四白に名馬なしとは、かつて日本の競馬界で語られていた迷信である。
「四白(よつじろ)」とは馬の毛色の表現のひとつで、四足ともに脚先に白(はく、白い模様)があるものを指す。(※「よんぱく」「しはく」とも読むが、「しはく」の方は「人の瞳から真下にある下まぶたの骨の淵から1cm下のツボ」と読みが被る。)
概要
古来より四白の馬は縁起が悪いとされてきた。かつては海外においても「四白は悪魔の兆し」と言われていたという。四白の馬が敬遠された理由としては、「毛色が目立つため軍馬には不向きであること」、さらに「足の白い馬は蹄が柔らかい白爪であるため、裂蹄になりやすいこと」が挙げられる。要するに、江戸時代に言われた「芦毛は悪毛なり」と同様、実用面から生まれた偏見に基づく言葉であった。
芦毛の馬においては、1910年4月に馬政局から全国の競馬クラブに対し、「競馬に出走できる馬は月毛・芦毛・河原毛以外のものとする」という通達が出された。以後、芦毛は競走から締め出されることとなり、この措置は1928年まで続いた。同年2月6日に畜産局長から「これらの馬の出場は強いて避くるに及ばず」との見解がなされたことで、芦毛に対する出走制限はようやく解除された。この背景には、1911年生まれで「まだらの驚異(The Spotted Wonder)」と呼ばれた芦毛馬ザテトラーク(The Tetrarch)がヨーロッパで種牡馬として大きな成功を収めたことが影響したとされる。
一方で四白の馬はレースから締め出されることはなかった。しかしながら、蹄の弱さからくる調整の難しさから『四白に名馬なし』と忌避され、偏見の対象となった。
劉備と的盧
小説『三国志演義』において、劉備の愛馬は、縁起が悪いとされる「的盧(てきろ、額の白斑が鼻筋から上唇に伸び、さらに口に入って歯にまで達している例だという)」であり、さらに四白でもあった。そのため、「持ち主に祟りをなす凶相の中の凶相」と表現されている。
的盧は、曹操から馬を贈られた際に劉備が百頭以上の馬の中からあえて選びだした馬だとも、元は敵将の馬であったものを、倒した際に名馬の相を感じて手に入れたものとも言われる。
周囲の人々は、「あまりにも凶相すぎる、こんな馬はおやめなさい」と口々に忠告したりあざ笑ったりしたが、劉備は意にも介さなかったという。
ところがある時、劉備は宴席において暗殺されそうになった。危うく的盧にまたがり命からがら逃げだしたが、追手から逃げる最中に、的盧が沼地にはまってしまう(あるいは谷川の崖に行く手を阻まれたとも)。劉備は人々から言われたことを思い出し、「的盧よ、ついに私に祟ったのか」と声をかけると、馬は「なにを!」とばかりにすさまじい跳躍をみせて沼地を脱出し(あるいは谷川を飛び越え)、劉備を救ったという。
四白に名馬あり
クモハタは四白であることから「凶相」と呼ばれるも、1939年の東京優駿(日本ダービー)を制して四白に名馬ありを証明し、種牡馬としても内国産種牡馬として戦後初のリーディングサイアー(1952年~1957年の6年連続)として活躍した馬である。
しかし、種牡馬として絶頂の時に不治の伝染病である馬伝染性貧血(伝貧)に冒されてやむなく殺処分され、「やっぱり四白だ」と噂された。四白に偏見があった最後の馬がクモハタであったらしい。
そんなクモハタはダービー直前に餌を食べられなくなった逸話で知られる。厩務員の堀留吉はこの状況を不審に思いクモハタの飼い葉桶を調べたところネズミの糞を発見し、飼い葉桶がネズミに占拠されていたことに気づく。ここで堀は画期的なネズミ退治を行った。それは濡れ手ぬぐい4枚を桶のふちに張っておくだけというもので、ネズミが桶に踏み込むとトランポリンになって弾むという算段である。ネズミはこの振動を嫌うため、やがて飼い葉桶に近づかなくなり、クモハタは再び飼い葉を食べれるようになった。他にも寂しがり屋のクモハタのために姿見の鏡を馬房内に立てかけてあげるなどクモハタを支えた堀厩務員だがクモハタが引退すると警察官に転職してしまった。人に問われると「女房、子供を養うには毎月決まったお金が入る職業でなければ…」と答えたため彼の有能さを知るものは嘆いたという。
英語の言い習わし
欧米の競馬界においても、かつて四白は走らない馬とされており、馬の買い付けについて次のような金言が言い慣わされていた。
One white foot, buy him. (一白の馬ならば、買うがよい。)
Two white feet, try him. (二白の馬ならば、検討に値する。)
Three white feet, be on the sly. (三白の馬ならば、自重せよ。)
Four white feet, pass him by. (四白の馬ならば、見向きもするな。)
しかし、欧米でも四白の迷信は打ち破られる時が来た。その筆頭は、何と言っても2008年に生まれ14戦14勝・GI10勝を挙げたフランケルであろう。
実は、先ほどとは全く逆の意の金言もあり、フランケルの活躍期にはこちらの方が言い慣わされた。
One white foot, keep him not a day, (一白の馬は、一日たりと所有するな。)
Two white feet, send him far away, (二白の馬は、どこか遠くへやってしまえ。)
Three white feet, sell him to a friend, (三白の馬は、友人に売り渡すがよい。)
Four white feet, keep him to the end. (四白の馬は、最後まで手元に置け。)
四白の名馬たち
関連項目
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