増資とは、企業の財務に関する言葉の1つである。反対語は減資である。
概要
定義と分類
増資は有償増資と無償増資に分けられる。
有償増資は、株主となる者が企業に資産を払い、企業がそれの対価として株主となる者に対して株式を渡し、企業が受け取った資産金額の1/2以上を資本金として増やすものである。
無償増資とは、企業が資本剰余金や利益剰余金を資本金に変換するものであり、「利益の資本組み入れ」ともいう。
有償増資の仕訳
企業が○円の資産を株主となる者から入手したとき、○円の1/2以上の数値を資本金として登録して増資し、それ以外の数値を資本準備金として登録する必要がある。
銀行預金100円を受け取って50円の増資をしたときの企業は「借方 銀行預金100円(資産) 貸方 資本金50円(純資産)、資本準備金50円(純資産)」と仕訳する。
土地1千万円分を受け取って5百万円の増資をしたときの企業は「借方 土地1千万円(資産) 貸方 資本金5百万円(純資産)、資本準備金5百万円(純資産)」と仕訳する。
ちなみに株主となる者が出資をするときは現金や銀行預金といった流動資産を出資することが多いが、手続きを経れば、土地・建物・パソコン・機械・自動車といった固定資産を出資することができる。これを現物出資という。
無償増資の仕訳
企業がある期において○円の税引後当期純利益を稼ぎ出し、期末の貸借対照表で○円の資産を増やして○円の「その他利益剰余金」を増やした。その後に○円の「その他利益剰余金」を資本金に変換させると無償増資になる。
1千万円の「その他利益剰余金」を使って全額増資したときの企業は「借方 その他利益剰余金1千万円(純資産) 貸方 資本金1千万円(純資産)」と仕訳する。
有償増資に必要な意思決定
有償増資は、公募増資と第三者割当増資と株主割当増資の3形態に分かれる。
これらの3形態を実行するとき、①株式をどれだけ発行するのか、②株式1つをいくらの金額で売り出すのか、③現物出資の場合の財産の金額化、④株式と引き換えに出資をする時期、⑤得られた出資金をどれだけ増資してどれだけ資本準備金にするのか、の5点を決定する必要がある(会社法第199条第1項)。そして、3形態はそれぞれ意思決定の手法も異なっている。それを表にすると次のようになる。
公募増資 | 第三者割当増資 | 株主割当増資 | |
非公開会社[1] | (非公開会社が公募増資することはありえない) | 株主総会の特別決議 | 株主総会の特別決議。 ただし、取締役会が設置されない会社なら取締役の決定のみを必要とするように定款で定めることができるし、取締役会が設置されている会社なら取締役会の決議のみを必要とするように定款で定めることができる |
公開会社[2] | 取締役会の決議。ただし、特に有利な条件で株式を売り出すときは株主総会の特別決議 | 取締役会の決議。ただし、特に有利な条件で株式を売り出すときは株主総会の特別決議 | 取締役会の決議 |
無償増資に必要な意思決定
無償増資をするときは、株主総会の普通決議を必要とする(会社法第448条第1項、第450条第2項)。
増資の最終手続き
増資をした後は、登記の変更をする必要がある。
関連項目
脚注
- *非公開会社とは、「全部の株式が譲渡制限株式であり、譲渡するときに株式会社の承認を必要とする株式である」と定款で定めている株式会社のことをいう。
- *公開会社とは、「全部または一部の株式が非譲渡制限株式であり、譲渡するときに株式会社の承認を必要としない株式である」と定款で定めている株式会社のことをいう。
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