「誉れは浜で死にました……!」
境井仁とは、PS4ソフト「Ghost of Tsushima」の主人公である。
概要
対馬国地頭・志村に仕える若き武士。蒙古(モンゴル帝国)襲来の折、これを迎え撃つべく小茂田・佐須浦において対馬の武家と郎党とともに奮戦するも、最新の火器を用いた戦術や、日本の武士の性質を事前に把握していた蒙古の戦いで大敗。
友人や郎党は敗死し、総大将たる志村は虜囚に。自らも力尽きるが、運命の悪戯か、一命を取り留めた仁は、伯父を救い、対馬武者の仇を討ち、なにより無辜の民を救うべく、再び戦いに身を投じる──。
人物
非常に生真面目で実直、父と伯父の薫陶か、若くして自制心が強く、勇猛で公明正大たらんとし、卑劣な行いを唾棄するなど、後世の人間がイメージする「侍」そのもの。
しかし、対馬の休憩スポットである秘湯では年相応の青年らしい一面を見せる。「魚や果物を腹一杯食いたい」「強い酒とおなごがほしい」という俗っぽい一言は、蒙古との戦いでささくれ立ったプレイヤーの清涼剤。たまに「ハーンを焼き殺そっかな、溺れ死なそっかな」なんてNot honorなことを呟く。誉れはどうした!
そして何より「戦えぬ民を守る」という一念が強く、蒙古の戦いの傍ら、対馬を巡り、流民の窮状を見かねて解決の為に方々を飛び回る。七代続く名門の嫡男としては、百姓に対して礼を尽くしており、彼らに降り注ぐ火の粉を払えず、非業の死を迎えたことを責められても、潔く己の責として認め、荒れる民を諭すことからも民草に寄り添う姿勢が認められる。
反面、育ちの良さからか人心に疎く、とくに武家──ひいては軍事貴族としての領地経営者の体面や規範の体現者としての振る舞いには無頓着で、それが物語後半において、厄災として自身に降りかかることとなる。
侍としての戦闘能力は申し分なく、太刀(打刀)や弓術、馬術は勿論のこと、大鎧を纏いながら猿の如く岩肌や木の枝を縦横無尽に飛び回り、蒙古の扱う火器や兵具を巧みに使いこなし、果ては伝承扱いされる秘伝の武術や、縁もない野盗の足さばきなどを見ただけで扱えるという、恵まれた身体能力に起因するであろう才覚を有する。
ちなみに日本語版のみ、諱(本名)は「ひとし」であり、当時の世相では身内や近しい者以外に諱を読ませることはないため通称である「じん」と呼ばせているという設定がある。
過去
上県郡青海村を所領とする武家・境井正(さかい ただし)と、地頭・志村の妹の間に生まれる。
幼少期は落ち着きがなく、一日中幼馴染と檀ノ浦の戦いごっこに明け暮れたり、女物の着物を着てふざけたり、舟で壱岐島まで行こうとするなど、年相応のやんちゃぶりであった。
平定の為、父や郎党とともに壱岐へ渡ったおり、父が窮地に立たされるも、恐怖に駆られ父を見殺しにしてしまう。
悔恨と不甲斐なさから、父の形見たる鎧の前にひれ伏し許しを乞い、荼毘に臥される父の遺体の前でも頑なに己を責める痛ましさからか、伯父・志村は発破をかけ、甥として、息子代わりとして自らの城塞へ仁を招き入れる。
以降は志村に師事し、勇猛、信義、節制を示すため武士としての鍛練に明け暮れる。
父の死は元服して尚根強いトラウマとして残っており、秘湯での独白でもいまだに臆病な自分を責めている。
加えて人格形成において重大なピースである父が死亡し、伯父の志村がその役を担ってからは「主君」「師」「父」として崇拝に近い尊敬の念を抱いており、志村の示す「武士として勇敢に、正々堂々と戦うこと」「虚に乗ずるは臆病の印、命を奪うときも誉れと情けを以て相手を見据えること」を第一原則とし、卑劣な行い、武士の誉れに背く行為を厭う。
冥府から甦った闇の武者
かくして小茂田浜での大敗ののち、野盗「ゆな」の手引きにより一命を取り留め、城塞「金田城」において捕えられた志村を救出すべく、蒙古総大将「コトゥン・ハーン」と相対するも、またしても大敗を喫し、守閣を繋ぐ大橋から落とされる。
命こそ奪われなかったものの、戦士として討ち死出来ず、武士の誉れに上塗りされた恥を濯ぐこともかなわず、途方にくれる仁へゆなは
「死んじまったら元も子もないだろ。生きるためなら何だってやらなきゃ」
武士としての戦法が蒙古に通用しないと悟った仁は、以降ゆなとともに蒙古の戦いへ身を投じる傍ら、敵の戦法や兵具の扱いを吸収し、場合によっては野盗顔負けの闇討ちや隠密など「誉れ」に反した戦い方を選ぶことになる。
闇に乗じて寝首を掻けば、一人……また一人と敵は消え、朝を迎えれば敵陣は屍山築かれ血河流れる地獄と化す。
正面から斬り結べば、刀剣、戟、槍に弓、果ては大盾もことごとく断ち斬り、さながら鬼神が人を貪り喰らうが如く。
民は「お侍様の戦い方じゃない」と戦慄し、蒙古は「本物の、不死身の鬼」と恐怖する。
やがて噂は独り歩きし、こう唱われることとなる。
「対馬の冥人」(Ghost of Tsushima)と──。
その行いに"誉れ"はあるか
Ghost of Tsushimaはマルチエンディング要素はあるが、プレイスタイルで分岐することはない。
侍として正々堂々戦うか、冥人として闇に乗じて戦うか、一切がプレイヤーに委ねられる。
しかし侍として正面から戦えば、四方八方を蒙古に囲まれ、剣や槍や弓や、果ては火器や猟犬が飛んできて常に苦戦を強いられる。
冥人として寝首を掻き、巧みに暗器を使いこなせば事は有利に運ぶが、敵を闇に葬り非道な手管で敵を片付ける快感に溺れることになる。
「その行いに"誉れ"はあるか──?」と。
関連項目
- 1
- 0pt