイベント用として走ったが、2009年8月30日に引退イベントを行ない、同年9月15日に廃回が行われた。これにより、7000系は廃系式になった。
先述の7001号車と7002号車が舞木検査場で静態保存され、イベント時に姿を見ることができる。また、7027号車、7092号車、7028号車の3両が中京競馬場で保存されており、中京競馬の開催日と場外馬券の発売日には車内と運転台が公開されている。
なお、一部車両が『パノラマDX』(8800系)への機器提供のため80年代に早々と廃車になっている。
7100系、7700系
7100系は1編成2両のみという7000番台の変わり種。両開き扉、先頭に貫通戸付きなので、パノラマカーではないと誤解されることもあるが、元々7000系の最終増備車(通勤対策により両開き扉)を6両から4両に組成変更した際、余った中間車に6000系似の運転台を設置した車両なので、パノラマカー一族の車両である。客室は元々7000系なので転換クロスシートである。
一方7700系は、元々製造時に連結を考慮し、貫通扉つきの車両にしたものである。こちらは増備途中であったために片開き扉である。前面は6000系と5500系高運を足して2で割ったようなデザインとなっている。昔は4連で運用されていたが、末期はすべて2連に組み直されていた。7000系の特急運用に合わせて白帯を巻いた編成も一時期存在した。
7100系は、2009年11月27日に運用離脱、同年11月29日にさよなら運転が行われた。そして同年12月21日に名電築港に廃車回送された。
その後7700系も2010年2月26日限りで定期運用を離脱。同年3月21日のさよなら運転を最後に7700系も姿を消した。
これにより、7000番台(パノラマカー系列)の車両は全車両引退した。
7500系
7000系の改良型。設計最高速度は180㎞/h。1963年登場。人呼んで「高速パノラマカー」。
7000系と比較して、客室が低床式になったこと、定速度制御が可能になったこと、運転席が出っ張っている(実際には客席の位置が下がり、運転席は7000系と同じ高さ)、回生制動ができるなど、性能はとても良く、客室もバリアフリーの先駆けとなる存在だった。一方でその性能ゆえに、7000系も含め他系列との総括制御が不可能という孤高の存在であった。
その低床式が災いし、他の車両とは高さが違って、バリアフリー化を進めている駅では逆段差(車両のほうが高さが低くなってしまう)が生じるため、中部国際空港駅開業後まもなく全廃された(中部国際空港駅も、もちろんバリアフリー対応のため、空港線への入線実績はなかった)。7000系と違い保存車は存在しない。
なお、90年代に一部廃車、走行機器を1030・1230・1850系へ転用した。転用によって製造された車両は、事故廃車された2両を除き2019年3月まで長らく活躍した。
7300系
支線区の特急需要に対応すべく1971年、既存のAL車から足回りを分捕って流用して誕生した。
この時発生した旧型車の車体は一部が地方私鉄に譲渡されている。
外見は7700系に似ているが、貫通扉の窓が大きく、顔面が完全に平面であることが外見上の特徴。
内装はパノラマカーそのものだが、足回りは旧型車の部品流用のため吊り掛け駆動なのが最大の特徴である。
このため、『エセパノラマカー』だの『吊り掛けパノラマ』だのという通称があった。
駆動方式やらの都合上、7000番台の車両とは連結できず、他のAL車と混結されての運用が主であった。
特に夏場にはAL車8連での運用に7300系が混じっていると、冷房車であるこの車両だけ満員で他の車両はガラガラ…なんてことも発生していた。
本線系統の吊り掛け車がAL、HL問わず引退していく中、冷房装備を武器にしぶとく生き残っていた7300系だが、1997年に引退。7000番台では最初の形式消滅と相成った。
そんな7300系だが、豊橋鉄道渥美線が600V→1500Vへ昇圧された際、在来車の一掃を目的として全編成が譲渡された。
のだが…豊橋鉄道には向いていない性能だったため、昇圧された際の新ダイヤに対応できず遅延が多発。結局旧ダイヤに戻す羽目になった。
このため早々にいらない子扱いされ、2000年に東急7200系が入線したことで置き換えが進み、2002年に形式消滅となった。
この際に大井川鉄道が譲渡を希望していたようだが、老朽化が予想以上に進んでいた事が現地調査で明らかになり、結局譲渡はされなかった。もし老朽化が進んでいなかったら、川根路を駆ける7300系が誕生したのかもしれない…
一部車両が無償譲渡され、静態保存されているが、大半が個人への譲渡であり、保存状態は良くない。
関連動画
関連商品
関連項目
- 鉄道車両一覧
- パノラマカー
- 名鉄
- 名鉄8800系 (7000系から部品が転用された)
- 名鉄1000・1200系 (7500系から1030・1230・1850系へ部品が転用された)
- ETR300(パノラマカーの手本となったイタリアの名車。通称「セッテベッロ」)。
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